大学教職員の職能開発
本大会は、文部科学省の後援を受け開催している。「教育改革を促進するため教育改革推進の基本問題、ICT活用に伴う教育政策、教育効果を高めるICTの活用方法、最新の情報技術および情報環境などの専門的知識に関する講演や事例紹介」を行うとともに、「教育現場の課題解決を模索するためテーマごとに分科会形式で研究討議する」ことを開催趣旨としている。また同時に、公募によるICTを活用した教育や支援の事例紹介、大学・企業連携によるICT導入・活用事例紹介(ポスターセッション)を実施している。
今年度は9月1日から3日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で開催し、参加者数は、336名(152大学、17短期大学、賛助会員14社)となった。
初日の午前中は本協会の向殿政男会長(明治大学教授)の開会挨拶の後、「教育の質保証システムへの取り組み」と題して、文部科学省中央教育審議会専門委員の高祖敏明氏(学校法人上智学院理事長)より、国や関係団体など大学の質保証をめぐる取り組みの概要や教養教育の在り方について紹介いただいた。続いて、「教員の教育力向上への取り組み」と題し、加藤かおり氏(新潟大学大学教育開発研究センター准教授)より、教員の教育力向上の取り組みの必要性や、日本としてどう対応すべきかなど、欧州の事例を踏まえた教員の意識改革について提案を受けた。
午後の前半では「高大連携接続テストの動向〜「選抜」から「相互接続」へ〜」と題して、高大連携接続テストの背景、現状、今後の予定について、佐々木隆生氏(北海道大学公共政策大学院特任教授)に紹介いただいた。
午後の後半では「大学全入時代の高大接続の基本的考え方」と題して、長谷川信氏(青山学院大学副学長)より、初年次教育や高大連携の取り組み事例を交えながら、大学全入時代における高大接続について、大学の対応策についての提案を受けた。続いて、川野辺裕幸氏(東海大学教育支援センター所長)より、「e-Learningによる入学前教育の取り組み」と題し、ICTを活用した入学前教育など、高大連携の取り組みについて紹介いただいた。
2日目はテーマ別自由討議として、「A:ICTを活用した教育政策」、「B:初年次教育と専門教育との連携」、「C:教職協同による教育・学習支援」、「D:教育資産の管理・運用」、「E:情報リテラシー教育の現状と今後の取り組み」といった5テーマを設定し、分科会形式で進めた。各分科会では2名から4名程の課題提起者にテーマに沿った実践事例を紹介いただき、事例を踏まえて参加者が現状の問題点や課題を改めて認識するとともに、課題解決に向けた具体的な討議を行った。また、全分科会終了後に大学教職員や賛助会員企業のコミュニケーションの場として、情報交流会を行った。
3日目はA、B、C、D、Eと並列に五つの会場に分かれて、教育や支援環境へのIT活用について83件の公募による発表を行った。
賛助会員の企業17社による、大学に関連した製品やシステムに関するポスターセッション形式による、大学・企業共同のICT導入・活用の紹介が、2日目の午後から3日目まで行われた。
「教育の質保証システムへの取り組み」
中央教育審議会大学分科会質保証システム部会で審議されている「大学教育の質保証システムの在り方」についての審議経過や、公的質保証システムの基本的考え方と全体像について紹介いただいた。そこでは、特に公的質保証システムの基本的な三つの役割、「1)設置基準(検討中)の内容を満たすこと、2)内部質保証の仕組みを備え、これが適切に運用され、期待される効果が発揮していることの確認、3)内部質保証について、自己点検・評価が行われ、その結果に基づいて自主的な改善が図られていることの確認」が示された。
さらに、日本学術会議の大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会で討議されている「質保証の枠組み、教養教育の在り方」について紹介いただいた。「大学における学びのゴールとは何か」「分野別、分野共通と思われるところは何か」「教養教育、共通教育の目的は何か」などについての議論が進められており、教育の共通のゴールとしての分野別の質の「参照基準」を、学術会議で検討しているとの紹介があった。
大学の質の新たな保証システムへの動き(設置認可の見直し、第三者評価、段階的な是正措置など)や、「参照基準」についての示唆ある提言に耳を傾けさせられた。
「教員の教育力向上への取り組み」
新潟大学大学
教育開発研究センター准教授 加藤かおり氏
教員の教育力向上の取り組みの必要性や、日本としてどう対応すべきかなど、欧州の事例を踏まえた教員の意識改革についての提案がなされた。特に、「1)学習(者)中心の教育への転換(学生/日本の未来のために)、2)教育職としての大学教授職のプロフェッショナル化/専門職業化(教員/大学の未来のために)」について、欧州に共通する文脈や背景での下での取り組み事例を参考に、日本の大学の教育力の向上に関する示唆ある提言(1)教育職能の共通の要件、2)教育者の質保証、3)教育力の基準など)がなされた。
さらに、教育力の基準作りの国内の事例として、詳細な資料を下に「新任FDのための基準枠組」の紹介と、基準枠組を用いた、新任FDのプログラム設計、および実施の支援の試みについての紹介もなされた。
特に、欧州の風土(文脈や背景)と、日本の風土(文脈や背景)にあった学習プロセスや動機づけの違いについて、会場と報告者との間で、真剣な意見交換が交わされた。
また、それぞれの大学の文脈の下、機関における教育力向上に向けた具体的な基準枠組やFDマップの例示など、示唆ある提言がなされた。
「高大連携接続テストの動向〜『選抜』から『相互選択へ』〜」
北海道大学
公共政策大学院特任教授 佐々木隆生氏
知識基盤社会の中で、人材を育成する教育機関に対しは、大学は「やせ衰える教育」、高校は「底が抜ける教育」という表現で危機が叫ばれて久しい。その中軸となる高大教育質保証を担保するため、過去、国大協で提起され、現在、文部科学省からの委託事業として北海道大学を中心に研究されている高大連携接続テスト(仮称)の実現は現代の教育改革を進める上で重要である。
高校における普遍的教育と大学における教養・基礎科目の必要性を背景にした高大連携接続テストの目的は、多様化し機能的に分化した高校の実情に合わせて、基礎学力目標準拠型の達成度テストを通じて高等教育を受けるに相応しい高校教育の到達度の測定にある。この意味で、高大連携接続テストには、高校と大学を結ぶ「学力」の接続と「選抜」の接続の二面性があり、集団準拠型の既存の大学入試センター試験等とのすみ分けや既存の入試制度の再構築も将来の課題となる。
現在の委託事業の研究は、内外の試験制度や議論を整理し、高大連携接続テスト(仮称)の構想設計を提示する段階にあり、具体的な姿についてはまだまだ時間がかかることが予想される。
「大学全入時代の高大接続の基本的考え方」
青山学院大学副学長 長谷川 信氏
青山学院大学での初年次教育と同一法人内高等部と大学の間で行われている高大接続教育は、「青山スタンダード教育機構」を運営主体にして展開されている。初年次教育としての青山スタンダード科目は、全教員が参加し少人数のフレッシャーズ・セミナーの授業の中でコア科目(技能・教養のカテゴリー)で実施されている。
その目的は、多様性や思考力・分析力・表現力を学生に身につけさせ、卒業後の青山ブランドとしての社会的評価を受けることにある。また、2年次以降八つのテーマ別科目も配置し、初年次教育との連携にも配慮している。本年度からは、さらに学問入門講座としてウエルカム・レクチャーも開講している。
高大接続教育では、40講座の学問入門講座を用意し、それ以外にも、模擬授業や英検のe-Learning、コンテスト、各学部ごとの接続教育の取り組みが紹介された。今後の課題として、到達目標の明確化、接続教育と初年次教育の連携の在り方、専門・教養の役割調整、入学者のニーズに対応した教育などがあげられた。
「e-Learningによる入学前教育の取り組み」
東海大学教育支援センター所長 川野辺裕幸氏
多様化した入学生のスキル・基礎学力の向上を目指して、理系が入学者の65%を占める東海大学では、数学などの補習授業や個別授業を実施してきたが、その過程の中で入学前教育の重要性を認識した。当初は、付属高校の内部入学予定者を対象に千歳科学技術大学のe-Learning「数学」「物理」を利用して事前教育を実施し、2006年4月より本格的に自前のコンテンツを作成、統括室も含めたサポート体制を整えた。
入学前教育で見えてきたものは、基礎学力不足はe-Learningだけでは補えないことであった。むしろ、自学自習プログラムは各学生に学力の弱点を認識させ、教員も学生のレベルを客観的に把握できるセルフチェック機能に価値を見出す。また、e-Learningでは学習のモチベーションが重要であり、日常生活の中で関心を持ちやすい教材開発例(「地球に生きる」)も紹介された。
来年度からは、入門ゼミを必修化して、この入学前教育と初年次教育の連携を図るための学生支援システムを構築した。今後は付属高校以外の高校への高大接続教育の協力やITを利用した教育改革の展望が披瀝された。
分科会A「ICTを活用した教育政策」
<課題提起>
「学生カルテ「はぐぐみ」による個別指導」
札幌学院大学情報処理課長 斉藤 和郎氏
「クリッカー技術による双方向授業」
東北大学大学院教育学研究科
教育設計評価専攻教授 水原 克敏氏
本分科会では、学生カルテを活用した学生の個別指導、およびクリッカーを活用した双方向授業の二つの事例紹介に基づいて、ICTを活用した教育政策について討議を行った。
まず札幌学院大学の斉藤和郎氏が、同大学で「はぐくみ」と名付けている学生カルテについて報告した。学生カルテを導入した狙いは、多様な学力、学習意欲、価値観、精神的特性を持った学生たちの個性や能力を育むことである。学生カルテはサイバーチュータの考え方をITにより実現したものである。学生カルテによって学内の複数の部局による情報共有が進んだ。学生の基本データだけではなく、個々の学生の課題を把握することができる。学生カルテを活用するためには教職員の意識を変えていく必要がある。斉藤氏の報告の中では、教員・職員へのインタビューを動画と音声で紹介しており、札幌学院大学における先進的な取り組みの様子が分かりやすく紹介された。学生カルテを活用した事例として、学生の初年次の出席情報に基づく学生指導の例、論理的な文章作成能力を高めるライティングスキルの教育の例が提示された。
続いて東北大学の水原克敏氏はクリッカーを活用した大規模授業の開発について報告した。クリッカーとは小さなキーボードを持つ機器である。これを学生に配布して授業中に学生の反応を常時確認することができる。水原氏の報告の中では会場にクリッカーの実物が配布されて、会場でアンケートの意見の集計を試行してみた。水原氏が報告した実例「教育学」は主として文系の1年生約100名が受講している。この授業においてはクリッカーという機器を活用するだけではなく、TAの果たす役割が大きい。TAは授業中に司会をするだけではなく、事前の準備を行う。授業後は学生のコメントペーパに教員とTAがコメントを書き込む。すなわちTAは事業の補助者の役割だけではなく、教授と学生の架け橋となっている。
両大学ともにITを活用すると同時に、教員、職員、TAの果たす役割が従来と異なる面がある。
課題提起に引き続き討議が行われた。学生カルテに関しては、どこまでの情報をカルテに記載するのか、誰が内容を見ることができるかという質問があり、個人情報あるいはプライバシーの観点から、情報セキュリティのポリシ−および情報利用のガイドラインの重要性が指摘された。クリッカーとTAの活用については、優れたTAを確保する方法について質問があり、単に募集をするのではなく、研究室内の学生・院生の交流の中から適任のTAが選ばれていくことが分かった。このようなTAとして活動することは、その学生・院生にとっても良い経験になっているというのが結論である。
分科会B 初年次教育と専門教育との連携
<課題提起>
「初年次教育を基本とした学士課程教育の構築」
玉川大学学士課程教育センター副センター長
経営学部教授 菊池 重雄氏
「専門教育との連携による初年次教育」
長崎大学大学教育機能開発センター
全学教育研究部門長 高橋 正克氏
本分科会では、玉川大学と長崎大学から事例を紹介していただき、大学の教育理念・教育目標と連動した体系的な初年次教育や専門教育との連携をめぐって議論を深めた。
まず玉川大学の菊池重雄氏から、「初年次教育を基盤とした学士課程教育の構築―初年次教育と2年次教育を中心に」というテーマで事例報告をいただいた。
玉川大学は創立以来「全人教育」を理念としてきたが、学生の多様化に対応するため、FYE(The First-Year Experience)の理念を取り入れ、「中等教育から高等教育への転換教育」に主眼をおいた初年次教育を実施している。本報告では、2005年度以降に必修科目として設定されている「一年次セミナー101/102」が紹介された。これは学生が自覚をもって大学生活を送り、自律した社会人になることを支援するプログラムであり、「何ができるようになるか」という観点から、四つの到達目標が設定されていること、そして目標達成のために、アカデミック・スキル、スチューデント・スキル、ソーシャル・スキルの三つのスキルの獲得が目指されていることが紹介された。
また玉川大学では、2006年度の「特色GP」を獲得したこのプログラムを踏まえ、2009年度以降、学部を超えた選択科目として「2年次セミナー201/202」が開始されたことも紹介された。これは大学2年生に広く見られるThe“Sophomore
Slump”への対応策でもあり、初年次教育を深化させて3年次・4年次の教育へと結び付けて行く学士課程教育の一環として位置づけられている。
次に長崎大学の高橋正克氏から「長崎大学における初年次教育―学士過程教育における初年次小人数セミナーの役割」というテーマで事例報告をいただいた。2003年度の「特色GP」を獲得した取り組みとその後の経過報告であった。
初年次教育(First Year Experiences)を「基礎的知識の涵養」と「大学生としての態度の涵養」に分け、後者のために「共通基礎科目」として「教養特別講義」と「教養セミナー」を設置している。本分科会ではまず2002年度以降「全学教育」として実施されてきた「教養セミナー」の目標と特徴が紹介された。目標は、科学的な思考方法と学習・実験のデザイン能力、プレゼンテーションとディスカッションを通した適切な自己表現能力の育成、学生と教員および学生相互間のコミュニケーションによるグループ活動の推進であり、特徴は、学部混成型のクラス編成、教員と学生の話し合いでテーマを決定、10人以下の小人数の三点であることが紹介された。また、科目の目標に関連して、ディスカッションや授業内での発言の機会が実際にあったかどうかの評価が教員と学生とで乖離していることが判明し、教育マネジメントサイクルで改善に取り組んだ結果、学生の評価が向上したことが紹介された。
質疑応答は、プログラムを実際に運営する上での様々な問題点に関する質問が多く、両大学の対処法が紹介された。
分科会C 教職協同による教育・学習支援
<課題提起>
「大学間連携による教養教育」
首都圏西部大学単位互換協定会
桜美林大学元総合研究機構事務局長
現教員免許更新講習センター事務局長 本郷優紀子氏
「ICT活用による能動的な学習支援の推進」
名古屋学院大学学術情報センター課長 高橋 公生氏
現在起きている、あるいはこれから確実に起きると思われる、教育の課題に確実に対処するためには、教員や職員に限定した取り組みを超えて、大局的な視点に基づく教・職の協働体制が重要になる。
本分科会では、単位互換協定の枠組の中で、教・職の協働がどのような役割を果たしているかについて、桜美林大学教職免許更新講習センターの本郷優紀子氏に紹介いただいた。また、学生・教員・職員の情報的連携をICTを用いて実現する試みについて、名古屋学院大学学術情報センターの高橋公生氏に紹介いただいた。
まず本郷氏に1999年にスタートした首都圏西部の大学28校の協定による単位互換制度の概要を説明していただいた。幅広い科目の提供を趣旨として連携を開始し、現在年間1300科目の提供に至っている。科目の企画には職員・教員の連携が重要な役割を果たす。まず担当職員が、学生アンケートなどの分析を踏まえ「どこの、誰がこのテーマなら」という学生の視点から、オムニバス的な共同授業の発案を行う。声をかけられた教員が集まって検討を開始、毎月の会合を経て内容を煮詰めていく。教職協働の成功モデルとして非常に参考になる。加えて、学生に主体的な意欲を持たせるために、バイト・サークルを考慮し、開催は土曜日に集中、場所は交通の便利な大学を選ぶなど、現実的な様々の工夫をご教示いただいた。さらに、共同授業を
e-Learning 化する取り組みについて紹介いただいた。こちらの課題は、各教員によるコンテンツ作成が e-Learning 普及のボトルネックになるということ、学長自らのPR活動で教員の意識を高めること、FD活動との関連付け、学生・職員・教員(大学人)の資質向上など多くの話題と絡み合っている。
次に高橋氏から、2002年より名古屋学院大学で運用されている、キャンパス・コミュニケーション・システム(CCS)の設計思想についてご紹介いただいた。学生・職員・教員三者の情報連携の仕掛けとしてのICT。大学に関わるあらゆる情報(入試/学生/教務/就職/人事/財務)をこのシステムに集中することによって、学生との関わり方を能動的なものに変えていく。例えば、教員は履修の相談にきた学生の先修科目(その科目に先行して履修しておくべき科目)の成績や出席状況まで知ることができる。これによって、その学生が必要とする情報を「迅速かつ確実に伝達」できる。また支援を必要とする学生を察知し、声をかけることができる。
これまでに80%の学生が自発的にCCSを利用するに至っている。ICTシステムは、事務の効率化・教育労力削減の観点から検討されがちであるが、名古屋学院大学のCCSは、純粋に学生の支援を目指すことによって成功した、示唆に富む貴重な事例である。
課題提起終了後、SNS導入の可能性、e-Learning における教員の負担、個人情報保護、既存LMSとの整合性など活発な質疑応答が行われ、参加者の関心の高さがうかがわれた。
分科会D「教育資産の管理・運用」
<課題提起>
「情報セキュリティへの取り組み」
私立大学情報教育協会情報システム研究委員会
青山学院大学社会情報学部教授 宮川 裕之氏
立命館大学情報システム課長 柴田 直人氏
「外部データセンター活用のメリット・デメリット」
早稲田大学メディアネットワークセンター 中西 勇人氏
共立女子大学情報センター事務室統括室長 田中 俊介氏
本分科会では、2件の問題提議がなされ質疑および討議が行われた。前半には、私情協情報システム研究委員会の宮川裕之氏(青山学院大学)と柴田直人氏(立命館大学)による「情報セキュリティーへの取り組み」が報告され、後半には、中西勇人氏(早稲田大学)および田中俊介氏(共立女子大学)による「外部データセンター活用のメリット・デメリット」が報告された。
宮川氏の報告では、最初に情報セキュリティーに関する国の対応についての説明があった。第1次情報セキュリティー基本計画(2006年〜2008年)の概要が説明された。その中で、未知のリスクに対する対応の困難さが示された。第2次同計画(2009〜2011年)では、これを受けて、「事故前提社会」への対応の強化が盛り込まれた。これは、リスクが現実になった時に、より実際的な対応が取れるような視点を重視している。
これに引き続いて、「柴田氏より情報セキュリティー対策の自己点検・評価について」と題して、情報セキュリティー対策チェックリストの策定および私立大学における対策状況について説明があった。大学とはオープンでかつセキュリティーが必要な場所であること、およびセキュリティーポリシーを策定し対策を実施している大学が極めて少ないこと、障害発生時には大学としての責任体制が大きく問われることの、3点を指摘した。これに基づき、1)情報資産の把握、2)組織的対応、3)人的対応、4)技術的・物理的対応の4つの視点に基づいた自己点検・評価を提案した。
中西氏は、早稲田大学で活用しているデータセンターの事例を報告した。大学メディアネットワークセンターを中心に、ITセンター、早稲田ポータルオフィッス、遠隔教育センター、教務部情報企画課でデータセンターを共有している。その経験より、データセンターの活用のメリット、デメリットについて次のようにまとめた、メリットは設備投資の軽減である。空調や電源などの設備が合理化され、セキュリティーレベルの高いサービスが停止することなく供給されるようになった。デメリットとしては設備投資が減少した分、運用コストが上昇したことである。
田中氏は、共立女子大学における外部データセンターの活用事例に関して報告した。これは、学園情報システム構築委員会による学園情報機器関連整備計画によるもので、管理運用責任の明確化、運用コストの削減、セキュリティーレベルの向上などを達成するために、データセンターへのアウトソーシングを図ったものである。電源確保、監視・保守体制、セキュリティーなどの点でのメリットが大きいが、同時にデータセンターとの間に十分な速度の通信回線を確保するためのコストなどがかかることが報告された。
以上の問題提議に関する質疑応答として、外部データセンターを利用するとコスト面では多少割高になるが、災害時なども含めた保全性などの点で安心感が得られるという回答があった。
分科会E「情報リテラシー教育の現状と今後の取り組み」
<課題提起>
「理工系教育と情報リテラシー教育」
関西大学システム理工学部准教授 榎原 博之氏
関西大学文学部准教授 本村 康哲氏
「経済学教育と情報リテラシー教育」
獨協大学経済学部教授 立田 ルミ氏
本分科会では専門教育と連携した学部規模での情報リテラシー教育の取組事例を紹介し、学生が最低限身につけるべき能力とは、また情報リテラシー教育の今後の在り方を探求することを目的とした。
前半に具体的取組事例として、1)関西大学システム理工学部准教授榎原博之氏より「関西大学における情報リテラシー教育」の変遷と全学共通教養科目「情報処理論」について、および、2)同大学文学部准教授本村康哲氏より「文学部の情報リテラシー教育」の具体的内容である「情報処理1」と「知のナビゲーター」について紹介があった。次いで、3)獨協大学経済学部教授立田ルミ氏より「獨協大学経済学部における一般情報教育―高等学校「情報」と社会との橋渡し―」と題して高校の情報教育の現状と大学新入生の情報リテラシーの現状について紹介があった。
1)関西大学の「情報処理論」は1985年に全学共通科目として始まり、情報全般のリレー講義とコンピュータリテラシー実習が含まれていた。その後、各専門分野のコンピュータ利用が進むと共に専門教育との連携をとるために学部独自の授業へ移行し、リテラシー実習は専門基礎科目へ組み入れられた。2008年からの教養改革によって講義部分は「基礎からの情報処理」として再び全学共通科目となったことなど情報教育の変遷が紹介された。また、全学共通の情報リテラシーとは何か、リテラシー教育は全学共通か学部独自かどちらであるべきか?などの問題提起がされた。
2)関西大学の文学部の情報リテラシー教育は1年次の専門科目として開かれ、前期の「情報処理1」ではタイピングなどの基本スキルを重視し明確な目標としてレポート作成や2万字の卒業論文作成をあげていること、後期の「知のナビゲーター」ではコンピュータリテラシーだけではなく、読み・書き・発表などの基礎能力の向上と情報へのアクセスと活用能力という広義の情報リテラシー能力の向上を目指していること、および、学生の現状と実施上の課題などが示された。
3)では文部科学省の調査、情報処理学会の調査、および獨協大学での調査とプレースメントテストのデータをもとにして、中学・高校の情報教育、高校生・大学新入生の実態を多くの資料により示された。この中で、入学時に行っている5択問題の情報能力テストの結果では情報に関する知識の偏りが大きいことが指摘された。
後半の討議では、リテラシー教育において学生間のレベルの違いの取り扱い、SAやTAに対する事前のトレーニングの有無、ノートPCを必帯としているか否か、携帯電話中心に高校生活を過ごしてきた学生の問題点などについて活発な議論が行われた。いずれの問題も簡単に結論が出ることではないが、会場から各大学の考え方や取り組みが紹介された。以前に比べると情報機器の取り扱いに慣れている学生が増えているがその知識は浅く狭い範囲に偏っており、必要な知識の範囲の全体像を知らせることが重要であるとの指摘があった。また、課題の選択や最終目標を明確に示すことの重要性が改めて認識された。
A−1 | Web環境を利用した協調形3DOG教育支援システムの構築と利用 |
いわき明星大学 高山文雄、大表良一 |
3DCGの授業において、学生の作品をサーバにアップロードし、学生同士で画像とスクリプトの閲覧や、1位〜3位の評価を行うシステムを開発し、授業で利用した。学生への聞き取りでは、他の学生に閲覧されることで意欲が向上するという意見が見られた。
A−2 | 初心者向けの対話型CAD教材 |
工学院大学 山崎浩之 |
CADの演習において、基本的な操作技術を定着させるための対話型教材を開発した。結果の正誤をプログラムで自動判定することにより、素早く正確に判定することができる。試用後のアンケート調査では、正確な操作に意識を向けさせることは成功したようであり、また、時間の短縮を競うなど楽しみながらの練習もできていた。
A−3 | eラーニングと習熟度別クラスによる基礎数学科目の授業デザイン |
千歳科学技術大学 今井順一、小林大二、山林由明 |
基礎数学科目において、習熟度別クラスとeラーニングを組み合わせた授業を行っている。eラーニングは個別学習だけでなく、対面指導も含めたブレンドラーニングの形態になっている。習熟度別学習は、成績下位の学生により多くの効果が見られた。
A−4 | 算数教材における学生から見た表現の魅力に関する研究 |
白鴎大学 渋川美紀、舩田眞里子 |
教師を目指す大学生に対して、小学1年生の算数の教科書を2種類提示し、どちらの教科書を推薦するかのアンケート調査を行った。その結果、教科書の最初の部分では視覚的な工夫を優先し、次第に内容を深める構成法が望ましいことが示唆された。
A−5 | 教職課程(情報)履修学生にとっての講師経験の有効性 |
九州情報大学 岸川 洋、平田 毅、合田和正 |
パソコン入門の公開講座の講師を教職課程の学生に任せ、教育実習の事前準備と位置づけて積極的に活用している。公開講座の受講者は目的や動機が明確であり、教える内容が操作中心で単純である。また、「教えること」を実際に経験することで、その厳しさ、難しさが実感できる。
A−6 | Grass GISを活用した地理情報教育の実践 | ||||
|
米国で開発された、オープンソースの地理情報システムGrass GISを用いた教育の実践例を紹介する。Grass GISは無償でありながら高い機能をもっている。今後、導入事例が確立すれば、難易度の問題を乗り越えて、GIS教育の普及に役立つものと思われる。
A−7 | 3次元コンピュータグラフィックスを用いた情報教育システムの作成 |
日本女子大学 加々見薫、吉井 彰 |
コンピュータ機器のリテラシー教育において、3次元コンピュータグラフィクス(3DCG)を利用する試みを報告する。学習用コンテンツにふんだんに3dcgを用い、またインタラクティブに動かすことによって、学習意欲の向上と、授業内容の理解度が深まる。
A−8 | Web Drillの情報処理関連技術習得への応用 | ||||
|
九州大学にて語学教育に活用されているWebシステム「Web Drill」を、情報系分野の資格試験教育に応用した事例について報告する。実際の運用を通して蓄積されるデータの再利用方法について、学内・学外でのデータの共有や公開等を含めて検討していきたい。
A−9 | 「ユーザの顔が見える」ソフトウェア開発演習授業の実践とその効果 |
日本工業大学 大木幹雄 |
学生が演習授業の中で、社会的運用に耐えうるソフトウェアを現実に開発する、現場教育の試みについて報告する。NPOを中心とするユーザ団体に対する無償ソフト開発、品質・メンテナンス維持の契約・支援体制、複数チーム間の競争的開発など、多くの知見あり。
A−10 | プログラム実習時のコピー防止について | |
東海大学 大内可人 |
プログラム環境による不正コピー防止について報告する。プログラム作成と実行を一つのクライアント・サーバーシステムとして構築。エディタにはコピー防止機能を盛り込む。実行は各クライアントで実行させ、出来上がったプログラムはサーバ側に保存させる。
A−11 | サーバ構築を学ぶためのVPSシステム | |
東海大学 田中 真 |
権限の制限されたネット中で、学生にシステム開発に必要な管理者(root)権限を体験させる試み。VPSシステムを活用して、サーバのハード部分は1台のみ、その中にroot権限を持たせたLinux(CentOS)のVPSシステムを仮想的に30台から40台構築。
A−12 | ネットショップ制作演習のデザインと実践 |
摂南大学 松永公廣 |
教科「ネットショップ制作演習」についての授業設計を示すとともに2008年度後期の実践の評価について報告である。実践の結果、時間的制約の中で質のよいネットショップを構築し、制作にあたっては授業外に多くの時間をかけていることが推察できた。
A−13 | 出身地をマルチメディアで紹介するWebサイト制作授業の実践 |
立命館大学 笹谷康之 |
Web、写真、ビデオ、アニメーション、音声、3D-CAD、地図などを組み合わせたWebデザインやマルチメディア、空間情報の知識を総合的に理解し、自分の出身地のWebサイトを制作する授業の取り組みである。ゲストティーチャーの助力も得た総合的なコンテンツを制作を通じて、デジタルポートフォリオを生み出すことができた。
A−14 | 情報教育におけるポジショニングを用いた作品制作の実践的展開 | |
兵庫大学 森下 博 |
情報教育における「ポジショニングによるイメージのマップ制作」の事例である。テーマと縦軸、横軸を決めて、そのイメージに合う言葉や事柄をマップの位置であらわそうとするもので、発信する情報を、より見やすく、使いやすく提供するための工夫をすることは人の目線にたったシステム作りにも役立ち、考える力を養うことができるとしている。
A−15 | ビデオ制作を通した「集い力」教育 | |
情報機器を利用して、言葉とコンピュータによるコミュニケーションの演習を取り入れた事例である。一つのビデオ作品を制作する協働作業の一端を体験的に学ぶことによって、集い力の向上が期待される。PCスキルの格差を埋めるため、TAによるPCの実習補助があげられた。
A−16 |
学生主導によるマルチメディア活用型レポート作成 |
同志社女子大学 加藤 敦 |
グループ・レポートをマルチメディア(動画)により作成させる取り組みである。実践の結果、プレゼン能力への刺激になった、マルチメディアへの抵抗がなくなった、との評価が多く、プロジェクトマネジメントに関しては、T(期限)、Q(品質)、C(努力や時間のコスト)を互いに両立させ、グループ内での協働意欲を高める工夫が確認された。
A−17 |
インターネット中継を活用した地域情報発信プロジェクト教育の取り組み |
城西国際大学 寺本卓史、岡本駿平 |
地域情報の発信をプロジェクト教育のテーマとして実施した事例である。実践により、学習のモチベーションが向上し、「広義のメディア・リテラシー」教育の場を提供することができた。また、地域情報の動画による発信は極めて関心が高く、価値あるコンテンツの作成を教材として用いることができた。
B−1 | ストリーミング配信を用いたe-Learningコンテンツ作成法 |
流通科学大学 小無啓司 |
ストリーミング配信を用いたeラーニングコンテンツの作成法に関する報告である。この手法によって、eラーニングコンテンツの作成が容易になり、更新・編集も柔軟に行えるようになること、さらに、複数のコンテンツを分割、組み合わせて、新たなオムニバス形式の講義コンテンツの作成も可能となる。
B−2 | e-Assistとテレビ会議システムを組み合わせた学習支援システム |
近畿大学 井原辰彦、仲宗根薫、松田博幸 |
効率的でわかりやすい化学教育・学習を可能とする教材ならびに学習支援システムの開発に関する報告である。独自の「e-Assist」の開発により、教員による操作が簡単となり、また学生にはユビキタス環境で、容易にトレーニング・メニューに取り組むことによって効率的な個別学習を可能としている。
B−3 | 学務労力軽減のための大学講義支援用LMS構築 | |||
|
大学講義支援用LMS構築によって、教員の教育に関わる事務作業の軽減と学生とのネット上のコミュニティを形成することによって教育の質を確保する試みの事例である。このシステムはGlobal Collegeと称され、学生のアンケート評価による検証も行われている。
B−4 | MoodleとWikiを中心としたeラーニングによる学習支援 | |
兵庫大学 河野 稔 |
学生、教員の情報リテラシーの能力格差がICTの活用の障害となっているが、MoodleとWikiを活用し、コンテンツ管理システムと学習管理システムを組み合わせることによってこの障害を除き、使いやすい学習支援環境構築の試みについての報告である。その実践と成果に関する検証と課題も合わせて報告されている。
B−5 |
LMSによる資格試験過去問題の反復学習支援 | |
北海道工業大学 真田博文、竹沢 恵、奥村眞司、渡辺一央 |
情報処理技術者試験対策のための自学自習を支援するため、Moodleを活用した情報処理技術者向けブレンド型学習システム構築の試みである。教員の問題作成・採点・集計等の事務負担軽減による学生指導の一層の充実と学生の客観的な自己評価と計画的・持続的な学習への動機付け等の効果が期待されている。
B−6 | LMSとインストラクショナル・デザインを活用した「読書プログラム@外国語学部」 | |
大阪学院大学 川本裕未、中嶌康二、松尾 修 |
日本語力涵養のためICTツールを活用した「読書プログラム」を整備し、学生が学習の自己管理をしながら主体的に読書できるような機会を創出した。外国語学部1年次を対象に実施した結果、学生の読書に対する内発的動機づけを生むこと、および日本語運用能力を高めることが確かめられた。
B−7 | 自己評価を加えたe-Learningの効果 | |
獨協大学 元木芳子、下川 浩 |
ドイツ語の初学者を対象に、e-Learningにおいて自己評価しながら学習することが、自律的に学習し成績を向上させられる学習者を育成できるかどうかを検討した結果、6週間で有意に総合成績と語彙分野の成績が向上していた。本「学習循環モデル」が自律的学習の可能性を示唆したと考えられる。
B−8 |
SNSによる学び空間の創出〜学習コミュニティ活性化への方策〜 | |
金沢大学 森 祥寛 |
ICTによって与えられる仮想的な場において、学習者が自発的にコミュニケーションをとり、学習内容に対して理解を深めていくための場を形成するかどうかを検証したが、残念ながら場の形成は確認できなかった。学習意欲が原因と思われるが、そのための方策を検討する必要がある。
B−9 |
eラーニングによる反復練習とプロジェクト学習との相関分析 | |
東京工芸大学 金子 格、曽根順二 |
e-Learningならではの特性を活かし授業効果を高めるための方法を探るために、Moodleを用いWBTと課題制作によるPBTを組み合わせた演習付講義を実施した。WBTにより反復練習が可能となり、基礎知識を効率的に習得させることができ、講義をより充実した内容とすることができた。
B−10 | eラーニングによる小テストの学習効果の分析 | |
十文字学園女子大学 牧村信之、新行内康慈、小野裕次郎、田倉 昭 |
ブレンディング型eラーニングの効果的活用方法を見出すことを目的として、「システム設計入門」の授業にて、授業毎に4者択一式小テスト4〜19題を宿題として出題した。その結果、eラーニング小テストの繰り返し学習は満点を取る達成感を味合わせることで理解度向上が図れることを示した。
B−11 | 学習環境の差異から検証する協調学習の有効性−オンライン教材使用実験授業の数値解析 | |
慶應義塾大学 岡野 恵、井上京子 |
自律学習に頼ることの多いオンライン学習に協調学習の要素を組み合わせることの重要性を、英語学習において検証した。1か月という短期間の実験ではあるが、学習意欲の維持においても,個人の総学習時間、学習回数においてもオンライン学習における協調学習の重要性が示された。
B−12 |
共有フォルダを活用した簡易型理解度把握システムの作成とその評価 | |
白鴎大学 舩田眞里子、渋川美紀 |
授業の目的はまず学生に理解して貰うことである。そこで、授業の理解度をリアルタイムに(講義途中に簡単な問題をやって貰うことで)把握するシステムの構築を目指した。講義で使用する共有フォルダと表計算ソフトとVBAを用いた簡易型の方法を考案開発した。英語テキストなど知識伝達型講義で好評であり、補足説明等をすぐに行え、有効であった。今後セキュリティの改善が検討課題である。
B−14 | 多様化した学習者に対応するための学習カルテシステム | ||
|
学生の学習レベル把握のため、学習カルテシステムを作成した。LCMS上、オンラインテスト機能、レポート処理機能、各種学習データ登録・統計処理機能等を持つ。関連教員がデータを共有して、学生の学習レベルを把握することで客観的な指導が可能となった。また統計処理により、講義間の満足度、難易度やその関連性の解析が可能となり、学生指導およびFDに役立った。今後広範な利用が期待される。
B−15 | 学生の就職活動進捗状況の「見える化」を目指す自己採点票の作成 | |
大阪国際大学 石川高行、矢島 彰 |
学生の就職活動支援策として、各学生の活動進捗状況の「見える化」(到達度の尺度化)を行った。履歴書添削、面接訓練、進路相談の回数などを取り入れ、学生の意欲を高めるために狭義単調増加関数を利用するなどの工夫により、各学生の活動状況の自己採点票化を可能とした。自己採点票のポイントにより、内定獲得の目安となり、学生就職活動の励ましとなっている。
B−16 |
初年次教育およびキャリア指導におけるクラウドコンピューティングの活用 | ||||
|
学生の大学生活と学習を支援するため、電子ポートフォリオを利用した。Salesforce社のクラウドコンピューティングにより簡便に(3〜4週間で学生約200名と教職員約20名)導入できた。紙ベースから電子化することで共有化でき、便利になり、学生指導に役立った。専任の管理者を一名置いた。全学利用、利用法のさらなる開発、個人情報とセキュリティ対策などについて今後改善予定である。
B−17 | 学生カルテシステムによる学生指導の試み | |
広島女学院大学 中田美喜子、記谷康之 |
大学では、4年間での達成目標をマナーおよび学びの両面のチェック表として提示、チューター制により学生指導・支援を行っている。各学生についての教員側の所見や学生による自由記述および自己評価などを学生カルテとして電子化した。全教員の所見も利用できるようになり、チューターによる学生指導に幅ができ、学生の意識や状況把握に役立った。今後学生も含めた閲覧可能範囲、記載項目、管理の仕方などの検討を行っていく。
C−1 |
大規模情報リテラシー科目における授業運営と今後の課題 | |
中央大学 岡田大士 |
6000人を超える国内最大規模の社会科学系学部での現状。高校教科情報の必修化でキーボード入力やファイル操作などでつまづく学生がいなくなった。グルーブ課題は学生同士お互いに学び合いながら理解を深めることが明らかになった。課題としてはTA,SAの更なる充実がある。
C−2 |
携帯電話による毎授業項目理解度個別自己評価、等を用いた双方向インセンティヴの醸成 | |
国士舘大学 木阪貴行 |
学生が持つ携帯電話を利用した授業に関する理解度の自己評価を実施。平均値を求めることにより、学生の自己評価がそのまま教員と授業評価になることが明らかになった。理解度評価値は授業の水準を下げれば簡単に上がるが絶対評価として毎年水準を上げる努力が最善である。
C−3 |
授業支援型e-LearningシステムCEASを利用した授業設計とその評価 | |
広島経済大学 久保大支 |
授業支援型LMSであるCEASを授業運営に導入した。その結果教員負担の軽減にはならずむしろ負担は増えたが教育効果という点では十分な効果が得られた。今後の課題としては諸科目で共通利用される機能提供に関する組織的な取り組みがあげられる。
C−4 |
レスポンスが早い授業の展開 | |
千葉科学大学 船倉武夫、嶋村宗正、木村栄宏 |
防災士資格対応の防災教育をターゲットとし、携帯メールやインターネット機能を利用したケータイ教育システムを導入した。その結果教員の問いかけに対する早い学生レスポンスが期待できる授業展開が実現でき、多人数教育の良さ活かすことができる。
C−5 | 無線端末を利用した履修者からの意見収集方法とその活動成果 | |
産業能率大学 小柴達美 |
グループワークを主たる内容とした演習科目を対象として、アンケート回答収集に便利な小型無先端末を活用した。学生は他者からの視線を気にせずに意見表明が可能となった。また、平易な方法で意見収集が可能となりグループの動向を知ることができた。
C−6 |
フィールドワーク教育支援のためのPDA用ソフトの開発とフィールドワークの実践 | |
広島工業大学 三好孝治、樋口忠彦 |
広島工業大学 三好孝治氏は「フィールドワーク基礎演習」で学生にPDA(Personal Digital Assistant)を活用させ、大学内で元気をもらえる場所を正のエネルギー、気分が落ち込む場所を負のエネルギーと定義して、学内の「エネルギー・スポット」を探索させている。
C−7 |
経営工学教育における動機付けおよび学習意欲向上に関する事例研究 | |
東京都市大学 伊東保昌、薩川宣昭、横山真一郎 |
東京都市大学 伊東保昌氏は「総合マネージメント技術者」への教育を目指して、新入生に「モノ作り」の現場を見学させることによって、モノを創ることの楽しさや技術の大切さを体験させ、それを学習意欲の向上へと繋がらせている。
C−8 |
携帯サイトを活用した学習意欲向上の試み | |
中央学院大学 大村芳昭 |
中央学院大学 大村芳昭氏は個人的に携帯サイト「研究室512号室」を開設、そこを通じて授業に関連した連絡、成績評価基準の細目、定期試験に関する情報、課題提示から自学自習の機会までを学生に与え、彼らの学習意欲向上に利用している。
C−9 | 大学入学時における情報スキルが自己効力感の形成に及ぼす影響 | |
愛知淑徳大学 小林久恵、村瀬舞佑子、中野知美、小林千代美 |
愛知淑徳大学 小林久恵氏は「情報」科目での学習態度、学習経験を質問紙により調査することで、自己効力感の量的質的な評価をしている。そして情報活用力と実践力を身につけた自己効力感の高い人材育成という課題に期待が持てることを検討している。
C−10 |
多角的視野を育てる初年次教育へのMoodleの活用 | |
金城学院大学 大橋 陽、岩崎公弥子、時岡 新、太田正登、西尾吉男、高橋和文、王 文亮 |
金城学院大学 大橋 陽氏はMoodleを導入し、学部全員の教員が閲覧出来る仕組みを構築、学部教員の全体的記録として、出席管理、課題提出、採点、成績の評価基準等の標準化を計っている。このシステムから学生の学習意欲改善を計っている。
C−11 |
必携パソコンと学習管理システムを利用した初年度生に対するICT学習導入効果の検討 | |
金沢大学 竹本寛秋、青野 透、末本哲雄 |
金沢大学 竹本寛秋氏は全学共通科目「学生と大学システム」の授業において、初年度生の為に対面学習とICT授業の双方を取り入れたグループワーク学習を試みている。そこから初年次学生の授業適応状況、学習活動状況を評価検討している。
C−12 | 参照文献情報の明示化と共有:知識環境としてのインターネットの活用と参与 | |
実践女子大学 犬塚潤一郎、河井延晃 |
学術論文の基本構造をベースとして論文の全体構造と参照資料との関係をデータ構造と捉えそれに適したフォームを用意し授業のレポート・論文課題の提出に活用した。その構造による制約自体が、知識構造についての習熟機会を与えていることがわかった。
C−13 |
レポートの書き方を学習するWeb利用の自習用教材の試作 | |
玉川大学 和高慶夫 |
日本語のレポートを書くための「パラグラフ・ライティング」教材を作成した。この教材を使い短いパラグラフを書く練習をさせ、パターンを知って、パラグラフの構造を知ることによって、わかりやすい文章を書くことができると期待される。
C−15 |
全学共通『情報基礎』授業支援として学生のIT活用 | |
流通経済大学 松田貴史 |
学習情報環境を活用した学習の動機付けのための導入教育を実施した。学習情報利用ガイダンスアンケートの結果、情報倫理のより具体的な説明が必要であることが判明した。またITスキルチェックテスト結果、導入期教育による効果が確認できた。
C−16 | 情報倫理教育としての意識度チェックテストの推進 | |
白鴎大学 黒澤和人 |
これまで10年に渡り新入生を対象に「コンピュータとネットワークの利用に関する意識度チェックテスト」を実施している。これまで情報倫理に関わる目立った事件や事故は発生していない。また、学生の学習状況やアンケート結果は一定の効果が上がっていることを示唆している。
C−17 |
ケータイおよびインターネット教育から見る情報倫理の諸問題 | |
立正大学 宮崎智絵、野呂一仁 |
情報倫理についての態度と意識を調査することにより大学の情報関連科目でケータイとインターネットにおいてどのような教育を行うべきかを考察。その結果ケーススタディなど具体的な状況でどのように利用するかを考える授業を展開する必要があることが明らかになった。
D−1 |
実践的経営シミュレーション演習を核とする統合的ICT活用教育システムの構築 | |
甲南大学 大塚晴之 |
知識を経営の実践に結びつける手法を身につけた即戦力と、豊かなコミュニケーション能力を持った人材を育成するため、e-Learningコンテンツ、ビジネスゲーム、実務講義、コミュニティサイトを連携する教育システムを構築し運用した事例である。学生に企業経営を疑似体験させ、理論モデルをゲーム実行する中で理解させることができた。
D−2 |
携帯電話による線形計画モデルソルバーの試作 | |
朝日大学 栗原和夫 |
文科系学生に線形計画モデルと最適化の概念を教育する経営科学入門の授業で、携帯電話でモデルを解くソルバーを提供し、授業中や授業外でも活用することで学習効果を上げることを目指した取り組みである。携帯電話以外の情報端末(iPOD、SPS、DSなど)に対するソルバーの作成を検討している。
D−3 |
Moodleを活用した家族援助力養成教育プログラム開発の試み | |
三重中京大学短期大学部 新川泰弘、木村拓磨、岡田良明 |
子ども家庭福祉実践に携わっている社会人がMoodleを活用することで得られる学習効果の可能性を探った取り組みである。受講生の学習動機の内容分析と、高等教育機関における子ども家庭福祉実践に関する先端的かつ実践的な講座を実施した運営状況について検討した。
D−4 |
マネジメント・システム設計教育の実践 | |
札幌学院大学 下島英忠 |
経営力能の実質的修得の実現を目的とした「マネジメント・システム設計」を経営学教育への導入した取り組みである。実践の結果、学生は自己認識を発展的に展開できるようになり、各自の「経営」への構えと備えが現実的に準備され、「経営力能」の大学教育での修得について、その基礎が固められた。
D−5 |
Moodleのレッスンモジュールを活用した法学教育教材作成とその課題 | |
宮崎産業経営大学 村田治彦 |
法の見方・考え方の基礎を身につけさせ、応用能力の獲得へつなげるため、CMSのMoodleのレッスンモジュールとインターネットを活用した自学自習用の法学の基礎教材作成の事例である。フローチャートの設け方、レッスンモジュールと小テストモジュールとのバランス、学生成果の具体化の方法が課題とされた。
D−6 |
単語の授業時間外学習―単語テストのIT受験とその成果― | |
関東学院大学 橋本健広、中原功一朗、原田祐貨、中村友紀 |
初級・中級英語履修者向けに単語のIT受験システム構築し、一時はペーパーによる取り組みも行っていたが、システムを再構築したため、その構築と運用の事例である。単語の補習が英語力向上に役立ったと答えた学生は、2007年度は30.7%、2008年度は49.4%で、両年度とも9割近い学生がペーパー受験よりもWeb受験のほうがよいと回答した。
D−7 |
語学教育で活用するスマートフォン:個人で行う教材活用と管理方法 | |
愛知学院大学 佐々木真 |
スマートフォンやメディアプレーヤーを活用した語学教材の提示と、そのアプリケーションを使った学生管理、メール機能を活用した語彙教材提示の取り組みである。巡回により学生の授業時の集中力向上が見られ、メーリンググループでの語彙教材提示では、携帯電話で空き時間に語彙学習ができるため、授業時間を効率的に使うことができた。
D−8 | 「スペイン語単語練習」ツールを用いた語学授業の報告 | |
スペイン語の正しい発音とイントネーション、基礎的語彙等の習得を目指して、Moodle学習システムを利用する構想である。語彙の習得以外に、自習の習慣を身につけさせ、学びの実感と喜びを感じさせ、学習意欲を高めるという自発的な学習環境の構築や、1回生と2回生以上の学生間の差を確認することを目的としている。
D−9 |
ICTを活用した英語学習の実践的指導方法と自立学習の促進 | |
学習院女子大学 萓 忠義 |
Digital Native 世代と呼ばれる現在の大学生は、デジタル機器を使う学習を好むが、実際は携帯電話を利用して学習するに留まっている。この様な現代の大学生に対しインターネットなどを利用し、新しい英語学習法を自ら探索させることで、自立学習ができるようにした。
D−10 | ロシア語教育における基本語彙データベースの活用とその効果について | |
神奈川大学 堤 正典、小林 潔、尾子洋一郎 |
ロシア語教育における初学者用の基本語彙データベース、提示ソフトウエア等は充実していない。また、キリル文字の習得もネックとなっている。確実な語彙の定着のため、基本語彙データベースを作成し結果、学習者の授業への参画が能動的になり、密度の濃い授業展開が可能となった。
D−11 | 自動繰り返し学習機能付きeラーニングシステムを活用した英語の授業 | |
札幌大学 田原博幸、尾田智彦 |
eラーニングの特徴である、自動繰り返し学習機能を利用し、着実に英語力を伸ばすことを試みた。授業では、対面授業とeラーニングを組み合わせたブレンド型授業を行い、学習効果をあげた。学習の進捗度はeテストをセメスターの始めと終わりに受験させ、伸長度を把握した。
D−12 | 海外留学制度を活用したスパイラル方式教材開発による教育モデルの構築 | |
法政大学 山根恵子、常盤祐司 |
法政大学国際文化学部では、海外の教育機関への留学を義務づけてきた。前年度に留学した学生の現地での経験をコンテンツとして残し、次年度以降の学生の教材としてきた。さらに、留学と遠隔教育システムによるオンライン学習の連携で、リアルタイムでの教育が可能となった。
D−13 | 少人数英語ディスカッション教育導入に伴う業務支援システムの活用 | ||||
|
少人数での英語ディスカッション教育を導入したカリキュラムの開発、評価項目の設定及び指導品質管理の点からITシステムを用いた情報管理(評価情報等)システムを導入した。評価フィードバックシステムの導入により、学生の学習意欲が向上し、英語能力の品質が、高度安定化した。
D−14 | 二大学間における双方向授業の効果 | ||||
|
外国人学生の日本語学習と日本の日本語教育を学ぶ学生との間で双方向授業を行った結果、日本の学生は、自身の日本語・日本語教授法研究に役立ち、外国の学生は、様々な日本語に触れることが可能となった。双方向授業が、学生の意欲や能力をお互いに相乗的に向上させた。
D−15 | 電子教材を用いた正しいダイエット教育の試み | |
武庫川女子大学 武田 陽(旧姓:島袋)、小西すず、鈴木秋子、岡田由紀子 |
正しいダイエットの知識を身につけ、健康的な生活の実践を目指した献立作成法の習得の授業で、動画で解説しながら、クイズ形式でフードモデルを登場させて実際の講義と同様の感覚で、欠席者や再視聴したい者がいつでも学習できるシステムを開発した取り組みである。回りの目を気にせず個人で視聴・学習できるなど、学生のニーズに応える体制づくりが課題とされた。
D−16 |
雑誌『パンチ』(Punch, or The London Charivari,1841-1992)データベース作成 | |
東京家政大学 菅野ももこ、松木孝幸 |
挿絵入り週刊誌『パンチ』を資料としてデータベース化を試みた。デジタルカメラにより資料を撮影し、PDF化したものを画像データベースとした。しかし、PDFからの単語の認識は不可能であったため、手入力に切り替えた。現在PDF画像およびキーワードの収集を行っている。
D−17 |
初学者のための音楽教育Webコンテンツとカリキュラムの開発 | ||||
|
複数の大学の講義で利用可能な基礎音楽教育Web e-learningコンテンツが紹介された。授業評価によると、受講生の理解度と学習意欲向上に効果がみられた。今後は、より高度な学習内容である音楽理論、和声学、作曲法、DAWに関する教材コンテンツを充実させる予定である。
E−1 |
シラバスにおけるテキストマイニングの試み | ||||
|
社会学部専門科目の各シラバスのテキストマイニングにより、授業内容の相互関連を分析した。語句の共起現象やコレスポンデンス分析により、学科間の特徴を示す関連性結果を得た。科目間関連性の解析に基づくカリキュラム編成の検討や学科間の相関解析から学科の特徴分析や編成・改編の為の戦略に使用できる。今後、全学部対象の解析も行い、カリキュラム論を踏まえたシラバス分析からFDに繋げる可能性が期待される。
E−2 | 学生保有パソコンの実習専用端末化環境の構築と運用 | |
京都産業大学 大本英徹 |
Apple社製ノートパソコンを学生に保有させ、OSSP方式の専用ネットワークに繋げて、実験演習用PC端末として稼働させるシステム環境を構築した。ネットブートによるため、動作も同一、演習が容易となった。8台のサーバーと高速LANのお陰で、約150人の学生が問題なく演習できた。故障トラブルに対しても対処可能であり、全学利用可能である。セキュリティが問題であり、見直しを行っている。
E−3 |
地域WiMAXを活用した高大連携等での教育力向上の推進 | ||||
|
松山市の地域WiMAXを利用、双方向授業として高大連携授業などを行った。インターネット設備などの無い場合でも、安価に遠隔授業等を行えた。推薦入学した学生などに対する入学前学習などに有効であり、その他各種の利用法を今後開拓できると期待される。
E−4 |
日英を結んだリアルタイム国際遠隔授業の実践とその評価 | |
法政大学 福多裕志、林 公美、倉林昭浩、日野好幸、クラウド・P.シーゲンターラー |
国際化・ICT化を目指し、外国(英国)とのリアルタイム遠隔授業を行った。タイムラグもなく、スイスを含めた三元での双方向遠隔授業が可能となった。受講生の評価は大変高いものであった。今後、音質や障害要素の管理改善の強化、講義などの発表ツールの操作性向上を目指す。
E−5 |
留学生のクラス分けテストにおける作業効率化と精度の向上 | |
名古屋外国語大学 徳本浩子 |
留学生日本語レベルのクラス分けテストを効率化するため、独自にオンラインテスティングプログラムをPrologで開発した。各PCをサーバーとして立ち上げ、データをWordやExcelで作成したものを利用、採点作業を自動化・軽減した。成績判定に必要な問題意図等も記入し、結果を保存して事後参考にも用いた。お陰で一番重要な判定作業に十分な時間を取ることができるようになった。今後、各種科目などへも利用可能である。
E−6 | 遠隔IT機能を活用したe-conditioning選手サポートシステム | |
仙台大学 鈴木省三、朴澤泰治、竹村英和、内野秀哲、岩田 純、阿部 肇、勝田 隆、粟木一博 |
遠隔IT機能により、スポーツ選手のコンディション調整を試みた。ソリ競技者の日本代表選手を対象に、栄養や練習などの体調管理により体調ピークを試合当日に持っていくための数理モデルを作成し適用した。またコース取りなどのサポートシステムも構築した。海外の競技場に対しても、日本国内からのサポートを可能とした。今後の活用が期待される。
E−7 | 映像フィードバックによるパフォーマンス分析能力の造成と身体知獲得の支援 | |
専修大学 齋藤 実、前嶋 孝、吉田清司、佐竹弘靖、時任真一郎 |
体育のスポーツ技術習得(スケート)に際し、映像を用いた分析手法を導入した。現場で本人の実働場面の映像をビデオや映像遅延装置などを用いて撮影し、本人に提示、身体知獲得の支援とした。身体イメージと実動作の一致化、スキルの指導、自己分析に有効であった。装置やスタッフ確保が大変であるが、集中講義形式で有効であった。他のスポーツにも有効と考えられる。
E−8 |
モーションキャプチャを用いた日本舞踊実習の試み−IT利用による舞踊の人材育成− | ||||
|
伝統芸能の指導において、世襲による個別指導よりも、最近は科学的な教授法と評価基準が求められている。そこで大学の日本舞踊実習で、モーションキャプチャを用いた。各種流派を対象にモーションキャプチャによる動作解析を行い、基本動作の質評価指標を作成し、習得時のイメージトレーニングに利用した。「腰を入れる」を例に習得の評価を行い、有効性を示した。今後本指導方式の一般化が期待される。
E−9 |
保育系学生におけるソーシャルブックマークの活用実践 | |
名古屋芸術大学 加藤智也 |
ソーシャルブックマークを活用し、有益なホームページ情報を共有して研究効率を良くすることを目指した取り組みである。取り組みの結果、効率よく資料を集めることができるようになったことで、学生の成果物の質が向上した他、リアルな人間関係もよい方向で築くことができ、ゼミナール内での議論も活発化した。
E−10 |
精神看護における薬物療法の自己学習教材の作成について | ||||
|
薬物療法が重要な精神看護学の実習において、ITを用いた実践的な教材作成の試みである。実際の実習中に自学学習させるよう設定し、実習前後に薬物療法の試験をすることによって、客観的に教材の活用度や理解度について評定する必要があることが課題である。
E−11 |
看護学系リメディアル・プロジェクトの実践の効果 | |
帝京平成大学 仲井克己、長尾嘉子、松村紀明 |
看護に関する専門的な知識・技術の習得と21世紀型市民社会への対応という目的のため、高校と大学の接続教育の実施し、CATV番組制作に学生を参加させた取り組みである。CATV番組制作により患者とのコミュニケーションを前提とした知識習得が可能になり、ネットを活用したリメディアル教材の自宅学習は、効率的な知識獲得を実現させた。
E−12 |
バーチャルスライドによる病理組織学実習 | ||||
|
バーチャルスライド(V・S) による医学部組織実習の能率向上と学習意欲の開発である。光ファイバーが設置されているところであれば学内外どこでも自分のパソコンを利用して病理組織学習が可能で、汎用性としては、組織画像が苦手な一般の医師にも、パソコンを用いることにより病理に対する苦手意識を軽減できるとしている。
E−13 |
臨床技能教育とe-Learning | |
東京慈恵会医科大学 柵山年和、小松一祐、福島 統 |
臨床実習でのClinical clerkshipのサポートとして、臨床技能教育の充実を図るためにe-Learningを導入し、効果的かつ円滑に利用する取り組みである。卒前教育への臨床技能教育の移行が必要となるため、初期研修につながるようなシミュレーションやe-Learningの開発が課題となる。
E−14 |
ラウンドテーブルディスカッションとIT併用による統合医科学教育の医学部学生教育への応用 | |
東京女子医科大学 山田 修、吉良有二、高山幹子、橋本葉子、古谷道子、古谷喜幸、松岡瑠美子、吉岡俊正 |
医療を専門科を越えて横断的に捕らえ、患者中心の全人的医療を実践する医療人および基礎研究者を育てる取り組みを、将来、学部教育へ導入する可能性や応用方法の提案である。患者データベースによる臨床推理力の修練の訓練、患者を診察しているような体験学習、自ら考える能力の向上が期待できる。
E−15 |
病理診断学におけるIT活用による自主学習支援と長期学習効果の検証 | |
日本歯科大学 佐藤かおり、島津徳人、柳下寿郎、青葉孝昭 |
学習環境のIT化と自主学習プログラムが病理診断力を指標とした学習到達度と学習内容の長期保持に及ぼす効果についての報告である。視覚教材の配信システムの整備と「診断発表会」プログラムの導入に対応して、3学年履修直後における診断正答率は経年的に上昇傾向を示し、4学年および5学年においても高い病理診断レベルを維持していることが判明した。
E−16 |
大学入学時のデジタルディバイドと歯科医学教育における情報リテラシー・コース | ||||
|
歯科医師にとって必要なICT活用方法やルールを学び、患者のために効果的に応用できる技術修得を目指した情報リテラシー教育の取り組みである。講義前後に実施たしたアンケート調査の結果、入学時のデジタルディバイドを軽減させ、学生の学習意欲を向上させたとことがわかった。
E−17 | レセプト作成支援ソフトウェアを用いた医療事務教育のあり方について | ||||
|
短期大学における医療事務従事者を育成する上でのレセプトコンピュータ(医療事務用ソフトウェア=レセコン)の利用について、手作業の場合と比較するアンケート調査を行った事例である。初心者は、レセコンを評価するものの、約4分の1は薬剤や病気の名称を正確に記載(入力)する点でレセコンを評価しない傾向があることがわかった。
文責:教育改革IT戦略大会運営委員会 |