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長年、通学と通信それぞれの教育課程で独自のシステム運用を続けてきた玉川大学の両課程において、どのような目的で同じパッケージをご選定いただいたのか。「GAKUEN通信教育ソリューション」誕生の背景と、「ALL GAKUEN」導入のメリットについて、玉川学園 総務部情報基盤システム課課長 中村順一氏にお話を伺いました。
玉川学園は、東京都町田市を中心とした約61万m2のワンキャンパスに、K-12(Kindergarten to 12th)から大学院生までが通うワンキャンパスが特長の総合学園です。所属する総務部情報基盤システム課では、学内LANなどネットワークの整備や、学校法人としてICT支援、コンプライアンス対策、さらに事務を中心とする業務システムの開発から運用保守などを担当しています。校地が広いため、学内のシステムは基本的にオンプレミスでプライベートクラウドを構築して基盤を運用しています。
玉川学園のシステムは、1980年頃から長くホストコンピュータを使って運用してきました。その後、要求されるシステムの処理性能が増大し、再び各部署が独自にパッケージやクライアント・サーバ型のシステムを導入する形となりました。通学では、1999年に初めてGAKUENシリーズのパッケージを導入しました。2009年に一度システム更改を行って、現在まで利用を続けています。
通信でも2001年の学生用Webシステムを皮切りとして、GAKUENをベースにしたシステムが稼働していました。これは業務適合率が15%以下と、ほぼスクラッチでの開発でした。当時は他に一般の通信教育向けシステムの中で適合率が30%を超えたパッケージも存在していましたが、GAKUENの担当者からDBの設計書を見せていただいたところ、DBの設計はGAKUENの方が大学向けとして信頼ができるということで、アプリケーションを大幅に改修し、主にデータの器として利用した形です。
そして、前システムから10年以上経過した2014年に、再びFit&Gapを行ったところ適合率は50%超とかなり向上していました。通学の場合は、パッケージとして汎用的な製品が多く存在していますが、通信では独自開発が主流であり、適合率が高いというのは大変希少でした。通信は通学と大きく業務内容が異なるため、私の知る限り通信に特化したパッケージはありません。今回、本学で開発されたシステムは「GAKUEN通信教育ソリューション」として新たにリリースされましたが、通信向けに改修したことに加え、カリキュラムがより通学に近い大学の場合、本学より適合率はもっと上になるのではないでしょうか。
通信基幹システムの更改は、前回の開発時と比較して学生数が半数以下に減った中、コストの削減と学生サービス向上による学生数の増加が重要な命題でした。
まず、学生満足度の向上のために、事務手続きや各種連絡は郵送を基本とした紙ベースの手段から、インターネットを通じた電子化に軸を移すことに決めました。2015年4月から新システムが導入され、履修登録や資格取得判定の手続き、学費納付状況の確認など、必要な手続きや情報がWebでいつでもどこからでも実現できるようになりました。
これまでは、システムが異なることによって、通学と通信で別々の学修環境が提供されていましたが、どちらも同じパッケージをベースとしていることで、大学として両方の課程が同じ方向を目指すことができるようになりました。インターネットの普及率が上がり、学修環境も変化する中で変化への対応は重要だと考えています。
次に、コスト削減の問題ですが、これはパッケージの活用により、開発費用が圧縮できました。さらに、共通プラットフォームである仮想基盤へのサーバ移行や、通学とのサポートの一本化ができたことで、問題発生時の切り分けやSE作業費の工数など、運用、保守面でもコストの削減ができています。今回、「ALL GAKUEN」のワンストップサポートをお願いし、パッケージだけでなく、OSやミドルウェア、ハードウェアまで含めて保守サ―ビスを提供してもらったことで、これまで大学側で実施していた調査対応や複数の窓口への保守問い合わせなど、かかっていた時間的負担も減らすことができました。人件費という面では、通学と通信で同じUI(ユーザインターフェース)であるため、通学の職員が通信に異動した際なども操作に早く慣れることも可能です。今回のシステム更改を機に、これまで通信が独自で運用してきた業務をなるべく通学に合わせ、コード体系や書式なども通学側に寄せて構築を行っています。また、担当者によってばらばらだった業務フローをパッケージに合わせて標準化することにも力を入れています。
開発の際の大きな方針としては、新システムは、事務処理の効率化だけでなく学生目線での学修支援や、学生サービスの向上を優先して開発しました。大学として利便性の追求だけでなく、教育の質を保つことを目指しています。
大学通信教育においてはインターネットを利用した授業で卒業に必要な124単位がすべて認定できるようになるなど、技術革新により今の学生の学修環境は変化しています。インターネットを利用した学修支援の中で通学と通信相互で期待していることとしては、LMSによる動画や反転授業の実現でした。特に動画は、授業を録画しておけば、授業中に聞き逃した箇所をあとで復習に利用することもできますし、実習や実験などはテキストより理解しやすい教材です。今回、通信では総合事務、学生支援システムの他にGAKUEN EduTrack(以下、GET)というLMSも導入していますが、今すぐに通信のメディア授業として前提にしているかというと、現在はまだ見送っています。コンテンツの整備ができていないことと、運用方法が決まっていないことが理由ですが、単位を安売りするようなものではなく、教育の質を保証するための学修支援として利用したいと考えています。今は、何をメディア授業で実現し、何を対面の面接授業で重視するのか検討している段階です。まずは、単位認定を伴わないガイダンスや学修の手引、テキスト授業の補助教材、スクーリングの反転授業として利用を開始したいと思います。
通学の事務を運営する教学部の中に席を設ける形で設置した「サービスデスク」は、職員からも非常に好評を得ています。メーカーのSEが現場に居ることで本学の業務理解度が上がり、職員との認識の差が少なくなるのか、適切な提案を受けることができています。現在は主に実務担当者のサポートを行っていますが、今後は直接のユーザである、学生や保護者に間口を広げても良いのではないかと考えています。また、通信のGETについては、教務情報との連携の容易性やコストといった部分でメリットから導入をしていますが、いくつかの機能についてはまだ課題があると思っています。こちらは「GAKUEN通信教育ソリューション」とともに、今後の発展に期待します。
玉川学園 総務部
情報基盤システム課
課長 中村順一氏
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[東日本地区]文教事業部 TEL:03-6718-2790 |
[西日本地区]GAKUEN事業部 TEL:06-4560-1030 |
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