賛助会員だより
※本内容は、北海道大学情報基盤センター長・教授の井昌彰氏にインタビューした際の同氏のお話をまとめたものです。
北海道大学は、「北海道大学近未来戦略 150」に基づいて、ICTを活用した教育の推進によって大学の教育改善を支援するため、オープン・エデュケーション・リソース(OER)を活用した教育・学習支援やOERに関する研究開発を推進しています。その計画の中でBYOD(Bring Your Own Device)を導入し、あらゆる科目でICTを活用した授業を展開する方針を打ち出しています。そのための教育用無線LAN環境の構築にメルー・ネットワークスの無線LANシステムを導入し、大規模かつ高密度のアクセスに耐え得る無線LANインフラを実現。さらに教職員、学部学生、大学院生が利用する共用フリースペース向けの従来の一般用無線LANインフラとの統合・一元管理も実現しました。
北海道大学 正門
クラーク像
同大学の従来の教育用無線LAN環境は、学生が集まるホールや大講義室など約40カ所にアクセスポイント(AP)が設置されており、各教室等はほとんど整備されていませんでした。今回の教育用無線LANシステム(ELMS無線LANシステム)の強化・整備は、教育情報システムの更新の一環として、主に高等教育推進機構のほぼすべての建物・教室等で無線によるBYODが利用できるようにするものです。一方、同大学にはHINESが提供する共用スペース向けの無線LANシステムがあり、国際無線LANローミングサービス(eduroam)も、このインフラを利用しています。
新たなELMS無線LAN環境は、高等教育推進機構管轄のエリアだけでAPが184カ所に増加。共用スペース向け無線LANシステムと合わせると約320カ所に拡大します。さらに、授業の支援目的でのBYOD活用であるため、複数の教室で多種多様な端末が一斉にアクセスすることになります。そのため、大規模な無線LANシステムとなる上に、限られたAPに複数の端末が同時アクセスしても授業に支障を来さない無線LANインフラが求められました。密度の高い利用環境でも、各人が平等に教育用コンテンツを使えることが最も重要であり、そのためエアタイム・フェアネスは重要な要求仕様の一つでした。
高機能な端末とレガシー端末が混在するアクセス環境では、高機能端末のトラフィック向けにエアタイムが優先され、レガシー端末向けのエアタイムが著しく減り、パフォーマンスにばらつきが発生します。すべてのクライアントにアクセス時間を均等に割り当て、すべてのデータ伝送が最高速の潜在速度で実行できるエアタイム・フェアネス技術が実装されていることが、メルー・ネットワークスの無線LANシステムが評価されたポイントです。
また、デバイスとアクセスポイントの両方のデータ伝送を管理するエアトラフィック・コントール、複数のAPを一つの大きなカバレッジレイヤーとして見なすバーチャルセルなど総合的な無線LANシステムのアドバンテージが認められました。
導入された無線LANシステムは、最大500台のAP、最大5,000クライアントをサポートするコントローラのMC4200(冗長構成)、APは高等教育推進機構管轄の教室等にAP822e(802.11ac対応)を約270台が設置されました。
2015年4月の新年度から本稼動を開始。従来の無線LAN環境と比べてアクセス数は急増し、1,000〜2,000台の端末が常にアクティブ状態にあります。一つの教室で何台の端末が接続しているかモニタリングした結果、AP1台あたり40〜50台がアクセスしている状況。まだ教育用コンテンツの運用が本格化していないためトラフィックは少ないものの、良好なアクセス環境を維持できています。
また、従来のELMS無線LANではWeb認証でしたが、共用スペース向け無線LANシステムで運用している認証基盤に一元化したため、教職員、学生のすべてのユーザーが802.1x認証へ移行でき、セキュリティレベルが向上・均一化しました。
今回の高等教育推進機構を中心とした無線LANシステムの統合で、現在のAPは約430台に拡大しました。今後、徐々にカバーエリア、密度ともさらに拡大していく計画があり、最終的に札幌キャンパス全域で1,000〜2,000台のAPが設置される予定です。
本格的なBYODの導入は2016年度の新入生から実施していく計画を予定しており、そのインフラとして、高密度アクセスに耐え得る環境が整備されました。実際に授業等で各種のコンテンツが走り出しても問題なく運用できると期待されています。
北海道大学
情報基盤センター長・教授
高井 昌彰氏
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