事業活動報告 3

2020年度
ICT利用による教育改善研究発表会開催報告

 本発表会は、全国の国公立大学・短期大学教員を対象に、教育改善のためのICT利用によるFD活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上を図ることを目的としている。
 今年度はコロナ禍の中での発表会となり、来場ができない発表者には発表映像の事前提出と、ネットによる会場からの発表配信・質疑対応を求める方法で令和2年8月25日(火)にアルカディア市ヶ谷(私学会館)において開催した。一般参加者は184名(78大学、11短大、賛助会員5社)で、発表会では第1次選考も兼ねて37件の研究発表が行われた。当日の発表内容は以下の通りである。その後、第2次選考を9月26日(土)に実施し、11月30日(月)の本協会の第29回臨時総会冒頭に表彰式を行った(詳細は次号に掲載)。

※以下の発表者名は発表代表者のみ掲載

Aグループ

A-1 保育実習の質向上を目指したアセスメント・システムの開発
東京家政大学   尾崎 司

 保育者養成課程の課題となっている「実習の評価と指導のあり方」について、実習情報は時間が経過した実習後に学生と巡回訪問教員から知らされるため、実習指導教員が即時対応できない状態が続いていた。そこで、「指導と評価の一体化」の促進を目的に、ICTを活用して実習情報をデータベース化し組織で共有する教育改善を行い、アセスメント・システムを開発することができ、収集したデータ分析から実習での学びを可視化し、授業改善サイクルを確立できた旨の報告があった。

A-2 「主体的・対話的で深い学び」を目指したタブレット型議論支援ツールの教育効果
玉川大学   大谷 千恵

 タブレット型議論支援ツールは、「主体的・対話的で深い学び」を目指した議論を支援するツールとして、グループ議論における議論の工程、各工程のポイント、時間管理を機械音声がアナウンスする。教育学部3年生を対象に、2019年の春学期は紙ベースの教示ガイドで、秋学期は本ツールを使用した実験授業をそれぞれ3回実施した。事前学習、議論の経過観察、成果としての図解、授業後のアンケートなどを比較・分析して検証した結果、①議論の工程定着、②学生の活動への関与、③議論の質向上、C学修時間の増加を教育効果として確認できた旨の報告があった。

A-3 保育科学生を対象としたピアノの即興演奏向上のためのICT活用と双方向型授業の検討
つくば国際短期大学   仲条 幸一

 保育者養成校で行われているピアノレッスンの多くは教師主導型で行われている。本研究では、DAWとMIDIキーボードの活用によって演奏者が即興演奏した内容を即時に楽譜化し、可視化した状態で聴取可能な環境を整えることで授業者と演奏者と鑑賞者の3者による双方向型授業を提案し、その学習効果を検討した。その結果、学習者は自ら内省的に演奏を振り返るだけでなく、即興演奏の工夫の検討や鍵盤を弾く音数の増加などの傾向が明らかとなった旨の報告があった。

A-4 「会員制キャリア形成プロジェクトサイト」による主体的・協働的な学びの促進
帝京平成大学   庄司 一也

 キャリア教育の一環としてマイナビが主催する「会員制キャリア形成プロジェクト:MY FUTURE CAMPUS(MFC)」を活用した課題解決型学習を実践した。同時にMFC内に準備されているGoogle合同会社が提示するAIに関する課題テーマを採用した。本研究では上記MFCを活用したキャリア教育の実践内容を基に、主体的・協働的な学びが促進された学習成果についてデータを基にした考察と、MFCがICT利用による教育改善にどのように貢献するかについての実践を踏まえた報告があった。

A-5 RPG型WEBアプリケーションを用いたアクティブラーニング手法の開発
淑徳大学   山脇 香織

 経営学領域でのアクティブ・ラーニングの一つの手法としてボードゲーム型のビジネスゲーム等を取り入れた事例発表である。この手法により「会計嫌い」の学生を減らし、自主的に学修する意欲を高める効果を狙った。ボードゲームを通して、「経営現場で起こりうる問題について会計を用いて解決する」ことを体感でき、学生達が自分のペースで学修を進められる仕組みを作ることで学修効果を高めた。RPGに取組んだグループと取組まなかったグループの定期試験結果を比較すると、取組んだグループの優位性が検証された旨の報告があった。

A-6 オンライン授業の活用による大規模授業の革新と学生の参加意識、理解度、満足度の向上
相模女子大学   杉山 章

 大規模授業をオンラインで実施することにより、大教室での授業の革新を目指した取組みの事例発表である。大規模授業をライブ授業形態とすることで、学生の参加意識の向上を図り、同じクラスルームに同席することでクラスメイトの存在を感じさせ孤独感を払拭させ、クラスへの参加意識を維持、向上させることを目指した。さらにオンライン会議システムが持つ機能を大規模授業に活用することで、大教室での対面授業では限定的になってしまう教員と学生のインタラクティブなコミュニケーションを授業運営に取込んだ。授業後のアンケート調査では、オンライン授業が対面授業の代替的な対応ではなく積極的に大教室授業の革新に取組める可能性を示している旨の報告があった。

A-7 学生と創る遠隔授業〜新型コロナウイルス感染症への対策を通じて〜
淑徳大学   矢尾板 俊平

 遠隔授業にアクティブ・ラーニング等を導入する授業設計により、大人数科目においても対面授業と同等の教育効果を得ることができた授業事例の発表である。重視したことは学生にとって一番シンプルなものを提供するという観点であった。「Slack」を用いて学生が意見を記入する「チャンネル」を設けるとともに、「ダイレクトメール」で担当教員と連絡が取合えるようにし、対面授業と同様に、担当教員と学生、学生間でディスカッションを行える授業設計をした。この結果、遠隔授業であっても対面授業と同様の授業内容、同等の教育効果を得られたという旨の報告があった。

A-8 WEB会議システムを活用したオンライン授業導入による緊急時の即応の実践と教育効果
相模女子大学   小泉 京美

 ICT教育が未発達な大学において、授業開始よりオンライン学修支援のために実施した大人数向けのZoomを使った施策の事例発表である。学生と教員の協同作業により、短期間でWeb会議システムを活用する仕組みを構築した。特徴は①オンラインのみでプロジェクトを運営 ②学科内のコミュニケーションを重視した ③オンライン学修の事前準備と実施後のSNSを活用した学生のフォローを重視した点にある。特に上級生をサポートメンバーに加えたことや友だちネットワークなどユニークな取組みを取入れたものであり、今後のWeb会議システム可能性を示唆した報告があった。

A-9 オンライン授業におけるZoomによる効果的なグループディスカッション
国際医療福祉大学   フロレスク コスミン

 医学部1年生を対象に、英語授業を完全オンライン授業で行ったときの授業アンケートデータと前年度の対面授業の同様のデータを比較・分析した研究発表である。①モチベーションの向上 ②英語スピーキングスキルの向上 ③学生同士の関係の構築、という3つの目標を設定して、グループディスカッション・プレゼンテーション等の双方向型授業形態を取入れた。実際には、ZoomやMoodleさらに、ZoomのBreakoutRoom機能を活用して小グループでのディスカッションやプレゼンテーションを可能な限り取入れた。その結果、授業評価アンケートでも完全オンライン授業の方が対面授業に比べて学生の負担が大きかったものの、高評価を得られたという旨の報告があった。

A-10 ICT教育を用いた他文化理解教育の取り組み
金沢学院大学   南雲 まき

 小学校教員養成課程において、ICTを活用して、「美術教育」を通して他国の人々との交流を深めた実践報告である。具体的には、ポーランド日本情報工科大学の多国籍の留学生と報告者の勤務校の学生との交流を、白紙の折り紙にそれぞれの出身国の文様のデザインを施し、それを使って折り鶴を制作するというものであった。効果についてはGoogle フォームによりアンケート調査を行い、学生の関心の高まりを確認でき、また、他文化理解に加え、題材設定や指導案の作成という過程を通して教員としての資質向上が図られたとの報告があった。

A-11 体育系大学のダンス実技におけるICTを活用した運動観察力を高める授業実践
鹿屋体育大学   栫 ちか子

 本報告では、体育系大学の「ダンス」実技(2008年学習指導要領において必須化)において、学生の「運動観察力」獲得を目指して、ICTを活用したダンスの撮影、視聴、評価活動、授業の振り返り等学習効果の可能性について検証を行っている。授業内におけるICTの活用については、質的評価が重視されるダンス領域においては、タブレットの動画撮影機能を用いて動きを撮影し、それを視聴しながら自身や仲間の動きについて省察を行う活動を取入れた。その際、「指導言語」が、より多くの観点から評価されていることに注目して、「運動観察力」向上のための評価指標となる旨の報告があった。

A-12 対人コミュニケーションが求められるリーダーシップをオンライン型授業で育む教育実践
追手門学院大学   田上 正範

 コロナ禍によって全ての授業をオンライン形式に切り替えた場合に生じる教員と学生同士のコミュニケーション不足を、リーダーシップ教育を例に、対面授業並みに維持・向上させるためのオンライン形式(同期型と非同期型の併用)による授業の実践報告である。総括として1)授業外活動が中心となるように構成する。2)計画段階から、対面、同期、非同期の学習形式の組み合わせを状況に応じて配分する。3)週1回の定例打合せの際、PDCAサイクルを活用して組み合わせや時間配分の改善を行うの3点をあげている旨の報告があった。

A-13 小学校教育におけるデジタル教材の開発〜まちを映像保存化する取り組みを通して
奈良学園大学   岡野 聡子

 奈良県三郷町の龍田古道を映像保存化する活動を、撮影機材の活用、撮影、編集作業の過程を通して、思考力、判断力、表現力など多角的な向上をはかることを目的とした取組みである。3年次の「人間教育学ゼミナールT(基礎)」と4年次の「同科目U(応用)」を使い実施している。今年は新型コロナの影響により、Zoomの利用による授業や動画の活用の機会が増えたが、伝える側の一方的な思いだけではなく、受け手の立場を考えた情報の取捨選択やストーリーの構成に関心が集まり、自己表現力の幅を広げる教育活動への活路が開けたとしている旨の報告があった。

A-14 地域共創型の課題解決学習(PBL)授業支援プロジェクト
九州産業大学   香川 治美

 地域共創型の課題解決力は、不確実性を増す21世紀を生き抜くために有用な、学生に向上させたい能力で、地域の課題を発見し、独自の主義や理論を生かして解決策に取組んでいくための持続的な実践力であり「住居・インテリア特論」と「卒業研究」において取組んだ例である。本研究では、授業改善のためのプロジェクトチームを組織することや、Webサイト教材、リモート会議ソフト、画像・映像処理ソフトなどのICTツールを活用の向上を目指すこととした。結果は、プロジェクト・チームメンバーと教員との情報共有が重要であることが分かった反面、学生のICTツール活用についてはばらつきがあり、学生に対するICTへの学修意欲や利用状況を調査する必要がある旨の報告があった。

A-15 地域企業、行政と協力した学生による地域還元型資料の作成とその公表
金沢星稜大学   奧村 実樹

 高等教育機関が地域と連携し実施するPBLは教育活動であると同時に社会的活動の役割があることを念頭に取組んだ研究である。地元石川県の業界・企業が一目で分かる資料「いしかわ業界マップ」をICTの活用により作成し、このマップ作成過程を定期的にブログに、成果物を大学公式ウェブサイトに公表した。PBL型の学生による活動は、学校教育の要素と社会的活動の要素が共存しているが、その継続性と公開性の実現には、ICTがツールとして必要不可欠である旨の報告があった。

A-16 Googleフォームを援用したマイクロティーチングの振り返りの取り組みと成果
弘前大学   佐藤 剛

 大学生を生徒に見立てて授業を行うマイクロティーチングの振り返りにおいてGoogleフォームを援用し、より課題解決的で主体的・共同的なフィードバックの在り方について検討した。従来のワークシートを利用したマイクロティーチングの省察に比して、Googleフォームを利用した場合、教師役、生徒役双方の振り返りの有効性が高いことが確認された。この授業実践は、教員志望の学生が、将来ICTを使った授業を実践し、その普及に貢献することに結び付く旨の報告があった。

A-17 完全オンライン環境下における反転授業の実践
関西学院大学   木本 圭一

 本研究は、財務諸表に関する知識の定着・活用、財務諸表分析という判断力の獲得、学修過程及び学習成果の可視化による成長支援、質を伴った学習時間の増加を目的としている。その方法として、反転授業を6年にわたって実践してきたことを踏まえ、完全オンライン環境下での実践について報告があった。また、オンデマンド動画による知識修得、教室での演習に見立てたZoomブレイクアウトルームとGoogleDocumentによるグループワーク(財務データの分析検討)、Web学習ソフトの組み合わせにより、対面授業不可という制約下で,上記の目的を一定程度達成できた旨の報告があった。

A-18 ポストコロナ時代の大学教育における対面・遠隔授業のブレンディッドラーニングの展望
京都女子大学   水野 義之

 本研究では、Zoom及びZoomの録画機能(非同期オンデマンドYouTube)、LMSそしてGoogle Formsを活用した遠隔講義の評価とビデオ視聴統計を分析した。また、対面授業と比較しつつ、今回の遠隔授業においては、教員視点では想定が困難だった多方面での「遠隔講義の長所」が発掘されたこと、VODアクセス統計の分析から、勉学時刻の配分の最適化、YouTubeビデオの早回し利用の常態化、部分視聴の系統的な傾向性を明らかにした。加えて、ブレンディッドラーニング視点を含めた対面・遠隔講義の統合的教育方法の探究の必要性について報告があった。

A-19 留学生の非語学系教員による作文能力向上支援のための授業実践
城西短期大学   藤本 孝一郎

 日本語能力の低い留学生の日本語作文能力には日本語能力試験の合格水準は必ずしも反映されていない点に着目し、日文作成能力向上を支援する授業実践として、WebClassでのチャットシステムを活用し、各人の作文の投稿や校正過程を可視化する方法について検討した。校正過程の一覧と参加者の共有は、一種の協働学修が形成され、指導側、履修者双方にメリットをもたらすことが確認された。加えて、LMS活用の過程で、留学生のための日文作成支援方法について貴重な知見を得ることができた旨の報告があった。

Bグループ

B-1 クラウドベースの脳科学入門演習における15分活動積上による自律的能動的学修の促進
武蔵野大学   中村 太戯留

 脳科学入門演習の授業改善の一環として、学生の自律的能動的学修を促進するために、クラウドベースの学修を管理するシステムを活用し、比較を有する問い掛けによる調べ学修、課題内容に関する仲間との対話、課題の手直し、まとめ学修、そして活動や評価の積み上げを併用した授業を実施した取組みに関して報告された。受講生にアンケート調査を実施した結果、これらは高く評価され、有用性が示唆される旨の報告があった。

B-2 アクティブ・ラーニング実現のためのオンライン授業における教師の協働
國學院大學   加納 なおみ

 アクティブ・ラーニングをベースとした共通教育科目を、授業内容に即した事前のFD研修の実施により、ZoomとGoogle Classroomを併用した同時双方向型オンライン授業に短期間で転換し、学期開始直後からオンラインでの協働学習推進を可能にした。日常的な情報共有とサポート体制が奏功し、次第にICT関連の問題解決能力が向上、教師間の協働、学生間の協働、ひいては教師と学生の協働が強化され、学習効果につながった旨の報告があった。

B-3

 発表中止

B-4 掲示板を利用した「振り返り」の可能性:見守り,客観視,自主性とメタ認知の関係から
大妻女子大学   中尾 桂子

 授業後に掲示板を利用して「振り返り」を記述するよう促す取組を行ったところ、自主的に掲示板を継続的に用いる学生が一定数おり、自らの学習の達成度と毎回の到達目標等を比較して自身の課題批評と知識の応用先に言及する記述が多数観察された。本研究により、掲示板は、自主性、客観視、見守りを意識させる環境となり得ること、掲示板での「振り返り」の記述がメタ認知の活性に影響する可能性を見出した旨の報告があった。

B-5 コロナウィルスの影響に伴う土木工学科水理学の教育について
日本大学   安田 陽一

 Web授業を行うに際し、学習意欲の向上、予習・復習の活性化、Web環境の違いがある中で学生の公平性の確保、客観的な成績評価が必要となった。水理学等の授業を対象に、学生のWeb環境の違いを考慮して、学部ポータルサイトの活用、オンライン授業およびオンデマンド授業を提供し、学生の受講環境の公平性を確保するとともに、客観的な成績評価が可能な減点システムを導入した。本取組みの結果、対面授業と概ね同等の教育効果が認められた旨の報告があった。

B-6 ICTを利用した教育システムにおける徒弟制度の導入による教育改善
東京都市大学   小林 志好

 問題解決能力の育成、既有知識の利用と概念化を目的として、材料力学の授業において徒弟制度に基づくグループディスカッションを実施した。ディスカッションでは、問題を解けない学生には分からない理由を語らせ、解けた学生にはどう改善すべきかを助言させ、成長のための学習方法や考え方の省察を促した。また、グループ間での報告を行い、解き方の違いを省察させ、改善方法を検討させた。授業アンケートから教育の質保証、学習目的の理解は達せられた旨の報告があった。

B-7 サーバーの落ちない遠隔授業方式の成功例〜100MBまで朝8時まで〜
工学院大学   蒲池 みゆき

 新型コロナ禍の中、本学では情報学部遠隔授業タスクフォースを設置し、学生の通信容量制限や世界的トラフィック増大の課題を踏まえた上で全科目遠隔授業化の指針を定め実施した。これらの課題に備えるため、ファイル共有用のGoogle Suite for Educationを履修管理用LMSであるCoursePowerにリンクし、さらに、データダイエット、接続時間のタイムシフト、教員・学生へのマニュアル配布、説明会開催、授業サポート体制等を徹底した。現時点までに大きなトラブルはなく成功した旨の報告があった。

B-8  基礎化学実験のLMSを活用したオンライン化の試み
明治大学   永井 義隆

 基礎化学実験のオンライン授業において、大学LMSであるOh-o! Meijiシステムとビデオ会議システムを併用し対面授業に近いオンライン実験を企画実施した。オンライン実験教材の作成、オンタイムを意識した授業システムの構築、ビデオ会議システムによる授業運用、課題設定の工夫、学生へのフィードバックと事後学習がその内容となる。授業アンケートでは満足度は対面同様に高く、対面に準じた実験ができたといえる。また、事前事後学習時間は対面に比べ長くなった旨の報告があった。

B-9 リアルタイム・メンタリング式e-ラーニングによるプログラミング教育
神奈川大学   桑原 恒夫

 本研究はプログラミング教育において時間的労力的に負担となる学習者の理解状況に応じた個別指導(メンタリング)を、e-ラーニングシステム等による改善についてである。C言語の講義科目・演習科目において、空欄補充式のe-ラーニングシステム、及びソースコードと実行結果の管理システムを活用し、誤答やソースコードの問題点に対するコメントやアドバイスを行い、学習者へのリアルタイムなメンタリングを実現した。これにより、両科目ともに高い合格率を達成した旨の報告があった。

B-10 初年次教育におけるeポートフォリオ「今週の活動とトップニュース」の活用と初期成果
崇城大学   藤本 元啓

 初年次教育の一環としてeポートフォリオ「今週の活動とトップニュース」を立ち上げた。その目的は、自己管理、社会とキャリアへの関心、学修意欲と自学自習の促進、文章作成能力の向上、目標達成PDCAサイクルの習慣化等の誘発を図ることにある。授業アンケートでは、自己管理能力、社会動静への関心度、自学自習等の項目につき、到達度と満足度が全て80%を超えた。また、自学自習時間は以前に比して増加し、PDCAサイクルを体得しつつある旨の報告があった。

B-11 オンライン見学者も参加した、複数授業担当者によるオンライン授業の意義
京都工芸繊維大学   筒井 洋一

 Student Assistantを授業運営の主体として学生と外部参加者を含めた協働空間を構築し、授業を閉鎖空間から社会に開いてゆく試みを初年次科目「リーダーシップ基礎1」のオンライン授業に適用した。オンラインの特性を活かすことで学生の学習意欲向上とともに面識のない新入生同士による効果的なグループワークが実現し、併せて学外参加者が討議を傾聴して発する問いかけや助言によって学生の学びが深まった旨の報告があった。

B-12 小論文作成過程のCloud共有と双方向遠隔授業システムによる個別学修の展開
大阪女学院大学   小松 泰信

 タブレットを活用した教員、図書館司書、学生サポーターのチームティーチングによる必修科目「情報の理解と活用」等での小論文作成のためのPBLをビデオ会議システムとLMSとを組み合わせてオンライン化した。個々の学生の小論文のアウトラインや書誌情報等を、教員、図書館司書および学生サポーターが共有することで、学生が進める論文の作成過程に則して学生個別の問題に対応した支援が実施できた旨の報告があった。

B-13 数理基礎科目のビデオ配信による学生の学習活動の深化と教育効果の評価
金沢工業大学   西 誠

 初年時数理基礎教育課程の科目において6名の教員の協力を得て教材ビデオを学生に配信した。合計で9万回以上のコンテンツ視聴があり、学生へのアンケートではビデオを視聴した学生の9割以上から効果があったとの回答を得た。また、ビデオ配信を実施したクラスでは配信しなかったクラスと比べて期末試験の平均点および総合成績が高い傾向があり、さらにビデオ視聴回数が多い学生ほど得点が高い傾向を認めた旨の報告があった。

B-14 緊急事態宣言下におけるICTを活用した双方向型オンライン授業への取り組みについて
大阪夕陽丘学園短期大学   治京 玉記

 従来からのLMSに加えて外部プラットフォーム(YouTube・Googleフォーム)を連携させ、新たに実施したライブ配信と従来からのオンデマンド教材配信に双方向通信機能を付加したオンライン授業を、前期開講科目の約8割において実施した。実施にあたっては担当教員への講習会への実施や配信用スタジオの整備を行った。生化学の授業を例にあげると、オンライン授業では前年度の対面授業とほぼ同等の理解度を示した旨の報告があった。

B-15 ICTを活用した物理化学の反転授業による学習効果の大幅改善
崇城大学   宮本 秀一

 薬学で重要かつ必須であるが学生があまり好まないとされる物理化学の学習を2015年からアクティブラーニングに変容させたが、授業アンケートでは、授業満足度や内容理解度の評価が低かった。そこで、アンケート結果に基づいて授業項目・題材の精選やグループ学習方略の改善を積み重ねた。その結果、授業満足度や内容理解度が向上し、CBT模擬試験においても物理化学に関係する設問の成績が良好であった旨の報告があった。

B-16 実習系科目における「高次技能習得型」反転授業の成果と課題
九州産業大学   緒方 泉

 実技系科目における反転学習において、受講生の「つまずき」克服を目的とした教育改善を行った。事前の映像教材視聴により自身のつまずき箇所を理解し、それを対面活動で確認すると共に克服へのチャレンジを行う。さらに対面活動後の反復トレーニングによってつまずき箇所の軽減、克服が可能になる。この活動の流れは、内化(知識獲得など)と外化(表出活動など)の往還と説明することができる旨の報告があった。

B-17 クラウドを活用したシームレスなサポート組織によるオンライン授業運営体制の構築
筑波学院大学   松岡 東香

 小規模な大学でオンライン授業への対応を行うため、サポートの即時実施と業務の負荷分散を両立するサポート組織を構築した。システムは、受信、分析・検証、回答・対応の3つのフェーズに分けた。受信フェーズは最も知見を有する3名の教職員が担当し、速やかな問題解消を図った。一方、分析・検証フェーズでは担当者を特定せず、責任も課さないシームレスな形で協力者を募り、特定の担当者への負荷集中をある程度回避できた旨の報告があった。

B-18 大規模授業における学生の主体性を引き出すコミュニケーションシステムの構築と評価
公立大学法人長岡造形大学   福本 塁

 学生の主体性を引き出すため、教員−学生間および学生−学生間のコミュニケーションを促し、記録・可視化・フィードバックを自動化するシステムをクラウドサービスを組み合わせて構築した。例えば、学生のフィードバックシートを形態素解析し、共起ネットワーク図を自動生成するといったことができる。これにより受講者の自己効力感の向上、最終課題の質向上、授業後の社会問題への行動の変容などの効果が見られた旨の報告があった。

B-19 医療系学部における数理・データサイエンス教育の実践と教育改善効果の検証
北海道医療大学   二瓶 裕之

 医療系学部における数理・データサイエンスの基盤教育に関して教育改善を行った。学修への関心を高めるため、演習で使うデータとして健康や医療に関わる実社会のデータを使用した。また、解の定まらないような課題を設定し、協働学修によって学生どうしが議論をしながら取組むようにした。これにより、達成感の向上、試験において要求や洞察の場面で必要な力を評価する問題の得点率の向上などの効果が見られた旨の報告があった。


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】