巻頭言

中期計画R2030:「挑戦をもっと自由に」
×「Futurize. きみの意志が、未来。」

仲谷 善雄(立命館大学学長)

 大学は社会とは切り離せない存在である。平和、健康、気候、ダイバーシティ、エネルギーなど人類に共通する持続可能性に関する社会課題に対し、大学はそれらの解決に積極的に貢献する存在であるべきだと考える。その根底にあるのは、立命館の建学の精神「自由と清新」である。自由な発想で、普遍的な価値の創造と人類的諸課題の解明に邁進するとともに、広く内外の協力と支援を得ながらそれらの課題の解決に取り組んで行く、そのような存在でありたいと考えている。
 学園として、2018年に学園ビジョンR2030を策定し、ビジョンワードとして「挑戦をもっと自由に」を発表した。この先10年は、いままで以上に変化が激しく、予測困難で、正解のない世界となっていると思われる。そんな時代に必要とされるのは、自らの内にある固定観念にとらわれることなく、むしろそれを疑い、アンコンシャスバイアスを解き放ち、未来のあるべき姿を創造していくという「未来への意志」を持つことである。そのために、「Futurize. きみの意志が、未来。」というタグラインを同時に発表した。斬新なアイデアは多様性に富んだ環境から生まれる。ダイバーシティこそ、「自由と清新」を実現する源泉であると言っても過言ではない。一人ひとりの個性や価値観が尊重され、多様な挑戦が混ざり合うことで、これまでにない新しい価値が生み出されるのだと信じている。学生の半数が近畿圏外の出身であることも、2,600名を超える外国人留学生が学んでいることも、ダイバーシティに富んだ環境を整備する取組みの結果として実現したものである。2016年度から文部科学省の補助事業に採択されてダイバーシティ&インクルージョンに積極的に取り組んできたのも、学園構成員の一人ひとりが「自分のありのままでいられる」ダイバーシティにあふれるキャンパスを創るという姿勢の現れである。
 学生に対して「挑戦をもっと自由に」というからには、学園や大学が挑戦を続ける存在でなければならない。その姿勢を示し続けることが大切である。その姿勢を表すものが大学としてのR2030チャレンジデザインである。コロナ禍の2020年度に策定し、アフターコロナを見据えて、2030年に目指すべき大学の姿として、「新たな価値を創造する次世代研究大学」と、それによって困難な社会課題の解決を目指す「イノベーション・創発性人材を生み出す大学」を掲げている。
 研究教育機関である大学において、高度な教育は高度な研究に支えられて初めて実現する。世界の行く末を照らすのは「研究力」であり、大学の根源的役割がそこにある。本学は京都・大阪・滋賀の4キャンパスに、16学部、21大学院・研究科、6研究機構の下に47研究所・研究センターを擁し、文部科学省の科研費の採択金額と件数で私大3位という高度な研究力を有する。この研究力をさらに高めるための取組みを進めている。
 2024年4月には映像学部・研究科と情報理工学部・研究科を大阪いばらきキャンパスへ移転し、デジタルテクノロジーや感性、創造性を共通軸として連携することで分野を超えた教育・研究の新たな価値を創造し発信して行く。また、世界中の研究機関や研究者と連携して知を磨き上げ、新たな社会共生価値を創造するリーダーとなる研究者を育成するためのRARA(立命館先進研究アカデミー)構想を立ち上げ、中核人材のRARAフェロー、次世代人材のRARAアソシエイトフェロー、優れた大学院生のRARA学生フェローを採択し、個別最適な研究支援を行う。このような人材が築く国際的で多様な産学官連携ネットワークに学園の研究者や学生が参加することで、学園全体の研究力、探究力を引き上げて行きたい。
 不確実な時代だからこそ、自由な挑戦が未来を切り拓いて行く。そう信じて進んで行きたい。


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