第8回産学連携人材ニーズ交流会開催概要報告

T.開催日時

平成29年3月3日(金)13:30〜17:00 人材ニーズ交流
                               17:15〜19:00 情報交流会

U.開催場所

ベルサール西新宿:東京都新宿区西新宿4-15-3 住友不動産西新宿ビル 3号館

V.参加申込者

大学関係者 65 大学 94名

企業関係者 18 企業 35名

                        計  129名

W.開催趣旨

 IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新は、従来にないスピードとインパクトで進行しており、これまで実現不可能とされていた価値の創造や社会の変革が始まっています。このような社会の変化に大学教育は応えられているでしょうか。そこで、今回はこのような社会に対応する大学教育の在り方を検討すべく、さまざまな領域から多様な情報や考えを組み合わせ、新しい視点を提案し、挑戦・行動できる構想力と実践力の育成に向けた教育改善を産学連携で探求する場にしたいと考えております。

X.プログラム

1.開会挨拶

 向殿 政男 氏 (公益社団法人 私立大学情報教育協会会長)

2.情報提供
(1)オープン化が進む時代の「知」の役割 〜これからの大学教育に求められるもの〜

 藤田 喜久雄 氏(大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授)

 オープン化が進む時代に「知」の役割を担う大学教育の役割としては、正解が一つでない問題に対応できる能力の育成が必要になる。社会の価値や人々が何を求めているのか、多面的に問題を捉え、解決策を探求できる人材の育成には、複数の領域にまたがる課題を統合的に考える力を培う教育が必要になる。大阪大学「領域イノベーション博士課程プログラム」では、総合科目「課題解決プロジェクト」を通じて、価値の創り方を培う教育に取り組んでいることが紹介された。また、個別授業科目を横断的に活用し、講義・演習・実験・プロジェクトを連携させて、受動的な学修活動を能動的な学修活動(アクティブ・ラーニング)に転換していくことが必要であることが強調された。

    情報提供資料

(2)分野の枠を越えた知のイノベーション教育への取組み

 中澤 仁 氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)

 慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)では、現代社会の新しい状況を的確に理解し、解決策を考察できる広い視野と得意領域・行動力を併せ持った人材の育成に向けて、分野の枠を越えた知のイノベーション教育に取組んでいることが紹介された。そのために、1年生から学部を越えて履修が可能な研究会、いわゆるゼミに参加させて刺激を与え、自ら学びとる教育プログラムを導入し、問題発見・問題解決に取組ませる中で学外での自主研究・体験、学会発表などを経験させることで効果をあげている。反面、早くから社会に興味・関心を抱くことから、学内に残って研究する学生が少なく大学院の進学率が低調であることと、在学中に自らの興味を見つけられない学生の存在とその対応が課題となっている。

    情報提供資料

3.課題提起

 大学教育での構想力の育成について(情報専門教育委員会)
 大原 茂之 氏(公益社団法人 私立大学情報教育協会情報専門教育分科会主査)
 高田 哲雄 氏(公益社団法人 私立大学情報教育協会情報専門教育分科会委員)

 様々な領域でICTを活用してイノベーションに関与できる学修の仕組み、教育内容・方法を産学連携で考えるため、「構想力・問題解決力を目指した分野横断によるオープンイノベーション型のPBL授業のモデル」について、異分野の学生、関係教員、社会の有識者などと連携する分野を横断したPBL授業の仕組みについて紹介が行われた。具体的には、1、2年次に客観的観察、因果関係整理、仮説推論、分析・検証の思考プロセスを体験させ、3年次以降は実際のテーマに取組ませて問題解決を構想し、企業・地域社会からの助言・評価を踏まえて事業計画書を作成させる。学修成果の評価方法としては、ハッカソン等の社会的評価、クラウド・ファンディングなどのビジネス評価が重要である。その授業イメージとして、「社会・経済・経営・環境などを複合的な観点から関連付け、人々の生活を豊かにする情報通信系教育のモデル」、情報通信・コンテンツサービスのシステムを実現する制御プログラム、データマイニング(情報抽出)機械学習(自動プログラミング)などのソフトウェア開発教育のモデル」、「Webデザイン、モバイルアプリ、バーチャルリアリティ、ゲームなどのコンテンツ・サービス系教育のモデル」について、具体的な内容の紹介と提案が行われた。

    課題提起資料

4.全体討議

今後のICT活用人材の教育を考える

 情報提供及び課題提起を踏まえて、情報系人材教育の方向性、分野横断によるオープンイノベーション型のPBL授業のモデル授業モデルについて以下のような意見交換を行った。

  1. @ 分野連携教育が必要なことは理解できるが、大学教育として取組んでいる大学は少ないと思われる。提案では、正規の授業で取り扱うことが難しいことから、ネットなどで課外の授業として学生に自主的に参加させる方法を考えているが、学生からは時間外学修はスケジュール調整などが困難なため、授業時間内で実施できるよう考えて欲しいとの意見があった。また、授業ではプログラミング活用する機会がないので、「生活を豊かにする情報通信系教育のモデル」は多分野の学生と協働して取組んでみたい。
  2. A 私情協の分野別委員会では、自動運転自動車の事故を取り巻く法的な諸問題の解決に法律分野だけでは対応が困難なことから、経済学・工学・心理学などの多分野の知見を集めて考察する授業の必要性が検討されている。また、人口知能(AI)が仕訳・簿記などを処理できる時代の会計教育の在り方として、従来の技術的な教育から、組織の成長を支援する多面的な情報を組み合わせ活用する会計教育への転換が検討されている。
  3. B 社会の潮流を考えると、異分野の学生、関係教員、社会の有識者などと連携する分野横断授業への転換は必要だが、理解が進んでいない。縦割りの学部教育ではなく、学士力を実現するための学位プログラムを大学として一体的に考える時期にきていること、その原動力・原点は教員一人ひとりの意識改革であることが確認された。

5.会場の風景

 本年度の「大学教員の企業現場研修」及び「社会スタディ」の実施状況を報告し、参加者からの高い評価を受けていることから今後も継続・充実・拡大していくことが報告された。

話題提供
全体討議

今後の事業や委員会活動に
反映させていただきますので、
ご意見ご要望をお寄せ下さい。

私情協ホーム