社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第1回会計学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成16年4月10日(土)午後2時から午後4時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:岸田委員長、椎名、黒葛、木本、金川委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1.会計学教材・素材データベースについて

(1) 教材内容の確認

【会計情報システム】

前回の委員会では、金川委員よりPowerPointを動画ファイルに変換した会計情報システムの概要に関する教材を紹介いただいたが、今回は、会計情報システム大項目「会計情報システムの運用・管理」の中項目「運用」、大項目「販売情報システム」に該当する教材を紹介いただいた。

具体的な内容は、岸田委員長より提供いただいた実在の受注データを改変したExcelファイルと、授業での活用方法を手引きしたPowerPointファイルである。

受注データは、6ヶ月間の取引3300件以上が登録され、商品コードも400件以上に及ぶものであり、店名や商品名、住所、電話番号は全て金川委員の手で改変されている。

PowerPointでは、授業活用例として、Excelの受注データを素材としてAccessで構築されたデータベースの説明と、演習のための課題例が提示されている。データベースの説明では、各台帳(受注台帳メイン、受注台帳明細、得意先台帳、従業員台帳、商品台帳)のコード体系が説明され、課題例としては、受注データをもとに実際にデータベース構築作業が例示されている。
 
  以上の説明に対して、下記のような質疑応答がなされた。

Q1. いきなりAccessから入るのではなく、Excelによるデータベース構築方法も説明した方が良いのではないか。

A1.先生によっては、Accessから導入する人やExcelから導入する人など、様々なケースが想定可能であるので、活用方法は各教員が考えれば良いのではないか。

Q2. Excelをデータベース的に取り扱う方法を学習してから、各台帳のリレーションに入った方が、学生の理解度は向上するのではないか。例えばExcelのピポットテーブルから各データの分類ごとの個数を引き出し、データ構造を理解させ、さらに同様のことをAccessの操作でも可能であるということを教えるということで、リレーショナルデータベースの本質を学習できると思われる。

A2.確かにそのような学習方法も可能であるが、今回は素材の提供が目的であり、ここでは活用事例の一例を提示したに過ぎない。活用方法はあくまでもこのデータを実際に授業で用いる教員が考案すればよいのではないか。ある程度の活用方法を提示することは必要だが、詳しく教えることは教員個人のノウハウに関わる問題である。

以上のことから、受注データについてはあくまでも一つの素材として提供することとし、その活用方法の例示は最小限に留めることとした。また、岸田委員長より、必要に応じて実在する企業の仕訳データの提供も可能であることが付言された。

【管理会計】

岸田委員長より、管理会計の教材に関する中間報告がなされた。項目分類は前回の委員会で固まり、具体的な素材としては企業ケースを中心としたコンテンツを収集することとしたが、まだ公開できるデータは存在していない。現在白川委員とともに、データの収集及び作成を行っている。現在考案しているのは、岸田委員長が大学院の授業で用いている教材を学部生用に噛み砕いたコンテンツである。また、Web上で公開されている企業のIR情報などもうまく取り入れたい。

(2) データベースの構造について
事務局より、データベースのページ案についてプレゼンテーションがなされた。

このページはMovabletypeを用いて作成され、通常のリンク集作成を目的として作成されたプログラムではないが、画像のアップロードやテキストによる説明文の書き込み、分類別に関連情報を提示することが可能である。まだ試験的に運用しているため、レイアウト等は追って改善していく旨が説明された。

 
2.その他

事務局より、教育の産学連携に関する下記の旨の説明がなされた。

会計学などの実務教育には、現場の臨場感が伝わる授業内容、―MOTやワークショップ型授業―によって、学生の理解度や学習意欲の向上させることが必要である。会計学分野でも、今回金川委員より報告のあったような、企業の生データに関する素材・教材環境の整備や、実験授業を展開することが可能ではないか。

本年度の理事長学長会議では、産学連携による教育の質向上をテーマとし、経済同友会等産業界や文部科学省より関係者を招聘し、討議することにしている。

また、本年1月には文部科学大臣に対しても、教育の産学連携積極化のための申し入れを行った。具体的には、教育支援の受け入れ可能な企業のホームページに、アイコンを設け、コンテンツ提供支援、インターンシップ、インターネット授業支援、人材派遣、共同研究等の連携可能性を表示いただくことを要請した。

会計データは企業の中枢データであるため、提供いただくことは困難かもしれないが、何らかの形で産業界との連携方法を本委員会としても検討いただきたい。

以上を踏まえ、今後の活動として、各分野の教材・素材が委員各位よりそれぞれ提出されてきたことを踏まえ、実際にそれらを活用した授業の実験モデルを考案していくこととした。また、次回委員会では、日本会計研究学会の自由論題発表に、本委員会の取り組みを応募したことから、発表内容の確認及び意識合わせを行うこととした。