社団法人私立大学情報教育協会

平成17年度第4回会計学教育 IT 活用研究委員会議事概要

 

T.日時:平成17年10月19日(水)より午後2時より午後4時まで

U.場所:関西大学千里山キャンパス IT センター 4 階多目的会議室

V.出席者:岸田委員長、椎名副委員長、高松、黒葛、阿部、金川各委員
        井端事務局長、木田

W.検討事項

•  会計学教育のコア・カリキュラムについて

•  会計学入門

椎名副委員長、阿部委員より会計学入門のコア・カリキュラム案について報告をいただいた。

 前回提出いただいた案に対して、委員より内容が財務会計に偏っているとの指摘があったことを受けて、管理会計部門として(8)経営管理のための会計と(9)原価計算、会計の現代的潮流を踏まえ、(10)国際会計と(11)税務会計、また(12)その他として公会計、環境会計など新領域が付加された。さらに、ここでは項目として取り上げなかった監査論を加えるべきか、検討事項として挙げられる。なお、ここでは、会計情報の受け手にとって必要な会計知識を系統的に集約したことから、想定する学習者のレベルは、会計ビッグバン以降会計に興味を抱いた者、商学部以外の学生である。

 以上の報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 財務会計に該当する項目については、高松委員の授業モデルと重複しないよう擦り合わせが必要である。
  • 報告書で授業モデルとして紹介する場合には、他の分野のように授業のある任意の1回の授業を紹介する訳にはいかず、会計学入門であることを特徴付けるための方策が必要である。例えば、座学型の講義で概念理解を促進させるために実務家の意見を取り入れるような授業モデルを提案いただきたい。
  • 内容的に財務会計と重複することは構わないが、「会計学入門」では初学者の動機を高めるように、テクニカルタームはあまり用いずに社会的制度としての会計の重要性を理解させることを目指すべきである。それ故に、監査論も含めるべきである。
  • カネボウの粉飾決算事件のように、会計士が不正に加担した事件が社会的問題として注目を浴びていることから、会計倫理についても触れるべきではないか。

以上の意見を踏まえ、会計学入門には「監査論」、「会計倫理」を項目として加えることにした。

•  財務会計

財務会計のコア・カリキュラム案については、前回、前々回提出いただいた案に対して異論が無かったことを受け、今回は具体的な IT を活用した授業モデルについて意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 一般の教員から見て目新しいような授業モデルを考案することは難しい。そのため、教材レベルで工夫を施して提供することの方が、インパクトを与えるのではないか。
  • 会計学入門の内容と比べると、高松委員による財務会計のコア・カリキュラム案のレベルは高度であり、そのまま接続させることは難しい。本委員会でコア・カリキュラムを検討する場合、それぞれの科目の連関性を意識すべきなのか、独立した科目として取り扱うべきか議論する必要があるのではないか。

(3)会計情報システム

 金川委員より、会計情報システムのコア・カリキュラム案について報告いただいた。前回の委員会にて、授業目標と具体的な IT 活用授業モデルを考案することが課題として挙げられたことを受けて、授業目標を考案する上で、米国のテキストを参照に会計情報システムの定義、特徴を再整理された。その上で、コア・カリキュラムとそれに基づくシラバスを考案いただいた。詳細は、配布資料を参照されたい。

 授業モデルについては、 PowePoint による説明をベースに、岸田委員長より提供のあった excel データを access に加工し、最終的には経営管理に役立つ情報を、クエリ、レポートとして提出する。

 以上の説明に対して意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • この授業では、 excel と access を使えることが前提であるが、大学の情報処理教育によって、習熟度はまちまちであることから、他の大学でこの授業を実施することは難しいのではないか。
  • データベース構築に向けて用いるソフトウェアに関して言えば、 access は必ずしも大学の PC にインストールされているとは限らない。例えば Java Script であれば、テキストエディターにプログラムを書き Web に読み込ませることで起動することが可能であり、汎用性が高い。
  • access はクエリの作成が難しいだけで、それさえも2回程度の授業で学生は使用方法をマスターできる。教員はデータベースの構築と聞くと構えてしまいがちであるが、却って学生の方が柔軟に対応できるのではないか。
  • シラバス例の3回〜5回目の授業では、連結財務諸表を取り扱っているが、連結と書いてしまうと誤解を招く可能性がある。それ故、会計情報の読み方などの表現に変更した方が適切ではないか。

 以上の意見を踏まえ、シラバス例の3回〜5回目の授業テーマについて、表現に変更を加えていただくことにした。

(4)管理会計

 岸田委員長より、実際の管理会計の授業で用いている講義資料と会計学講義ノートについて説明があった。

管理会計では、学生の興味を惹くために、具体的な事例( ex. Make Or Buy 問題、不採算部門からの徹底など)に基づき授業を行っている。各単元には練習問題もあるが、特に損益計算書の計算は、サーバー上のプログラムによって数値をパラメータに変換することが可能となり、多様な問題を出題することができる。このような練習問題を通じて管理会計の基本的な考え方が身に付けた上で、期末試験では総合問題を課す。報告書では、これまで作成してきた管理会計コア・カリキュラムと刷り合わせした上で、適当なモデルを選出したい。

以上の説明について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 具体的な IT 活用方法としては、どのようなものを想定しているか。
  • 現在考えているのは、計算結果と論述を PC 上で入力した上で、自動採点するシステムの活用を検討している。先述したように、制約条件を自由に変えることができるので、パターン認識させるために適している。
  • •教育効果を高めるために、現実感覚を持たせた授業を行う必要がある。企業現場の意思決定の場面をロールプレイした映像を見せるような IT 活用方法は検討できないか。
  • 管理会計は数量的な手法を多様することから、例えば簿記で手形が見たことがないということとは別次元の話である。特強いて言うならば、企業の経営層の映像を見せることぐらいしかない。
最後に、事務局より報告書の授業モデルについて、4分野それぞれ異なる IT 活用方法を紹介いただきたいとの説明がなされた。具体的には、「会計学入門」では実務家の協力を得る授業モデル、「財務会計」では多様な教材を活用した授業モデル、「会計情報システム」では意思決定に必要な会計情報をアウトプットするための授業モデル、「管理会計」では現場の現実感覚を持たせるような工夫を凝らした授業モデルの提案がなされた。