社団法人私立大学情報教育協会
平成19年度第4回会計学教育FD/IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成19年11月24日(土)午前10時30分から12時30分まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:岸田委員長、椎名副委員長、阿部、木本、河崎、金川、福浦各委員、井端事務局長、木田
W.議事進行

 議事に先立ち、井端事務局長より文部科学省中央教育審議会大学分科会制度・教育部会学士課程教育の在り方に関する小委員会の審議経過報告「学士課程教育の再構築に向けて」について説明がなされた。主な特徴として、各専攻分野を通じた学習成果に関する参考指針として「学士力」が掲げられた点にある。学士力は大きく「知識・理解」、「汎用的技能」、「態度・志向性」、「統合的な学習経験と創造的思考力」に分類され、各々の分類につきさらに個別の能力が示されている。
例として「汎用的技能」では、コミュニケーションスキル、数量的スキル、情報リテラシー、論理的思考力、問題解決力が掲げられているが、それらの定義が十全でないため、私情協としてはパブリックコメントを提出して定義の改めることを求めていく。

1.会計学教育における産学連携授業に向けて

 岸田委員長、椎名副委員長、井端事務局長より、産学連携実現に向けたこれまでの活動経緯について説明がなされた。要旨は以下の通り。

<岸田委員長>

  • これまで教材開発を得るために各企業との交渉を重ねてきたが、企業にとって財務情報を提供することは守秘義務にも抵触するため非常に消極的であることが判明した。
  • 教材作成よりも、大学の会計学教育の内容が社会的に通用するのか、また企業側が人材に求める会計的素養を企業側から聞き出すよう方向転換したい。そのための論点整理を行うのが先決である。

<椎名副委員長>

  • 3月に開催する研究集会に企業の方をお招きして人脈を作ることが第一歩ではないか。これまでいくつかの企業とコンタクトを取った感想として、私情協の趣意のレベルが高いため、退いてしまっている感触がある。
  • 文部科学省と経済産業省が協同して人材育成のためのプロジェクトを開始した。このような波に乗れると良い。

<井端事務局長>

  • 先の話にあったように、企業側は、総論は賛成しつつも各論になると尻込みしている感がある。当初は教材の提供や教育プログラムの共同開発を求めてきたが、企業の理解が十分得られないままでは実現不可能である。まずは企業の方々と一度対面で会議を行い、相互理解を得ることが必要である。
  • 先生方の考える教育目標と企業が人材に求める能力とは必ずしも一致しない。そのギャップを埋めるためにも、企業との協議を行い、教育内容と企業の求めるスキルを刷り合わせしていく必要がある。

 以上の説明を踏まえて意見交換したところ、以下の旨の意見があった。

  • 企業内の会計教育プログラムについての話を聞けないだろうか(OJTも含めて)。例えば教育プログラムとして社内独自のものを作っているのかあるいは市販のものを活用しているか、社内で作っているとすれば大学の教育内容とはどのように違うのか、こういった話題であれば企業内機密に抵触することもないしだろう。
  • ある特定企業の会計教育プログラムにこだわるのではなく、それを一般化した上で大学の会計教育プログラムと比較しなければならない。

2.研究集会について

 3月に開催を予定している研究集会のプログラム案について、事務局より資料の準備がなされ、それに基づき意見交換をした。プログラム案は以下の通り。

13:00〜(1)開会挨拶(10分)
      ※ 委員長担当
13:10〜(2)特別講演(60分)
※ 講演テーマ例:会計制度変革期の中の実務の対応―授業で使える実務の話)
※ 講演者未定。現在株式会社リコーと交渉中。リコーに断れた場合には、マイクロソフト、伊藤忠テクノソリューションズ、経済同友会などにコンタクトを取る予定。
※ 通常のoneway式の講演形式ではなく、委員との対談形式にすることも考慮する。
→ その場合の対談者を誰が担当するか要検討。
14:10〜(3)会計学研究委員会自体の報告二件(30分×3)
@「大学教育への提言―ファカルティ・デベロップメントとIT活用2006年版」会計マインド育成のためのコアカリキュラム等の委員会報告(30分)
Aシミュレーシュンを利用した具体的授業の紹介
(A)岸田委員長モデルの紹介(30分)
(B)金川先生モデルの紹介(30分)  
15:40〜(4)コーヒーブレーク(15分)
15:55〜(5)全体討議(50分)
16:45  終了
 

なお、主な意見は以下の通り。

  • まずは研究集会の開催テーマを考案することが必要である。IT活用だけではインパクトが弱い。むしろ、先程話題に上ったような、会計学教育における学士力とは何なのか、到達のためには産学連携が必要であるとか、そのような方向性を持たせた方が良い。
  • これまで委員会では、初年次教育を意識した会計学総論について検討を行い、一つの成果として昨年度発刊した報告書に会計学総論のコアカリキュラムを掲載した。これに対する企業の反応を確かめることも一つの目玉になるのではないか。
  • その場合には、シンポジウム形式で企業の方をパネラーとして迎え、委員会がコアカリキュラムに関する報告を行い、それに対する意見をパネラーから求めるのが良い。
  • 企業の方に60分講演いただくのは、講演者自身にとってもしんどいと思われる。ここは先にあったように、シンポジウム形式にした方が好ましい。
  • 全体討議では、先生方の抱える問題を解決するためには産学連携が必要であるが、産学連携実現のためには企業との情報交流や勉強会が必要であり、そのために企業の協力を募るとともに、勉強会への参加を委員会外の教員に呼びかけたい。
  • 全体的に時間を短縮した方が良い。

 以上の意見を踏まえ、次回委員会までに椎名副委員長にプログラムの叩き台を作成した。なお、会場は関西学院大学丸の内キャンパスの教室を借用することとなった。


  また、次回委員会では、マイクロソフト、伊藤忠テクノソリューションズの方をお招きし、研究集会でのパネラー参加及び産学連携のための情報交換を行うこととした。