社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第2回建築学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成16年7月26日(月)午後1時30分より午後3時30分まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:若井委員長、真下、眞鍋、安藤、渡辺、寺尾、横井各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1. 建築教育における社会連携の可能性について

事務局より、7月31日に開催される理事長学長等会議における「教育の社会支援についての提案」に関する概要が説明された。要旨は下記の通りである。
 
本提案は、大学教育に対する社会からの評価、とりわけ人材育成面での評価が厳しいことに鑑み、学生の意欲向上、教員の授業支援、及び社会人の授業参画による教育の質的保証に資するために考案されたものである。具体的には、政府、産業界、法曹界、医療界等より、@社会での現場情報・体験情報の紹介・説明、A知的情報の電子化と教育への利用実現、B実務経験者による授業の実現、C学習成果に対する専門家の助言・評価、Dインターンシップ、ワークショップ、調査実習の受け入れ、Ee-ラーニング等教育プログラムの共同開発を、主に情報技術を活用して実施・協力いただくことを目的としている。
また、社会から協力を求めるのみならず、大学から社会に対しても、出前授業やオーダーメード授業の実施等により、知識を還元することが望まれる。
私情協では、本提案に基づき、来年度から教育の社会支援に関する事業を開始する予定であり、今後は社会からの支援を得るために、文部科学省に対して政策提言するほか、経済各団体に対しても理解を得るよう努める。合わせて、支援依頼の方法や仲介機関の設置、支援内容・方法を研究する。
建築学は、特に社会と密接に関係する学問分野であることから、委員の方々からよりも具体的に希望される支援方法等お聞かせ願いたい。

そこで、委員各位より、建築学教育における産学連携の具体的内容について発言いただいた。

  • 地震災害や構造計算の失敗事例などを企業より提供いただき、データベース化することが望ましい。その場合には、企業名など特定できないよう匿名化する。学生は、授業で理論や計算式を教えても現実感覚を持ち難いので、現場で使用した事例を交えることにより動機付けを計ることが可能である。
  • 中学高校のカリキュラムは年々容易になっているが、一方で、実務界で要求される知識は不変的である。そこで、実務界から建築教育に求める最低レベルの知識・技能を提示いただき、大学のカリキュラムに反映していきたい。
  • 英語力補完のため、国際会議や学会の外国人による基調講演などをビデオ・ファイル化し、テーマ別にアーカイブ化されたものが欲しい。
  • 現存する構造計算書は、経年変化により状態が劣化しているので、電子化することが望まれる。また、電子化された構造計算書をデータベース化すれば、公共団体に足を運ばずとも閲覧することが可能となり、効率的である。
  • 建築分野では、提案の@、B、Dは各大学で既に取り組まれていると思うが、必ずしもうまく機能しているとは限らない。@は、既にJIA(日本建築家協会)が大学向けに講師を派遣して出張授業を実施しているが、それをインターネットを通じて複数の大学が受講できればより望ましい。Dは、インターンシップを希望する学生は年々増加しているが、受け入れ先の殆どはOBの建築事務所であることから、大手建設会社にも門戸を開放して欲しい。Cも独自で学生作品をWeb上で公開している大学もあると思うが、専門家から評価を得るまでには至っていない。そのためには、フォーマットの統一化とデータベース化が求められる。
  • 教員個人のレベルで授業の録画・アーカイブ化に取り組まれている方もいるが、個人の力で撮影、電子化、コンテンツの配信を行うには限界もある。裾野を広げるためには、サポート体制や受け皿が必要である。
  • 建設会社の所有する建築物の画像・データ・資料を教育で使用するためには、一大学で要望しても効果がないので、私情協が母体となって複数大学が連携して交渉する必要があるのではないか。
  • 各大学とも学生のディプロマや卒業制作のデジタル化を行っていると思うが、他大学の学生の作品との比較を行うためには、フォーマットの統一化とデータベース化が必要である。
  • たとえ画像や図面を提供いただいても、著作権上の問題でWebにアップロードすることを拒否される可能性もあるが、教育目的に限り著作権フリーで使用可能な措置を認めていただきたい。

 以上、本日の意見を踏まえ、次回委員会では、建築教育における産学連携の機運を高めるため、委員会レベルで実施可能な連携方法を検討することとした。