社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第3回機械工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成17年7月28日(木)午後5時より午後7時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:曽我部委員長、角田、青木、田中、森沢、田辺各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1. 機械工学教育における産学連携による遠隔授業実験について

 17年11月14日に開催を予定している複数大学間による遠隔授業実験の、環境や講義内容に関して意見交換を行った。まず環境については、現在判明しているのは以下の通りである。

 上智大学・・・ネットワーク帯域100Mbps、テレビ会議システムなし
  神奈川工科大学・・・ネットワーク帯域10Mbps、テレビ会議システムなし

なお、今回の遠隔授業実験を実施するに際して、本協会の賛助会員である松下電器産業株式会社に技術協力を依頼したところ、承諾を得られたことに伴い、8月上旬に環境について私情協事務局−松下電器産業株式会社間にて打ち合わせを行うことが、事務局より報告された。
次に、田辺委員より、鉄道総合研究所との折衝状況について報告いただいた。要旨は下記の通りである。
現在当初予定していた研究者の方へ講師の依頼を行ったところ、内諾を得ることはできたが、研究所内をビデオカメラで撮影した前例がないことから、研究所で遠隔講義を実施することに難色を示していることから、現在継続して折衝を行っている。研究所内での実施に対して認可が下りない場合には、研究者の方を遠隔授業参加大学にお招きして、お話いただくことにしている。

この件について、「研究所での撮影許可が下りたとしても、授業を録画して後日教材として再利用することの認可を得ることは難しいのではないか」との質問がなされたが、田辺委員より、「研究所側が難色を示している一つの理由としても、まさにその点を挙げており、場合によっては国土交通省に申告する必要が生じるなど、手続き上の手間が多い。」との回答がなされた。さまた、研究所でお話いただいた方が、研究所内の設備・機器や新幹線の開発現場を生の状態で撮影することが可能となり、学生の学習意欲の向上を導くことができるとの意見もあり、他の委員からも賛同を得たため、引き続き田辺委員には研究所側と折衝いただくこととした。
次に、青木委員より、「現状では接続を予定していない日本大学、芝浦工業大学、法政大学も、大学内にテレビ会議システムが常設されていることから、今回の遠隔授業の同時参加、閲覧は可能ではないか」との提案がなされた。本件については、松下電器産業株式会社側と環境設定の可能性を打診することとした。また、参加校が確定次第、私情協より実験校選出の旨の文書を送付することとした。

2. 機械工学教育のコア・カリキュラムについて

角田委員より、機械工学のコア・カリキュラム案を提示いただいたくともに説明いただいた。要旨は以下の通りである。

本案は、前回提出いただいた案をもとに補充を図ったものである。具体的には、「専門基礎科学」、「専門基礎技術」、「専門数理基礎」、「その他」の4大項目に対してそれぞれ教育目標を付与したほか、大項目下の科目名称に対して具体的な授業内容を記した。さらに、前回の意見を踏まえて、「その他」下に科目名称として「知的財産」を追加された。なお、本案では、各科目名称に対して個別の到達目標を付与しなかったが、今後委員会での議論を踏まえて対応したい。

これを受けて、事務局より下記の旨の意見があった。

18年度に発刊を予定している報告書では、単にITを活用した教育方法を紹介するのみならず、教育効果の向上に寄与する授業モデルを紹介したいと考えている。教育効果を測定するための基準として、各分野別にコア・カリキュラムを意識しながら、科目別の教育目標・到達目標を考案することにしている。よって、今回提示いただいた案の各科目名称に対して、仔細な到達目標を付与いただきたい。
また、具体的な授業モデルは、今回実施を予定している遠隔授業実験のほかに、例えば教材データベースを活用した授業事例などが考えられる。また、その他に委員各位が取り組まれている授業があれば、紹介いただきたい。特に今回は、教育効果の検証についても踏み込みたいと考えているが、数量的な分析は時間的に難しいので、例えば極力学生アンケートを実施して、学生の生の声を集めていただきたい。

 以上の説明を踏まえて意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • Web上の教材の用途としては、@板書することの難しい図表などを画像として掲載することにより、直感的な理解を促進させること A演習問題などの掲載 B最新の応用技術を画像や動画を用いて紹介すること が考えられる。特にAの演習問題を反復することによって、実力を身に付けることができる。
  • 昨今の学生は自ら学習する気質がなく、受身のまま教員の支持を待つ傾向がある。学生が主体的に学習するような何らかの仕組みを考えなければならない。
  • e−Learningも同様なことが言える。教員がいつでもどこでも学べる環境を用意しても、学生にe-learningを用いた学習方法から教えないと付いてこない。Webの発達によって学習するためのリソースは日々増加しているが、学生はその環境に安心して、学ぶことへの飢餓感が欠如しているのではないか。
  • 学生には入学時から学ぶための姿勢を教え込む必要がある。特に推薦入試やAO試験に合格した学生は、入学までの約半年間何もしないために、授業に付いていくことができず脱落してしまう者が多い。そこで、入学までの半年間にe-Learningを用いて継続的に課題を解かせることによって、学力を維持することが可能となる。一般入試で進学する学生にも同様の対処が必要かもしれない。
  • 教育目標に関して言うと、機械工学の目標は、単純化すれば一つの製品を構築することである。そこで、従来のカリキュラムのような理論から応用への積み上げ形式ではなく、一つの製品を先に提示してどの部分でどの理論が応用されているかを俯瞰できるようなカリキュラム体系が、学生の学生意欲の向上のためにも必要ではないか。
  • 科目名称「プログラム・情報技術」は、情報技術という名称が入ると授業内容が判然としなくなるので、「プログラミング」に変更した方が良いのではないか。

以上を踏まえ、次回委員会では、角田委員の案を踏まえて、委員各位に各科目名称に対して教育目標を数行ずつ加筆いただくこととした。また、意見にあったように、製品指向型のカリキュラム体系を意識することとした。