社団法人私立大学情報教育協会
平成18年度第1回機械工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成18年5月10日(水)午後5時から午後7時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:曽我部委員長、角田、青木、田辺各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項
1.18年度発刊の報告書について
<ITを活用した授業モデルの事例紹介について>

 はじめに、田辺委員より「機械工学教育における産学連携」について資料に基づき報告がなされた。今回提出いただいた資料は、昨年11月に実施した4大学間遠隔授業について、「1.本授業の背景と目的」、「2.授業内容」、「3.授業評価」、「4.今後の課題」の4つの項目により、内容を取りまとめたものである。しかし、「3.授業評価」と「4.今後の課題」については記述が少ないことから、委員各位より意見を求めたところ、下記の旨の意見があった。

【授業評価】

  • 本来であれば他大学に出向いていかなければいけないところ、システムを活用することで時間的制約や物理的制約を解けることができた点を強調したほうが良い。
  • 1回の遠隔授業により学生の学力が向上したとは言えないが、むしろ他大学の研究内容に接することにより刺激を与えた、モチベーションの向上に繋がったことは授業効果として挙げるべきである。
  • 学生の質問内容が通常の講義ではありえないほど高度なものであったことから、通常の教室とは異なる緊張感を与えることができたと考えられるのではないか。
  • 講演いただいた篠崎氏と松本氏にも感想を聞いたほうが良い。

【今後の課題】

  • 機器やネットワーク環境など、ハードウェア的な問題点は様々ある。また、教員一人で準備することも不可能であることから、大学の支援体制が不可欠である。
  • 内容を盛りだくさんにしたために、予定時間を大幅に超えてしまった。今後実施する際にはテーマやポイントを絞った方がより充実した授業内容が期待できる。

次に、角田委員より「計算力学におけるIT活用例」について資料に基づき報告がなされた。今回提出いただいた資料は、通常講義とプログラミング実習のサイクルを、ポジション(「教員側」「学生側」)と時系列(「講義前」「講義中」「講義後」)により分類したうえで図示したものである。詳細は配布された資料を参照されたい。


角田委員の報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • ここで図示された授業サイクルでは、計算力学の授業であることが判然としない。そのため、計算力学の授業と特化しないで、授業評価や予習復習といったところにポイントを当てて、それぞれの授業モデルの特徴を明確化した方が良い。
  • 計算力学の授業で実施している授業収録及びビデオ配信は、現状では通常の対面授業だけを収録しているが、今後は上級レベルの講義と初級レベルの講義を別途撮影・配信する予定である。というのも、通常の対面授業では中級レベルの学生を想定した授業内容を展開しているが、学生の習熟度はバラバラであり、個別対応するゆとりもないことから、その対応策として講じたものである。
    → 習熟度別にコンテンツを用意する場合、初級レベルの学生が傷つかないような配慮が必要である。
  • BBSでは単に学生の質問に答えるだけではなく、逆に教員側から質問を投げかけたり情報発信したりすることで、向上心を喚起する工夫が必要ではないか。現状では実現していなくても、今後の課題として取り上げるべき。

以上を踏まえ角田委員には今回の意見を踏まえて文章化いただくとともに、事例のタイトルは「習熟度別オンデマンド授業の試み(仮)」と変更いただくことにした。

次に曽我部委員長より、「Javaによるアニメーションを活用した動力学授業」について資料に基づき説明がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。
なお、曽我部委員長の報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • アニメーション活用に関する学生の反応や理解度はどのように確認しているか。
    → 授業の合間に聞いているが、まとまった形では確認していない。中間試験後に改めて確認したいと思う。また、アニメーションを活用したクラスと活用しないクラス間での比較なども検討したい。さらに、アニメーションの他に計算の解法や数値的基礎知識を理解させるためのWebページも作成したので、その点も併せて紹介したい。

 最後に、青木委員よりプロジェクト型授業の事例について報告がなされた。今回報告いただいたのは、3年生のゼミで実施しているジュニアデザインの演習である。この演習では、軽量電動車の設計・製作を行っており、年に数回各種のコンペティションにも参加している。コンペティションに参加する目的は、そこで敗北することにより、学生に自らの勉強不足を実感させ、学習意欲を向上させることにある。
しかし、この演習ではIT活用の側面が弱いことから、青木委員には以前紹介いただいた、一年生を対象としたデジタルエンジニアリングの授業事例を報告書で紹介いただくことになった。なお、デジタルエンジニアリングではCATIAを使用しており、現在3年生以上の学生を対象としてCATIAの資格取得のための科目を開講していることの説明もなされた。
青木委員の説明について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 資格取得を強調すると、デジタルエンジニアリング教育の目標が誤解されてしまうのではないか、
    → CATIAは製図設計のためのツールに過ぎず、またCATIAを使いこなすには力学などの基礎科目を理解しておく必要がある。一年生を対象にデジタルエンジニアリング教育を行うのも、学生に自分達知識不足を認識させ、他の基礎科目や専門科目へのモチベーションを高めることにある。

 以上を踏まえ、次回委員会までに青木委員には草稿を提出いただくことにした。なお事例のタイトルについては、「設計教育を通した新しい教授法の施行」または「デジタルエンジニアリング教育を通した新しい教授法の施行」とすることになった。