社団法人私立大学情報教育協会
平成18年度第2回経営工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成18年6月5日(月)午後6時から午後8時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:渡辺委員長、越島、玉木、米内山、細野、

1.コアカリキュラムを意識した教育の到達目標

 玉木委員より配布された資料「経営工学人材のキャリアプラニング」について、渡辺委員長、玉木委員それぞれより下記の旨の説明がなされた。

渡辺委員長の説明

  • 先々週開催された経営工学会の理事会にて経過報告したところ、評価が高かった。
  • 今後は教育内容、教育方法の充実化を図り、報告書で掲載する。
  • この委員会では、学部卒修士卒を対象に報告する。
  • 教育工学会のテーマが、技術者のキャリアプランニングとなっている。関連して経営工学会からもこのプラニングに関する報告を行う予定である。

玉木委員の説明

  • 経営工学関連の既存の資格制度へのリンクとともに、新しい制度にも柔軟に対応するような教育内容を提起した。
  • 一大学でこのキャリアプランニングに基づくカリキュラムを設計することは難しいので、大学間、産業界とも連携して共同実施することを提起したい。

なお、本キャリアプランニングに基づき、報告書で文章化することが確認された。

2.教育現場での課題

中島委員より配布資料に基づき下記の旨の説明がなされた。
 
【ITに関連した課題】

  • 少人数クラスで演習しても、学生のPCスキル(word、excel、メール等)にばらつきがあり、授業進度にも影響を及ぼしてしまう。
      →ITスキルの基礎授業はないのか?
      →それも兼ねて、専門分野も教えながら授業を行っている。
  • 学生の問題発見能力育成のための工夫(学生が受身的に授業を受けているのが問題)。
  • 情報モラルの導入の必要性

 【経営工学に関連して】

  • 経営工学の明確な定義づけが必要(学生自身も経営工学が何なのか理解しにくい)。

【意見交換】

  • wordやexcelを知っていれば情報リテラシーとして認定していいのか。それは一企業のソフトに過ぎないからだからどうしたの、となる。本来はセキュリティの問題なども含めてしなければいけない話である。学生にとって必要なPCスキルと言った時に、word、excelがあると違和感を覚えてしまう。表計算ソフトを教えるのであれば、単に操作方法だけではなく、セルの概念など原理的なことも教える必要がある。
    →ここではwordexcelに限らずPCスキルのばらつきを大局的に捉えているので、同じような問題は感じる。やはり底辺に合わせて教えざるを得ないので、しょうがいない面もある。他の専門科目でボトムアップするしかないのでは。
    →これまでは大学入学以後にPCの好き嫌いが分かれていたが、いまや高校入学時点でPCスキルの好き嫌いが分かれてしまう。

次に、佐々木委員より配布資料ついて説明がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、佐々木委員の報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 写真投影法という社会学の分析方法があるが、学生にそれをやらせると、分析することができない。写真を撮って送信していながら、送信者と受信者が全く異なるものを受け取っている可能性もある。その結果、教員がpptで提示したものを単にイメージとして捉え、授業内容を理解していないことが危惧される。
  • テキスト作ってもほとんど写真になってしまう。学生はイメージの中の字であれば読もうとする。テレビ感覚で教えてもらうことを望んでいる。
  • 放送大学の授業作りはうまい。例えば数学のような抽象的な学問でも、イメージを多用してうまく論理的に説明しようとしている。
  • 佐々木委員の作成されたP2の図の一番右側のものがわかりづらい。社会を入れた不特定多数のやり取りを入れるとすると、実践的内容であることが明確化するのではないか。
  • (上の指摘に関連して)教員と学生が重なってしまうのはいかがなものか。
    → 学びながら教えながら、という両方の立場を強調したかった。
    → となると、学生も教える側に立つこともあるということか。
    → 学生の立場から教えられることもあれば、教員の立場から学ぶこともある。1人の中に多数の人格があることをイメ ージした。
    → それは協調学習のことである。その場合は学生がともに学びあうということであり、教員は一緒に中に入るのではなく、ナビゲーターとして学生をガイドする立場にある。昔のリーダーシップ論では上のものがどんどん引っ張っていくとされたが、今は個々のメンバーの個性を生かしながら、それを生かすようにファシリテートする役目である。教員には目標に向かって学生が発散しないよう、一つ一つプロセスを踏みながらゴールへと導く役割が求められる。
  • ケースステディをやらせると、学生は正しい答えじゃないことを嫌う。ケースステディは正しい答えを求めるのではなく、正しいプロセスを踏んでいるかどうかが重要。今の学生は前提条件を見つけることが不得手。
  • JABEEにより、インダストリアルデザインを科目として設定するよう推奨されている。多くの大学では卒研で反映させているところが多いが、一年、二年でもそれをはめ込んでいくことは可能のはず。欧米の大学では標準的にそのような教育を行っている。


次に、越島委員より、千葉工業大学プロジェクトマネジメント学科のカリキュラムに関して下記の旨の説明がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。

 

【学生自身の問題】

  • 学習に対する根気の低下
  • 基礎学力の低下
  • コミュニケーション能力の低下
  • 意思決定能力の低下


 
【教育面での総括】

  • ゼミ、課題研究を増やした反面講義が少なくなる。結果として、卒論指導は長期に亘るものになったが、学生の根気が続かない。
  • GPA導入したのはいいが、GPAと成績が比例しない。GPAが良いからといって良い学生とは言えない。


 
【提言】

  • 講義だけでなく実習も入れる必要がある。
  • 教員側も基礎教育の場面に専門性の幅を持たせる必要がある。
  • 3年生が1年生を教えるシチュエーションを設けるとうまくいった。学生にもTAという単位制度を設けてもいいのでは。
  • 意思決定能力の低下。意思決定とは条件を付けて下すものであるが、学生が条件付けできない。条件の存在すらもわかっていない。結局失敗したことがないのが問題。決定して失敗させないといけない。経営工学の立場で言えば、解き方を教えるのではなくて何でもいいから答え出せと、解決手法は自分である程度発見させる必要がある。

【意見交換】

  • 答えのわかっている問題でも、解法は複数あることを教える必要がある。その次に答えのない問題に対してどのようにアプローチするのか、段階的に教える必要がある。
  • 学生は問題には答えが一つしかない、という考え方が染み付いてしまっている。


 
次に、米内山委員より配布資料ついて説明がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。

2.教育現場での課題

  • 教員も学生も形になるようなものしか覚えない。はっきりとした答えのないものは考えたくないという風潮がある。それに対して教員はどうするかと言うと、面倒臭いからORとか全く答えのないプログラミングで答えだしたり、全うな教育をしていない危機感がある。
  • 教育が大切とは言いながら、結局教員の業績評価は論文重視。

【意見交換】

  • 試行錯誤させるような教育させるための時間が作れない。機械的にバンバンやるようなことと、そうでないことを分ける必要がある。シラバスにせよ、当初書いたままの授業をするのだけではなく学生の顔を見て授業内容を変えることもある。最低限教えるべきコアなものは機械的に教えるものと、自由裁量的に教えていくものを分けることも必要。
  • 大学は結局大衆化している。経営工学科で教えるもののスタンダードはこれでそれを効率的に教えよ、という波が押し寄せている。その良し悪しは別として、その波に溺れないよう教員も対処する必要がある・・・。


 
4.ITを活用した授業モデル

細野委員
細野委員より、ITを活用した授業モデルの素案について報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、授業後の評価、今後の課題などを今後加筆いただく予定である。なお、意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 授業の単元はどのようなものか。
    → 2時間程度、1コマ分。試験も中に入れようと考えたので、確認クイズなどを入れた。どちらかと言うと学生に渡して自学自習させるために作成した。
    → 今回の資料だと教材がメインになってしまう。授業での取り組みとしての一面や学習の動機付けの向上というところを協調して欲しい。
     
    小池委員より、3DCAD/CAM/CAEとデータ処理それぞれに関する授業モデルの素案について報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、意見交換したところ、下記の旨の意見があった。
     
    データ処理の目標はどこにあるのか。
    → 統計処理という科目があったが、諸事情により科目自体なくなってしまった。しかし、統計は最低限抑えなければいけないのでこのような形式で授業を実施することになった。また、高校時点で統計をやってこない学生が多い。それ故平均分散を本当の意味で理解している学生が少ない。そこからボトムアップするために最低限の統計知識を習得することを目標としている。

 以上を踏まえ、次回委員会までに、下記の通りに宿題が課せられた。

次回までの課題:@の資料と各授業モデルの連関性を意識しながら、草稿を再度提出いただく。
担当
1. コアカリキュラムを意識した教育の到達目標
玉木委員

2. 教育現場での課題
渡辺委員長取りまとめ

3. 教育改善のための授業設計・運営・開発の方向性
渡辺委員長取りまとめ

4. ITを活用した授業モデルの事例紹介
細野委員、渡辺委員長、米内山委員、越島委員、小池委員、佐々木委員?