平成20年度第2回CCC国際関係学運営委員会　議事概要

Ⅰ．日　　時：　平成20年10月22日(水)午後2時～4時

Ⅱ．場　　所：　私情協事務局会議室

Ⅲ．出席者：　林委員、大崎委員

　　　　　　　　　井端事務局長、事務局山野上

Ⅳ．検討事項：

１．国際関係学に求められる学士力について

　　（１）委員間の意見交換

　サイバーFD研究者の意見を確認する前に、委員、事務局間で国際関係学における学士力のあり方について意見交換を行った。主な意見は次の通りであった。

平和や人権、ジェンダーなど、近代西洋文化の価値観を絶対視しないことが国際関係学の要諦である。
日本という主体、日本的視野を取り入れることが必要だという考えもあるが、大学教育においては日本も一つの客体として捉えられるため、特定の価値判断は行わないこと、現状認識に努めることを大きな目標とする。
国際関係学を学ぶことが、直接国家間の友好関係を築くことに結びつくかということについては、簡単に結論付けられない。
ヨーロッパの国家間を律してきた国際法、近代的価値観により支配されている現状を脱しようとしている現状があることを認識する必要がある。

（２）サイバーFD研究者からの意見

　前回委員会で作成した学士力案について、サイバーFD研究者より寄せられた意見について次の通り検討を行い、学士力案の修正の参考とした。

人類的視野から地球社会を認識し、国境を越えて協力し、支えあう態度が身についている。

対外政策の視点欠落との指摘があるが、日本外交論ではないので敢えて言及不要である。政策の理想や政策立案論を展開するものではない。
価値観教育を行うか否かについて、普遍的な価値があるのかという指摘があったが、民族の多様性や多様な価値観があることを学び取り、分かり合おうとする素養を育むことが重要であり、特定の価値観を植えつける教育とはしない。
「地球社会」と「国際社会」との語の意味の違いについて不明瞭であるとの指摘があった。「国際社会」は国家間を含む概念であり、「地球社会」はそれよりも広い概念であるが、ほぼ等価と捉えている。地球全体を視野に入れ、大学生が国際社会を捉えるという主旨は残すべきである。日本が今後国際社会で存在感を主張し、他国からの尊敬を得るには、地球的視野で取り組むことが求められる。
平和の希求について言及してはどうかという意見があった。日本人にとっては、先の大戦の影響が大きく、国際関係学で平和的価値観を貴ぶというスタンスがあったが、価値観教育になってしまうという指摘もあり、敢えて言及することは不要ではないか。
移民や多文化について取り上げてはどうかとの意見があったが、総合学士力にて触れられているので、ここでは敢えて言及しない。
環境保全、ジェンダー等も題材として挙げられるが普遍的価値をもつものではない。改めて学士力として取り上げるには至らない。

地球社会の全体的な動きや部分的な事象について常に関心を持ち、歴史・文明的な背景を含め、正確な知識を有する。

歴史・文明より政治・経済が国際関係学では重要ではないかという意見があったが、政治・経済も含めて文明の所産であるとする考え方からすると矛盾はない。
表現について、「部分的な事象」という表現が分かりづらく「地域社会の全体的な動きや世界の諸地域について常に関心を持つ」という提案があったため、表現を再考する。

国際政治・経済・社会・文化等に関して、多元的、複合的視野に立った現状分析能力が身についている。

行動力を身につけることを学士力に含めてはどうかという意見があったが、学士力の範囲を超えているのではないか。大学自体が教育機関であり、行動するところまでは求められていない。最低限度の学士力としては「基礎的能力を身につけている」程度に留めておいてはどうか。
本項は学士力として筆頭に挙げられるべきものではないかとの意見があったが、現状認識の次に来る分析スキルとして2番目に配することとする。

地域社会から発想し、地球的な規模で問題解決を志向する態度が身についている。

国際関係学野のポイントは国家間関係に基づくものであり、自身が属する国家に対しての認識が十分に求められるという意見があった。この点について、別項で取り上げることとする。
グローバル的な問題解決に向け、地域的な活動を行おうとする態度という意味がよく読み取れるように表現を工夫する必要がある。

基本的な国際関係の諸理論を理解し、それを現実に当てはめて考察する能力が身についている。

仮説を立てて検証するという問題解決力は、重要なことではあるが、最低限度の学士力を設定する目標からするとレベルが高い。将来的な努力目標とする。
政治・経済だけで国際関係を理解しようとすると、西欧以外の視点が欠落してしまうため好ましくない。

(3)学士力案の修正

原案で、で「態度」を取り上げたことにたいして違和感があったとの意見をふまえ、上記検討の結果基本的知識、スキル、態度の3項目に再構成し、国際関係の学士力を以下のように取りまとめた。

（基本知識）

　　現代の国家、地域、国際組織などで構成する国際関係の基礎的な仕組みとその背景を理解できる。

（スキル）

　　国際的な課題等について、国家、地域、国際社会の観点から調査・考察し、多元的・複合的な分析ができる。

（態度）

　　国際社会と国家、地域、個人との関係を認識し、国境を越えて協力し、支え合う態度を身につけることができる。

２．その他

　　今回、修正した学士力案を文部科学省への提言に含めることとなった。