特集
情報化時代の教育(2)
情報教育とマルチメディア教材作成
−経営情報学部・家本ゼミの試み−
家本 修(大阪経済大学経営情報学部経営情報学科教授)
1.はじめに
デジタルコンテンツが次世代の教育に必須になってくることが見えてきた。しかし、次世代の教育が動画等を使ったマルチメディアを単に使うことや、作ることを意味しているのではない。教育は科学であるので、人間的な側面と同時に高い合理性を持っている。一方では、現在の教育改革の必要性が問われ、情報技術を元にした次世代型社会の創出が探られている。ここには様々な情報技術を利用して、新しい教育スタイルとともに最適なシステムが提供できよう。本来、教育方法の最適化には、いくつかの基準が存在する。さらに、最適な効果を期待することになる。この効果は、個々への1)適合性、2)快適性、3)速習性、4)意欲増加、5)高レベル到達を満足させるに着目する必要がある。さらに、科学的実証を通してそれぞれの評価を明らかにする必要がある。
2.システムのベースに何を使うか
サイバーシステムが教育に必須であることは明確だが、二つの点で誤解してはならない。先日のSite2000で行われたように、学校教育や教師による教育が不要であるとの論議は、誤解である。教育内容が異なる(機器へ)世界へ移行するのであって、基本的な教育の検討がなされていないから誤解が生じているだけである。あくまで、ツールであり目的を実現できる唯一の鍵になる可能性がある。
1) VODを使って
VODの利用は、学習者個別に要求部分を必要に応じて提示できる強みがある。しかし、そのコンテンツは、学習意欲の低下をもたらさないためにも、明らかにかなりの工夫が必要になる。
2) Webをベースに使って
Webの利用は、教材提示やさまざまな学習コンテンツとして利用され始めている。しかし、映像の貼り込みや画像の利用などの工夫がなされているが、リアリティの度合いが効果を期待できる鍵になろう。
3) サイバースペースをプラットホームにして
サイバースペースは、新たな可能性がある世界である。しかし、現在の市販品ではコンテンツ作成にリアリティのレベルがあまりにも低いが、もっとも効果のあるシステムの一つになる可能性がある。
4) エージェントシステムの組み込みへ
いずれにしても、エージェントが最も重要な位置を占めることになろう。学習の科学的な解明が進むことがその前提になるが、このことは教育の将来を決めることになるかもしれない。
3.作成への試み
ゼミ活動の一環として、学習効果の測定や新たな教育方法の試みとそれに伴った最適な学習システムの試作を進めている。年次継続で進めている1)〜4)の四つのグループは、ともに態度とパーソナリティと学習方法の特性に着目し、成果を上げつつある。オペレーション・スキルに関しては、特性やコンテンツの提示方法・手順の異なりによって、教育効果に大きな差異があることが明らかになってきた。コンテンツの作成には、学習の理解を促進する要素を明らかにすることよって、より効率的な学習教材を作れることや、平均的なモデルと個々への適合性は異なるため、従来のモデル適性や教授法の在り方という基本問題から進めなければならないことなどが認識され始めている。
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図1 WebによるMS-Excel学習システムの一部 |
4.まとめ
RW(リアルワールド)とVW(バーチャルワールド)で同じ課題を同一手順で提示した場合、VRは60%程度の成果しかもたらすことがなかったが、提示方法を変えた場合はRWを超えた成果を得ることが可能であった。マルチメディア・コンテンツは使い方によっては、あるいは作り方によっては、有効にも不要にもなる。安易に作ればいいのではない。科学的な根拠を明らかにしながら有効な学習モデルと教育方法の確立を早める必要がある。これらの点が、ゼミ教育の一環として経営学や情報教育のコンテンツ作成を進める過程で明らかになってきた。
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