特集

情報化時代の教育(2)



栄養学教材のデジタル化と蓄積について

長崎 寿栄(同志社女子大学生活科学部助教授)




1.はじめに

 本稿では、「栄養指導論」、「栄養指導実習」および他キャンパスでの他学部生対象の「健康の科学」も含めての事例を述べる。教材のデジタル化は、授業での配布プリントなどをワープロで入力し、少しずつ蓄積することから始まると考えている。


2.内容

 具体的には以下のようなものを作成、準備している。
  1. 食品交換表データベースを表計算ファイルにし、栄養価計算できるように準備している。データファイルは利用のための“readme.txt”とともに、情報処理教室のファイルサーバにおき、常時コピーして利用できるようにしている。
  2. 研究室にあるWWWサーバを用いて、講義、実習した内容、参考資料の紹介、参考になる学外サイトのリンク集等のページを準備し、自習時間にも学内で閲覧できるようにしている。また、他キャンパスへは週一度の出向だけなので、学生が休んだ授業のプリントをWebですぐに手に入れられるようにPDFで準備している。Q&A(教員への質問と回答)も掲載している。なお、大学で管理されている教育・研究用WWWサーバには日本語全文検索システムが導入されたので、現在教材の検索による利用を試行中である。
  3. パソコン対応プロジェクタの設置されている教室では、プレゼンテーションソフトを利用した講義も一部行っている。残念ながらすべての授業内容の編集を完了していないので、Webで閲覧できるようには準備できていない。なお、ビデオモニタ設置のみの教室でのプレゼンテーションには、デジタルカメラに転送した画像を用いた方が鮮明に映写されるので、これを利用することがある。


3.デジタル化のメリット

 学生は、ファイルサーバにおかれたファイルやWebで公開されたページを自習時間に自由に利用できることによって、授業内容の再確認、復習、応用などが可能となる。表計算の利用などは実習で学んだ後、学年が進んでからゼミでも利用するのだが、学生は操作を忘れてもWebページの説明を見て思い出せるので、教員は説明を再度行う時間を節約できる。また、Q&Aの公開は学生には好評である。疑問点を解決できるだけでなく、他の学生がどのような質問をしているのかを知ることができるのがよいらしい。授業中の討議や質問などに慣れていない学生は、Web上での質問、討論から始めることもよいだろう。さらに、Web閲覧できるように準備した資料や参考文献などは整理されているので、当初は学生の利用目的で作成したものであっても教員自身にとって便利に利用でき、デジタル教材の準備が進むに伴い授業の準備もしやすくなると感じている。


4.問題点

 現在の一番の問題点は、学内で授業用のWebページを公開しても学生の認識度がまだまだ低く、こちらから呼びかけないと利用に至らないことである。学生の認識度が低いのは、教員の大半がまだこのようなデジタル教材を準備していないため、便利と感じるほどコンテンツがないからであろう。少数の教員が大掛かりなシステムのデジタル教材を準備するのもよいが、多くの教員が少しづつワープロで準備したページを持ち寄ることができないかと思う。授業内容のキーワードを列挙したページをWebにアップするだけでも、多くの教員で行えば学生の認識度が高まり、積極的な利用が進み効果的な教材が整うだろう。現状ではワープロの使えない教員はほとんどいない。技術的には誰でもデジタル教材の作成が可能であるという意識を教員に持ってもらうことが大切であると思う。WWWサーバへ導入された検索エンジンを利用して、比較的簡単に検索の利用ができる簡素なテキストで入力されたファイル(HTMLに画像の説明を記述すれば画像の検索も可)をデジタル教材として蓄積していくことの重要性を感じている。そして、将来は画像や映像検索も可能となるだろう。ただ、テキストにしろ画像にしろ、オリジナルなデジタル教材を準備するには、多大の手間と時間がかかる。情報機器利用および作業のためのサポート人員の確保もとても重要である。同時にそのような中でデジタル教材の作成、編集という知的作業のための時間が教員に確保されることが最も必要なことではないかと思う。知的作業の時間やサポート人員の確保なしに大掛かりな機器の導入をしても、無駄になりかねない。また、教材として用いることのできる著作権フリーの教材素材を相互利用できるようにし、オリジナル編集のデジタル教材作成の時間短縮を図ることも必要であると思う。


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