私情協ニュース1
第15回情報センタ等部門研修会は、平成11年10月27日(水)から29日(金)の3日間に亘り、京都のホテルニュー京都において開催された。
本研修会は、私立大学の情報センター等の教職員、または学内の情報化を担う部門の教職員を対象に、教育支援、事務支援、ネットワーク支援等、情報部門の責務と課題について討議を行い、関係教職員の資質向上と関係部門の発展に寄与することを目的として開催し、140名(81大学、3短期大学、賛助会員2社)の参加があった。
研修は、講演と分科会(情報部門管理者コース、教育・研究支援コース、事務システム支援コース、ネットワーク運用管理コース)形式で実施された。
講師:国吉 光氏(東京電機大学総合メディアセンター鳩山サテライトセンター長)
法人全体の情報資源と環境を統括するため、同大学(法人)において電子計算機センター、図書館、教育工学センター、事務システム開発室を統廃合し、総合メディアセンターを組織された経緯や目的、運営について事例紹介いただき、情報センター等をとりまく課題と解決策、情報化を担う教職員に求められる資質について解説いただいた。同大学現在の進捗状況としては、ネットワークや計算機運用管理の面では、他キャンパスからの応援など、人的サポート体制が整いつつあり、また、人事交流面では、技術系職員の人事異動が可能になったとのことであった。そして、今後の課題としては、ネットワーク運用の効率化、視聴覚設備の運用管理体制の整備、コンピュータと図書の融合(電子図書館等)、適正予算のあり方と予算執行の評価が挙げられた。
「学内インフラ整備の次に目指すもの
−これからの大学はどのように変わるべきか−」
多くの大学で学内インフラの第一次整備が終了している状況をふまえ、それらを活用した今後の情報センター等の役割について、「学園の政策と情報技術の利用」、「レガシーインフラとマルチメディア対応」、「学外との情報交換」「教職員、学生へのPC配付政策」、「情報管理部門の人員育成とアウトソーシング」のキーワードをもとに討議を行った。
はじめに、東京電機大学総合メディアセンターについて浅見光男氏より、立命館大学総合情報センターについて杉町宏氏より、総合的な情報センターを置いていない日本女子大学の情報基盤整備について永野恵子氏より事例紹介いただき、これらを踏まえ、情報センターの今後のあり方について討議を行った。そして、討議の結果、以下についての認識を深めた。
システムのノウハウは大学の資産であるため、アウトソーシングの導入は経営的視点をもって行い、教職員が一体となって業務を推進する体制が必要となる。理事・経営者やユーザに対しては切り口として具体的なサンプルを見せていく必要があり、各大学の研究・教育の現状を踏まえて提案していくべきである。そのためには、アウトソーシングを管理する職員のスキルが必要となってくる。
学習支援にセンターが関与する場合、直接関わることのできる仕組みやノウハウが今後の課題である。組織としてどう動くかを規定化し、教材支援やマルチメディア教室など一つ一つ固めて、ソフト、ハード両面からバックアップする必要がある。今後はセンター部門でカリキュラム企画も行えるようになるのが理想であろう。
「センターにおける情報教育支援のあり方
−多様化する情報教育環境への情報センターの対応−」
事例発表を交えて、以下の通り四つのサブテーマのもとに討議が進められた。
「メディアリテラシーの支援」については、はじめに敬愛大学の飯野由美子氏と玉川大学の荻野千冬氏より事例紹介いただき、その後の討議では、学生の学習意欲が薄れていることや学生の質の低下、教育のスキルと取り組みについて話題が集中した。
「教員の情報活用能力およびコンテンツ作成の支援」については、教職員双方が理解し協力して社会のニーズに応えることのできるコンテンツ作りをする条件として、コンテンツの利用、教育活動における資源のサポート、リテラシーサポートを中心に討議を行った。
「教職員一体の教育の支援」については、獨協大学の南 雄三氏、IPPの井上博樹氏による事例紹介を踏まえて討議を行い、教職員の相互の職域を侵さないこと、教員が「教育・研究に充分な時間」を持つための環境作りを職員が行うべきであること、大学全体の意識を高めるためには実績と周囲の理解が必要との認識を深めた。
「ノートPCの活用と課題(センターの支援方法)」については、学生が講義や生活面での情報提供を受けるのに、パソコンを持っている方が有利な状況にすることが望ましく、情報センター等部門が高度情報化時代の教育に対応する情報機器の導入・支援に携わり、事務部門からも積極的に大学へ働きかけることが必要であると認識した。
「大学の事務情報システムにおける支援体制」
各大学の現状から、システム部門の問題を浮き彫りにし、円滑な事務システム支援と業務改革への取り組みについて、今後のあり方を討議した。
討議の結果、情報化への取り組みがより一層総合的に、また効果的に作用していくためには、それを支える大学全体のシステム部門の機構も同時に再編・整備されていく必要がある。現状では、ネットワーク環境が整備されている一方で、オンラインで提供している情報(システム)は多くなく、効果的な支援サービスが十分にできていない。
今後の支援体制のあり方として、今日までの情報化への経緯を踏まえ、新たな展開に対応し得るシステム企画・立案・実行・運用・管理を担っていく組織体制、またはその仕組みについて考え、その有機的な機構が大学全体の合意の基に形成する必要がある。大学の規模、進化の度合い、あるいは建学の理念や文化に応じて、また、それぞれの担当部門の独自性を尊重し、各システムの機能、役割を明確にした上での組織化が図られることが重要である。
事務情報システムにおける支援体制の形成は、統合型と分散型に分けられそれぞれに長短を含むが、いずれの場合でも各部門の活動を十分に把握し、個々の機能の活性化を支援していくような組織体制をいかに形成していくかが基本であり、また重要なことであるとの認識を深めた。
「ネットワーク運用管理における諸問題
−ネットワークの運用管理とセキュリティ−」
大学において、インターネットは教育研究活動はもとより、学生の日常生活においてもますます親しいものとなってきた。一方、インターネットの普及に伴い、個人情報の流出やネットを使った犯罪、悪質なコンピュータウィルスの流通など、負の側面もまた日常化しつつある。このような状況のもと、もはや数年前の運用管理ではインターネットのセキュリティ面での脅威に立ち向かうことはできず、また、学生に対する情報倫理の教育も急務である。そこで、「情報倫理」、「セキュリティ」、「プライバシー」、「個人情報」、「著作権」、「コンピュータウィルス」、「有害情報」、「コンピュータ犯罪」をキーワードに、東洋大学の鍋谷敏守氏、慶應義塾大学の渡辺陽三氏からの事例発表を踏まえて、セキュリティという観点からネットワークの運用管理について討議した。
討議の結果、今回の参加大学のアンケートによると、ネットワークに関する各種規程を整備している大学は過半数に満たないのが現状で、一定程度各大学の経験と運用の成熟度を反映しているとも言えるように思われたが、ファイアウォールの導入など、外部への備えという面では、各大学ともほぼ対応していた。一方、使う者に責任を自覚させる=意識の喚起という面では、センターだけの努力ではなしえないというもどかしさも存在し、情報発信に伴う著作権への対応などは、まだまだ充分対応できていないという実情を認識した。