私情協ニュース2
第7回短期大学部門検討会議開かれる
第7回短期大学部門検討会議は、平成11年12月4日(土)に東京の東海大学短期大学部において開催され、70名(46短期大学)の参加があった。
1. 情報活用教育の事例紹介
3短期大学から「短期大学教育の情報化に関連した情報を活用した教育の展開例」について紹介があった。
まず、拓殖短期大学の森 園子氏から「文科系短期大学における総合的な情報活用能力の育成」について次のような紹介がされた。
ここでの「総合的情報活用能力の育成」については、二つの点がある。一つは、総合的情報教育を実践して、その有効性を検証することである。もう一つは、入学時に学生がもっている情報リテラシーの習熟度格差が総合的情報教育に及ぼす影響、その意識差を検証・考察することにある。
対象学生は入学したばかりの1年生、1クラス30名を2クラスである。クラスは情報リテラシー未経験者クラスと経験者クラスに分けて、「電子計算機論」の科目で行っている。
具体的には、学生がテーマを決めてその情報を収集する。情報収集はインターネットだけではなく、図書館で本を調べたり、人に聞いたり、調査実施研究などで行う。これを8,000字程度にまとめてスライドを構成し、メモファイルに入力する。さらに数理的な分析を加えて、スライドを作成し、LANを通じて発表する。次に電子メールで意見交換を行うといった展開をする。実際の授業で行うのは、9月の終わりに2時間ほどMS-Power Pointの基本・応用操作を行うだけである。あとは通常の授業に戻り、課題研究に触れることはない。学生個人の作業が半ば進んだ頃に中間発表を行い、本発表を行って提出させる。ここでの主軸は学生の主体的な課外での活動である。
ここで教えられる情報活用能力は、文書作成、インターネット、スキャナ、デジカメ、CD、Web利用の情報検索、Web利用のコミュニケーション、Power Pointなど、おおよそすべてのアプリケーション、ネットワーク、マルチメディアなどを駆使したものである。
授業の評価は教員による学生作品に対する評価と、学生による教育に対する評価の二つの面で行う。
総合的情報教育を実施した結果、中等教育における情報リテラシー能力の格差が大きく、その格差が総合教育の教育効果に顕著に表れた。中等教育におけるリテラシー習熟度が、問題解決への意欲に影響していると感じた。
今後は、検索ツール、情報収集、数理的な面を踏まえて充実させていきたい。
次に、玉川大学・玉川学園女子短期大学の菊池重雄氏から「高等教育機関における地域研究科目の展開−北米に関する地域研究科目を通じて」でコンピュータネットワークを取り入れた教育の事例について、次のような紹介があった。
本科目は、「アメリカ文化史」と「アメリカンスタディーズ」に、ディスタンスラーニングの形式の一種を用いて行っているものである。1997年から現在にかけて、講義の他に教育用ソフトのロータスラーニングスペースを用いたディスタンスラーニング形式の授業を併用している。
この教材では、シラバスの日程表からその日の授業に入っていく。さらにメディアセンターと呼ばれる資料を保存する場所、コースルームと呼ばれる教室、プロフィールと呼ばれる学生のホームページ、教員用の表計算を使った成績評価の箇所がある。また、この中だけで有効な電子メールなどがそろっていて、レポートに対していろいろな学生が意見を出して意見交換ができる。授業は週2回の授業で、一つが教室での講義、その授業に基づいてもう一つでディスタンスラーニングを用いた課題を行うという組み合わせになっている。
今後の課題としては、現在のところ実験授業と称して行っているが、大学設置基準が改訂されて研究室と学生の自宅、教員の自宅と学生の自宅といった形でのネットワーク授業が認められればと思っている。
次に兵庫大学短期大学部の原田昭子氏から「ソフト・データベースを活用した栄養管理科目の展開」について、次のような紹介がされた。
食物栄養学科の情報処理教育として、プログラム言語をまったく使わないで栄養価計算ソフトを開発する授業を試みた。この授業ではMS-Accessを用いて、日本食品成分表から食材の栄養価を計算し、料理データベースに蓄積するソフトを作成し、さらにこれを献立や給食データベースへと展開、進化させていく。
授業環境は、42台のスタンドアローンのコンピュータとプリンタが接続されているコンピュータが4台である。選択科目で1クラスの受講生は約35名、週1回90分授業である。なお、アシスタントはいない。
授業目標は、ソフトの利用者が実際に目にするフォームやレポートを使いやすく分かりやすくするために、レイアウトや設定変更などを課題としている。これらは簡単に試行錯誤を繰り返すことができることから、デザイン変更のヒントを提示し、学生が主体的に学び、納得する授業を展開することができる。実際、学生同士が相談し、教え合い、尋ねるなど相談しコミュニケーションの機会を与える授業になっている。また、色やフォントなどコンピュータの表現力を活用して、自分の意志を画面に反映させることを意識できるような創造性を高めることができる。
2.全体会議
「短期大学教育の情報化を考える」をテーマに、以下のような意見交換が行われた。
−紙のメディアからデジタルメディアへ−
- コンピュータが導入されることによってこれまで教育で使われてきたメディア、紙のメディアがデジタルメディアに変わってくる。
- 一刻も早く紙メディアをデジタルメディアに変えていく必要があるか。
- 教育の情報化をしても、学生の方は依然として紙メディアが主体であるという現実をどうするか。
−教育の情報化と個別教育−
- 情報化の中には授業の個別化というのも入っていると思われるが、情報化を効率よく進めるにはどのようにしたらよいか。
- 個別の進捗状況、学生がどこまで理解しているか、最終的な試験の時に見るのではなくて、授業の度ごとに見ていくというのがこれから問われる。
- 個別化というと機械でという思考が出るが、一番重要なのは学生一人一人の人間の思考力。ある意味では、コンピュータが入り込めない、入ってはいけない部分もある。
- 従来の知識、技術教育という教育形態からコラボレーションのような教育形態へと変わっていくことが、情報化という中で強く求められているのではないか。
−情報環境の整備−
- 一般教室にどのようにしてコンピュータを広げていくかが一つの壁である。
- 学内のどこかにパソコンを設置したり、外からも見ることができるよう工夫すれば、学生も自然とデジタルメディアを活用する能力が身に付くのではないか。
- 事例などに出てくるのは、30名から40名単位の学生を対象にしたものが多いが、100名以上の学生を、どう情報教育の中で教えていけるのか、この辺が一番大きなテーマである。
−デジタル教材等の公開の問題点−
- 教育内容のオープン化の問題がある。教員の意識の中に自分の財産に対する危惧がある。
- 情報化することが必ずしもすべて学外にオープンにするということではない。
- 普段の授業のものでは、頻繁にコンテンツを変えていかないといけない部分がある。そのあたりを普段から出せる先生が少ない。
- 問題点はコンテンツ作りにあり、今のところデジタル教材を作成できる人に負担がかかる。
- コンテンツ作りは大変であるが、支援体制をいかにするかということや、新しい教育活動をした人は認めていくというように文部省の基準も変わってきているので、学内評価も上がるようになっていくのではないだろうか。
- コンテンツをデジタル化していく部分については、外注するとか、物理的な状況のところはかなり補助金の対策ができるようになっている。
- 学生側は端末で十分になるが、そうするとシラバスや授業、講義ノートなりが情報化されていないと具合が悪い。
- シラバスに沿った資料を前もって見られるようにするなどについて考えることも情報化と思われる。
- 学生の予習や復習などにきちんと対応するとなると、データベース化するなど、デジタル化しておいてそれを各自が見られるような状況を作っておくことが必要。
文責: |
短期大学会議運営委員会委員長 |
|
東海大学短期大学部教授 加藤 昭 |
【目次へ戻る】
【バックナンバー 一覧へ戻る】