特集

高等学校の教科「情報」担当教員の養成


清水 康敬(東京工業大学大学院社会理工学研究科教授)



1.はじめに

 今回の教育課程改訂によって、高等学校の普通科に新たに必修の教科「情報」が新設され、専門教育にける「情報」もできた。この新教科は2003年度から正式に実施されるが、指導する教員が鍵となる。この「情報」の教員免許は、普通科の「情報」と専門教科「情報」を区別することなく、同一の免許となっている。


2.現職教員認定講習会

 現職教員に対する認定講習会は、各県で今年度から3年間実施され、合計9,000名に「情報」の免許を与えることになっている。この認定講習会を受けて「情報」の免許を取得できる基礎となる免許は、数学、理科、工業、商業、農業、家庭、水産、看護の8教科である。そして、15日間(90時間)の講習を受け修了を認定されることによって、教科「情報」の免許が取得できる。科目「情報A」では二分の一以上、「情報B」と「情報C」では三分の一以上を実習に当てることになっているので、認定講習会でも実習を重視している。また、講習の一部のコマを、通信衛星による教育ネットワーク「エル・ネット」を利用して、各都道府県に配信された。文部省の情報教育担当者をはじめとする講師の講義を全国各地で受講できることは魅力的である。
 これに先立ち、今年1月から3月にかけて、新教科「情報」指導者研究協議会が、全国を5ブロックに分けて開催された。そこでは、文部省の協力者会議が作成した認定講習会用のテキストを使い、1週間(15時間)の指導者研究協議会を実施した。そして、この協議会での受講者が、各県の講師となって認定講習会が実施される。
 なお、この指導者研究協議会のテキストは、文部省の中に協力者会議が設置され作成された。このテキストの項目を列挙すると、以下のようになる。

指導計画の作成と実習指導法、問題解決、職業指導、情報と生活、情報社会、著作権1、著作権2、情報モラル、ハードウェアの基礎、ソフトウェアの基礎、データ通信の概要、計測・制御の概要、コミュニケーションの基礎、情報の表し方、プレゼンテーションの基礎、アルゴリズムの基礎、情報システムの概要、情報検索とデータベースの概要、モデル化とシミュレーション、ネットワークの基礎、コンピュータデザインの基礎、図形と画像の処理、マルチメディアの基礎

 ここではまず、教科教育法では、新教科情報の位置づけ等、全体的な内容を記述している。


3.大学における課程認定

 大学における「情報」の教員免許に関する課程認定については、教育職員養成審議会で審議された。その結果、教科に関する専門科目として、次の6科目が挙げられた。

1) 情報社会及び情報倫理
2) コンピュータ及び情報処理(実習を含む)
3) 情報システム(実習を含む)
4) 情報通信ネットワーク(実習を含む)
5) マルチメディア表現及び技術(実習を含む)
6) 情報と職業

 ここで、1)には情報化と社会、著作権等の知的所有権、情報モラル、プライバシーなど、2)にはハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、プログラミング、計測・制御など、3)にはデータベース、情報検索、情報システムの設計と管理など、通信ネットワーク、コミュニケーション、セキュリティなど、4)には情報メディア、図形処理と画像処理、マルチメディア表現、シミュレーションなど、情報化社会の進展と職業、職業倫理を含む職業観と勤労観などが含まれる。
 また、教科「情報」では実習を重視していることから、各大学で科目を設定する場合には、実習を重視する必要がある。
 今年度から大学から課程認定の申請が行われ、年内には認定される予定である。そして、2001年度から大学において「情報」担当の教員を養成すれば、早ければ2003年度からのスタートに間に合わせることができる。


4.おわりに

 情報コミュニケーション技術の進展は著しい。また、修得した知識やスキルの陳腐化が速い。そのため、高等学校の「情報」に関する内容は、社会の変化や情報インフラの整備に対応して、毎年指導の内容と方法を変える必要がある部分も多い。


教育職員免許法等の一部を改正する法律の概要

(平成12年7月1日施行)


 高等学校の免許教科として情報及び福祉に関する教科を新設するとともに,特別免許状を有する教員が所定の在職年数と単位修得により普通免許状を取得できる制度を創設する等所要の改正を行う。

1.高等学校の新教育課程への対応

1)高等学校の免許教科として、「情報」、「情報実習」、「福祉」、「福祉実習」を新設する。
2)工業、看護等の教科の免許状を有する者のうち一定の講習を修了した者に、情報、福祉の免許状を授与することができることとする。


2.特別免許状制度の改善

 専門的な知識又は技能を有している社会人を学校現場に教員として迎え入れるための制度である特別免許状制度について、特別免許状を有する教員の資質能力の向上を図るため、所定の在職年数と単位の修得により普通免許状を取得できる制度を設ける。


3.現職教員の専修免許状の取得要件の改善

 専修免許状を有する現職教員の資質能力の水準の維持・向上を図るため、専修免許状を取得する際に修得することが必要な単位数について、在職年数に応じて逓減する措置を廃止する。


4.盲・聾・養護学校の新教育課程への対応

 盲学校、聾学校、養護学校の教育課程の改訂により、「養護訓練」を「自立活動」に改めたことに伴い、所要の改正を行う。

情報
情報社会及び情報倫理
コンピュータ及び情報処理(実習を含む)
情報システム(実習を含む)
情報通信ネットワーク(実習を含む)
マルチメディア表現及び技術(実習を含む)
情報と職業

福祉
社会福祉学(職業指導を含む)
高齢者福祉、児童福祉及び障害者福祉
社会福祉援助技術
介護理論及び介護技術
社会福祉総合実習(社会福祉援助実習及び社会福祉施設等における介護実習を含む)



教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令案の概要


 教育職員免許法等の一部を改正する法律(平成12年法律第29号)の施行に伴い、所要の改正を行う。


1.「教科に関する科目」の設定

 新教科「情報」及び「福祉」の高等学校教員免許状を取得するための当該教科についての必修科目である「教科に関する科目」の内訳について規定するとともに、学習指導要領の改訂を踏まえ、所要の改正を行う。(第3条及び第4条関係)


2.特別免許状から普通免許状への上進の際の単位の修得方法の設定

 特別免許状を有する教員が、所定の在職年数と単位の修得により、普通免許状を取得する場合の単位の修得方法を定める。(第11条の2関係)


○中・高の特別免許状を有する者の場合
  • 教育の基礎理論に関する科目:6単位
  • 生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目:4単位
  • 大学院レベルの教科または教職に関する科目:15単位
25単位→専修免許状
○小学校の特別免許状を有する者の場合
  • 各教科の指導法(8教科):16単位
  • 教育の基礎理論に関する科目:6単位
  • 生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目:4単位
  • 大学院レベルの教科または教職に関する科目:15単位
41単位→専修免許状
  • 各教科の指導法(8教科):16単位
  • 教育の基礎理論に関する科目:6単位
  • 生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目:4単位
26単位→専修免許状

3.現職教員の専修免許状取得の際の単位の修得方法の弾力化

 現職教員が所定の在職年数と単位の修得により専修免許状を取得する際の要件を強化したことに伴い、教科または教職に関する科目15単位のうち3単位までは、教職に関する科目に準ずる科目について修得できることとする。(第11条、第11条の2、第16条及び第17条関係)


4.情報又は福祉についての講習の指定

 工業、養護等の教科の免許状を有する現職教員に情報又は福祉の高等学校教員免許状を授与するための講習会として、文部省が実施する現職教員等講習会を指定する。(改正省令附則第6項及び第8項関係)


5.その他

 現職教員が上級免許状を取得する際に、単位を修得することのできる課程等について法律に規定したことに伴い、省令の規定を削除するほか、号ずれ等について所要の規定の整備を行う。


6.施行日

 平成12年7月1日



教科「情報」に係る教科に関する科目


●情報社会及び情報倫理
  情報化が社会に及ぼす影響、情報倫理等を理解する科目

<主たる内容>
情報化と社会、著作権等の知的所有権、情報モラルなど

●コンピュータ及び情報処理(実習を含む。)
  コンピュータ及び情報処理に関する基本的な知識・技術等を習得する科目

<主たる内容>
ハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、プログラミング、計測・制御など

●情報システム(実習を含む。)
  情報システムの設計、管理、運用に関する知識・技術等を習得する科目

<主たる内容>
データベース、情報検索、情報システムの設計と管理など

●情報通信ネットワーク(実習を含む。)
  情報通信ネットワークの構築や運用管理、活用に関する知識・技術等を習得する科目

<主たる内容>
通信ネットワーク、コミュニケーション、セキュリティなど

●マルチメディア表現及び技術(実習を含む。)
  マルチメディアを活用した表現・処理に関する知識・技術等を習得する科目

<主たる内容>
情報メディア、図形処理と画像処理、マルチメディア表現、シミュレーションなど

●情報と職業
  情報と職業についての関わり、情報に関する職業人としての在り方等を理解する科目

<主たる内容>
情報化社会の進展と職業、職業倫理を含む職業観と勤労観など


免許法施行規則第3条

(旧)(新)

木工加工(製図及び実習を含む)
金属加工
機械(実習を含む)
電気(実習を含む)
栽培(実習を含む)
情報基礎(実習を含む)

木工加工(製図及び実習を含む)
金属加工(製図及び実習を含む)
機械(実習を含む)
電気(実習を含む)
栽培(実習を含む)
情報とコンピュータ(実習を含む)


免許法施行規則第4条

(旧)(新)



(新設)

情報社会及び情報倫理
コンピュータ及び情報倫理(実習を含む)
情報システム(実習を含む)
情報通信ネットワーク(実習を含む)
マルチメディア表現及び技術(実習を含む)
情報と職業


免許状授与の所要資格を得させるための課程認定について


1.免許法施行規則の一部改正について

●新教科「情報」及び「福祉」の教科に関する科目の新設するとともに、学習指導要領の改訂に伴い、教科に関する科目の見直しを行う。(施行規則3条、4条)

1)高等学校 教科情報及び福祉の新設
2)中学校 音楽、美術、技術、家庭、外国語の科目の改正
3)高等学校 音楽、美術、工芸、看護、家庭、外国語の科目の改正

●上記2)及び3)の改正についての経過措置 ●現在、上記2)又は3)の認定課程を有する大学について

2.課程認定基準等の改訂について

●教科情報及び福祉の新設に伴い、教科に関する科目の専任教員数の規定を設けたこと。(審査内規別表2)
情報:4人以上、福祉:4人以上
●平成10年度・11年度の新法に係る再課程認定時の教員審査の特例(確認事項3)を廃止したこと。
→今後課程認定を受ける場合は、確認事項1(2)が適用される



課程認定の申請受付について


●平成12年度申請書提出締め切り日

平成12年9月29日(金)
 ※郵送不可
 ※要予約

●今後の課程認定の流れ(予定)

7月〜8月……………課程認定の相談受付
9月1日〜9月29日…課程認定申請書提出受付
10月〜12月……………課程認定審査
1月……………………課程の認定

●課程認定の相談について

課程認定の相談については以下の点 についてご協力願います。
  
私情協では、第14回私情協大会(2000.9.21.市ヶ谷・私学会館)において「高等学校『情報』科目の教員養成と課程認定」と題して、文部省に解説いただくことを予定しています。開催プログラムは私情協のホームページhttp://www.shijokyo.or.jp/ LINK/news/topnews.htmに掲載しています。参加対象は私情協加盟大学・短期大学の教職員、賛助会員です。


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