情報教育と環境

大阪電気通信大学における情報教育と環境



1.はじめに

 大阪電気通信大学は、1961年(昭和36年)4月に開学され、現在の総学生数は、約5,700名である。
 キャンパスは、京都・大阪・奈良の3府県にまたがる関西文化学術研究都市内に位置し、大阪平野を眼下にのぞむ豊かな自然に囲まれた四條畷キャンパスと、都市部に位置する寝屋川キャンパスに分かれている。
 本学の情報教育環境は、1978年(昭和53年)に設置された情報処理教育センターが、日本で初めてパソコンを用いた対話型情報処理教育環境を構築(電通大方式)して以来、一貫して教育工学的な知見に支えられた情報教育環境を構築している。
 本稿では、現在の情報教育の現状とそれを支える教育環境について紹介する。


2.本学における情報教育

 本学は、大学院、工学部第1部・第2部、総合情報学部、短期大学部からなっており、情報教育として、従来からの工学系大学としての情報教育ならびに理系短期大学部としての情報教育、コンピュータリテラシー、メディアリテラシーなど多岐にわたるものを実施する必要がある。
 リテラシー教育に関しては、本年4月より、教育改革の一環として工学部第1部において、情報の基礎教育の共通化を実現している。これは、情報教育の基礎教育部分における教育の標準化をはかり、学科、教師、クラスに依存しない標準化されたカリキュラムを実施しようとするものである。
 また、専門教育に関しては、本学の特色ある教育の一つである多関節のロボットアーム等の制御機器をプログラミング言語により制御する演習がある。これは、学習者が作成したプログラムをコンピュータに接続されたインタフェースを介して制御機器を動作させるもので、コンピュータ制御の概念理解の教育効果が得られるとともにプログラミング教育においても、学習者の学習意欲を高め、学習効率の良い教育環境を実現している。これ以外にも、PSpiceを用いた電気・電子回路の設計、Auto CADを用いた機械製図等、工学系大学に要求される教育を実施している。
 さらに、本年4月より、総合情報学部にメディア情報文化学科が開設され、21世紀のデジタルメディア社会で活躍する人材を育成するための情報教育を実施していく必要が新たに生じた。これに関しては、以下で詳しく述べる。
 これらの異なる教育的な要求を大学の共通資源の上で実現するために、情報処理教育センターでは、1台のコンピュータに複数のOSをインストールして、コンピュータの起動時に利用するOSを選択する方式(デュアルブート1)、トリプルブート2))を採用している。これらの新しい試みは、種々の教育的な要求に答え、資源を有効に活用するためのものである。これにより、リテラシー教育から専門教育までの幅広い教育をサポートすることができ、資源の有効活用、稼働効率の向上が達成されている。


3.情報教育を支える教育環境

 教育環境は、本学が情報処理教育環境として20年に亘り構築してきた「電通大方式」を踏襲している。「電通大方式」とは、以下の教育理念を重視した教育を実践するための情報環境を指す。 具体的には、次の複合システムとして実現されている。  ユーザの情報を蓄積するサーバの選択に関して、クライアントのデュアルブートならびにトリプルブート環境を最大限に活用するため、以下の点を考慮した。  この結果、ファイルサーバは、Compaq社製のUNIXサーバを採用した。これは、Windows NTサーバとUNIXサーバの機能を兼ね備えており、Windows NTとTurbo Linuxのアカウント情報を一元的に管理したり、ホームディレクトリを一元的に管理することができる。これにより、従来まではできなかった研究室等からFTPプロトコルによるWindows NTのホームディレクトリ上に存在するファイルの送受信を簡単に行うことが可能となった。この機能を利用して、教員が研究室等で作成した教材を事前に演習室のホームディレクトリにコピーしたり、学生の提出課題を研究室のコンピュータに取り込むことも可能となり、柔軟でトータル的な情報教育支援環が実現された。また、演習などで複数のOSを利用する学生は、異種OSのホームディレクトリ上のファイルを相互にやり取りするなど、導入したサーバのメリットを最大限に活用しているようである。これは、情報教育用のコンピュータ約450台が上述の整備された学内ネットワークに接続されていることによる恩恵である。
 一方、サーバを管理する側にとっても、アカウント情報が一元管理され、学生のホームディレクトリが散逸せずに、一元的に管理できるので、メンテナンスコストの削減に役立っている。
 なお、学生のホームディレクトリ構成は、以下のようになっており、各OSのホームディレクトリが一元的に管理されている(サーバ側から見た場合)。
Windows NTの場合
/home/students/学生番号/学生番号-nt
Turbo Linuxの場合
/home/students/学生番号/学生番号-unix
BeOSの場合
/home/students/学生番号/学生番号-be
 さらに、サーバ設備以外の設備としては、Windows NT Server Terminal Editionを導入し、演習室外部から演習室の資源を利用できる仕組みも整備している。これにより、演習室で導入している専門教育用の高価なソフトウェアを演習室外部より利用することが可能となっている。


図1 電通大方式の概念図

4.マルチメディアOSであるBeOSの採用

 メディア情報文化学科の新設に伴い、多人数に対してデジタルコンテンツの有効な開発を行わせる演習環境に関して検討した。
 この演習環境においては、マルチメディアシステムに関する概念学習の容易なこととコンテンツ作成作業における良好なマンマシンインタフェースの実現が欠かせない。これらの点を重視して、マルチメディア対応OSであるBeOSを核とした多人数のためのマルチメディアを指向する教育環境を構築した。 BeOSの大量導入ならびに教育環境での導入は、世界で初めてのようである。
 この教育環境は、BeOSを核として、Windows NT、Turbo Linuxの三つのOSを起動時に選択して利用できるトリプルブート環境として実現している。この環境においては、それぞれのOSの特長を生かしたアプリケーションを特定のOSにとらわれずに利用させることが可能である。
 つまり、利用したいアプリケーションがあった場合に、それがBeOS、Windows NT、Turbo Linuxのいずれかで動作すれば、利用可能となるわけである。これは、従来のOSに束縛されてアプリケーションを選択しなければならなかった状況からの脱却である。
 BeOSに関しては、BeOS上のリアルタイム処理が行えるノンリニア編集ソフトウェアを用いて予備的に利用させたところ、色々なエフェクトを試して実際の効果を確認しながら編集作業を行うといった光景が見られた。この環境は学習者の選択の自由を大きく増やすものであり、種々の表現効果を持つユースウェアを状況に応じて選択する必要のあるメディア系の演習において望ましいものといえる。
 今後の課題としては、BeOSに関連する資料が少ないため、独自の教育用テキストを開発していかなければならないという問題があるが、ゲーム、エデュテインメント等の対話的なコンテンツを志向した新しい学科の教育理念と今回構築した演習環境にマッチしたものを独自に作れることは、むしろ、好都合である。
 これらの課題に関しては、我々の大学からBeOSに関する種々の情報を発信し、メディア情報文化学科とそれを支える情報処理教育センターがBeOSに関する日本のセンターとして機能するように努力を重ねていきたい。

1) デュアルブート
  Windows NT, Turbo Linuxを起動時に選択可能
2) トリプルブート
  BeOS, Windows NT, Turbo Linuxを起動時に選択可能

文責: 大阪電気通信大学 情報処理教育センター

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