情報工学の教育における情報技術の活用
井上 訓行(京都産業大学工学部情報通信工学科教授)
(1)第1期
計算機ハードウェア教育にはマイクコンピュータが用いられ、CPUの設計はほとんど行われていなかった。英文の本を参考に、TTL ICを用いて計算機を設計し製作していたが、配線作業と英文の読解が学生の大きな負担となっていたためテキストの翻訳[1]を行った。
(2)第2期
計算機援用設計(CAD)システムとFPGAを導入した。回路図入力とシミュレータにFPGAライブラリを追加し、1チップCPUの開発が可能となった。この結果CPU部分はチップ内で配線されるので配線作業は大幅に減少した。一方、観測点の減少により実機での検証が困難になったため、検証環境を重視した教育用システム[2]を開発した。また、小規模PLDを用いて論理をすべてプログラマブル素子により実現し、部品の種類と点数を大幅に減少させた。
(3)第3期
ハードウェア記述言語(HDL)を処理できるCADを導入し、デバイスに依存しない設計が可能となった。デバイスもFPGAに加えてCPLDを導入し、現在一つの設計を複数の異なるタイプのデバイスに実装する教育を行っている。
表 教育環境の進歩 開始年 デバイス 設計記述 主なツール 第1期 1980 TTL IC 手書き回路図 なし 第2期 1988 FPGA
小規模PLD回路図(CAD) シミュレータ 第3期 1995 FPGA
CPLDハードウェア
記述言語シミュレータ
コンパイラ
参考文献 | |
[1] | M.M.Mano著, 奥川・井上訳:コンピュータの論理設計. 共立出版,1983. |
[2] | 井上:計算機アーキテクチャ教育とその支援環境.情報処理学会論文誌, Vol.35 No.2, pp.155-163, 1994. |