情報工学の教育における情報技術の活用

拓殖大学工学部情報工学科における自走ロボットによる実験


高橋 丈博(拓殖大学工学部情報工学科助教授)
早川 栄一(拓殖大学工学部情報工学科講師)



1.はじめに

 本学では、情報工学科の3年次に情報工学実験IIの一部として「自走ロボット」を題材とした実験を行い、教育効果を上げている。情報工学実験IIでは1)JAVAを用いたプログラミング、2)画像処理、3)自走ロボット、の大きく三つのテーマがある。これらは半期ずつの構成で、学生は通年で2テーマ選択する。同じテーマを前後期で続けてもよく、その場合は後期でさらに進んだ内容に取り組む。自走ロボットの実験も基本コースと応用コースを設定し、続けて選択できる。機材の都合上、半期で学年の1/4程度の学生(約20名)が選択するが、そのうちの半分程度が続けてロボットの実験を行っている。


2.実験内容

 基本コースでは、市販の自走ロボットキット(Z80CPUボード、モータ、光センサなどからなる)を用い、

 1)自走ロボットの組立
 2)Cプログラムによる基本制御の修得
 3)応用課題
 4)発表

という手順で実験を進める。1)ではロボットの仕組みを実感してもらうため、敢えて簡単なハンダ付けと組み立てを行ってもらっているが、意外と好評である。2)ではC言語でライントレースプログラムを作成し実行する。3)では応用として図1のような碁盤目状のコースに線状のマークを付け、マークの数を数えたり、マークを利用して指定した規則で走行してもらう。この結果は最終回に発表し、デモ走行をする。  応用コースでは、レゴ社のMindStormsを用いて

 1)基本的な機能の理解と動作の修得
 2)Cプログラムによる制御
 3)応用課題
 4)発表

という手順で進める。プログラムはLinux環境でLegOSを用いたCプログラムにより開発させている。応用課題としては定められたエリア内のボールを見つけ、ゴールまで運ぶという課題を与え、ロボットの構造なども含めて自由に製作させる。
 ロボットやPCは1人1台で、ファイルサーバ機により共通のプログラム環境を提供する。人員は教員3名とTA3名で、10−12名のクラスを2クラス各週1回(2コマ+α)指導する。


3.効果

 ロボットは動作するしないがはっきりしており、PC上でのプログラミングしか経験していない学生にとっては非常に新鮮な題材として映っているようである。一方、ハードウェアの不具合などの影響でうまく動作しないこともあり、デバッグは困難である(つき合う方もつらい)。しかし、動作を観察しながら原因を推定し、プログラムに反映させる作業は学生の問題発見能力、プログラム作成能力の向上に効果を発揮している。


4.問題点と今後の課題

 現在、実験環境を整備しつつ運営しており、2コースの開発環境をLinuxに統一する作業を進めている。今後の課題としては教材の機能向上とともに、Webなどによる資料の配信などが挙げられる。
図1 基本コースの応用課題


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