私情協ニュース3

平成12年度 事務システム基礎講習会報告



 事務システム基礎講習会は、大学・短期大学の職員のうち事務情報システムに関する初心者を対象に、大学における情報化に関わる基礎知識ならびに事務情報システムの目標・特徴・手法の習得を目指し、大学職員の資質向上に寄与することを目的として企画・実施されている。
 今年度は、平成12年7月11日(火)から13日(木)までの2泊3日の日程で、静岡県浜松市のグランドホテル浜松を会場として開催された。
 今日、大学を取り巻く情勢として、教育・研究のグローバル化・オープン化、情報公開への対応などが強く求められており、21世紀を目前にして、大学がこれらの社会的要請に真に応えるべく教育・研究の使命を達成するために、その最も有効な手段として、教育・研究環境の情報化とそれらを支援する管理運営面における情報システムの高度化が重要課題となってきた。このような状況の中で、本講習会の開催意義も認められ、毎年、多数の参加者を得ているが、今回は全国の102大学4短期大学合わせて288名の参加があった。
 この講習会は、担当運営委員がそれぞれのテーマを分担して講師となり、資料や大学における事例を紹介しながら講義を行う形式で進められる。各講師は、それぞれの所属する大学で事務情報システム構築の経験を有し、推進役を務めており、その豊富な経験を活かした熱心な講義が特徴である。また、本年度は、昨今の急激な技術革新を踏まえ、テキストの全面改訂に取り組み、講義内容についても見直しを図った。このテキストはさらに推敲を進め、別刷りとして発行する予定である。
 そして、参加者の問題意識高揚のため講義に先立って行われる基調講演では、本年は、環境変化への迅速な対応が求められている企業の情報化戦略を学ぶため、鹿島建設株式会社情報システム部川崎克巳氏にご講演をいただいた。企業の待った無しに要求される急激な変化への対応に、ITをいかに戦略的に用いているか、また、どのような成果を得られているかということについて、具体的な事例を交えた貴重なお話を伺うことができた。「これからの情報化の進むべき方向は、顧客志向型のシステム構築と知識共有や協調的業務を支えるツールとしての活用である。」という氏のお話に、参加者からも大学における問題意識の低さを再認識し、大学における情報化戦略を考える上で大いに参考になったという声が聞かれた。
 さらに、例年同様、合宿研修の特徴を生かして、夕食後にフリーディスカッションの場を設定したが、極めて多くの参加者があり、大学相互の情報交換や基調講演に触発された議論、そして講師を交えての講義のフォローアップなどが活発に行われるとともに、講習会以降の情報交換に向けたヒューマンネットワーク形成の場としても有効な場となった。 
 全体を通して、参加者にはとても熱心に受講していただき、意識改革につながったと好評を得ることができた。講義の概要については後述する。
 最後に、講師の方々にはお忙しい中、講義の準備に加えてテキストの改訂に取り組んでいただき、心から感謝したい。なお、一般的なIT利用者と情報化に直接取り組む立場の初心者とでは獲得目標に差があることから、より満足度の高い講習会を目指して、今回の講習結果や参加者アンケートを参考に、研修運営委員を中心として今後内容をさらに充実させたいと考えている。そのために、今後とも関係各位の積極的な参加と成果を高めるための提言を期待して報告を終える。


講義概要

(1)業務プロセスの高度化とデータベース

担当:金子 勝信氏(大東文化大学)

 大学が保有するデータを業務に有効活用するため、大学の共有情報として統合的に蓄積・管理する「統合データベース」の考え方、利活用の方法について、大学事務の「業務プロセス」の高度化という視点で講義を行った。業務プロセスの仕組み、業務を客観的に把握し分析するための「データフロー図」について説明した上で、データベースの考え方や作り方、さらに、エンドユーザーコンピューティングやデータウェアハウスなどの情報の利活用についても解説した。

(2)プロジェクト管理とシステム運用のあり方

担当:千葉 幸喜氏(東北福祉大学)

 大学の実状に合わせた効果的な情報システムの開発・導入を行うための適切なプロジェクト管理手法や、導入後のシステムを安定運用するための運用保守体制のあり方について、様々な手法を比較しながら解説した。また、それぞれの大学で実施すべき事項や外部委託によって効率化できる事項などについても解説した。

(3)事務システムを支えるこれからのIT

担当:山田 憲男氏(日本女子大学)

 大学の事務情報システムがここ数年、ホストコンピュータ至上型のシステムから、ネットワークと1人1台のパソコン利用による分散システムに変化してきている中で、より高機能で広範な情報システムを構築するうえで、それを支えるIT技術について、今後の動向を含めて分かりやすく解説した。

(4)大学におけるネットワークの戦略的活用

担当:杉町  宏氏(立命館大学)

 各大学で整備が進んだ学内LANとインターネットの活用を中心に、その概念と大学における活用の意義と有り様を理解していただくことを主眼に講義を行った。具体的には、インターネットにおけるサービスの概要などについて解説し、利便性と裏腹にネットワークに潜む罠としてのセキュリティの課題について、大学における心構えと対処方法について解説するとともに、今後における大学の教育・研究・事務の各分野でネットワークシステムの果たす役割とその意義、将来展望について解説を行った。

(5)情報倫理とプライバシー保護

担当:岸田 陽一氏(津田塾大学)

 今日、学内で流通する情報の大半がコンピュータシステムで管理されているが、情報を管理する明確な基準を持つところは少なく、情報の「漏洩」や「改ざん」、「破壊」等の危険度が高くなっている。そのため、私情協の情報倫理教育振興研究委員会作成による「ネットワークの運用体制に関するガイドライン」(中間報告)を踏まえて、情報社会の特質に触れながら、学内で取扱われる情報の保護と情報倫理教育に関して基本的な考え方を解説した。


(文責:研修運営委員会副委員長・立命館大学 杉町 宏)


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