栄養学の教育における情報技術の活用
市丸 雄平 東京家政大学臨床栄養第2部教授
表1 栄養情報処理計画書 項目 細項目 入出力デバイス 1 1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7データベース 食品成分表
市販食品成分表
栄養所要量(運動強度)
機能性食品辞書・野草辞典
国家試験問題集
栄養・医学辞書
国民栄養の現状・公衆疫学表OCRまたはキーボード
OCRまたはキーボード
OCRまたはキーボード
OCRまたはキーボード
OCRまたはキーボード
Voice入力
OCRまたはキーボード2 2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6講義
電子ブック
CD-ROM
DVD臨床食品学
栄養学各論
臨床栄養学
解剖生理学
物理学
基礎栄養生理学OCR・キーボード・音声
OCR・キーボード・音声
OCR・キーボード・音声
OCR・キーボード・音声
OCR・キーボード・音声
ビデオ画像3 3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
3.6個人データの集積 年齢、身長、体重、BMIなど
日常生活活動(Time Study)
血圧、心拍、体温
肺機能、運動機能、胃電図
ホルター(心電図、血圧、運動、加速度、脳波)
ポリグラフ解析、睡眠解析(MIT-BIH CD-ROM)キーボード、マークシート
キーボード、タブレット
キーボード、RS232C
A/D変換
A/D変換
A/D変換4 4.1
4.2
4.3
4.4
4.5
4.6
4.7解析 平均、標準偏差
直線回帰、曲線回帰、スプライン補間
余弦曲線、コサイナー、対数曲線、ロジスチック
フーリエ解析、最大エントロピー
パラメトリック、ノンパラメトリック
χ自乗テスト、ANOVA、t-検定
多変量解析(判別関数・重回帰)関数の利用
関数の利用
関数の利用
関数の作成
関数の利用
関数の利用
関数の利用5 5.1
5.2図形表示 折れ線グラフ、棒グラフ、正規分布、ポアッソン分布
レーダーチャート・棄却楕円グラフの利用
グラフの利用・関数作成6 6.1
6.2
6.3栄養相談 評価プログラ 栄養評価判定プログラム
運動評価判定プログラム
日常生活行動評価プログラムマクロおよVBA
マクロおよVBA
マクロおよVBA7 7.1
7.2
7.3
7.4人工知能
栄養指導
栄養・運動処方、スポーツ栄養、身体障害
会社、調理処方(献立)
妊娠時の栄養処方
病院での栄養処方(腎臓食、糖尿病食、など)マクロおよびVBA
マクロおよびVBA
マクロおよびVBA
マクロおよびVBA8 8.1 インターネット レポート(Time Study、食事内容、栄養計算)
遠隔授業、遠隔講義、ネットミーティング9 9.1
9.2
9.3
9.4
9.5
9.6
9.7情報教育
HTMLに集約コンピュータ操作の基礎(ハード・ソフト)
アプリケーションの基本的使用法・DOS,UNIXコマンド
メール、ホームページ(HTML)、FTP, telnet
ネットワーク言語(HTML,Perl, Javascript)
表計算
データベース
Power Point
(1)データベース
データベースとして、文部科学省の食品成分表、厚生労働省によって作成されたライフステージにしたがった基礎代謝、栄養所要量、さらに独自に栄養辞書、国家試験問題集とその解答等、を用意しています。これを、情報処理演習の宿題として、学生に提出してもらい、統合化とその利用を計っています。例えば、食品成分のデータベースがあると、ある特殊な栄養成分がどの食品に多いか、ソーティングすることもできます。また、学生は図表の入力を行うことにより、表計算、図の作成の能力が上達します。後述する栄養計算ソフト作成の基礎データベースともなります。
(2)電子ブック、電子本棚、電子図書館
限られた時間で、学生に講義するには、電子ブックを用いて、予習および復習すると効果的です。例えば、電子ブックの臨床栄養においては、テキストの内容として(定義、疾患の病態生理・生化学、症状、診断にいたる検査法、予後、治療法(とくに食事療法・献立))等のテキスト部分と、図・表のハイパーリンク、インターネットとのリンク、文献、および学習効果判定のための質問が含まれていることが必要と思います。特に、質問に対する答えを学生があらかじめ、インターネットを介して教師に送信しておくと、教師は学生の疾患概念に対する理解度を知ることができ、講義の際の参考になります。また、講義では、マルチメディアを用いた、音、画像、動画像を組み込んでおくと視聴覚に訴えたインパクトのある講義が可能になります。しかし、医学系の画像、動画像は少ないのが現状です。
(3)栄養計算プログラム
プログラム作成能力を身に付けたい学生には、MS-Excel関数の使い方、Excelマクロおよびマクロを使ったVBAプログラムの講習を情報処理演習という授業で行っています。プログラム作成においては、プログラム作成用の教科書を利用すると組織的になって、第1歩より誤りなく授業ができます。しかし、この教育法では、プログラムを作成することが目的となりがちです。そのため、学生が興味をなくすことが危惧されます。したがって、本学では栄養計算作成のプログラムを作る能力を養うことを目的とする教育法を採用しています。献立あるいは食事の栄養計算には1日の食事区分を手で計算すると、慣れないと約1日を要すことを、学生自身が知っています。このため、学生は、臨床栄養の授業中に内職と称して献立作成栄養計算をやっていることもあります。栄養計算は多くの時間と精神的・肉体的疲労を伴います。このため、栄養情報処理教育の初めに、プログラムの実行をさせ、その動作を供覧し、このプログラムを学生自身が作ることができることをあらかじめ説明すると、学生はプログラム作成に意欲をもつようになります。したがって、「楽をする」ため、プログラムを作る困難を厭わなくなります。実際のVBAプログラムの言語は高校の家庭科で習う程度の簡単なコマンドを使用するため、学生は栄養計算プログラムを作成することが可能となります。また、市販のプログラムの仕組みを推測することも可能になります。習熟すれば、かなり複雑なプログラムを作ることもできるようになります。さらに、自分で作ったプログラムであるため、安価であり著作権法で罰されることもありません。栄養士の中には家庭科の免許をもち、中等および高等学校で教えることもあるため、栄養用プログラムの作成法を一度学習すると栄養以外でも家庭科のプログラミングの教授法を体得することにもなります。栄養計算は栄養科の生徒には基本的なものであるため、自分の食事内容あるいは教科書に書いてある献立、各種疾患の食事療法の献立内容を何回も打ち込むことにより、料理をみると栄養成分が推測できるようになると推測されます。
参考文献 | |
[1] | 市丸雄平: 長時間心電図−データベースの構築. 長時間心電図の臨床, pp.395-414,1985. |
[2] | 市丸雄平,矢永尚士(岡島光治編): Holter 心電図,心電図コンピュータ診断. pp.235-266,1990 |