特集
小泉 寿男(東京電機大学理工学部情報システム工学科教授)
中尾 雅躬(東京電機大学理工学部建設環境工学科教授)
情報システム工学科では、学生全員にノートPCを持たせ、学生への伝達・連絡、学生からの報告・質問、演習授業、講義授業に活用しています。本稿では、筆者(小泉)が担当している「情報システム工学入門」(1年次必須科目、学生数120名)を事例としてその内容を紹介します。システムの概要を次図に示すとおりです。
図1
(1)システム概要
作成された教材は、キャンパスのWebに搭載され、学生はキャンパス内また自宅からアクセスして授業の予習・復習に使用できます。授業時には、全員ノートPCを教室に持参してオンサイトサーバから自分のPCにロードします。教師は、教材を大スクリーン上に表示しながら講義を進めます。学生はスクリーンと自分のPCを同期させながら講義を聞きます。
(2)教材内容
教材内容は、内容のポイント、重点事項の解説、図表・写真、演習問題、宿題、関連URL、画面操作(BACK, NEXT, LIST, TOP)の構成となっています。
(3)教材(コンテンツ)作成
大学院生TAの協力により作成しています。
(4)教材の更新
講義前には更新しません(復習奨励策)。講義のときに更新内容表示、書画による追加します(授業中の緊張・注力策)。講義後にも更新、宿題追加します(復習奨励策)。
(5)講義中の学生の行動
メモ帳、紙ノート(片方または併用)を使用し、学生Q & 教師Aには、スクリーンを活用しています。また、教員 Q & 学生 Aには、学生のPCをスクリーン表示させるのに掲示板ソフトを活用しますが、現在はまだ実施していません。
(6)双方向性
授業中、授業前後に電子メールによる学生質問を受けておき、教材内容への反映と授業中の回答、および授業前後での電子メール回答で双方向性としています。
(7)本方式の効果
本方式によって、情報リテラシーの実習、予習・復習の促進、多様多数の図表・写真の取り込みにおいて従来よりも効果がありました。Q&Aをしやすいため、授業成立への学生参画意識が昂揚されたことも挙げられます。
(8)課題・問題点
現在の問題点としては、教材作成・更新に負荷がかかること、授業中にTAが必須であること、電子メールによる質問への回答が遅れることが挙げられます。知的所有権問題への統一的方策や、Web活用による教育効果の評価方法については未確立なので、今後の課題となっています。
(9)今後の取り組み課題
今後取り組む課題は以下のとおりです。
建設環境工学科における教材提供例として、平成12年9月から試験的に開始した筆者(中尾)による「ホームページからの教材提供」の実践例を紹介します。正直に言うと、「ホームページ制作」もこの時点で初めての経験でしたので、「魅力的スタイル」には程遠い状態です。「一つの例」ということで、内容の概要を述べてみましょう。
(1)コンテンツの項目
中尾研究室トップページ(http://www.g.dendai.ac.jp/~nakao/)のコンテンツ項目は次のようになっています。このトップページには、「シラバス」からのリンクも作成してもらっています。
(2)「講義資料・お知らせのページ」
「講義資料・お知らせ」のページ内容は図2のとおりで、本年度は3科目について掲載しました。
学部生対象のリンクには、「学内からアクセス」という部分がありますが、これは「建設振動学」と「建設プログラム演習B」の2科目(学部生用)については、前記サーバと異なる「教育用サーバ」にもほぼ同内容を掲載しているためです。学内からアクセスする場合に、学部生と大学院生とはネットワーク経路が異なるためか、開設当初に「学部生がホームページにアクセスできない」状態があったことが理由です。
図2 中尾研究室・講義資料などのページ内容
(3)「建設振動学」
「建設振動学」に関するコンテンツリストは図3に示すとおりです。この講義では、「講義資料(1)」「講義資料(2)」として配布した内容は、「講義で使用する式(全部)」をMS-Wordファイルとしたものです。毎回の講義はメディア表示装置を持つ教室へパソコンを持参して、MS-PowerPointで作成した講義内容を提示する方法で行いました。
<受講に関する注意事項>
講義計画を見る
講義資料(1)
レポート問題−1
講義資料(2)
レポート問題−2
レポート問題−3
レポート問題−4
レポート問題−5解答
レポート問題−6
レポート問題−7
レポート問題−8
減衰のある強制振動解析例
レポート問題−9
試験について
図3「建設振動学」コンテンツ
(4)「建設プログラム演習B」
「建設プログラム演習B」は、受講者全員がそれぞれパソコンを操作できる「パソコン教室」で演習を行うもので、内容はFortranが主です。「教材配布」は講義時毎回その場のネットワーク経由でのコンテンツ配布も行いました。そのためもあって、この科目では「ホームページ」を利用した学生はあまり多くなかったようです。コンテンツは図4に示す通りです。
「VFによるプログラム作成」説明書
9/26 テキスト
9/26 附属資料 (Celsius.for の名称で保存)
10/03 テキスト
10/03 附属資料 (Celsius_1.for の名称で保存)
10/10 テキスト
10/10 附属資料 (EXPRG1.for の名称で保存)
10/17 テキスト
ライブラリー No.1
10/17 附属資料 (EXPRG2.for の名称で保存)
10/17 附属資料-2
10/24 テキスト
10/24 附属資料 (EXPRG5.for の名称で保存)
10/24 附属資料-2
10/31 テキスト
10/31 附属資料 (EXPRG6.for の名称で保存)
10/31 附属資料-2
10/31 附属資料-3 (フローチャート例)
ライブラリーの説明書
「ライブラリーの説明書」の展開方法
ライブラリー No.2
11/14 テキスト
11/14 附属資料
11/14 附属資料-2 (EXPRG7.for の名称で保存)
11/14 附属資料-3 (EXPRG8.for の名称で保存)
11/14 附属資料-4 (EXPRG9.for の名称で保存)
11/21 テキスト
11/21 附属資料-1 (EXPRGA.for の名称で保存)
11/21 附属資料-2 (EXPRGB.for の名称で保存)
11/21 附属資料-3 (EXPRGC.for の名称で保存)
11/21 附属資料-4
11/21 附属資料-5
11/28 テキスト
11/28 附属資料-1 (DOSMP1.for の名称で保存)
11/28 附属資料-2 (データ)
12/12 テキスト
12/12 附属資料-1 (DOSMP2.for の名称で保存)
12/12 附属資料-2 (VB ソーステキスト)
12/12 附属資料-3 (SUBEX_VB.for の名称で保存)
12/12 附属資料-4 (VB 標準モジュール)
12/19 テキスト
12/19 附属資料-1 (FORTSUB0_VB.for の名称で保存)
12/19 附属資料-2 (VB 標準モジュール-1:Base_VB.bas)
12/19 附属資料-3 (VB 標準モジュール:FORTSUB0_VB.bas)
12/19 附属資料-4 (乱数データ-1)
12/19 附属資料-5 (乱数データ-2)
1/9 テキスト
1/9 附属資料-1 (FORTSUB0_VB.dll)
1/9 附属資料-2 (VB 標準モジュール1:BaseNew_VB.bas)
1/9 附属資料-3 (フォーモジュール-1:F_DLL_1p.frm)
1/9 附属資料-4 (フォーモジュール-2:Opr_1.frm)
:"操作_1.frm" の名称で保存
1/9 附属資料-5 (乱数データ:Rnf0001_a5.csv)
1/9 解答例図4「建設プログラム演習B」
(5)大学院講義「振動論」
大学院講義「振動論」教材提示のコンテンツを図5に示しました。講義は、「建設振動学」(学部)と同様に、メディア表示装置を持つ教室でのPowerPoint利用の方法で行いました。配布資料は、「PowerPointファイルをPDF化したもの」としています。大学院生の場合は「自分のパソコン」所持率が高く、自宅からも高い比率で利用してくれたようです。
以上、3例の講義等では、「レポート提出」は大部分「電子メール」を利用しています。うち、一部「その場で集める」ものもありました。「建設プログラム演習B」では、「演習」であることもあり、「時間内メール提出」が大部分でしたが、他の二つでは、「締切りまで」ということで行いました。この「電子メール提出」に関する学生側の違和感はまったくないと言えます。また、「Excelなどのソフト活用」の練習としても役立っているようです。
反省点を若干述べると、「建設振動学」では講義で使用した図なども配布を考えた方が良かったか?という点があります。「すべて配布すると、自分の手を動かして勉強するという習慣がますます減少するのではないか?」という配慮のために「式だけは、書取りなどに時間がかかるので配布」としたのですが、学生の一部から「図も配布して欲しかった」という感想がありました。また、大学院生からは「レポート問題解答を欲しい」の希望が出たのですが、本年度は準備が間に合わず1種類のみ提示できただけなので、これから「メール送付」ででも配布を考えようとしているところです。
「始めたて」でもあり、常時のホームページメンテナンスにも時間が取られますが、十分と言えないまでも、効果はあったと考えます。今後、さらに工夫を加えてみたいと思っています。
2000年度の進め方
「テキスト その1」
「テキスト その2」
レポート問題 No.1
「テキスト その3」
レポート問題 No.2
「テキスト その4」
レポート問題 No.3
「テキスト その5」
レポート問題 No.4
レポート問題 No.4 解答
「テキスト その6」
レポート問題 No.5
「テキスト その7」
レポート問題 No.6
「テキスト その8」図5−1「振動論」コンテンツ1
最終レポート問題
関連資料-1 (LAM.pdf)
関連資料-2 (EQR_pfep.pdf)
関連資料-3 (EQR_S_outline.pdf)
関連資料-4 (NAK_Eqres0.bas)
関連資料-5 (NAK_Eqres0.dll)
関連資料-6 (NAK_Eqres0_F.lib)
関連資料-7 (F_Eqres0.exe : 自己解凍圧縮ファイル)
関連資料-8 (CK_Eqres0.exe : 自己解凍圧縮ファイル)
<関連情報> 「アプリケーションプログラム」のページ゙に「関連資料-8」の
バージョンアップ゚実行モジュールを掲載しました。図5−2 「振動論」コンテンツ2
E-mail: | koizumi@k.dendai.ac.jp(小泉) nakao@g.dendai.ac.jp(中尾:良いアイデアがありましたら、メールででも、どなたかご教示戴けると幸いです。) |