情報教育と環境

帝京大学における情報教育と環境(八王子キャンパス)
-世界につながる最良最新の教育環境を-



1 はじめに

 本学は1966年に経済学部、文学部を擁する大学として創立され、1967年法学部、1971年医学部、1977年薬学部、1989年理工学部と社会の要請に呼応する形で、新学部の創設、設備の拡充整備を行い、さらに、その間大学院の設置をすすめ、総合大学へと発展してきました。このように、本学は発展に伴ない、医学部の2年次以上が東京都板橋区の板橋キャンパス、経済学部、文学部、法学部、医学部(1年次)が東京都八王子市の八王子キャンパス、薬学部が神奈川県津久井郡相模湖町の相模湖キャンパス、理工学部が栃木県宇都宮市の宇都宮キャンパスと各地に分散しています。
 一方、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータシステムは、今日では社会の隅々まで入りこみ、その社会に及ぼす影響ははかり知れないものがあります。こういった社会背景を踏まえ、本学では情報処理教育を重視し、各キャンパスごとに、学内LANを整備し情報教育を推進しています。
 さて、八王子キャンパスは創立地に位置し、本学の中核をなすキャンパスです。現在、医学部1年生、法学部、文学部、経済学部とその大学院、帝京大学短期大学の約17,000名の学生が在籍し、学んでいます。本稿では、本学の中で、最も規模が大きい八王子キャンパスを代表例として紹介します。


2 帝京大学八王子キャンパスネットワーク(TU−HOPE)

 1990年に教育用にパーソナルコンピュータ50台を備えたパソコン実習室(情報教育教室)2教室を開設して情報教育を開始しました。その後、1996年に、情報化社会の到来に伴い、インターネット接続した帝京大学八王子キャンパスネットワークを整備しました。これは教育、研究、事務のインフラとして、学生教員職員の全員が使用できるシステムで、その基本コンセプトは誰でも、いつでも、どこでも使えるオープンなネットワークであり、その意味で「TU−HOPE」(Teikyo University Hachioji OPEn network system)と名づけました。その後、40万冊の蔵書の検索が可能な図書館システムOPAC、就職情報システムの導入、マルチメディア教育の設備の増強などをすすめ、常に最新の情報処理環境を提供しています。また、医学部の板橋キャンパスでは、1996年にLANを開設し利用しています。

(1)システム概要

 学内LANはATM交換機2台・サーバ8台・ルーター13台・スイッチングハブによって構成され、通信速度は幹線LANが155Mbps、支線LANは10Mbpsです。インターネットにはSINET経由1.5Mbpsの専用回線で接続されています。サーバはDHCP(全学)のみがWindowsNTである他は、すべてUNIXマシンで、ユーザが直接パソコンを接続する情報コンセントは2,373個と大変多くなっています。これらによってWWWサービス、インターネットメールサービスを提供し、また、八王子キャンパスのホームページや、学部学科、事務局各セクションのホームページを開設運用しています。図書館のOPACシステムをはじめ10個のサブネットワークがシームレスに接続されています。学外へのインターネット接続はPROXYサーバを経由して行い、接続回線の負荷軽減と応答の迅速性を図っているほか、ファイヤーウォールによって外部と内部を分け、セキュリティを守っています。
 なお、医学部の2年次以降が学ぶ板橋キャンパスの学内LANは各棟間を1ギガビットスイッチで接続し、端末には100Mbpsで分配しており、インターネットにはSINET、OCNそれぞれ1.5Mbpsで接続しています。

(2)学生の学内LAN利用環境

 ユーザーが直接パソコンを接続する情報コンセントは2,373個をキャンパス内に広く配置しています。そのうち学生の使用する施設である情報処理教育教室、図書館閲覧室、就職室等に1,138個、またゼミ室、一般教室他に678個、合計1,814個と全体の76%を配置し、学生に対して、良好なアクセス環境を提供しています。
 学生には全員にU.I.D.を与え、フリーなWWW利用、メール利用が可能としています。しかし、このようなネットワーク利用にあたっては当然、ネットワーク社会の一員として要求される倫理があり、その教育も大学としては必要なことです。そこで、利用を許可するにあたり、LAN・インターネットに関する基礎的な知識教育とともに徹底した倫理教育とを実施しています。さらに、ネットワーク使用に際しては、接続時にユーザー認証を必要とするシステムとしています。これにより、学生の倫理意識の向上が図られています。


3 情報処理教育

(1)情報教育教室

 2種類の情報教育教室が用意されています。一つは、デスクトップパソコン教室で、5教室あり275台のパソコンが設置され、すべて学内LAN接続されています。
 次に、学内LAN接続可能なノートパソコン教室で合計14教室あり、630台のパソコンが同時に接続可能です。また、ゼミ室にも情報コンセントを設置し情報機器を駆使したゼミが行われています。これらの教室内には、液晶プロジェクタ、教材提示装置、大型スクリーン等を備え効果的な授業が行われています。また、学内LANとは別に教室内LANが利用でき、これにより、企業内のLAN利用と同様なLAN上の各種資源であるプリンター、サーバ、サーバドライブの共有、ファイルの共有、ファイルの転送、ドライブのアクセス制御、LANのセキュリティ管理などを学ぶことができます。これら教室では、ワープロソフト、表計算ソフト、ブラウザー、メールソフトなどの基本的なソフトウェアを常に最新の状態に保ち、さらに専門教育で使われる学科専用ソフト、統計ソフトなど高度なソフトウェアを揃えています。板橋キャンパスではデスクトップパソコン25台、プロジェクター2台、ソフトボードを備えた情報教育教室を1室が用意されています。

(2)情報教育

 大学の情報教育では単なるソフトウェアの操作教育ではなく、急速に発展する情報処理技術に的確に対応できる応用力をつけなければなりません。しかも、現時点では、大学で初めてコンピュータに接する学生も多いため、八王子キャンパスの情報教育は、基本的なコンピュータ活用能力を身につけることを目的とした情報リテラシー教育の科目とコンピュータの高度利用を目的とした実践的な応用科目を用意しています。リテラシー教育は主に1、2年次向けに開講しており、Windowsの基本的概念とその操作ファイルやフォルダの管理、ワープロソフト・表計算ソフトの基本的活用方法、インターネットによる情報検索を始めとする活用方法、メールの利用方法、ネットワークの倫理などについて学ばせています。例をいくつかあげると、学部共通の総合基礎科目として「情報科学」、医学部では1年次の基礎教育科目の必修科目「情報科学」、法学部の「コンピュータ講座」、文学部心理学科の「情報処理演習」、同部社会学科の「コンピュータ基礎実習」、同部国際文化学科の「情報処理演習」、経済学部の「情報基礎演習」などがあります。
 応用科目では、リテラシー教育の基礎の上に、各学科の専門分野と結び付けられた題材を採りあげ、コンピュータの高度活用を学ばせています。例をいくつかあげると、医学部では板橋キャンパスで3年次専門科目必修の「統合実習」の中の医療情報でコンピュータを使った多変量解析を含めた医学統計の基礎統計処理の技術およびインターネット上のMedcine(PubMed)を検索して関心のある文献を絞り込み情報収集をする文献検索等の情報収集の技術などを習得させ、文学部心理学科の「心理学基礎実験実習」、同部社会学科では多変量解析法の活用にまで至る「コンピュータ・データ解析法」「コンピュータ解析法」、経済学部の「情報処理演習A(プログラミング)」やデータ分析・インターネット上の統計諸表のデータの統計的解析法を学ぶ「情報処理演習B(データ処理)」などがあります。また、専門科目の中にはコンピュータの利用によってのみ成立する科目も多くなっています。


4 マルチメディア教育設備教室および授業

 情報処理設備は情報教育だけに使われるものではありません。通常の授業においても大幅な質の改善に有効で積極的な活用が期待されています。そのため、八王子キャンパスでは、マルチメディア設備を有する教室を次のとおり整備しています。定員70人の小規模教室2教室および定員200人の中規模教室をプロジェクター(パソコン画像、ビデオ画像対応)、教員用パソコン、情報コンセント、DVDプレイヤー、ビデオデッキ、教材提示装置、大型スクリーン、音響装置を備えたマルチメディア教室としています。また、定員400人の大規模教室が2教室あり、上記小規模教室の設備すべてに加えてプロジェクター・スクリーンは各3台を備え、教室内のどの席からも良好な視認性を確保しています。そこでは3席に一つの情報コンセント合計133個を備え、学生参画型の授業に対応しています。これらの設備によって、語学教育のみならず、従来の黒板使用による講義形式で行われていた授業においても画像やインターネットで得られる最新情報を使用した授業が行われ始めています。


5 授業外での活用

 情報教育は授業時間内だけでは十分ではない場合が多いため、八王子キャンパスでは、授業時間以外にも自由に学内LANを使用し学習できる環境を用意しています。第一にデスクトップパソコン教室に自由練習時間を設定し、その時間は学生が自由にパソコンやLANを使用し学習できます。第二に情報コンセント教室1室を開放し、随時学生がパソコンを持ち込み、学内LANへ接続して学習できるようにしています。第三に図書館内の閲覧室に情報コンセントを設置し、自由に使わせています。また、336人収容の図書館の学習室に情報コンセント・電源コンセント設置しています。図書館ではこの他に25人収容のマルチメディア機器室を設け、学生が最新の教育ソフトを利用しています。
 社会の情報化は就職活動においても大きな変革を促し、学生はインタ−ネットなしで就職活動をすることは不可能です。このような社会と直接接触する活動において、情報技術を実地に利用することは教育の一環として重要な意味を持っています。これに対して、八王子キャンパスでは、就職室、就職閲覧室でデスクトップパソコン10台と情報コンセント30個を設置の上、ノートパソコンの貸し出しを行い、学生に利用させています。


6 おわりに

 八王子キャンパスの学内LANは教育・研究のインフラです。したがって、その安定運用、システムの継続的機能向上、サービスの向上は必須です。一方、情報化社会の発展はドッグイヤーと言われるように急速ですが、大学においても時代に遅れることなく教育・研究環境を常に最新に維持していかなければならないと考えています。八王子キャンパスでは、情報処理センターがおかれ、誰でも、いつでも、どこでも使えるTU−HOPEをネットワーク社会の陰の部分から自身を守ると同時に、ネットワーク社会の良き一員であるためには、高度なキュリティを確保しつつ、有効な教育・研究設備の一つとして維持・強化に努めていきたいと考えています。


文責:帝京大学八王子キャンパス
情報処理センター 宮地 利彦


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