情報教育と環境

東邦大学におけるマルチメディア教育環境



1 はじめに

 東邦大学習志野キャンパス(千葉県船橋市)では、計算機教育およびインターネットのリソースの活用のため、4年前から計算機実習室を開設し薬学部・理学部で共同運営してきました。この施設では、キャンパスに通う学部学生および大学院生全員を対象として、主に授業での利用、授業の予習復習、レポート課題作成のためのオープン利用、電子メールやホームページの閲覧などのサービスを提供しています。発足当初は、計算機やネットワーク「を」教える施設という色彩が強かったのですが、稼働開始から4年過ぎようとしている今日では、計算機やネットワーク「で」教える施設が重要になってきつつあります。例えば語学や歴史などの教養教育も可能であるべきであり、この施設を利用した授業も試験的に行ってきました。また、利用頻度も当初予想した以上に高く、授業時間割の調整が難しくなったり、オープン利用時の待ち行列も目立つようになってきました。そこで、新たな施設を作り、2000年12月にオープンしました。


2 新たに設置したマルチメディア2教室

 新しい施設は、これまでの計算機実習室の延長として教室数や端末数を増やすことでは意味がありません。そこで、計算機やネットワークを含めたマルチメディア機材を授業の道具として活用できる教室(マルチメディアスタジオ)と、学生がオープン利用の延長として自由な雰囲気で気軽に過ごせる空間を提供するラウンジ(マルチメディアラウンジ)の二つを新設し、さらに既存の計算機実習室をマルチメディアラボラトリとしてより専門性の高い授業とその予・復習に特化して利用することにしました。この三つの施設を有機的に使い分けることによって、各々の用途に適したより優れた環境を提供することができます。
 マルチメディアラボラトリ(旧計算機実習室)は、計算機教育を主眼に置いたもので、PC86台を、WindowsNTおよびLinuxのマルチブートシステムとし、WindowsNTとLinuxの各々に対する認証とユーザファイルを管理するサーバ群を置く構成となっています。WindowsNTには、Officeを初めとする一般的なアプリケーションや、例えばChemDraw3Dなど個々の学部や学科の授業に必要な教育用ソフトがいくつか準備されています。また、Linuxには、プログラミング教育に用いる言語やツール、Mathematicaなどのアプリケーションが準備されており、ユーザは、PCの電源投入時にいずれかのOSを自由に選択して利用することができます。
 この施設は今まで授業と一般開放を時間調整しながら利用してきましたが、スタジオ、ラウンジが開設されたため、今後はより専門性の高い教育に利用することを主眼に置いて、計算機を操作する授業と、授業に関連した作業(予習復習、レポート作成)についてのみ開放利用する施設として特化して利用しています。
 マルチメディアスタジオは、キャンパスにある図書館内にこれまであった視聴覚教室を全面改装し、100座席のうち64席にノートパソコンを用意し、電磁ロックをかけた引き出しにしまうようにデザインしてあります。また、3台のプロジェクタと大型スクリーンで、教卓のパソコン画像、書画カメラ、デジタルビデオ画像、DVD画像などを自由に選択して投影できるシステムを導入しました。この教卓システムでは、照明のコントロールや、ノートパソコンをしまってある引き出しの電磁ロックの開閉、また教室風景を映し出すビデオカメラなどのコントロールも可能で、遠隔授業への活用なども視野に入れています。ノートPCにはWindowsNTが準備され、これまでマルチメディアラボラトリで行ってきた授業のアプリケーションがほとんど使えるようになっているほか、語学用のソフトも導入しました。ここでは、計算機を教える授業ではなく、計算機やネットワークを情報伝達の手段・道具として、マルチメディア教材を活用し、効果的なプレゼンテーションを用いた授業を期待しています。
 マルチメディアラウンジは、学生が自由に計算機やネットワークを日常的な道具として用いて、電子メールやインターネット上のホームページ閲覧、レポートやプレゼンテーション作成などができる場を提供しています。そのため、学生が気軽に自由な雰囲気で過ごせる空間を目指したデザインを考えました。またシステムの要件として、次の点を考慮しました。運用上、なるべく管理者が不在で済む、トラブルが少ない信頼性の高いシステムであること。初心者の用途として電子メールとインターネット上のホームページ閲覧ができ、また少し慣れた学生がマルチメディアラボラトリ・スタジオと同じMS-Officeのワープロなどを利用できることなどが挙げられます。一方で、OSの使い勝手の違いはウィンドウシステムをうまく設定することでほとんど無視できます。一方で、Officeを中心とするアプリケーション群を使いたいという要望も高くなっています。
 これらの要件を勘案して、SunRay1を端末とするシステム構成とすることにしました。この構成はハード・ソフト両面から我々が期待する信頼性や保守の容易性を満足するだけでなく、SunRay1のシステムデザインの新規性と、端末のプロダクトデザインの斬新性も採択の大きな要素です。これに伴い、教室も円形テーブルを幾つか配置し、ユーザが端末に一人で向かってバーチャルな世界に没入してしまうのでなく、目線があって会話が成り立つような、一般的な意味でのラウンジの機能を持たせることも重視しました。SunRay1の端末はもともとはUNIX上のXwindowを表示する仕組みですが、WindowsNTアイコンをクリックするとWindowsNTそのままの画面がウィンドウとして開くようにし、初心者の学生にも容易にWindowsNTやOfficeアプリケーションにアクセスできるようにしました。言い換えれば、あたかもWindowsNTというOSが単なるアプリケーションであるように見え、アイコンによって開くウィンドウの中はWindowsNTと何ら変わりありません。この実現のために、Citrix Metaframeというシステムのためのサーバを別に用意しました。
 さらに、三つのマルチメディア教室間で認証とファイルシステムを共有・統一し、いずれの教室からも同じように利用することができます。またマルチメディアラウンジは、なるべく管理者不在で機能できるように、プリンタなどの機械的な動作をする機器を一切置かないことにしました。それを補完するために、無線LANによってネットワークにアクセスできるサービスを用意し、PCカードを貸し出すことによって自分でノートパソコンを持ち込んで使えるようなシステムも別途導入しました。
 この三つのマルチメディア教室間を取りまとめるサーバ群は、ネットワークサーバ(UNIX NIS認証およびファイルサーバの機能も兼ねる)を1台、WindowsNTサーバを1台、およびSunRay端末をコントロールするサーバを2台配置しています。また、ラウンジ向けには、WindowsNT Terminal Server Edition&Citrix MetaFrameサーバを2台設置、SunRay端末上でWindowsの利用が可能となっています。ユーザーアカウントは、UNIXとWindowsNTサーバの二重管理となりますが、アカウント発行に関してはSolarisPCNetlinkを駆使し、UNIXでのアカウント発行時にNTサーバにも同時に発行されるようにしています。またパスワードの変更もパスワード変更CGIを作成、Webページからのパスワード変更を可能としており、変更後はUNIX/NTサーバ両方同時にパスワード変更が行われるようにしています。また今回、メールソフトに関するトラブルを回避するためWebMailを導入しました。メールソフトに依存しないメール環境への移行を目指しています。管理面においては、SunRay端末はモニターだけの構成となるため、端末トラブルなどはまったくありません。また、ホームディレクトリが散逸せずに一元的に管理できるなど、端末管理やユーザ管理そしてサーバ管理の面でメンテナンスコストの削減に役立っています。
図1 マルチメディアネットワークの構成図


3 おわりに

 今後、情報システム技術のドッグイヤー的進歩を考えると、今回本学で構築したシステムの先進性もやがて新しい情報技術に変革するかもしれません。しかし、多少冒険的な面もありましたが、新たな試みを実践できたことで今回のプロジェクトには一定の満足をしています。学生や教職員がこの環境をどのように活用し発展させていくのかを期待しています。


文責:学校法人東邦大学
法人本部システム室


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】