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「Microsoft Word」によるレポート・論文作成の指導


栗原 裕(愛知大学経済学部助教授)



1.はじめに

 筆者は、経済学部に所属し国際経済学を主担当科目として教えています。専門分野は国際経済学、ヨーロッパ経済に関する制度、実証的な分析ですが、対象分野は米国、中南米、アジアなどの各国・地城の経済事情、国際金融論と比較的広く、さらには地球環境問題なども対象としてきました。最近では、いわゆるITと呼ばれる分野や、メディアを用いた教育手法についても研究を始めていますが、これら研究のための情報収集、交換、成果の発表には、和文、英文のワープロソフトの利用は欠かせません。
 本稿では、「Microsoft Word」を用いた、レポート、論文の作成方法について概説します。筆者がこのソフトを用いたレポート、卒業論文などの指導を開始して、10年近くが経過しています。同ソフトは、個人レベルだけでなく、企業レベルでも世界中で広く用いられています。多くの大学では、現在、このソフトないしは「ジャストシステム一太郎」を用いたワープロソフトの利用法の講義を1年次に必修科目として課しているように思います。しかし、Wordは、DTP (Desk Top Publishing)用のソフトではないので、情報関係を専門に担当されている方々ですら、種々の間題に直面した経験を少なからずお持ちのことと思います。
 特に、レイアウトや印刷をしたり、ネットワークまたはフロッピーディスクで他者に文書を送付したとき、問題が出てくるケースが見受けられます。筆者も実際に何度かそれらを経験した一人です。図・表の挿入や書式などやや複雑に作成した文書を送・受信したところ、受信者の開いた文書ファイルが送信者の意図しないものであったり、印刷が思い通りにならないと、学生から相談を受けたことがあります。  本稿では、パソコンを利用して、Wordを用いた文書を作成する場合に起こりうる問題と、解決策としての、操作方法の要点を提示します。ただし、レポート、論文の内容に立ち入った分析はしませんし、Wordの基本的操作方法についても言及しません。また、前提としているのは、Window上でWord2000を用いる場合を想定しており、Word95、97、98(注)あるいはMacintosh(注)では操作方法が異なるケースもあることをあらかじめお断りしておきます。


2.準備と執筆

(1)準備

 執筆にあたり、まずWordの作業環境を整えることが必要です。もっとも留意すべきことは、プリンターの設定です。Wordでは、プリンター名を実際に出力に用いるプリンターに自動調整する機能が付加されています。学生は、卒業論文の作成時などには、学校、自宅で作業をし、印刷を学校で実行することが多いので、プリンターはもちろん、OSやフォントの設定に相違があれば、レイアウトが自動的に変ってしまいます。
 次にオートコレクト機能は解除しておくとよいでしよう。この機能は、例えば段落の冒頭に「1)」と入れると、改行するたびに「2)」 「3)・・・」と表示されるのですが、レポート、卒業論文などの作成時には、煩雑になることが多くなります。解決方法は、「ツール→オートコレクト→入力オートフォーマット」を選び、必要な各機能を外します。
 この他、Wordでは、編集画面に挿入する図やテキストボックスなどのオブジェクトは、「文字列と一緒に移動する」が標準となっています。卒業論文等の作成では頻繁な校正作業が必要なので、オブジェクトと文章を独立させ、これを段落に固定して、文字を後から記入してもオブジェクトが移動しないようにする方が便利です。これを行うには、アンカー記号を用います。アンカー記号を有効にするには、「ツール→オプション→表示→アンカー記号」をチェックします。
 保存方法についても、バックアップファイルを作成しておくと、突然のフリーズなどに対処できます。これは、「ツール→オプション→保存のダイアグラム→バックアップファイルを作成」をチェックし、「高速保存」をオフにします。

(2)文書の執筆

 ここまでくると、次に執筆にかかることになります。この段階では、レイアウトはあまり意識する必要はありませんが、文書の作成、数式、図、表の作成に関しては、事前に以下の点に留意をしておくとよいでしょう。
 まず、文書ですが、和文は全角、欧文は直接入力(半角入力)を守るべきです。混在したものを作成し、インターネットなどを介して送付すると、文字化けが起こることがあるので注意すべきです。もちろん、機種に依存すると思われる文字、外字、記号、あるいは斜字体、(ギリシャ記号などの)イタリック、罫線はできるだけ避けるべきです。「上付き」、「下付き」も、ネット利用の場合には避けるべきでしょう。外国に論文を送付する際には、この点は特に気をつけねばなりません。むろん「・(中黒)」など、日本語にしかない機能は用いてはいけません。意外に多いのが、スペースで位置をそろえて失敗するケースです。位置を合わせるには、タブを用いた方が無難です。送り仮名などの統一には、「編集→検索」を用いて確認することを勧めます。
 数式には、他のソフトを用いるよりも、できうる限り、Word内の数式エディタを用いる方が確実です。これは、「挿入→オブジェクト→Microsoft数式3.0」から起動します。数式で気をつけなければならないのは、ギリシャ文字です。先にも述べましたが、ギリシャ文字の斜字体は共通のフォントとしていません。なお、フォントはSymbolがよいようです。

(3)図表の作成

 Wordで扱える図や写真のファイル形式は多く、なかには、多くの読者の方々が使用したことのないものも含まれているでしょう。しかし、他人がそれを使用する場合には、配慮の必要があります。
 一般に、JPEG、TIFF、BMPはほとんど問題がないでしょう。EPSについては、一部の印刷機では印刷ができないので、避けたほうがよいと思われます。また、拡大、縮小、トリミングなどの機能も印刷の際、問題が発生することがありますので、使用を避けます。
 表については、保存、印刷に関して特に留意すべき点はありません。唯一あげるとすれば、表の左右幅を段落の幅以外に設定したい場合ですが、これは「ファイル→ページ設定→余白」で設定します。


3.レイアウト

 レイアウトは一度で完成することはないでしょう。その際、フリーズなどの突発的な事故を避けるためには、「上書き保存」を頻繁に行います。またうまくいかなかった揚合には、上のツールバーの「元に戻す」を使用します。
 図の挿入ですが、「編集→コピー→(右クリックで)貼り付け」が便利ですが、うまく印刷されないことがあります。これを回避するには、「編集→形式を選択して貼り付け→適宜選択」という手法をとると確実です。
 図を文字と連動しないように設定するには、「右クリック→図の書式設定→レイアウトのタブを選択→詳細設定→文字列の折り返しのタブを選択→上下」に設定します。レイアウトから行内を選ぶと、文字といっしょに図も移動します。通常はこの形に設定がなされています。むろん、図は、全体のバランスを考慮に入れて、大きさを調整します。
 表のレイアウトも同様です。「編集→形式を選択して貼り付け」を選ぶと、レイアウトが自由にできます。
 図表番号の挿入ですが、「挿入→テキストボックス→縦書きあるいは横書き」を選択し、クリックまたはドラッグで挿入します。テキストボックスの罫線を消去したいケースが多いと思われますが、「右クリック→テキストボックスの書式設定→色と線のタブ」「塗りつぶしなし」「線なし」を設定します。複数の図表をそろえるには、「図形描画→図形の調整→配置/整列」を選択します。
 Microsoft Excelなどで作成した図やグラフを用いる場合には、その背景を白色にすべきでしょう。通常、灰色に設定されていますが、印刷した場合に見にくくなります。


4.印刷と送付

 プリンター使用の留意点は先に述べたとおりです。
 写真のある文書を印刷する場合は、やはり解像度の高いレーザープリンターのほうが好ましいでしょう。
 学生がネットワークでレポートや論文を送る場合でも、上述の方法で、ほぼ問題はないものと思われます。しかし、それでもトラブルが発生するケースがあります。これを解決する方法の一つはPDFファイルの利用です。これで、ファイル間の互換性の間題はほぼ解決します。Adobe Acrobatには、PDF WriterとDistillerの2種類のPDF変換ツールがありますが、後者の方が、解像度などを細かく設定できます。多くの研究者や大学ではこのソフトを保有しています。


5.おわりに

 以上、筆者の経験をベースにWordを用いたレポート、論文の作成方法について述べました。本稿がきっかけとなり、情報交換がなされ、学生の勉学意欲の昂進と活発な研究発表が行われることを期待します。なお、以下の文献にパソコンのDTPについて詳細が述べられていますので、参考にしていただきたく思います。

参考文献
[1] 西上原裕明: Word DTP実践テクニック. 技術評論社, 1999.
[2] 小林健一: パソコンによる論文の書き方入門. 日本機械学会誌(連載),
2000.その他, Wordに関する諸資料.
 
Word95、97、98、2000はMicrosoft社の登録商標です。
同じくMacintoshはApple社の登録商標です。


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