情報教育と環境
甲南大学における情報教育環境
1 本学における情報教育環境整備の系譜
本学は1951(昭和26)年に開学し、このたび創立50周年を迎えました。5学部(文学部・理工学部・経済学部・法学部・経営学部)と大学院を擁する総合私立大学へと発展し、約1万人の学生が充実したキャンパスライフを送っています。
本学の情報教育への取り組みは比較的古く、1959年に始まります。1995年にはキャンパスワイドな情報ネットワーク“KUKINDS (Konan University - Konan Information Network and Database System)”を構築し、UNIXサーバとPCクライアントによる環境へと移行しました。
加えて、1996年には情報リテラシー教育を担う「情報教育研究センター」(以下、センターと略す)を発足させ、学生がパソコンやインターネットを活用できるようになるための礎を築けるよう教育を行っています。
1997年以降は、センターを中心として様々な教育の情報化に関する取組みを行ってきました。
● 無線LAN環境の導入('97〜'00年度)
郵政省・文部省ジョイントプログラムである、「マルチメディア・モデルキャンパス展開事業」の支援を受け、学内全域に無線LAN環境を構築し、同時に様々な教育支援システムを開発しました。また、研究室や学生に対し無線LAN端末を貸与し、無線LANインフラを活用したゼミや講義を行ってきました。
● マルチメディア教育支援制度('98年度〜)
マルチメディアを活用した授業の活性化のため、各学部、センターよりプロジェクトを公募選出し、予算を付けて技術的な支援を行いました。
● マルチメディア教育コンテンツ制作プロジェクト('99年度)
郵政省の「創造的通信・放送システム開発事業」の支援による、インターネットを活用した大型コンテンツをいくつか制作し、実際の授業に役立てています。
● 新5号館システム('01年度竣工)
インターネットやマルチメディアを活用した教育を行うための施設です。学生がノートパソコンを携帯することによって、講義の予習・復習など学習のための情報を引き出し、あるいは発信することができます。
ノートパソコンは主に情報コンセントに接続するようになっていますが、無線LANによる接続も可能です。
● 甲南S-net計画(2001年度〜)
本学では、2001年度より学生一人一人のノートパソコン携帯を推奨するとともに、自宅などから大学にアクセスし授業に関する情報を得ることができるよう、インフラ整備を行いました。このS-net計画により、学内や自宅から学内外へ自由に情報アクセスし講義の予習・復習やレポート提出などに役立てることができます。
以下では、まず本学のネットワーク環境について概説したあと、上記プロジェクトのうちいくつかについて説明します。
2 甲南大学のネットワーク環境-KUKINDS
現在(2001年8月時点)のKUKINDSネットワークシステム構成について説明します。
図1のように、学内の各建物は100MbpsのFDDI(Fiber Distributed Data Interface)によって接続されています。インターネットへは、学術ネットワークのORIONSおよび商用プロバイダのUUNET経由で接続しています。ORIONSは主に研究室からの学術目的のアクセス、UUNETはセンター内で学生が使用するパソコンからのアクセスに用いています。
センター内は各教室とサーバ間を高速のGigabit Ethernetで接続しています。サーバの中枢には富士通のAP3000があり、16台のノードがAP-netと呼ばれる高速のネットワークで接続されています。各ノードは目的に応じて様々なサーバとして稼働させています。その他、Windows 2000ベースのファイルサーバや認証を行うためのDC(Domain Controller)などがあります(図2)。
昨今は、クライアントパソコンのCPU能力の向上が著しく、DVDの動画(MPEG2)をソフトウェアで処理し画面上に表示することができるようになりました。そこで、センターのパソコンにDVD-ROM装置を内蔵し各パソコンでDVD教材を鑑賞できるようにしました。
また、このようにマルチメディア素材を取り扱えるようになると、学生が作成したりダウンロードしたファイルの大きさがフロッピーディスクの容量をはるかに越えてしまうことになります。そこで、DVD-ROM/CD-R/RW兼用装置とし、こういった大容量ファイルをCD-RやCD-RWに格納できるようにしました。
マルチメディア準備室の設置により、以前より教員や学生が容易にマルチメディアコンテンツを作成できるようにはなっていますが、全パソコンにDVD-ROM装置を導入した関係上、DVD-Rのオーサリングができる機材を新たに導入しました。教員がDVD-Rを使用して動画をより多用したマルチメディア教材を作成し配布することにより、学生が授業内容をより直感的に理解することができ、予習/復習にも役立てることができるようになります。
|
図1 学内ネットワーク略図 |
|
|
図2 センターサーバ構成図 |
3 無線LAN環境
いつでもキャンパス内のどこからでもネットワークアクセスできるよう、無線でつなげることのできる携帯型情報端末から学内ネットワークに接続するための無線LANアクセスポイントを学内各所にトータル150台余り設置しています(図3)。
これにより、デスクトップパソコンからキャンパスLANに有線で接続する従来の利用形態に加え、学内各所において無線LAN端末をコードレスで接続し情報活用する形態がさらにつけ加わることになります。
これらハードウェアの設置および無線LANを意識した教育支援ソフトウェア開発やサポートを行うため、本学は三菱電機(株)との共同研究という形をとって実験を行いました。
|
図3 無線LANアクセスポイントの設置状況(白抜きの建物) |
4 新5号館におけるマルチメディア教育環境
マルチメディア学習ゾーンというコンセプトで構築された5号館は、ノートPCを持った学生が自由に出入りでき、各教室や自習室などからネットワークを通じて学内外の様々な情報資源を活用しながら、知的能力とコミュニケーション能力を鍛えることができる「高度知的工房空間」を目指しています。
図書や新聞のほか24台の情報端末を設置し、判例情報、年表、会社要覧など各種のデータベースを利用できるサイバーライブラリは、現役学生だけでなくOBにも開放、オープンな形での運用を行っています。
このため、5号館には最新のネットワーク機器やサーバを導入するとともに、情報コンセントや無線LANセキュリティの確保、すなわち本学学生や教職員でないと情報ネットワークを使用することができない仕組みとして「ハイセキュリティLANシステム」を(株)日立製作所とともに約1年をかけて開発しました。
5 まとめ
インターネットを活用することが当たり前の時代を迎えたことにより、情報化における進化の度合いがこれからさらに加速するものと思われます。今後も、常に最先端の情報技術に目を光らせながら、3年後、5年後にも陳腐化しない学内情報教育環境づくりに励んでいこうと考えています。
文責: | 甲南大学 情報教育研究センター 助教授 鳩貝 耕一 |
【目次へ戻る】
【バックナンバー 一覧へ戻る】