被服学の教育における情報技術の活用
猪又 美栄子(昭和女子大学生活科学部教授)
高部 啓子(実践女子大学生活科学部教授)
芦澤 昌子(青葉学園短期大学人間生活学科教授)
第8週以外でマルチメディアを使用する例としては、第3週、第12週、第15週などがあります。第3週では、人体の個体差や体型による身体寸法の変化を検討します。身体計測をした後、ネット上に各自の身体寸法データベースを構築し、中から10例を取り出し個体差について検討します。10例の中で体型によって大きく変化する数値と、あまり変化しない数値で身体部位を分け、被服パターンのグレーディングの部位について理解させます。第12週では異なるサイズの被服原型パターンを重ね、サイズによる違いを理解させます。第3週で行った計測値からの結果と合わせてグレーディングについて理解させ、グレーディングの方法を検討させます。
表1 「パターン設計論」シラバス 科 目 名 学年・学期 授業形態 単位・時間 授業規模 パターン設計論 2年前期 演習 2単位・180分 30名
情報技術の活用 使用ソフト テキスト 履修前提条件 アシスタント CAD
Data Base
デジタルカメラ自己開発ソフト
Visual Basic
Power Pointプリント配布 被服構成学またはそれに準ずる科目(被服体型学等)を履修していること 2名
設備例: コンピュータ 31台 デジタイザー(A3) 6台 スキャナー 3台 プリンター 3台
大型プロッター 1台 液晶プロジェクター 1台
授業の目的
人体を3次元的に計測したデーターから形態的特徴を把握し、被服を設計する場合の最も基本的な問題である人体形態と被服パターンの関係について学ぶ。3次元計測値に基づく人体近似モデルの観察や体表展開図と包絡面展開図との比較から、人体形態と被服パターンとの関連を考察する。
週数 授業計画 内 容 第1週 導入授業 授業のねらいおよび概要、計画について説明する。機器操作の説明と演習。 第2週 人体の形態をとらえる(1) 3次元計測装置やマルチン式人体計測器を用いて、人体の寸法形態を測定する。 第3週 人体の形態をとらえる(2) ネット上にデータベースを構築し、中からランダムに10例取り出し個体差について検討する。 第4週 人体近似モデルの作成(1) 人体計測値から、コンピュータ内に人体近似モデルを作成する。 第5週 人体近似モデルの作成(2) 人体計測値から、コンピュータ内に人体近似モデルを作成する。 第6週 体形観察 人体近似モデルをディスプレイ上で観察し、身体寸法・体形、体つきの特徴を調べる。 第7週 体表展開図を作成 人体の体表面を切り開いた形の近似体表展開図を作成し、人体立体を平面に表す。 第8週 布で人体を覆った形の包絡面モデルを考える コンピュータで包絡面モデルを作成し、被服パターンの基礎となる包絡面展開図を描く。 第9週 人体形態と被服パターンの関係を理解させる 人体近似モデル、体表近似展開図と包絡面展開図を比較することにより、被服パターンのゆとりやダーツの位置と量などについて考え、理解させる。
Web上にのせた人体近似モデルの比較を行い、個体差を理解する。スカートを模した包絡面展開図と腰部形状モデルの展開図を比較しゆとり量の必要性を理解する。第10週 被服原型の作成(1) 各自の寸法に合わせた被服原型を作成ソフトを用い作成する。 第11週 被服原型の作成(2) 各自の寸法に合わせた被服原型とを人体近似モデルと比較する。 第12週 グレーディングの意味 異なるサイズの被服原型パターンを重ね、サイズによる違いを理解させる。
いろいろなグレーディングの方法を検討する。第13週 プレゼンテーションの準備(1) Power Pointを使用したプレゼンテーションの準備をする。 第14週 プレゼンテーションの準備(2) Power Pointを使用したプレゼンテーションの準備をする。 第15週 まとめ 発表。講評。
評価
平常点・発表成果・レポートにより総合評価
図1 三次元計測装置 図2 腰部4水平断面の計測位置 図3 腰部4水平断面の計測点 図4 腰部形状モデル、包絡面モデルとそれぞれの展開図 大腿が横に張っている場合、腹・腰・大腿を布で被った形の包絡面モデルの周長が大きく、この例では腰囲と包絡面周長の差は8cmである。
1) | データ入力してすぐに観察できることや、腰部形状モデルや包絡面モデルについては、自分では見ることのできない方向から観察ができ、好評でした。 |
2) | コンピュータの使用により、学生が繰り返し試行し考えることができます。 |
3) | 包絡面モデルとその展開図の作成を通して、身体の形と被服原型について理解を深めることができました。この場合は、ストレートスカートのシルエットを作るために必要なゆとり量を目で確認することができました。特に、様々な体型を比較することで、その効果は大きくなります。 |
4) | Webを利用することにより、計測値をクラス単位でまとめ、比較することができるので、体型の個体差についての理解を深めることができます。 |