被服学の教育における情報技術の活用
橘 喬子(夙川学院短期大学家政学科服飾デザイン専攻助教授)
開講年度: 2年次 通年 授業時間: 90分×2コマ 単位: 2単位 教室環境: CG教室(Power Macintosh10台他)デザイン実習室(教卓等映写カメラ等) 使用ソフト: Photoshop、Illustrator、4Dbox(アパレルCG、テキスタイル)、島精機ATDシステム、Netscape Navigator、DressingSim LookStailor(3DCGバーチャルファッションショー)
第1週 導入授業
アパレルにおける企画・生産・MDなどのCGおよびCADの活用事例を資料などにより提示し、アパレル企画の流れや組立方を理解させます。5W1H or 5W1P(いつ、誰が、何を、なぜ、どのようにして、いくらでどこで売るのか。そしてどのようにプロモーションすべきかなど)第2週 アパレル企画(1)
ターゲットマップの作成(CG活用)
マーケッティングリサーチおよびストリートウォッチングを事前にしておき、ターゲットのライフスタイルを設定します。第3週 アパレル企画(2)
コンセプトマップの作成(CG活用)
テーマの設定とイメージマップを作成第4週 アパレル企画(3)
ファッションイメージのポジショニングおよび分析とファッションイメージマップの作成(CG活用)第5週 アパレル企画(4)
ファッショントレンドマップの作成(CG活用)
ファッショントレンド情報をインターネットや雑誌やビデオなどからその動向を把握し、必要な情報を取捨選択します。第6週 アパレル企画(5)
テキスタイルデザイン企画提案(CG活用)
チェックなどの先染め織物や水玉、花柄などのプリントデザインの制作、リピートおよび配色展開第7週 アパレル企画(6)
ファッションデザインバリエーション(CG活用)とイメージのポジショニング第8週 アパレル企画(7)
ファッションデザインにテキスタイルをマッピング(CG活用)およびファッションカラー分析第9週 サンプル制作(1)
各自のデザインのパターン制作
平面製図あるいはドレーピング(立体裁断など、各自のデザインに合わせて自由に制作させます。第10週 サンプル制作(2)
トワール仮縫い制作第11週 サンプル制作(3)
仮縫い点検、パターン修正など第12、13、14、15週 サンプル制作
実物制作実習
(1)グループ作品
(サブテーマ:「PURE&FROWER」)
1) | ターゲットは18〜20才のヤングを対象としたオフのアイテムとして設定し、Photoshop(CG)でレイアウトしました。 |
2) | 優しい風と甘い花の香りを吸って、幻想的な雰囲気の中で2色は互いに響生し合うというコンセプトマップをPhotoshop(CG )でイメージ写真を使い制作しました。 |
3) | テキスタイルデザインは指先のかたちを無作為に水玉のようにリピートさせたピンクとブルーグリーンの2色展開を島精機ATDシステム(CG)で作成しました。 |
4) | そのプリントデータを住江織物(株)のナッセンジャーでポリエステルデシンに染色しました。 |
5) | でき上がった素材を使った6体のファッションデザインバリエーションを創作し、ケント紙にドローイングペンで描いたデザイン画をスキャナで読み込み、4D-box(CG)でプリント柄をマッピングしました。イメージポジショニングはフェミニンです。 |
6) | プリントしたオリジナル素材と組み合わせてカラーコーディネートや素材の組み合わせを考えながら、各自1点ずつ実物制作の準備に入りました。 |
7) | モデルのサイズに合わせて、平面製図あるいはドレーピング(立体裁断)によりパターンを作成しました。 |
8) | シーチングで仮縫いの後、実物制作に入りました。コーディネートさせた素材はフェミニンに合わせて、しわオーガンジーやジョーゼット、レース、ラインストーンを使用しました。 |
9) | ファッションショーの演出をグループで考え、スクリーンにテーマを写すためコンセプトイメージ画像とタイトルをPhotoshop(CG)で作成しました。 |
10) | 音楽を選択し、フェミニンなやさしい雰囲気のイメージでショーによるプレゼンテーションを行いました。 |
(2)バーチャルファッションショーと実物作品とのコラボレーション
1) | ファッションショーの演出の一つとして、実物作品とコンピュータでバーチャルに作成した作品を比較する実験を行う計画案をデジタルファッション(株)に相談し、協力を依頼しました。 |
2) | パターンと実物サンプルを送り、DressingSim LookStailor(3次元ファッションショーの動画制作ソフト)などを駆使し、マネキンモデルが美しく、ウォーキングしている画像が再現できました。 |
3) | さらに、デジタルファッション(株)にてP-Scan(回転デジタルビデオカメラ)で実物モデルの顔を写し、入力しました。海をバックにし砂浜を歩いている実物モデルの顔が入った姿が作成できました。 |
4) | CD-ROMで画像データをもらい、ショー当日はまず、バーチャルファッションをスクリーンに写し、次ぎにダンサーに実物作品を着て踊ってもらうという演出で比較実験を行いました。 |
写真1「PURE&FROWER」 左:コンセプトマップ 右:ターゲットマップ
写真2 左:デザインバリエーションおよびポジショニング
右:テキスタイルプリントデザイン
写真3 ショーとしてプレゼンテーション
写真4
左: バーチャルファッションショーマネキンに衣服を着せ、ライティングし、モデリングする
右: モデルの顔や背景を入れ、自然な感じにウォーキングさせる
1) | アパレル企画の流れを理解しながら、コンピュータと手作業の両方の利点を使い分けることができます。 |
2) | コンピュータをファッションデザインのツールとしてうまく活用していくことは、IT時代の教育として不可欠です。 |
3) | オリジナルな素材をコンピュータで制作、プリントし、ファッションデザインを作り上げた一貫制作は学生の達成感が非常に大きく、プレゼンテーション効果が盛り上りました。 |
4) | バーチャルファッションと実物作品の比較実験は各々の利点が発揮できました。 |
1) | アパレルソフトは高価なため、汎用性があり、安価でより多くの学生が親しんで活用できるソフトの開発が望まれます。 |
2) | コンピュータの画面上では素材感の表現に限界があり、コンピュータ上のバーチャルなサンプル制作はイメージのプレゼンテーションには効果的であるが、実物サンプル制作の重要性も認められました。 |
3) | 今後はバーチャルデザイン演習を授業に導入し、学生がオリジナル作品を作成できるよう、設備、ソフトの充実、教師もマスターすることが必須です。 |
4) | 授業評価として、アパレル企業のバイヤーなど専門家に評価を受けることが必要です。 |
5) | 産学共同の情報交換やインターンシップに多数の企業が受け入れて頂き、大学もそれに対応できるよう学生を教育しなければならないと思います。 |
6) | 大学間の交流やデータベースの作成など共同でIT教育をうまく活用して行く方法を考えたいと思います。 |