情報教育と環境

大同工業大学における情報教育環境



1 はじめに

 大同工業大学は、1964年(昭和39年)4月に工学部だけの単科大学として開学しました。 2002年(平成14年)4月に文理融合型の情報学部を設置し、複数学部をもつ大学として新たな一歩を踏み出します。
 開学以来汎用機中心の情報教育環境でしたが、1993年(平成5年)にSINETに接続し、1994年(平成6年)にクライアント・サーバ型の分散システムへと移行して現在に至っています。
 現在の総学生数は約3,600名で、パソコン等を利用した授業のほとんどは、2000年(平成12年)9月に竣工した新キャンパス内の情報教育センターで行っています。

 本稿では、情報教育センターが管理運営している本学の情報教育環境を、ハード面だけでなくソフト面も含めて紹介します。


2 本学の情報教育と情報教育センターの役割

 工学部は6学科で構成されており、機械工学科、情報機械システム工学科、電気電子工学科、電子情報工学科、建築学科、都市環境デザイン学科があります。リテラシー教育や言語教育、応用教育(CADや数値解析など)などの情報教育を各学科が行っています。
 情報教育センターは各学科が必要とする情報教育の環境を構築し、併せて運営と管理および整備を行っています。また、全学的なネットワークの企画・運営や情報化に対する支援的な役割も担っています。


3 情報教育センターの情報教育環境

 現在の情報教育センターは、新キャンパス竣工とシステム更新のタイミングとが一致し、2000年(平成12年)9月にネットワークや施設・設備が一新されたものです。情報教育環境は、以下の設計コンセプトに基づいて構築しました。これらの内容を具体的に説明します。

(1) 高度なネットワークインフラの実現

 これからのマルチメディアを活用した情報教育に対応できるネットワークを前提に、基幹ネットワークは1Gbps、支線ネットワークは100Mbpsで敷設しました。また、情報教育センター内の各教室までは1Gbps で接続していますので、将来的に教室内のスイッチングハブをギガ対応にすることによりクライアントまでギガ接続が可能です。また、利用者のホームディレクトリがあるファイルサーバも1Gbpsで接続しています。

(2)最新の情報教育設備

 情報教育センター管轄のパソコンは486台(Windows:480台、Mac:6台)あり、主に授業を行う教室に345台、自学自習などのオープン利用施設に141台(Macを含む)設置しています。
 WindowsマシンのOSは当時では最新のWindows2000 Professionalで、Microsoft OfficeやCコンパイラ、Fortranコンパイラ、電子メール、ブラウザ、ファイル転送、遠隔ログイン、圧縮解凍、タイピング練習などの基本的なアプリケーションソフトを全台に搭載しています。また、UNIX授業用のXサーバやCADソフト、画像処理ソフトなどは、授業の使用頻度を考慮して一部の教室・施設のパソコンに搭載しています。
 授業を行う教室は5室あります。その内4室はコンピュータ演習室と呼ばれ、パソコン2台に1台のモニターがあり、モニター画面には教員用パソコン画面か教材提示装置で取り込む画像の何れかを切り替えて写すことができます。もう1室はマルチメディア教室と呼ばれる教室で、授業や公開講座など多目的な利用を意識し、マルチメディアをどのように活用していくのかを研究するために設置しました。このため、前述の教室とは少々異なる設備となりました。第一に教員用パソコン画面や教材提示画像は高照度液晶プロジェクタで大型スクリーンに写し出します。第二にパソコンは電動昇降式で、机の中に収納できます。第三にLD/DVD、VTR機器を備え付けてあり、天井吊りのスピーカーから音声を出力します。以上の設備で、マルチメディア教室での授業を開始しました。
 レポート作成や自学自習などでオープン利用できる施設は4ヶ所あります。2ヶ所はコンピュータ自習室と呼ばれ、121台(Macを含む)のパソコンが24時間(休日・休日前を除く)利用可能です。ただし、夕方以降はセキュリティが稼働し、認証を行わないと入退室できない仕組みになっています。後の2ヶ所は図書館の一角と学生ホールの一角で、それぞれ10台のパソコンを設置しています。

(3) 授業支援システムの構築

 パソコンを用いた授業を支援する目的で、授業支援システムを構築しました。この授業支援システムはWebアプリケーションで、学生用と教員用別の機能で構成されています。学生用は、教員からの教材を取得する「教材取得」(図1)、教員へレポートを提出するための「レポート提出」(図2)、「出席登録」、現在までの出席状況を確認する「出席状況確認」の4機能です。教員用は、学生に教材配布するための「教材配布登録」、学生からのレポートを回収するための「レポート回収登録」、授業時間内の「出席状況確認」、授業ごとの「出席データの集計・編集」の4機能から成っています。前システムにも授業支援システムはあり、活用されていました。しかし、様々な利用者ニーズもあり、より機能的で、使いやすさを追求した新システムの構築を目指しました。このシステムを導入するにあたり、市販されているソフトをいろいろ検討しましたが、本学の要求する仕様に当てはまるものはなかったので、本学仕様のシステムを新たに開発しました。
 現在の授業支援システムは学内でのみ利用可能です。しかし、利用者側からみれば、自宅などからも利用できれば便利という意見もあり、今後の検討課題と考えています。

図1 教材取得
 
図2 レポート提出

(4)利用者環境の充実

1) パスワードの管理
 利用者が通常使用するサーバは、ログオン認証のドメインコントローラ、ホームディレクトリのあるファイルサーバ、電子メールを行うメールサーバです。前システムでは、ファイルサーバとメールサーバのパスワードは同期がとれていましたが、ドメインコントローラとは同期がとれていませんでした。このため、利用者はパスワードの複数管理が必要で、混乱することもしばしばありました。今回のシステムでは、上述のサーバのユーザ管理を一元化するアプリケーションを導入したことにより、パスワードも一元管理でき、利用者も一つのパスワード管理で済むようになりました。
   
2) パソコン使用時の機能制限
 前システムではパソコンを使用する上で、OS機能などにある程度の制限をかけていました。これは、利用者が使用するパソコン環境を変更できないようにして、特に授業使用時に支障がでるのを極力抑えるという考えで行いました。この方法で授業使用などに支障は出ませんでしたが、利用者の情報教育という観点から見ると間違った考え方を実行してしまったのかもしれません。この環境でのみパソコンを利用している利用者は、そういうものだと思ってしまう危険性があります。そこで、今回のシステムでは、OS機能などに制限をかけることなく、利用者に利用してもらう環境を構築しました。これは、パソコンの使用環境が変更になっても、次の立ち上げ時に元通りに復元できるように対策できたからです。
   
3) 学外からの利用
 学外からファイアウォール内にある学内LANに接続して、本学のメールサーバやファイルサーバのホームディレクトリ、研究室のサーバなどにアクセスするための方法を三つ用意しました。一つ目は公衆回線接続で、学内LANに接続する方法です。教職員用に3回線、学生用に23回線あります。一度接続したら何時間でも利用できる訳ではなく、接続開始から30分で切断する仕組みにしています。二つ目はインターネットに接続されているコンピュータがあれば、どこからでも本学のメールサーバに届いたメールをメール取り込み専用サーバ(POPサーバ)を利用して、取り込むことができます。ただし、このサーバはSMTPサーバとしては利用できないようにしています。三つ目はtelnet(遠隔ログイン)接続です。このtelnet接続では、通信路を暗号化することで安全性を高めるSSH(Secure Shell)を使用します。
   
4) ホームページの開設
 今回のシステムでは、学生個人やクラブなどの団体でホームページを学外発信することを可能としました。申請して承認された後、ホームページ管理者に情報教育センターが主催する「情報倫理」講習会を受講してもらい、インターネットにおけるルールとマナーを十分理解した上でホームページを開設するようにしました。


4 おわりに

 情報教育環境の整備はまだまだ十分ではないと思っていますが、一応の満足感もあります。情報技術は目まぐるしい勢いで発達していますが、本学の情報教育に合った情報技術は何なのか、その情報技術を利用できる環境はどうあるべきかを念頭において、整備を進めていく必要があると考えています。それと並行して、利用者がその環境を有効に利用できるための支援体制も必要です。支援が有効に機能し、利用者が積極的に活用することによって、より高度で利用しやすい環境が構築できるような、正のフィードバック機能を持ったシステムづくりができればと考えています。

文責:大同工業大学 情報教育センター


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