情報教育と環境

金沢工業大学が実現するマルチメディア・キャンパス



1 はじめに

 金沢工業大学では、1996年までにATMなどによる情報インフラの整備を完了しており、これが現在のマルチメディア・キャンパス(図1参照)実現のベースとなっています。その後、「情報コンセント」(本誌冒頭のカラーページ参照)、「光ケーブル」などの設置や、学生全員が各自ノート型パソコンを所有するための整備を行うなど、情報インフラの充実化に取り組んできました。一方、コンテンツとして各種の修学支援情報を提供し、学生は前述の情報インフラを活用して各自のノート型パソコンから自由にこれらの情報にアクセスできるようになっています。
 また、2001年には、教材のマルチメディア化への取り組みも開始し、学生は自学自習用の教材としてこれらを活用しています。

図1 マルチメディア・キャンパスの概要図

2 情報インフラの整備

 キャンパス内の各館を繋ぐネットワーク・バックボーンには、トラフィック量に応じて100Mbps(Fast Ethernet)、155Mbps(ATM)、622Mbps (ATM)、1Gbps(Gigabit Ethernet)の光ケーブルが設置されています。このキャンパス・ネットワーク上に2,000台のワーステーションやパソコンが接続され、教育や研究に利用されています。
 また、約8,000人の学生全員がノート型パソコンを所持しており、これらのパソコンは、必須科目である「コンピュータ基礎演習」や「コンピュータ演習」において、ワープロや表計算、プレゼンテーション、数式処理、ネットワーク接続設定について学習する際に活用されます。また、学内ネットワークやインターネットへアクセスして、教員と学生ならびに学生間のコミュニケーションに電子メールや電子掲示板を用いたり、教育や研究に必要な論文や参考資料、補助資料などの様々な情報を得るなど多彩に活用されています。このとき、学生は各自のノート型パソコンを、キャンパス内のいたるところに設置されている「情報コンセント」に接続します。この「情報コンセント」は、現在、工学設計棟1F自習室(本誌冒頭のカラーページ参照)や講義室、ラウンジなどに約3,000個、研究室に約2,000個設置されています。このうち、自習室や食堂ラウンジに設置された約200個は、これらの施設が365日、24時間利用できるため、1年を通じていつでも使用可能となっています。
 さらに、大学としては全国初の試みとして、大学周辺の学生アパート約200棟、3,500室と光ケーブルで接続し、各室の「情報コンセント」から、キャンパスと同じように高速でインターネットや大学の情報にアクセスできる環境を整え、2001年4月から運用を開始しました。
 大学の周辺には、本学の指定アパートが数多くありますが、そのうち家主さんの協力を得た約3,500室にLANケーブルを敷設しております。アパートと大学間は通信業者が提供するFTTH(Fiber To The Home)を利用しており、およそ50Mbpsの光ケーブルで接続されています。各室からは、学内のイントラネット上の講義資料や補助教材をはじめ、様々な修学支援情報にもアクセスが可能です。
 これらの環境整備により、バーチャル・ユニバーシティの具現化を目指したWBT(Web Based Training)を基本とした教材・コースウェアの制作や、Webベースの修学サービスの充実に向けた取り組みに弾みが付くものと考えています。
 また、学生のノート型パソコンのハードウェア障害に対する窓口として、キャンパス内に「パソコンセンター」があります。ここには、Windowsなどパソコンの操作に関する質問に対してアドバイスを行うカウンターも併設されています。


3 コンテンツ(修学支援情報)

 キャンパス・ネットワーク上に各種サーバーを設置し、コンテンツとしての修学支援情報を配信しています。学生は、各自のノート型パソコンでキャンパス内のイントラネットに接続すれば、学習支援計画書(シラバス)や、大学に関するあらゆる情報を掲載した「CAMPUS NOTE」の閲覧、休講・補講情報の確認ができるほか、履修申請システムや世界最大規模の工学系専門図書館「ライブラリーセンター」の150万件に及ぶ書誌情報の検索システム、さらに企業情報検索システムなども利用できます。このうち、休講・補講情報については各自の携帯電話からも確認することができるようになっています。
 また、14,000巻に及ぶビデオライブラリーの映像をキャンパス・ネットワーク上より選択し、ストリーミング配信する「ビデオ映像配信システム」(図2参照)では、講義室の大型プロジェクターから学生のノート型パソコンまで、キャンパス内のネットワークで様々な映像を閲覧することができます。
 そのほか、教員自らが教材サーバに登録した講義ノートや参考資料などの補助教材のデジタルデータを、学生が簡単な操作で各自のノート型パソコンにダウンロードできる「教材配信システム」も利用できます。
 これらのコンテンツ(修学支援情報)の多くはWeb技術を活用しており、インターネットのホームページを閲覧するような感覚で非常に簡便に利用することができるようになっています。

図2 ビデオ映像配信システム

4 教材のマルチメディア化

 2001年4月より、情報処理サービスセンターにマルチメディア教材開発室(本誌冒頭のカラーページ参照)を設置し、音声や動画を活用した教育効果の高いマルチメディア教材の開発や、学習用ホームページの制作に取り組んでいます。
 オーサリング用の機材として、プロ用のノンリニアビデオ編集システムをはじめCG(コンピュータ・グラフィックス)制作用ソフトや画像編集ソフト、アニメーション制作用ソフトなどを高性能パソコンとともに活用しています。そして、教材開発に関するすべての作業はもとより、ナレーションに至るまですべて学内で行っています。
 現在は、1年次の物理(図3参照)および数学(図4参照)の自学自習用教材を開発していますが、今後は、その他の科目の教材に関しても徐々にマルチメディア化に取り組んでいこうと考えています。

図3 物理のマルチメディア教材
 
図4 数学のマルチメディア教材

5 マルチメディア考房

 1996年4月にライブラリーセンター2階に誕生したマルチメディア考房(本誌冒頭のカラーページ参照)では、CG、ビデオ、ホームページなどのデジタル・コンテンツのオーサリング用機器として、高性能パソコンやノンリニアビデオ編集システム、MIDIキーボードなどが自由に利用できます。学生は、マルチメディア考房で制作したCG作品やビデオ作品でコンテストに挑戦することもできますし、自己表現の手段としてマイホームページを制作することもできます。そして、これらのホームページは、キャンパス・ネットワーク上のWebサーバから学外に公開することが可能です。
 また、マルチメディア考房では学内のオーサリング技術の向上を目指して、描画ソフトや画像編集ソフト、ビデオ編集ソフト、ホームページ制作などの各種技術講習会を実施しています。さらに、学生が自らの独創性や創造性を発揮する一つの機会として、学内ホームページコンテストも開催しています。


6 おわりに

 金沢工業大学では、自ら問題点を発見し解決する能力を有する「行動する技術者」の育成に取り組んでいます。本学が実現するマルチメディア・キャンパスは、まさに、学生に自ら「学び」、「知る」チャンスを提供する、場所と時間に依存しない教育環境であり、インタラクティブな修学支援環境であると考えています。


文責:金沢工業大学
情報処理サービスセンター
技師 北村 了


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