私情協ニュース3
第17回情報センター等部門研修会開催される
第17回情報センター等部門研修会は、平成13年9月4日(火)から6日(木)の3日間に亘り、京都のホテルニュー京都において開催された。
本研修会は、私立大学の情報センター等の教職員、また図書館、メディアセンター等、学内の情報化を担う部門の教職員を対象に、情報化の方向性、教育・研究支援、事務の情報化支援、ネットワークの運用管理等、情報部門の責務と課題について討議を行い、関係教職員の資質向上と関係部門の発展に寄与することを目的として開催し、115名(72大学、3短期大学、賛助会員4社)の参加があった。
研修は、「大学は新しいメディア(IT)で何を行うか−ITを活用する教育の改革と教育支援」を統一テーマに掲げ、講演と分科会(情報部門管理者コース、教育・研究支援コース、事務の情報化支援コース、ネットワークコース)の形式で実施された。
基調講演
「教育現場と支援業務現場で共通の認識をもつために」
講師:東 孝博 氏(獨協大学教授、情報センター所長)
インターネット等の情報通信技術(IT)の急速な発展は「知」の伝達方法を大きく変化させ、社会や経済・文化などあらゆる活動に変革をもたらしている。教育においても、グローバル化に適応する新しい高等教育のあり方が問われており、教育内容の見直し、ITの活用をはじめとするさまざまな試みが開始されている。そこで、基調講演は、教育現場では今どのような問題を抱えているのか。教員の立場からITを活用した授業方法の改善の内容と取組みについての体験と望まれる支援のあり方を紹介いただき、情報センターや図書館、AVセンターなどがITを活用して教育を支援するための方策について、情報環境の整備、諸機関の連携、支援体制整備の進め方、とりわけ情報センター等に携わる教職員の役割について検討する契機とした。
講演では、教員の立場として望まれる支援の在り方を一般論ではなく、実感として理解できるように、実際に行われている「物理学」の授業を紹介していただいた。その上で、教員の求めるものは、必ずしも最新IT技術ではないこと、教育内容にあった本当に有効なものを考えることが重要であり、そのためには教育現場と情報センター等支援業務現場が共通の認識を持てるような体制を作ることが不可欠であり、両者を結びつける要としてのコーディネーターが必要との提言をいただいた。
第1分科会:情報部門管理者コース
本コースのメインテーマとして、「大学の情報化が目指すもの−ITによって大学の環境(教育・研究・経営)をどう変えるか」を基に開催された。これは、ITを教育(授業)・研究に導入し、積極的な展開を図り、大学の情報化を進めるために情報部門管理者である教職員は、どのようにIT化を進め、情報部門の果たすべき役割とは何かというもので、昨年度よりもさらに踏み込んで設定した。大学が情報化の目標を設定する際の判断基準を整理し、先見性を意識して対応するべき課題や求められる方向性についてねらいを設定し、参加大学の現状、先進的な導入事例、発題等を含め、3日間活発な情報交流、意見交換、討議を行った。
まず、基調講演についての関連する意見交換を行い、実際の授業(物理学)を実感でき有意義であった。また、授業・学習教材の制作を支援する体制作りについては、教員、職員、支援要員としての学生の関与、協力等の点で、自大学の現状に照らして支援体制作り、情報センターの役割、情報化への方向性などが検証でき、実践内容への興味や認識を深められたとの意見が多く出され、大学に持ち帰り「今後の取り組みに役立てたい」との感想もあった。
討議については、ITの教育・研究の支援体制作りとして、センターの「役割」を明確にする中で、スタッフのITスキルアップを図り、機器設備の環境整備に補助金の活用を進め、情報化の促進、延いては教育改革を図る体制整備の重要性が確認された。また、センター組織の体制が整っている大学では、部署間の連携強化、情報の共有、有効活用の促進、サービスレベルの向上等、近年のインターネットの発達に伴い、従前のセンター運営にない、新サービスへの取り組みが求められ、情報センター要員のノウハウやマンパワーによる直接的な参画、介在が期待され、その対象範囲、取り組みへの判断基準と的確な対応などの必要性が確認された。
情報センターが中長期的な視野で取り組んでいかなければならない課題として、インフラ整備の更新サイクル、管理コストの軽減、永続的な課題、外部委託(アウトソーシング)のメリット、デメリット、費用対効果、セキュリティ対策、遠隔授業支援システムの実用性と活用方法を広範に取り上げ、討議の材料とした。
参加者は、情報部門の管理者として、教育・研究・運営において経営的な視点を見据え、大学の情報化を実現するための課題、問題点、取り巻く環境等を細部に確認・点検し、解決策や改善策等を各自が思考し、情報化への具体的な方向性について、共通の認識と理解を深め、討議の成果とすることができた。
第2分科会:教育・研究支援コース
教育の情報化という時代の要請の下、ITを活用した教育改革に対する情報センターや図書館の関わりを通して、望まれる教育・学習支援のあり方を模索した。
運営委員による課題提起を兼ねた事例発表の後、1)教職一体の教育支援(支援室)、2)デジタルコンテンツの作成支援、3)ノートPCなど移動体端末の活用と課題、等のキーワードをベースとして、三つのグループに分かれて討議を行った。グループ討議では、教員と職員がどのように協力し合うのか、情報センターと図書館など教育・研究支援の諸機関がどのように連携するのか、またノートPCを始めとする情報機器を教育の現場でどう有効に活用していくのかなど、共通の問題について活発で緊張感のある討論が行われた。全体として、「教職一体の教育支援」という言葉の内実が、教員と職員が協力して一つ一つの授業を作っていくのだということ、何よりも学生を育てるという視点に立つことの重要さが改めて確認された。
今回の研修会には情報センターの教職員のほか、図書館や研究所など付置機関からも多くの参加者があり、情報技術を活用した教育・学習支援の輪が技術部門だけでなく、サービス部門を巻き込んだ形で拡がっていることが感じられた。議論の推移も課題の交換に終始するのではなく、「いかに活用するか」「いかに機能を発揮させるか」等の視点に基づいた発言が多く出され、教育に積極的に参画していこうとする参加者の問題意識の高さが示され、今後の展開に期待される研修会となった。
第3分科会:事務の情報化支援コース
本年度のコースのねらいは昨年同様「事務の情報化の方向性と課題」であった。
情報系組織の情報共有化への積極的支援が大学改革と学生満足度向上、他大学との差別化に繋がる大きな要件であることは、昨年に引き続き参加者全員が理解して討議を展開することができた。
各校における情報化の対象は様々で、単なるホームページなどでの情報掲載を情報共有としている例から、学園内の様々な情報を整理統合し、活用しやすい形で蓄積し共有するシステム構築を目指す例、さらに大学改革、業務改革を中心に情報化を推進しようとしている例など、多くの大学が様々な考え方を持ち、それに合うような情報系組織の再編成を思考している例なども昨年同様発表された。
討議では、情報系組織は単なる情報系インフラの設置・管理、受動的なシステム開発に留まらず、積極的に教育現場、大学組織運営に関与し、大学改革の先導的役割をも求められているのではないかとの意見が大勢を占めた。
いずれにしても、教育の情報化と事務の情報化を推進し、学園内情報の効率的流通を図り、結果として蓄積される情報の共有化体制の実現は、情報系組織の充実もさることながら大学構成員の問題意識の高揚と業務改善努力なくしては成立しないことは、参加者の共通認識であった。また、この情報共有化体制は大学改革に必須要件であるとの認識に立った。
そして、この認識の上に情報共有化は、情報のアーカイブ、情報管制、情報活用、大学構成員の意識改革が全学で効果的に連携して始めて達成でき、この実現に情報系組織は大きな責任が課せられているとの結論を得たことは大きな成果であった。
第4分科会:ネットワークコース
大学におけるネットワークの利用、管理、運用のあり方を検討・討議することにより、情報センター部門の目指すべき方向性を模索することを目標とした。参加者は、情報部門の担当者が中心であり、高度な情報技術を有した者が集まった。
ネットワークの利用については、不正侵入や不正使用の防止をする方法、障害に強いネットワークの構築方法等、利用を潤滑に進めるための視点から、技術的な制御についての討議が活発に行われた。また、ネットワークを管理するための基準作りについては、利用を制限するための基準ではなく、利用者が戸惑うことなく利用できるようにするための基準作りが重要であるという、利用者本位の立場での討議が進行した。
情報センターの役割や将来像、センター員に要求される能力という討議からは、学生や教職員への支援、講義エッセンスの充実と具体化、学園全体の企画調整や地域・学外に対する情報提供、良いものを適切な予算で導入していく能力、教育内容に関する知識の向上等、参加者が各大学の重要な構成員であるという意識を基本としていることが方向性として概観された。
今後さらに高度化される情報技術の知識を積み重ねながら教育現場への貢献をしていくことで、情報センター部門として大学の発展に寄与し続けることが確認された。
(文責:研修運営委員会)
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