特集 e-Learning いつでもどこでも学べる環境づくり
杉原 明(産能大学・産能短期大学通信教育事務部)
(1)iNetゼミとは?
iNetゼミ(バーチャルゼミ)は、電子会議室によるコミュニケーションを中心に据えた授業形態(メディア授業)です。
インターネットというメディアが今までのメディアに比べて優れている点は、「コミュニケーション」の機能であると考えています。このiNetゼミはいわゆるWBT(Web Based Training)とは一線を画して、教員と学生、学生同士のコミュニケーションにより学習効果が上がることを目指しています。そのため、教員のほかにTA(ティーチングアシスタント)という授業のコーディネータ役を配置し、インターネット上でのコミュニケーションが円滑に行われるようにしています。
従来の印刷教材(テキスト)は原則として使用しません。その代わり Web上に作成した講義資料、VOD(ビデオ・オン・デマンド)による教員の講義、企業のWebページなどを様々なものを教材とします。
学習期間は約3ヶ月間です。1〜2週間程度で一つの単元を勉強していきます。単元ごとにVODによる教員の講義を視聴するとともに、電子会議室を利用した学生同士の意見交換、教員やティーチングアシスタントを交えたディスカッション、教員からの指導、教員への質問、インターネットを利用した資料の検索などを通して密度の濃い学習ができます。リポート提出と試験(小論文)もWeb上で行います。
(2)iNet授業とは?
VOD(インターネットを利用したストリーミング配信)による「放送授業」です。受講者は授業のビデオをインターネットで視聴します。1科目につき15講義で、1講義は45分程度です。 受講期間3ヶ月の間であればいつでも好きなときに視聴できます。印刷教材(テキスト)に沿った授業で、当然授業についての質問もWebで行えます。
また、板書の内容をパワーポイントで作成することによって、授業の映像といっしょに画面上に見やすく表示できることができます。この画面は講義に合わせてタイミング良く切り換わります。
リポートは現在のところ従来の郵送により添削する方式を併用しています。
受講期間の最後には、Web上に試験問題が提示されます。約1週間の提出期間の間に自宅で答案(論述形式)を作成します。提出もインターネットを利用して行います。
図1 iNetCampusの画面
(1)積極的な発言を促す−iNetゼミ
iNetゼミは「経営特講(00)―II」(あらためてブランドを考える)、「経営戦略ビジネスゲーム」など5科目を開講しました。TAは、担当教員の推薦により助手、兼任教員などが担当しました。
iNetゼミの一番のポイントは、受講者が発言(書き込み)をするかどうかです。 そこで、いくつかの仕掛けをつくりました。
まず、発言数や発言内容を評価の対象とすること、そしてもう一つは、授業の最初の課題を「自己紹介」にしたことです。
最初から授業の内容についての意見や質問を書くことは、電子会議室での発言に慣れていない学生にとっては荷が重すぎます。そこでまず最初の書き込みは気軽に、自分がこのゼミを履修しようと思った理由などを含めた自己紹介をするところから始めました。
各科目20名ほどのゼミということもあり、受講者は自分の仕事の内容なども含めて、かなりフランクに書いてくれました。
このような仕掛けが効を奏して、授業内容についての積極的な発言につながり、ゼミ終了時の発言数は300〜400発言にもなりました。
最終課題の小論文ではかなりレベルの高いものも見受けられ、学習の成果の一端が現れています。これからのネット社会では、文章で自分の考えを伝えることがますます重要になるため、このような授業には大きな意義があると感じています。
(2)ブロードバンド時代の授業−iNet授業
iNet授業については、「会計学」「企業社会と自己実現」など4科目を開講しました。VOD教材の視聴に関して、回線の状況やプロバイダの状況によっては多少見づらい、聞きづらいこともあったようですが、まずまず合格点と考えています。また、通常のスクーリングと違って、わからないところで止まったり、何度でも見ることができる点をメリットとしてあげた学生もありました。これはVODの優れた点といえるでしょう。
ADSLなどのブロードバンドと呼ばれる高速・大容量の通信環境が当たり前になりつつある中、VODのコンテンツがますます脚光を浴びるでしょう。
問い合わせ先 SUGIHARA_Akira@hj.sanno.ac.jp (通信教育事務部 杉原) iNetCampus デモ画面にアクセスできます。 http://sipf-web.dl.sanno.ac.jp/inet/index.html |