情報教育と環境

広島経済大学における情報教育への取り組み



1 概要

 本学は1967年に開学し、現在経済学部に4学科(経済、経営、ビジネス情報、国際地域経済)を擁し、約4,200名の学生が在籍しています。中でも、2002年4月に開設されるビジネス情報学科は、国内で初めてビジネス情報分野のスペシャリスト育成を目指す学科として注目されています。
 本学は開学以来、情報教育には積極的に取り組んできましたが、1995年の第1次ネットワーク整備事業を起点とし、学内全体をITと融合させる方向へと転換し始めました。これは、単に情報関連講義や実習講義に限定された情報教育施設の充実のみを図るのではなく、例えば、学生はもちろんのこと、全教員のIT活用能力の向上、情報関連以外の多くの一般講義においてもIT化を推進しています。


2 情報環境施設

 現在、学生向けPC教室は9室(1)あり、これには画像処理用教室も含まれます。これら学生向けに設置されたPC数は約350台、PCスペックは最下位機種でも約600MHz、全PCに256MB以上のメモリーとDVD/CD-R/RWを標準搭載しています。学生向けPCはすべてWindows 2000 Professional(2002年4月からXP Professional)、独自のOS・アプリケーションの保護機構、C2準拠のフルセキュリティ、汎用グループウェア、学生所有の携帯電話との連係、ビジネス向けアプリケーションなどを標準として提供しています。この他にも、ノートPC、プロジェクターの貸し出し、課外無償講習会なども開催しています。もちろん、学内に設置された全PCからインターネットを利用できます。
 一般講義教室では、6号館全室と121・131・141・151教室(全室300名以上収容)を全面改装し、室内照明を通常光量のままで、2台のノートPCから左右別々のスクリーン使用を可能とし、「PC画像+黒板+DVD(ビデオ機材なども設置)」「PC画像(A)+黒板+PC画像(B)」のような講義も可能としています。これらの教室の整備によって、例えば、講義中実際にインターネット接続し、左スクリーン上でリアルタイムに株価チャートを見せながら、右スクリーン上でMS-PowerPointを使用し、要点などを映し出し、同時に黒板に注意点などを版書するといった、学生にとって興味の湧く、視覚的にも解りやすい講義が可能となっています。(本誌冒頭のカラーページ参照)


3 マルチメディア教育と支援施設など

 本学におけるマルチメディア教育施設整備は、マルチメディア教材作成支援設備を除き、以下の三原則に基づき推進されています。
  1. 普及技術、もしくは明確に普及の予想される技術をベースとしたものであること。
  2. 本学全学生をまず「利用者」として、その基礎教育を最優先に図る。
  3. 本学学生の自宅での利用環境に十分に配慮したものであること。
 上記の三原則は、これまでのマルチメディア教育を振り返り、その反省点も踏まえ、学生の利用を最優先に検討した上での方針です。この反省点の実例の一つを挙げれば、数年前まで本学で開講されていた「マルチメディア実習」では、映像再生・映像処理を高額な映像処理専用ソフトとASIC搭載のMPEG処理専用ボードを搭載したPCを利用し、講義が行われていました。しかし、現実的な課題として、可能な限り多くの学生に対し、まず「利用者」としての基礎能力の育成を図ることが最優先です。 また、このような高額ソフトや専用ボードを利用した実習では、汎用性も低い上に、学生の自宅学習を困難なものとしてしまいます。
 現在、本学内に設置された学生向け全PCは学内ネットワークとインターネットに接続されており、かつDVD/CD-ROM/RWが標準的に搭載されているため、DVD・CD教材を自由に利用できる上、メディアを自在に活用することもできます。 また、上述したように、一般講義教室のマルチメディア対応も強力に推進しています。2000年に開館した新図書館には、学内LAN接続された約50台のPCを設置、AVコーナーではビデオ/CD/LD/DVDなども設置し、インターネットも含め、目的に合わせ、多様なメディアを活用することができます。


4 ネットワーク環境

 本学の学内ネットワークについては、第1次ネットワーク本稼動開始が1995年となっており、他大学と比較しても早期の整備であったとは言えません。この第1次整備当時の本学学内LANでは、全学を結ぶ基幹通信方式はATM(622Mbps+155Mbps)を採用し、この当時の基幹通信速度としては国内最高レベルにありました。ただし、この当時の通信インフラ整備計画の策定段階時において既に、ATM通信方式は一時的な基幹通信部として採用し、3〜4年後を目標とした第2次ネットワーク整備を「全学超高速IPネットワーク」として位置付けたために、接続端末にはすべてEthernet方式を採用した国内大学初のフルLANE環境としました。
 第2次ネットワークの構築は、1999年に設計開始し、2000年4月に本稼動を開始しました。この第2次ネットワーク整備では、それまでの基幹通信部(ATM方式)を支線通信網とし、全基幹通信部をGigaEthernet方式に切り換えました。この基幹通信方式のGigaEthernetへの移行によって、全基幹通信部で最低1Gbps、トラフィックの集中する基幹通信部では最高2〜4Gbps、15Mppsの超高速ルーティング、各VLANのトラフィック量変化に合わせた基幹通信部の自動通信帯域最適化などを実現しました。さらに、この第2次ネットワーク整備ではセキュリティ対策を大幅に強化し、多重ファイアウォール構成、一部にファイアウォール機構統合型スイッチ、メールシステムの多重化、IDS(侵入検知・防衛機構)なども採用しています。
 インターネットへの接続環境も、第1次ネットワークから第2次ネットワークでは大幅に変更しました。第1次ネットワークでは、インターネット接続はSINET経由のみでしたが、第2次ネットワークでは商用バックボーンへ直結した別経路を設置し、インターネット通信は実通信帯域を常時最低10Mbps以上となるように完全な独自経路を確保しています。しかし、増え続ける学内PC数、ダウンロードデータ量の増加、上昇し始めた学生のストリーミング・コンテンツ利用などの問題によって、この通信帯域では不十分であると考えています。そのため、本学では2002年4月時点でインターネット接続実通信帯域20Mbps以上(2)を実現、さらに2年後に50Mbps以上を実現できるように計画しています。
図1 学内ネットワーク略図


5 情報教育、及び情報環境施設・整備への取り組み

 広島経済大学では、マルチメディア教育施設整備も含め、情報教育施設整備は「社会と時代からの要請」と捉え、特別な教育施設整備であるとは考えておりません。一部の講義だけが高度情報化に対応する時代は終わり、今後は一般的な講義科目へのIT活用・応用をさらに推進させなければならないと考えています。 このため、本学では第1次ネットワーク整備計画の段階から、全教員に高性能PCを無償配布し、2〜3年毎に最新機に入れ換え、教員向け無償講習会も行ってきました。「まず教員から」の学長方針に従い、紙ベースの学内配布物・案内を極力削減するなど様々な工夫を凝らし、本学内では、学生だけではなく、教職員全員の情報リテラシー向上を図ってきました。
 2003年度に向けて、さらに学生向けPCを約200台以上追加し、一般講義においても受講生全員がスリム型PCを利用可能な大教室(3)、新マルチメディア実習室などの新施設整備を予定しています。 学内情報環境の高度化はもちろんのこと、一層高まるインターネット活用へのニーズも踏まえて、インターネット接続も可能な限り早期に通信実帯域で100Mbpsを実現し、今後も常に最先端の情報教育環境づくりに励んでいきます。


文責:広島経済大学ビジネス情報学科助教授
 情報センター室長 山本 雅昭

 
(1) この他に課外講座専用教室もあります。
(2) ここに記されている通信帯域はすべてインターネット接続時の
計測実帯域であり、契約上の回線通信帯域を示すものではありません。
なお、これにはSINET接続部の通信帯域も含まれていません。
(3) この講義教室は、情報関連講義以外の通常講義においても、
受講生全員が一人一台のPCを利用できる大教室です。
この教室では、教員がPCのモニター電源を操作可能であり、
学生に必要時のみPCを使用させることができます。
          


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