私情協ニュース2

平成13年度 大学情報化職員研修会開催される


 今年度の大学情報化職員研修会は、A日程(平成13年10月10−13日)、B日程(平成13年10月17日−19日)の2回に分けて、グランドホテル浜松にて開催された。
 大学情報化職員研修会は、昨年までの「事務システム研修会」を改組して新たな研修会として開催された。この研修会のねらいは、我々職員が各担当部署で情報技術を活用して教育支援に積極的に関与することができるよう、日常業務の情報化をはじめとして意思決定支援のための情報システム構築と活用などについて、講演・討議を通じて研修し、職員一人一人の情報活用能力の向上を図ることにある。そこで今年度は「大学の情報(IT)化における職員の果たすべき役割」をメインテーマに掲げ、業務およびテーマごとに12グループを設定し様々な切り口から討議を行った。
 研修会をより有意義に進めるために、グループ討議に先立ち全体講演で「ITによる教育改革」というテーマで、私情協の井端事務局長による講演を行った。21世紀は各大学が独自性を出しながら共生の社会を目指すことになる。共生の社会では各々が情報を共有しつつ、その上で競争社会がつくりあげられる。その中で情報技術の果たす役割は大きく、とりわけITを活用した教育システムの重要性は日々高まっている。これらを背景に、米国大学におけるIT活用の事例や私情協が取り組んでいる教育情報交流システムの紹介とサイバー・キャンパス・コンソーシアム構想などをおりまぜ、教育改革の必要性を唱えた。
 全体講演を踏まえ、情報化の意義について考えるとともに、社会からはITを活用した情報の公開・共有などを積極的に進めることが求められているという共通認識を持ち、グループ討議に臨んだ。各グループでは、単にテクニカルな話題に終始することなく、積極的な議論の場となった。討議内容については、各コースとも報告書を参照されたい。冒頭でも述べたように、「大学情報化職員研修会」に改組して初めての研修会でもあり戸惑いも見受けられたが、参加者の高い問題意識と協力により、本研修運営委員会がねらいとしていた研修会ができたと自負している。



A−1 学園の戦略的情報化

(14大学、賛助会員1社、16名)
 情報技術の飛躍的発展と、利用者層と利用可能性の急速な拡大によって、大学における教育内容をはじめ、教育方法、学習方法、単位の取得などにおいて新しい展開が始まりつつある。本グループでは、こうした共生と競合の時代において、各々の学園が戦略的情報化を考え、またそれを進めるにはいかなる方策がとり得るかを検討した。これらの推進は一部署、一個人の領域をはるかに越えた大きな方向性の策定であるため、全学的な理解と協力が必要となる。これらを得るために、理想的学園の未来像を学園の現状に重ね合わせて実現可能なことから順次考え、徐々にその範囲を広げていく方策についても検討を行った。その中で、「情報コーディネータ」をサブテーマとし、さらにキーワードとして「アウトソーシング」、「教員と事務職の問題」、「在宅学習や在宅勤務」、「新卒者と社会人採用と処遇問題」など様々な要素をあげた。また学園のトップマネージメントとしての立場からも検討を進められるよう、討議に広さと奥行きを持たせられるよう配慮しながら議論を深めていった。


A−2 学園統合システムの構築・運用

(15大学、賛助会員1社、16名)
 多くの大学で省力化を目指した業務システムの構築は行われている。今後は、各業務システムで管理・蓄積される情報をいかに活用していくのかが重要となろう。本コースはこのような環境を作るために何が必要なのか、学園統合システムに求められる基本的な考え方について討議した。
 この業務システムで蓄積された情報を中心とした統合情報システムのためには、ハードウェア・ソフトウェアの整備、人材の育成、部署間の調整、セキュリティなど多くの問題があるのも事実である。しかし、単独の業務システムとは違い、決して特定の部署で解決できるものではなく、部門という枠を超え学園全体として取り組み、改革していかねばならない課題である。また、この学園全体の改革は、各構成員の意識改革なくしては実現できない。技術の進歩によって人がやっていた仕事が機械に置き換わっていく現状で、職員にも自ら情報を発信するなど、さらなる能力が求められるとの認識をもった。


A−3 イントラネットと文書管理

(18大学、18名)
 学内イントラネットによる文書管理における管理、加工、保存、発信について今後の文書管理のあるべき姿、取り組みへのアプローチの仕方を中心に、グループウェア、電子掲示板などITを活用した情報共有と業務改革について討議した。また、大学におけるITを活用した新しいコミュニケーション=情報共有のあり方を考え、大学改革と大学情報化における職員一人一人が果たすべき役割について考える契機とした。参加者全員に所属大学で取り組んでいる具体的な事例を発表していただき、討議の際の動機付けとした。事例報告ではグループウェアの導入が多くの大学で既に実現され、ITを活用した情報の共有化が確実に進んでいる一方で、従来の業務スタイルとITを活用したコラボレーションとのギャップにより業務の改革が進まないという現状もあり、その点を中心に議論が行われた。討議は2グループに分けて行い、最終日に両グループの成果を報告した。共通の認識として、目的・目標を明確にしてITを導入することの重要性が確認された。さらに、教育・研究の支援強化、学生サービスの向上などIT活用の可能性についても認識を高めることができた。


A−4 学術情報システム

(23大学、賛助会員2社、26名)
 IT化の進展により急速に変化しつつある図書館等における学術情報サービスを核とし、これを支える学術情報システム、組織と運営のあり方について討議を行った。
 今後の学術情報サービスの方向性を考えると、やはり電子化された学術情報の収集と利用が重要になってくる。これらを活用するためには、配信・発信のためのゲートウェイ機能の充実、そして利用者の情報環境整備を進めなければならない。また、情報の横断検索、多言語対応システムなど、新しい要素も加わってきており、各大学の学術情報システムへの対応を考える必要がある。
 一方、大学を取り巻く厳しい財政状況での図書館運営は、利用者サービスが低下することなくアウトソーシング、組織の見直しなどを含めた業務の合理化・効率化を検討しなければならない。そしてインターネット時代における専門性の継承と育成を図りながら、情報サービスに従事する職員は何をすべきか、将来の職員像を描いていく必要があるとの認識を持った。


A−5 経理・財務情報の戦略的活用

(17大学・賛助会員2社、22名)
 大学における経理・財務情報のあり方を検討・討議することにより、これから目指すべき方向性を模索することを目標とした。参加者は、経理・財務の担当者が中心であり、部門業務という点では高度化された技能を有した参加者が集まった。
 経理・財務情報の活用についての討議は、各大学間で規模の差こそあれ、内容的には、共有化、経営への活用、に視点が一致していた。討議では、教育・研究を支援する部門と経理・財務処理を行う部門との考え方の違いを指摘され、それが情報の共有化や連携を行っていく上での障害になっているということが報告された。しかし、問題点を数え上げるだけではなく、その問題点を解消すべく、具体的な手法を求める努力が感じられた。
 経理・財務情報の活用について、各参加者が学園の方針に添った明確な目標を持って、積極的に取り組むことの必要性と認識を得た。


A−6 ホームページを利用した戦略広報

(31大学、賛助会員1社、33名)
 本グループにおいては、広報活動の一環としてのホームページの活用は十分な機能を果たしているか、Web開発の技術基盤の急速な進展の中、大学の教育・研究を核としたアイデンティティが学内外から理解が得られるように機能しているか、といった観点からサイバースペースマーケティング時代での広報活動のあり方、社会環境との接点としての業務に関わる職員としての意識と役割、ホームページ広報のより積極的かつ有効な活用方法について討議を重ねた。
 具体的には、1)アウトソーシングのメリット・デメリット、2)教育・研究との関連(問題点と解決例)、3)危機管理(サイト運営にあたって体験した問題、対応)、4)組織・体制・規程の現状と理想、5)学内向けサービスの現状と今後、について小グループで共通に討議し、発表を行った。
 全体の討議のまとめとして、ホームページそのものは大学の現状・環境の動向に合わせて変化しなければならないが、ホームページによる戦略的広報の大前提は真実を伝えることにあり、この認識はホームページ広報に携わる人間としての最低限のマナーである。その視点から、何をすれば大学の意志決定に反映され、大学が良い方向へ変わるかの見極めと行動をすべての教職員が努力する必要がある。このような動きの中で、戦略的広報達成の役割を担う者は、単にディレクターとしてのみではなく、プロデューサーであろうとする意識を持っていなければならない、という共通認識が得られた。


B−1 入試・入学業務の情報化

(17大学、賛助会員1社、18名)
 18歳人口の減少が進む中、多くの私立大学では、入学者選抜方法の複線化、多様化など、受験者(入学者)確保のため様々な対策が検討されている。多様な入学者選抜制度の導入によって、業務はより高度化・複雑化、環境面・体制面の整備が必要となるが、一方では、受験者減少に伴う収入減により、経費節減・業務の合理化が求められており、入試・入学の業務は、戦略性の両面から対応する必要に迫られている。
 本グループでは、このような大学の変化に対して、大学教職員がどのような広報戦略を展開して、学生を確保していくかが議論の中心となった。
 討議については、3大学のミニ事例発表を中心に討議を行った。また、IT(情報技術)の発達による情報開示・情報の利用方法についても活発な意見があり、研修参加者の問題意識が強く出された討議となった。


B−2 学生の個人情報管理(卒業生・校友会管理を含む)

(21大学、賛助会員1社、24名)
 卒業生の情報を含む学生個人情報の管理を中心に、学内他部署と連携した情報の利用形態と利用範囲、プライバシーの保護やセキュリティの問題を含め意見交換を行い、望ましい情報共有、情報管理のあり方について模索した。
 事例紹介は、上智大学の「学事システム」、東海大学の「学籍管理と保健管理の連携」、立命館大学の「校友システム」、京都産業大学の「情報活用とセキュリティ要領」の現状と課題、東京電機大学の「教学システム」の5大学から行われ、活発な討議が行われた。
 研修会の統一テーマである「大学の情報(IT)化における職員の果たすべき役割」と、本グループのテーマである「学生の個人情報管理(卒業生サービスを含む)」との関連付けを行い、情報の共有化、有効活用ための組織改編等、大学職員としての認識が、徐々にではあるが高まりつつあるように感じられた。


B−3 カリキュラム・時間割管理とシラバスデータベース

(33大学、賛助会員2社、40名)
 近年、学生の主体的な授業参加を可能にするため、詳細な授業計画・授業情報を常に学生に提供するシラバスデータベースの整備と充実が求められてきた。また、シラバス情報の提供に加えて、履修科目や各種資格取得要件などの適切なアドバイス、就職に向けた関連科目の履修指導など、目的意識を持って授業に臨むことができるような学生個人向けの対応が求められている。そこで、本グループでは、教職員一体となった教育支援体制を構築するためのITの活用方法について、とりわけシラバスデーターベース・時間割を中心にインターネットでの情報開示と問題点、教学事務の効率化と意識改革などについて討論した。
 社会における情報化は、産業界・経済界だけでなく、大学でも目覚しいほどのスピードで浸透している。教学事務にとって、Web履修登録やシラバスデータベースなどは、当たり前の学生サービスになりつつある。
 学生サービスの向上と事務の効率化は共通のテーマであり、各校の規模・資産・制度などの違いはあるものの、教職員一丸となって各校独自にアイデアを搾り出す必要があろう。
この研修会を通して、情報の共有・情報の開示・ジェネラルサービスの情報化や、本物(リアル)のサービスの重要性を認識することができた。


B−4 履修登録と成績管理業務

(31大学、2短期大学、賛助会員2社、40名)
 履修登録と成績管理の業務は、大学審議会答申でいう「大学の教育改革」に直接に関わる業務である。「情報の多様化に対応した戦略的な履修登録と成績管理」をテーマとし、各種事例の研究と改革方策の討議を行った。
 履修登録においては、Web を活用したシラバスの照会やオンライン登録を運用している実例が報告され、カリキュラムの多様化に伴う業務上の課題、情報環境を改善し活用する方策について討議が行われた。  成績管理においては、GPAの導入、授業評価の実施、FD委員会活動など学習環境を改善するための様々な取り組み事例が報告され、課題の克服と改善方策について討議された。
 各大学が抱える共通の課題は、カリキュラムの多様化などに伴い、学生支援業務が質・量ともに拡大してきていることである。情報の電子化により、事務作業の能率向上を期待できるが、それを生かして真の教育改革につなげるには、教員機構を巻込んだ全学的な体制で臨むことが重要であると改めて確認した。


B−5 各種資格取得支援

(9大学、賛助会員1社、10名)
 本グループのテーマは「各種資格取得支援」であるが、近年増えつつある各大学でのエクステンションセンターに焦点を当て、その戦略的運営による成果や意義などについて討議を行った。
 エクステンションセンターには、1)学生の進路就職支援として各種資格取得の支援、2)地域に開かれた生涯学習センターの役割がある。その企画・運営に当たっては、教学情報や就職情報など大学が保持している様々な情報の共有と分析が必須で、講座の企画内容・受講状況・成果(合格率や満足度)等の評価を行うことにより、経営的な収益を目指すべきである。学習形態としてのe-Learningも、今後積極的に取り入れられると予測され、そのコンテンツ開発の過程では、効率的なコラボレーションが実現でき、学習者のみならず教員の育成にも効果が期待できる。
 エクステンションセンターの本格的取り組みは、まだこれからという大学が多いが、討議を通し、大学改革のパイロット的役割を担うものとして大きな期待が寄せられ、本研修会のテーマである「大学の情報(IT)化における職員の果たすべき役割」の大きさと重要性が参加者に認識された。


B−6 就職支援システムの構築と運用

(32大学・賛助会員1社、33名)
 大学の就職業務は、学生の気質とともに大きく変容しつつある。一方、日本の雇用のあり方自体にも変化があり、学生と企業とが、より自由な、より厳しい選択をする流動的でかつ競争的な市場となってきている。学生のための真の就職支援とは何かを考え、SPS(Student Personal Service)の面からもあらためて見直し、新しい支援のあり方について討議を進めた。
 参加者のほとんどが就職業務担当者で、インターネットの普及による就職情報等のオープン化などの環境変化への対応、また、社会性に乏しい学生への対応に苦慮している状況が報告され、ITを活用した学生と大学相互に有効的で効率の良いシステム構築が研究討議された。事例発表を基に、大学の環境や規模などからシステム形態や利活用の状況の違いを確認し、効果的な施策への関心や今後の課題への取り組み意識が高められた。特に、学生とのコミュニケーションが重要視され、学内連携を強化・確立して、教職員が一体となった学生のための支援体制づくりへ職員の役割責任としての意識の高揚が図られた。


文責:研修運営委員会


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