情報教育と環境


成蹊大学におけるユーザフレンドリを目指した情報教育環境



1 はじめに

 成蹊大学情報処理センター(以下、センターと略します。)は、1981年の設立以来、情報化時代の本学における中枢機関として学生への情報教育はもとより、研究活動まで支援するシステムの管理・運営を行っています。そして、大学全体のネットワークを含めた情報化に対する先導的役割と並行して、武蔵野市の市民講座を請け負うなど、開かれた大学として地域貢献の役割を果たしています。
 本稿では、本センターが主体となり構築した、成蹊大学教育研究クライアントサーバシステムの概要について説明し、さらに、学生へのサービス向上を目指した支援体制について述べます。


2 情報環境

 平成9年4月から新入生全員に対するアカウントの登録を開始しました。現在、センターの行う所定の講習を修了して利用許可書が交付された学生は、センターのPC及びネットワークを利用することができます。本センターは、単に機器を使い情報を見るだけでなく、「加工して活用する」、「問題を見つけ問題を解決していく」ための能力を育む基盤作りを行っています。そのために、最新のハードウェアやソフトウェアの導入、個人利用環境の整備、各種リテラシー講習会の実施、利用相談等を積極的に行っています。
 現在のシステムは平成12年10月より稼動を開始しており、平成14年4月からは工学部新棟建設に伴い、14号館パソコン教室としてSXGA対応17型TFTディスプレイを有した120台のパソコンを設置し、情報環境を強化しています。
 一昨年度新規導入時及び本年度から新規導入した情報環境の特長は、下記の通りです。

(1)最新の教育・研究環境の提供

1)負荷に強いシステム構成
複数サーバによる負荷分散。
2)高速ネットワークの提供(Layer3Swich)
センター内の基幹ネットワークのGigabit対応。
3)プレゼンテーション環境の強化
電子ボードの導入や、映像機器とも融合させた可用性の向上。
4)エンドユーザーとの接点
教育利用を目的とするパソコン教室において、机上に広いワークスペースを提供するため採用した省スペース型パソコン。
5)スーパーテクニカルサーバ・ワークステーションサーバの導入
MPI・PVM等並列処理開発環境の充実・研究支援。

図1 システム構成図

(2)利用者がわかりやすいシステムの提供

1)個人データ、電子メールの一元管理
UNIXとWindowsでの同一のホームディレクトリ、ユーザープロファイルによる個人環境の一元管理。
UNIXメールとの互換性を維持したWebメールの導入。
2)ユーザーアカウントの一元管理
UNIXとWindowsでの同一ユーザーIDの配布。
3)印刷環境の整備
プリントオンデマンドシステムの導入。
4)オープン利用環境の整備
空席情報提示による一般開放時の空席待ちの解消と、授業予定参照機能を含めた学生への情報提供サービスの実現。

(3)管理しやすいシステムの提供

1)高可用性システムの実現
基幹UNIXサーバとWindowsサーバへのClusterシステムの導入、ならびに、センタースイッチのホットスタンバイ構成。
2)稼動状況の適切な把握
クライアントPCの稼動情報の統計による資源管理。
3)容易なクライアントPC管理機能
教室パソコンの電源スケジュール管理と、リモート操作のみでクライアントPCの全台をリストアする管理システム。

 次に、本センターが新しく取り組んだ利用状況提示システム、そして4月より稼動開始をしたプリントオンデマンドシステムについて説明します。


3 学生へのサービス向上を目指した試み

(1)利用状況提示システム

 本センターには分散した10室のPC実習室が存在します。授業時間以外はオープン利用を行っていますが、学生のPC利用機会が増加するにつれ、空席を求めて実習室前に行列を作る姿が目立つようになりました。原因として、オープン利用に使用できる教室が利用希望者に対して少なすぎることと、分散している教室の空席状況を把握できないことが挙げられます。そこで、実習室ごとの空席状況を学生にアナウンスできれば、無駄な空席待ちを解消でき、センターのパソコンを効率良く利用してもらえるのではないかと考え、それを実現するシステムを構築しました。
 利用状況提示システムには以下の特長があります。

1)一分間隔で更新される現在の空席情報の提供
2)実習室ごとの授業予定の参照機能
3)授業時間をキーにした出席管理情報の提供(教員向け)
4)実習室別利用率、占有座席の把握(管理者向け)
5)学内のどのPCでも閲覧可能な環境

 キャンパス内の学生に対する上記システムのインタフェースとして、7号館1Fエントランスホールのガラス面に映し出されるプロジェクタ画像、14号館の1Fプラズマディスプレイ表示の他、各フロアのエントランス前に設置されたパソコンディスプレイから各実習室の利用状況が一目でわかる仕組みにしています。

図2 利用状況表示画面

(2)プリントオンデマンドシステム

 以前行っていたネットワークプリンタを共有する環境では、

特定の学生が大量の出力を行い、紙を消費してしまう
出力された出力が放置される
自分の出力したはずのものが見つからない

などの問題が発生していました。
 そこで、2年前から用紙の持ち込みを前提とした運用に変えたところ、今度は次の問題が明らかになりました。

用紙の持参を忘れた学生が印刷機会を逃してしまう
印刷に不適切な用紙を使用してしまい、プリンタのトラブルの原因となる

 今年度から運用を開始したプリンタ管理システムでは、従来の用紙持ち込み環境に加えて、用紙持ち込みが不要なオンデマンド印刷が可能になりました。オンデマンド用プリンタは純正Postscript3に対応した機種としており、UNIXからの安定した印刷も考慮しています。

<プリントオンデマンドシステムの主な機能>

1)ユーザー毎にプリンタの出力枚数をカウントしデータベースに集計します。集計結果は学生自身も確認できます。すべてのユーザーの一覧表は管理者が出力でき、ユーザー管理ができるようになっています。
2)出力枚数が制限値を越えた場合、ユーザーからの出力を拒否し、ユーザーに印刷不可メッセージをメールとWindows画面で連絡します。
3)センター内のフロア毎に、1台から2台のオンデマンド出力用端末とプリンタがセットで設置されています。学生はどこで印刷命令を出しても、好きな場所で自分の手元のプリンタに印刷させることができます。

 教育用システムでは、ハードウェア・ソフトウェアの更新だけでなく、ユーザーの利便性を考慮する必要があります。そのために、常にわかりやすく使いやすい環境の提供を念頭に置く必要があります。今回導入したものも、まだ機能的に充分とはいえず、内容の見直しも必要と思われます。また、このほかに今後必要となるサービスもあるはずです。これからもユーザーの視線に立って、より良いシステムの構築とサービスの提供を目指していきたいと考えています。

図3 オンデマンド出力画面


4 まとめ

 本センターでは、上記にまとめたシステムの特長の他にも、運用面では様々な工夫をこらし、教育利用目的に沿った情報教育環境の整備を進めています。
 コンピュータシステムの基本となるIT技術は、今後も発展し続けると思いますが、常に利用目的に沿った観点で、利用者のために最新技術の導入を継続し、3年後、5年後にも陳腐化しない情報教育環境づくりに励んで行こうと考えています。

文責:成蹊大学情報処理センター
白井 裕司


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