巻頭言

情報教育に期待すること


寺部 曉(学校法人安城学園学園長・理事長)


 従来、情報化社会の到来と言われておりましたが、この頃は「化」が取れて情報社会の到来と言われております。正確には、高度デジタル情報社会の到来です。こういう文脈の中で、情報教育の必要性がますます高まっております。
 さて、現在、情報教育でやっていることは、要するにコンピュータです。コンピュータシステムの使い方およびコンピュータシステムを使って何かを作るということです。取りあえずワードプロセッシング・表計算・インターネット・・・の修得であります。つまり、コンピュータシステムを道具だと位置づけて、その道具がうまく活用できる能力を育成しておるわけです。確かに、コンピュータは車と同じでして、現代社会において車のない生活は考えられないように、コンピュータのない生活を想像することも難しい状況です。これから更に今まで以上に社会の隅々にまで活用されていくと思います。しかし、情報というのはコンピュータで扱っているデジタル情報だけではありません。デジタル情報に対してアナログ情報もあります。現在の情報教育がどちらかというとデジタル情報のハンドリングに偏っているところを、アナログ情報のハンドリングについても教える必要があるのではと思っています。
 ところで、インターネットはそもそも軍事用に開発されたと聞いておりますし、初期の頃のコンピュータあるいは計算機は暗号の解読作業や弾道計算に使われておりました。また、コンピュータが本格的に使われた最初の戦争がベトナム戦争です。このことの良し悪しは別にして、コンピュータにはこういう側面もあったし、現在でもあるし、将来もあるだろうということは教えておいた方がいいように思われます。ただ単に便利な機械だから、うまく使えるようになるためだけの情報教育だけでは、何か心もとないように思います。
 次に、コンピュータシステムは大雑把にいうとハードウェアとソフトウェアから成り立っています。そしてソフトウェアは基本ソフトとアプリケーションから成り立っています。国でいうと、国土がハードウェアです。国土利用計画が基本ソフトに当たります。そしていろいろなプロジェクトがアプリケーションに当たります。この例のようにハードウェア+基本ソフト+アプリケーションソフトという構図はいろいろな場面で適応可能です。もう一つ例を挙げます。学校でいうと、校地・校舎・備品等がハードです。管理運営のルールが基本ソフトです。そして、教育ソフトがアプリケーションソフトに当たります。つまり、コンピュータシステムで使われている用語および概念は、現代社会を理解する上での、あるいは日常生活でコミュニケーションする上でのメタファとして十分利用可能です。
 以上、紙数の関係で一部しか書けませんが、自然と人間との共生・人間と人間の共生だけでなく、人間とコンピュータの共生も必要です。そのためには、コンピュータを単なる道具だという位置づけだけでなく、コンピュータそのものについても、出生の秘密も含めて興味深く理解できるような情報教育を期待しております。



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