情報教育と環境

兵庫大学における情報教育環境



1 はじめに

 兵庫大学は、1995年兵庫県加古川市に聖徳太子の「和」の精神を教学の基本とし、ビジネスに即した実学教育をモットーにスペシャリストの養成を目的に経済情報学部を持って開学されました。学内の教育研究活動を支援する総合的な情報環境の基盤として、平成7年の開学時から運用されている学内情報ネットワーク・システムが、「HUMANS:Hyogo University Multimedia Autonomous Network System」です。平成14年度に、全システムをリプレースして、「新HUMANS」として生まれ変わりました。
 リプレース前のシステムでは経済情報学部の教職員や学生の利用を中心として運営してきましたが、「新HUMANS」では、同一キャンパスに位置する兵庫大学短期大学部、経済情報学部に続き開学した大学院や健康科学部の教育研究環境をも反映できうる、総合的かつ統一的な全学キャンパス・ネットワークの構築・運営を目指しています。本稿では、全学的な取り組みとして、新たにリプレースしたシステムを中心に、その内容と平成15年度以降の取り組みも含め紹介します。


2 情報教育環境整備の目的

 「新HUMANS」の整備は、大学における標準的なネットワーク環境を構築することにとどまらず、大きな目標として、情報教育のリテラシー教育を考慮にいれた、授業改善や研究環境の標準化を支援することを目的としています。
 具体的なコンセプトは、「計算機実習室のある2号館を情報教育および研究の拠点とする」という構想に基づき、1)学内外にわたる情報ネットワークの形成、2)情報処理教育の進展発展、3)コンピュータとニューメディアの利用による最適情報システムの確保、4)情報の活用による標準的な情報処理教育の快適な環境とサービスの提供、5)開かれた大学としての地域社会への貢献、といった五つの明確な目標を定め、導入・整備を段階的に計画しています。


3 兵庫大学のキャンパス・ネットワーク環境

 現在(2003年2月時点)のキャンパス・ネットワークシステムについて説明します。
 まず、インターネットとの接続においては、より快適に・より安定してアクセスできるよう、学術ネットワークと商用ネットワークの両方を利用しています。学術ネットワークではSINETの神戸大学ノードに、商用ネットワークではPowerd-IP WCNに、それぞれ1.5Mbpsの通信速度で接続しています。
 次に学内ネットワークについては、基幹ネットワークとして、学内の各建物間を光ファイバーによるGigabit Ethernet (1Gbps) によるスイッチング・ネットワークで結び、回線を二重にして冗長化を図っています。情報科学センターのある2号館を中心に、計算機実習室のクライアント・サーバ群や研究棟である1号館(東・西)、講義、図書館ネットワーク「HARMONIS (Hyogo University Academic Regional Media-free Open Network Information System)」や企業情報の活用を目的としてキャリアセンターなど、学内の各スポットがネットワークで結ばれています。
 支線ネットワークについては、とくにアクセスが頻繁に起こるサーバはGigabit Ethernetで基幹ネットワークに直集され、そのほかのサーバやクライアントはFast Ethernet(100Mbps)で接続されています。
 また、平成14年度までの経済情報学部における入学時のノート型パソコンの所有の義務と、学生の家庭へのパソコンの普及を考慮して、2号館2・3階の多くの教室に情報コンセントと電源コンセントのセットを多数設置しています。そして、さらなるモバイルコンピューティングの促進として、学生が休み時間などによく集まる、2号館3階と3号館1階に無線LANシステムを導入し、「好きなときに・好きな場所で」学内ネットワークにアクセスできる環境を構築しております。


図1 兵庫大学学内情報ネットワーク構成図

4 システム面での取り組み

(1)無線LANによるアクセス環境の拡大

 学生と教職員双方の共有空間に、無線LANのアクセスポイントを設置しました。自分のノートパソコンを持ち運ぶだけで学内ネットワークに快適にアクセスできる環境を提供し、学内のさまざまな場所での学生と教職員の活動を支援することが目的です。

(2)大容量ネットワーク・ストレージの導入

 将来の教育環境における個人の取り扱う情報量の増大を想定し、大容量のネットワーク・ストレージ (NAS)を導入しました。学生1人あたり約200MBの占有領域を確保しています。

(3)セキュリティの向上

 ネットワーク・セキュリティの基本として、ファイアウォールを二つの学外ネットワークとの接続ポイントに導入し、学内外の双方向のアクセスについて制限を施しています。また、電子メールとWebアクセスについては、各種サーバにフィルタリング技術を導入しています。これらは、「被害者が加害者になってしまう」という、最近のネットワーク・トラブルを考慮した結果です。

(4)システム・リソースの適切な管理

 広範囲かつ複雑化した、システムの安定した稼動のため、ネットワーク・リソースの監視ツールを導入しました。また、実習室等のWindows環境と電子メール等のUNIX環境の両方のユーザ情報を効率的に統合して管理・運用するシステムを導入し、年次毎に更新が頻繁なユーザー管理を合理的に行っています。


5 情報科学センターの位置づけ

 これからの教育環境の改善のためには、これまでに述べたような、情報環境や教室環境などの情報インフラの充実は必要不可欠なものですが、同時に、情報環境を支えるための中心的な組織の位置づけは大変重要であると考えます。本学では、情報科学センターを中心に、コンピュータやインターネット技術の急速な進歩と大学の情報教育の発展に対応するため、よりよい情報基盤となるように日々環境の充実をはかっています。
 また、本学では、学内でコンピュータやネットワークをすべての利用者がスムーズに利用できるように、ルールやマナーを定めています。特にルールは、「学内ネットワーク・システム管理・運営・利用内規」と「学内ネットワーク利用ガイドライン」を定めています。さらに情報化社会に対応したマナーの向上のために様々な方法を用いてPRしています。情報科学センターは、学内のコンピュータやネットワークを整備・運用するとともに、利用者へ各種サービスを提供する窓口としても機能しています。

図2 情報科学センターURLhttp://arena.hyogo-dai.ac.jp/

6 今後の取り組み

 これまでのとおり、「新HUMANS」の導入は、学生の自学自習の促進と教員の研究活動の支援を目指すとともに、学生と教職員の双方に、よりよい教育研究環境を提供することができるものであり、教育・研究の振興が十分期待できるものであると考えます。
 さらに今後、全学的に学内でのネットワーク型の双方向授業を情報教育に取り入れるとともに、ネットワーク型授業の双方向遠隔授業、ネットワークによる授業配信を含めた生涯学習教育への拡充を図りたいと考えます。
 まず平成15年度より、いくつかの新しい試みを実施する予定です。
 一つは、経済情報学部と健康科学部のすべての新入生に対して、ノート型パソコンの無償貸与の実施です。将来の本学におけるe-Learning環境の実現に向け、大学の内外を問わず、学生が自学自習できる環境を提供するとともに、学内の教育体制やコンテンツの充実をはかることが目的です。
 さらに、学内ネットワーク・システムの操作と活用方法を説明した、利用ガイドブックをこれまで情報処理センターから発行してきましたが、ノート型パソコンや無線LANなどの新しいシステムや環境に対応し、より先進的な活用方法を説明していく予定です。


文責: 兵庫大学情報科学センター
講師 平井 尊士
講師 河野  稔

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