私情協ニュース1
第32回総会は、平成15年3月27(木)午後1時より、東京市ケ谷の私学会館会議室にて開催。当日は、議事に入るに先立ち文部科学省私学助成課の滝波課長補佐から補助金予算の概要と申請について説明。次いで、審議に入り、15年度事業計画と収支予算の後、14年度補助の配分内示状況、携帯電話を利用した授業支援システムのモデル、大学等電子著作物権利処理事業の実施、サイバー・キャンパス・コンソーシアムの今後の取り組み、ネットワーク運用管理規程集のポータルサイト、学系別情報技術活用研究集会の開催結果について報告があった。以下に主な議事を報告する。
<文部科学省の説明>
1) | 政府全体として極めて厳しい財政事情の下ではあったが、「私立大学教育研究高度化推進特別補助」は、前年度比で12億円増の304億円を計上した。内訳は、「高度情報化推進特別経費」の「教育研究情報利用経費」で、新規に4億5,000万円を計上した。電子ジャーナルを主な補助対象とし、詳細は検討中で5月頃に募集を予定している。例えばCD-ROM、DVDの電子媒体で取得するようなデータベースの利用料、判例情報などの教育研究情報の著作権使用料などが対象になると考えている。「情報通信設備」の借入分は、4億円増の110億円を確保。マルチメディア関係も補助対象となっている「教育・学習方法等改善支援経費」も昨年に比べ5億円増の40億円を計上している。 「情報通信施設」「情報通信装置」とも前年度と同額で合わせて32億円を計上した。なお、この内の「サイバー・キャンパス」分は、それぞれ1億円ずつの計2億円を計上した。設備費としての「情報処理関係設備費」は、大学分で1,500万円増の約16億円を確保した。「サイバー・キャンパス」分は、その内の2億6,500万円を計上した。 |
2) | 平成14年度の補正予算は、大学関係で13億円、高校関係で12億円、合わせて25億円を計上した。 |
3) | 高度情報化推進特別経費、大学教育高度化推進特別経費は、概ね昨年のスケジュールと同様に進め、計画調書の提出は、5月に各学校法人宛てに募集の通知を行い、6月を目途に応募締切を予定している。それ以後は、私立大学教育研究高度化推進専門委員会における審議を経、11月中には各学校法人宛てに内定の通知を考えている。計画調書の提出先は、昨年と同様、私学事業団としている。装置施設、設備関係も7月に応募締切としたい。以後、私立大学研究設備整備費等補助金等に係る選定委員会によって選定を行い、事務査定を経て、11月中には各学校法人宛てに内定の通知を予定している。 |
4) | サイバー・キャンパス整備事業は、14年度と同様、構想調書の募集を行い、選定されたものについて計画調書の提出依頼の2段階で行う。15年度は選定のスケジュールを前倒し、5月中旬には構想調書の募集を行う。事業の選定は、サイバー・キャンパス整備事業選定委員会において選定を行う。事業計画は、年次計画を立て、数年間かけて達成することも可能となっており、事業の全体計画と年度ごとの年次計画を併せて作成いただきたい。事業の開始3年目に年次計画の進捗状況、得られた成果に関する調査を行う予定としている。最終的な事業計画が同一のキャンパス内のみのネットワークの構築とか、他大学への配信を行わないようなコンテンツ開発などの場合には、この事業の対象にならない。例えばパソコンの借入、コンテンツの開発、ネットワークの維持管理に必要な経費に限定した申請も可能。 |
5) | 情報関係予算も含め私学助成が公教育の一環として貴重な国民の税金によって賄われていることを十分に認識いただき、15年度事業について適正な執行に努めていただきたい。特に申請は、各大学が組織として大学の情報化あるいは情報に関する教育研究の推進を図るという観点からの申請を基本とし、どのように補助効果を上げようとしているのか検討の上、申請いただきたい。 |
6) | 私立大学情報教育協会には情報関係の補助金適正な執行にあたって、各学校法人に格段の助言をなどお願いしたい。今後とも私立大学の情報化について必要な予算を確保するなど、文部科学省としても一層の取り組みを進めたい。 |
事業の重点化、事業規模の軽減化を念頭に大幅な見直しを行った。
「情報技術を活用した学系別教育の研究・支援」では、授業で情報技術を活用する教育として理解されないことから、委員会を改組し、名称を学系別ごとに「教育IT活用研究委員会」と改組し、ITを活用した教育内容の豊富化・高度化の推進を研究することにした。
「情報倫理教育の支援に関する研究・支援」では、教員用のe-Learning教材を共同開発する。
情報環境に関する研究の「コンテンツ相互使用のための標準化」では、新規にコンテンツ標準化検討委員会を設置し、共通の環境で使用できるよう、世界でのコンテンツづくりの動向などを見極めながら、コンテンツの標準化について2年程度で研究を行う。16年度から第三者機関による大学評価に伴い、「教育の情報化に関する評価」では、新規に情報化評価委員会を設置し、情報環境およびIT活用についての大学の取り組みを評価するための枠組みについて、2年程度で見通しをつける。
「調査」では、14年度実施の大学情報化環境調査結果の中間集計・分析を行い、その上で情報化投資の経費を加えたランキングによる本報告を計画。また、経済産業省でのIT技術者に対する実務教育と大学教育との実情を調査し、対応の状況について臨時の調査を計画。
「ネットワークによる教育連携の実施」は、現在、約1,000名近くの教員が参画し、約30グループを本格的に運営し、補助金の獲得、教育のCOLなどへの活動に反映できるようにしたい。
「大学電子著作物権利処理事業の実験」では、15年度秋以降に実験が開始できるよう計画。
「研修会、大会等の開催」では、統合・廃止または休止し、11件とした。
「会誌の発行」は変更はなく、「情報環境の整備促進」では、委員会の名称をこれまでの情報教育環境整備促進委員会から「情報環境整備促進委員会」に改めた。また、本格的な相談・助言をするためのポータルサイトの構築を準備中。
東京電機大学の鳩山キャンパスを会場に、携帯電話とパソコンを利用した授業中の学生の理解度、反応を把握する実験を行った。学生の理解度把握の方法として、15分に1回小テストを行った。携帯電話から選択肢で回答すると、小テストの結果がグラフでスクリーンに表示され、理解の度合いが一目瞭然となる。また、授業中の学生の反応を時間を追ってグラフで表示するため、時間の経過とともに理解の状況を把握する仕組みになっている。さらに、授業中に学生同士がディスカッションを行い、その内容をスクリーンに表示して、学生の疑問点や意見を踏まえながら授業を進めた。携帯電話での入力とパソコンからの入力の二つの方法をとった。理系の学生には携帯電話は非常に入力しづらいとのこと。学生の意見交換を見て、教員は途中で授業を止めて質問をしたり、議論を呼び掛け、学生の目線に合った内容で授業をすることができた。 問題点としては、理系の学生は携帯電話での入力に抵抗がある。携帯電話の回答がブラウザの選択肢を選ぶ方式は不便であり、電話のキーを使用するには特別のソフトが必要とのことで、携帯電話で小テストすることがまだ難しいことと、さらに、通信料金の負担の問題、機種の統一など、課題があることがわかった。しかしながら、3割以上の学生が授業に参加する意識が高まった。なお、実験協力には東京電機大学、NTT東日本株式会社、NTTドコモ株式会社、日本電子計算株式会社の協力を得て進めた。
図1 授業実験レイアウト
※ 学生1人1台のノートパソコンおよび携帯電話を使用し、教室外のサーバと接続した。教育のスクリーンには小テスト結果とディスカッションを表示し、教員のパソコン画面には学生からの理解度に関する意思表示をグラフ表示する。
事業は、大学間で著作権処理をする事業と企業等の間で著作権処理をする二つからなる。 「大学間での権利処理」は、オンラインでネットワーク上で電子著作物を申し込み、権利者から利用許諾を得て、ネットワークを通じて電子著作物が利用者の手元に届くようにする。
大学側の準備は、大学内での権利者を明確にするとともに、権利者を私情協サーバーに登録。権利者の帰属は、大学に経験がないことから、学内で何らかの著作物取扱規程が必要で権利の持ち分などの規程が必要となり、現在、規程のモデルを作成中。登録の後、電子著作物を大学窓口のサーバーに移し、セキュリティ保護を行う。アップロードは、ソフトが必要となるが、それは私情協で開発して配布する予定。権利処理が終わると、著作権使用料の徴収、分配の問題があり、利用大学は源泉徴収することになる。利用明細書、源泉徴収に必要なデータを私情協から大学に届ける。
権利者と私情協との間では、管理委託約款を締結することが必要となるため、文化庁管轄の下で検討を進めている。
「企業との権利処理」は、オンラインで著作物の利用許諾、入手が困難なことから、権利者情報をポ−タルサイトで提供し、個別交渉に便宜を図るなどの仲介を行う。携帯電話からもアクセスできるようにする。私情協としては、実験を10月に予定している。説明会を頻繁に開く予定。
図3 オンラインによる大学間電子著作物権利処理システム 図4 企業等と大学間の仲介イメージ
15年1月から3月に国公私立の大学にも呼びかけ、学系別情報教育研究委員会において四つの研究集会を開催した。
文学情報活用研究集会では、24大学31名が参加し、IT活用の実践事例が教育方法の在り方に大きなヒントを与えることができたことと、教材作成の労力軽減のために大学間での協力が必要ということが確認された。
被服学情報活用研究集会では、29大学74名が参加し、機器の操作に時間がとられ本来のパターン教育が十分にできない問題を解決するヒントが得られたこと、大学の教育支援の体制が非常に重要であることなどが認識された。
機械工学情報活用研究集会では、20大学37名が参加し、動機づけ教育のための環境づくりとして、企業の現場からネットワークで授業支援が可能になるよう、あらかじめ教育支援に協力の人材を各企業に呼び掛け、人材データバンクを私情協のサイトの上に構築して、大学の授業が現場情報を採り入れてわかりやすい授業になるような仕組みを作ろうという提案があった。
法律学情報活用研究集会では、ロースクールの開設を前にして、模擬法廷の授業を電子化し、ネットワークを介して大学間で模擬法廷の授業を共同利用できるようにする提案、e-Learningのための大学間での共通プラットフォームの提案、教育手法としてのソクラティックメソッドとケースメソッドの融合など、教育手法にも及ぶ大議論が展開された。
規程を所有する128大学、21短期大学のネットワークの利用、運用管理、情報倫理などの規程等を協会で電子化し、PDFの形で収録するとともに、大学のWebサイトに接続し、全文検索で規程を検索できるようにした。加盟大学であればインターネットで検索することが可能となった。
図5 規程集ポータルサイト
第33回総会は、平成15年5月30(金)午後1時より、東京市ケ谷の私学会館会議室にて開催。当日は、議事に入るに先立ち文部科学省私学助成課の滝波課長補佐から計画調書の留意点等について説明。次いで、審議に入り、理事、監事の任期満了に伴う改選、14年度事業報告と収支決算の後、16年度情報関係予算の要求方針、加盟大学情報環境基本調査の中間集計結果等について報告があった。以下に主なものを報告する。
<文部科学省の説明>
1) | 計画調書の様式は文部科学省のホームページに掲載することにした。 |
2) | 新規項目の教育研究情報利用経費は、教育研究に関する情報の導入・利用に関する経費で、電子ジャーナル、論文リスト、紀要など教育研究の成果に関する情報、実験、文献、統計データなど教育研究の資源に関する情報、講義テキスト情報などの教育情報とし、これら1組で100万円以上を考えている。 |
3) | サイバー・キャンパス整備事業は、文部科学省の中にサイバー・キャンパス整備事業選定委員会を設置し、審査することにしている。インターネット活用による国内外大学との交流・連携による教育研究の推進をするため、他大学とのネットワーク構築、開発したコンテンツの他大学への配信・受信などが対象となる。同一のキャンパス内に限定したネットワーク構築、他大学への配信を行わない場合は補助対象外となる。経常費に限定した申請、年次計画による整備も可能。なお、サイバー・キャンパス事業に選定されない場合でも装置・設備は別途それぞれ個別の補助項目で申請できるようにしたいとのこと。 |
4) | マルチメディア装置のパソコンは、機器を構成する一体的なものとして情報通信施設の一部として対象となるが、学生が使用するパソコンは情報処理関係設備となり、情報通信施設に含まれないので注意されたい。 |
5) | 未完成学部・学科の申請については、すべて補助対象外としてきたが、既存の組織を活用して設置の改組・転換、定員の振替については、補助対象とすることにした。ただし、既存の組織とは別の学生定員のすべてを純増により設置の学部・学科は補助対象外なる。 |
6) | 学内LANの財産処分の承認を受ける方法は、処分する財産以上の学内LANを新たに全学自己負担で整備する方法と、9年までの残りの期間に相当する補助金を按分して算出し、その金額を国庫に納付する方法がある。私学助成課に書類の様式があるので相談されたい。 |
本協会の理事、監事の任期満了に伴う改選を行った結果、新理事20名、新監事3名を以下の通り選出し、平成15年5月31日より就任した。また、6月7日(土)に理事会を開催し、会長選挙を行った結果、戸高敏之氏(同志社大学)が再選された。なお、副会長には白井克彦氏(早稲田大学)、常務理事には、向殿政男氏(明治大学)、藏下勝行氏(専修大学)、斎藤信男氏(慶應義塾大学)、田宮 徹氏(上智大学)が指名され、就任した。新理事、新監事は46〜47ページに掲載。
16年度の要求は、教育・研究の基盤環境である情報化を私立の大学等が計画的に推進・整備して行くことができるよう、15年度の申請実態を踏まえつつ、国からの財政援助の充実を要求する。
そのために、全国の大学・短期大学等への国庫助成希望調査を6月30日に締め切り、集計した上で、文部科学省に提案する予定。
15年度と大きな方針変更はなく、借入による情報機器、学内LAN、マルチメディア装置、サイバー・キャンパス整備事業については、特に重点的に増額を図る方針。なお、著作物の利用に伴う著作権情報のデータベース化への対応についても教育学術情報データベース等開発の中で措置されるよう文部科学省に要望する予定にしている。
11月の本報告の前に速報として中間的に報告するもので、最終報告では内容に若干変更が生じることがあることと、個別大学の基礎情報について8月前までにCD−ROMで会員代表者に送付する予定。
この調査は、情報環境に対する大学の基本的な考え方を明確にした上で、コンピュータ、学内LAN、マルチメディア、支援体制、e-Learningについて、現状と3年先をセットにして、大学の自己点検・評価に役立てていただくことにしている。情報環境に対する当面3年間の目標は、大学で5割、短期大学で4割が教職員が一体となったe-Learningなどの情報化を目指している。なお、学外連携による教育研究のグローバル化は1割が志向している。
パソコンの整備は、教室・学内施設用の大学が6割、ノートパソコン貸与など教室外の使用も4割となっており、自学自習に使用するパソコンもかなり整備しいる。
1大学当たりのパソコン台数は、教育研究用が609台、短期大学で181台となっており、3年前の11年度とくらべ毎年15%程度の増加となっている。1台のパソコンを使用できる学生数は、大学で8人、短期大学で4人で、大学では1週間に1回、短期大学では1週間に2回の使用環境となっており、未だ十分な環境とはなっていない。解決の方法として、学生にパソコンを購入させるところは、77大学あり、全体の24%となっている。短期大学は、大学併設は5割が導入しているが、短期大学法人は2割となっており、授業料負担の増加による学生離れを意識しているもの思われる。
図6 情報環境整備に対する大学の当面の目標
学内LANは、大学の基盤環境として最大限の配慮をするとしており、3年後は幹線1ギガ以上、支線100メガ以上、学外接続は5割が100メガ以上を計画しており、文字を中心とした情報から音声・動画による情報への対応がはじまったことが伺える。学外接続を強化するためのマルチホームは、情報活用の量が大きい大学に多く、6割の大学が対外接続6メン以上となっている。セキュリティは、現状ではファイアウオールによる防御によっているが、3年先は6割の大学でセキュリティポリシーを構築するとしている。
ネットワークの在り方については、あらゆる場所から接続できる無線LANの整備と携帯電話の活用が最大関心事となっている。
ネットワークの運用管体制は、大学と外部委託が大半で、サーバ機器の管理などの保守などが5割、障害対応、Webメール・DNSサーバの管理等、セキュリティ対策などにそれぞれ1割となっている。
全学または学部・学科単位で組織的にネットワークを利用するものの中で多いのは、教材資料の提示・検索、研究のための情報活用が5割が、3年後は7割となっている他、自学自習が5割と顕著。また、遠隔授業、学外からの体験情報、専門家による講評、教材の共同使用・作成は、5割の大学が特定授業で実施するとしている。
図7 一般教室のマルチメディア機能整備状況
表1 セキュリティポリシーの構築状況
マルチメディアの環境は、3年先には5割から8割の大学、短期大学では6割が一般教室のマルチメディア化を計画している。大学としての支援体制は、現状では情報技術の支援、授業運営支援から3年後は、教材資料の電子化、著作権支援へとコンテンツに関する支援へと転換することが伺える。シラバスの電子化は、3年前とくらべると、大学5割、短期大学3割が構築ずみと構築中としており、ようやく電子化が始まった。また、e-Learningへの取り組みは、大学では一部の教員による実施3割、大学として検討中3割となっており、全学的に実施しているところは34校、短期大学で9校となっている。
15年度は、「教える授業」から「学ぶ授業」への大学の取り組みをテーマとし、e-Learningについての解説を行うとともに、学習支援のための事例を紹介し、ITによる教育システムの可能性と限界、教職一体の教育・学習支援の体制について理解を深めることにした。また、全体会議では、教育改善のためにITの活用を積極的に受け止め、チャレンジしていただけるよう、e-Learningに欠かせないサイバー・キャンパス・コンソーシアムや電子著作物権利処理事業、大学間情報交流システムについて、大学の理事長・学長等の責任者の方々に積極的に参加いただけるよう要請する。