私情協ニュース2

第11回短期大学部門検討会議開催される



 第11回短期大学部門検討会議は、平成15年6月21日(土)に中部大学リサーチセンター会議室において開催された。


1.基調講演

「教育メディア化と短期大学−大学評価の時代に−」
大阪女学院院長・短期大学学長 関根 秀和氏

 現在の大学における多様化と多層化の中で、1)自分の大学がどこを選択するかという意識、2)戦略として教育理念の形成と共有化とがどこまで浸透しているかが重要であること、3)教育の展開の中で戦術として自己点検評価が重要な要素であり、スタッフ間の役割の見直しと成長に効果があること、4)これらにITがどういう可能性があるか、等を中心に述べられた。大学教育は、「エリート」→「大衆化」→「ユニバーサル化」を歩んできており、現在は個々の大学が裸で国際競争力を持たねばならない時代であり、それでいて個性輝く多様な教育の展開が必要な時代である。多様化の中では、アラカルトカリキュラムになると、学習と生活との壁が薄くなり、専門学校との区別が曖昧になる。一方で大学評価は、教育の効果を上げるために存在する。この場合ITを中心に置いて、教授法の開発などの各アイテムを点検する方法もある。
 今の時代は学生をどのように育てるかの理念形成を共有事項としてもっていなければ戦略は成り立たない。学生の学習の主体化を図る評価には次の三つの事柄がある。1)現在行っている授業方法などの授業評価、2)コンテンツベースでの教材や内容などの評価、3)学生自身、自分がどう見えてきたかの評価である。これらにITは即時性・集計に効果がある。
 ITの活用は学習と生活サポートに効果が期待できる。学習サポートでは、1)達成感を生む学習の即時的評価、2)リメディアル(咬合不適)診断とプレースメントの技術開発、3)前回授業の内容を示したシラバスの提示、4)自主学習とそれまでの授業記録、5)自己認識に繋がる授業評価、などに期待できる。生活サポートでは、1)今の学習で困っていることへの提案や暗示、2)アプローチの個別化(電子メールによる応答と面接カウンセリング)、3)事務局への電子メールとフィードバックによる信頼度の高まり、などが期待できよう。このように、これまでface to faceや紙ベースでやってきた事柄が、IT化によってさらに豊かな実を結ぶ可能性が開かれている。


2.事例紹介

「大阪女学院短期大学における学習支援への取り組み」
大阪女学院短期大学 教育企画部 教育推進課課長 橋本 誠一氏

 何回かのカリキュラム改訂の中で、教育目標、到達目標を設定し、その目標に導くために教員組織、学習環境を構造化し、自主教材やプレースメントテストの開発を行ってきた。またカリキュラムでは、21世紀を見据えてコアテーマを設定、授業では、読む・討論・小論文・プレゼンテーションをすべて英語で行うようにしている。このため「研究調査法」の科目を置き、情報収集、小論文の作成、プレゼンテーションにPCやネットワークを活用させ、研究法の基礎的な事柄を身につけさせるようにしている。また、学内にラーニングリソースセンターを設け、授業運営をサポートしており、技術面の管理は外部委託にしている。


3.パネルディスカッション

(1)課題提起

「携帯電話を利用したリアルタイム授業評価システムの開発と運用」
東海大学福岡短期大学 情報処理学科 助教授 八尋 剛規氏

 学生の保有率が高い携帯電話を授業中に利用することにより、授業評価の集計とその結果のフィードバックを即時的に行うことが可能となった。PC利用と比べて時間的に大きな差異はなく、各回の授業についての評価結果に変化が認められ、有効な方法であることが確認できた。評価項目については今後検討を重ねていきたい。

「授業教材作成支援システムの開発とその成果について」
大谷女子短期大学 生活文化学科 助教授 近藤 篤俊氏

 授業を欠席した学生、再度授業内容を学習したい学生へのフォローアップをするため、毎回授業を録画しサーバにアップロードしておくには大変な労力が必要である。これを改善するために、教室にデジタルビデオカメラで録画を行い、プレゼンテーションソフトを使って授業を行い、授業終了後に自動的にサーバに動画像とプレゼンテーションソフトが連動したコンテンツが作成されるシステムを構築した。これにより学生はWebブラウザで利用できるようになった。担当者側ではより丁寧に解説するようになり、記録として視聴することで授業改善に役立った。この点でファカルティディベロップメントのツールとしても利用できる。


(2)ディスカッション

 上記のプレゼンテーターと森 園子氏(拓殖短期大学助教授)、白瀬朋仙氏(日本大学短期大学部商経学科助教授)がパネリストとなり、福本 紘氏(梅花短期大学教授)が司会となり、討論に入った。パネリストからは、日本のITインフラは世界でもトップクラスにあるのに活用度が低いこと(森)、トップダウンで整備をするとすべてアウトソーシングになってしまうであろうこと(白瀬)、兼担で情報系教育を行っていても業績審査の際に評価されないこと(白瀬)、基本的に危機感の共有が大切であり、情報の共有が大切であること(関根)などが提示された。この後、フロアも交えて討論を行い、以下のことが議論された(発言者名は省略)。
1) 学生のアイデンティティの形成と気づきを養う教育が大切である。また、自立して情報を収集し自分の論理の中に組み込ませ、論理形成の力を養うことが大切である。このため特別の情報リテラシー教育は行っておらずコンテンツと結びつけて教育している。
2) メディアリテラシーを取り入れたコンテンツ中心の教育を行うにしても、一方で学生採用側の企業からはビジネスアプリケーションの技術を求められる。この場合、継続学習プログラムを課外で受講させる方法も考えられる。
3) 商業高校出身者はリテラシーができているので、選択科目に変更すると本来受けなければならない学生が選択しないという問題が存在する。
4) 小規模校の場合、支援の体制ができておらず、学校規模による格差が生じている。
5) システム管理などがアウトソーシングされると様々な問題が生じてきている。
6) アメリカでは古いマシンの保守や多様なマシン環境で活用とスタッフ体制が進んでいる。また学生を活用して支援体制に組み込んでいる。
7) 授業は独りで行うものでなく、システムや教材作成、電子メール返信など多様なスタッフの支援が必要である。この点について教員の意識改革が必要であろう。
8) 職員の異動の問題があり、なかなか人材が育たない。また補助金も積極的に利用すべきである。
9) 紙文化からの脱却と情報機器活用とが、コストダウンになるが、なかなかそこまでの意識がない。

(文責: 短期大学会議運営委員会委員長
  梅花短期大学 福本 紘)


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