私情協ニュース6
去る、8月2日、日本大学理工学部駿河台校舎を会場に100大学、13期大学より211名の理事長、学長、学部長等が参加して開催。
今年度は、「『教える授業』から『学ぶ授業』への大学の取り組み」と題して、「学ぶ授業」を実現するための教育方法として、学生の学習意欲を惹起し、必要なときに学習や個人指導が得られるe-Learningをはじめとする教育システムの可能性と限界、大学としての教員職員一体となった支援体制などの課題について協議し、学生に魅力ある大学創造について探求する場とした。
会は、戸高敏之会長(同志社大学)より、本会議開催の趣旨について説明があり、ついで瀬在幸安総長より会場校代表の挨拶の後、基調講演、事例報告、全体討議、関連情報の紹介を行った。以下に会議の概要を紹介する。
「電子著作物権利処理事業」では、インターネット上で電子著作物の利用許諾を行えるようにするために、本協会の権利処理システム(文化庁登録)を介して大学間で実施するもので、煩わしさがなく迅速に利用許諾が行える他、コンテンツの利用実績の基礎資料提示を通じて、教育業績として活用できる、大学としての知的財産をマネージメントできるなどのメリットがある。なお、大学の外部機関との権利処理は、企業に教育支援のための協力を呼び掛け、企業等がWebサイトに掲載の情報やそれ以外の情報提供について、本協会のポータルサイトを通じて個別対応いただけるよう働きかける予定としている。現在、大学間でのシステム作りを優先して準備を進めており、11月の実験を目標に、大学へ参加を公募中。
学系グループの活動状況
英語学 基礎学力強化のためのマルチメディア語彙教材を開発中 法律学 法学入門用の教材共同使用を企画・検討中 経済学 経済学入門用の教材・素材を共同使用するためポータルサイトを構築 会計学 教材・素材を共同開発、共同使用に向けて授業事例を踏まえたIT技術の勉強会を企画中 物理学 ポータルサイトを介した教材の共同使用、基礎学力の補完を目的とする教材の共同開発を企画中 化学 基礎学力の充実を図るための狭材共同使用および不足する教材の共同開発を企画中 数学 基礎数学分野の教材共同使用、共同開発を検討中 機械工学 学生の授業参加意欲を高めるため、教材の共同使用、共同開発を企画中 電気通信工学 教材の共同使用を図るため小グループを構成して企画中 土木工学 練習問題・試験問題のデータベース構築を企画中 経営工学 動機付け教育を目的とする共同授業を企画中 医学 臨床コミュニケーションや実技能力に関する補助教材の共同使用、共同開発を中心にテーマを検討中 歯学 コア・カリキュラム等を視野に入れながら教材の共同使用、共同開発を検討中 薬学 教材の共同使用を図るため、授業テーマの整理等、進め方を検討中 被服学 画像や図面等の素材情報を共同使用するためのポータルサイト構築を企画中 美術・デザイン学 授業でのIT活用手法を研鑚するため参加教員相互の授業紹介を実施中
次いで、座長から協会の以上の取り組みについての意向を問いかけたところ、出席のほとんど全員から賛成を得た。その上で著作権問題について質疑したところ、概ね次のような意見交換があった。
オンラインによる大学間電子著作物権利処理システムの流れ
1) | 教科書は書いた教員に著作権があるが、電子的になると著作権の帰属が問われるのは何故か。 :電子化された教材の作成が大学の施設・設備、大学組織、予算などの支援を受けている場合は、教員本人以外の権利者を明確にしておくことが重要。権利者に許諾を得ないで、著作物をネットワークで公開すると、権利侵害が不特定に波及する虞れがある。 |
2) | 米国大学のMITが行っている教材等の著作権放棄について、日本ではどのような対応があるか。 :14年度から文化庁の取り決めにより、著作物についての自由利用を明示するために、コンテンツに文化庁が指定する自由利用マークを張り付けることになった。 |
3) | 教員と大学との間で権利に対する考え方が異なる場合の対応は、どのように考えるのか。また、教員が他大学に移籍した場合の権利関係はどうなるのか。 :権利の帰属について共通理解が得られるよう、本協会のモデルを参考に学内での取り扱い規程を設けることが急がれる。他大学に移籍しても、権利が教員に全て帰属しない場合は移籍前の権利関係に拘束されることになる。 :教員が学外に教材を公開する場合には、学内のしかるべき組織に届け出るとか、授業の録画を外部に送信する場合は、事前に組織にて協議を行うなどの規定が必要。 |
4) | 教員が大学を辞めた後、大学が録画した授業を行う場合は権利侵害にならないか。 :権利の持ち分について、大学内で事前に協議しておくべき問題。教員の授業を録画する時点で教員と大学との間で、肖像権、著作権などの権利の帰属について共通理解を得ることが必要。 |
「情報化投資額の実態と補助金の活用」
14年度における加盟大学の教育研究用の情報化投資額は、メディアンで1校当たり1億5,694万円で8.3%増、管理部門は2,549万円で2.8%減。短期大学は、教育研究2,690万円で3.1%の減、管理324万円で6.1%の減となっている。学生1人当たりでは、大学で教育研究用5.1万円と昨年度とほぼ横這い、短期大学で4.7万円と若干増加となっている。
補助金の活用では、情報機器の導入は極力、借入れにする方が得策。教室のマルチメディア化工事、学内LAN工事などは一括払いによる情報通信施設、情報通信装置の補助金を活用。学内LANの補助期間9年以内に工事や機器装置の機能改善をする場合には、9年までの残余期間の補助額を国に返還して、新たに補助申請することが得策。
大学規模別 教育研究部門の情報投資額 (単位:万円)
1大学当り
中央値学生1人当り
中央値【大学】
A(入学定員3千人以上)
165.118
7.5 B(2千人以上3千人未満)
63.911
4.6 C(2千人未満自然科学含)
35.362
7.0 D(2千人未満人文科学含)
12.215
4.1 E(自然科学単科大学)
25.074
8.3 F(社会科学単科大学)
6.081
5.0 G(人文科学単科大学)
9.280
4.0 H(医歯薬単科大学)
9.333
8.1 I(その他単科大学)
7.838
5.2 大学平均
15.694
5.1 【短期大学】
大学併設短大
4.228
4.3 短期大学法人
2.362
8.0 短大平均
2.690
4.7