巻頭言
坂本 和一(立命館アジア太平洋大学学長)
国際的に見れば、大学間の優秀な学生の獲得競争が地球レベルで展開していますが、その際、インターネットによる広報活動や志願システムが大きな武器となっています。世界の各大学はこの点でしのぎを削っていますが、残念ながら日本の大学はその土俵にまだ上がり切れていないように思われます。
もとより今日、インターネット上でホームページを展開していない大学はありません。いずれの大学もこれまでペーパーベースで発信していた情報をインターネット上で発信しています。しかしこれをグローバルな学生募集システムとして展開している日本の大学はまだ極めて少ないようです。なぜなら、そもそも日本の大学は、ごく少数の例外を除き日本語のみを教育言語媒体としており、国外から自由に学生の応募を受け入れる教育システムをまだ整備していないからです。
立命館アジア太平洋大学(APU)には、2003年9月末現在で、世界67の国・地域から合計1,600名を超える学生が入学してきています。よく「APUの留学生は中国、韓国からですか」とか「東南アジアからですか」と聞かれますが、実際にはそれをはるかに超えていて、世界六つの大陸全域から学生が入学してきています。北東アジアの中国、韓国、台湾は確かにメジャーグループですが、それらの国・地域からの学生は50%程度で(日本の平均ではこれらが84%を占めている)、あとの50%が60を越える世界中の国・地域より来ています。学部レベルでの留学生で、例えばアフリカ諸国より日本に来るケースは非常に少ないのですが、APUには現在16の国から70名を超える学生が在籍しています。
これを可能にしている基本は、APUが英語・日本語2言語併用の教育システムを採用し、特に英語による一貫した教育システムを導入していることです。この新しい大学(2000年4月開学)を創設する際、教育言語をどうするかは大きな戦略判断だったのですが、国際大学として本当にグローバルに開かれたものとするには、世界言語としての英語を基本とすることが不可欠だと考えて踏み切ったことが成功したと思います。これによって、これまで日本語だけだったら大きく制約されていた留学生の出身地域を画期的に拡大することができたわけです。
しかし、その際、実際に世界から学生を募るのに大きな働きをしているのは、インターネットです。近隣のアジア諸国には、私たちは比較的に足まめに出かけて広報・募集活動を展開できますが、ヨーロッパ、アフリカ、北米・中南米になりますと、それはままなりません。したがって、インターネットによる広報・募集が大きな威力を発揮してくれます。1990年代末APUを準備していた段階ではまだインターネットは動き出したところでしたが、21世紀に入ってその発展が加速してきました。これがAPUの留学生募集に大きな力に
なっています。
しかし、これは日本では珍しいケースですが、世界的に見ればまったく後発でして、世界の各大学はインターネット上で優秀な学生確保にしのぎを削っています。世界の若者たちはインターネット上で世界の大学の優劣を日夜チェックして、自らの進路を選択しているのです。
残念ながら日本の大学は、まだこの熾烈な、国際的な大学選択競争の土俵に上がっていないのです。
私たちはインターネット上での洗練された大学情報開示を求められていますが、それを国際的な学生受け入れ競争の武器として生かしていく必要があります。