教育支援環境とIT

高松大学の教育支援と今後



1.大学の概要

 本学は、経営学部1学部の単科系大学で、経営学科とマネジメントシステム学科を設置しています。学生数は、学部453名、大学院19名の合計472名で、教職員数は、教員38名、職員15名の合計53名となっています。


2.教育情報システムの概要

 高松大学経営学部は平成8年開学以来、建学の精神である「対話にみちみちた ゆたかな人間教育をめざす大学」、「自分で考え、自分で行なえる人間づくりをめざす大学」、「個性をのばし、ルールが守れる人間づくりをめざす大学」、「理論と実践との接点を開拓する大学」の四つの柱をもとに、時代に即応した実務実践型の教育方法を開発し、「共生の経営」をテーマに地域に必要とされる人材育成を行っています。高度情報化社会の到来において、対話の方法が多様化する中、情報化社会を生き抜く人材育成のために、「いつでも、どこでも、だれでも簡単にコンピュータの利用ができる」人にやさしい教育情報システム環境の構築を行い、情報処理教育はもとより、教養教育や専門教育でのコンピュータ利用を行っています。本学は小規模大学の特性を大いに活用し、大規模大学にはできない、教員や情報処理センター員によるきめ細やかな教育指導や教育情報の提供支援を行っています。すなわち、少人数での、画像処理ソフトウェア、統計解析ソフトウェア、コンピュータグラフィックスなどのソフトウェアを利用した特色ある教育実践、キャンパスネットワークの高度化(ギガネットワークへの対応)、データベース、VOD(Video On Demand)などのミドルウェアを整備し、3階層での教育支援システムの構築を行ってきました。
 また、教育実践の場として大学に適応されにくかったCAI(Computer Aided Instruction)の開発方法、学習評価方法、コンテンツ流通、教授内容の評価を踏まえた、教育実践を行ってきました。


3.教材作成の電子化への取り組み

(1)教材開発の環境

 本学では、MS-DOSで開発したCAI教材の取り組みの経験をもとに、教材作成環境、実行環境、教材評価の三つの観点から研究開発を他大学や企業とともに行い、その成果であるInternetNavigware(富士通株式会社)をWeb ベース教育サーバに利用し、e-Learningを中心とした、教育支援システムの構築を行っています。本システムは、教材開発ツール、学習エンジン、成績管理ツールを中心に、受講管理などの教授支援サービスなどから構成されています。教材作成には、本ソフトウェアの教材開発ツールを利用しています。ツール自体は、教材の組み立てとサーバ登録・変更を中心としており、コンテンツ一つ一つについては、作成者の好みのソフトウェアが利用できることに特徴があり、教材開発の作成、変更が容易に行えるインタフェースが提供されています。ただ、教材作成導入にあたっては、その前提として電子教材作成にあたっての指導が必要となる場合があるため、センターでは教員の要望を考慮し、教材作成への指導協力や、教材の共有や再利用の紹介を行っています。
 また、本ソフトウェアはSCORM(Sharable Content Object Reference Model)などの教材規格への対応も考慮されているため、今後の教材開発および資源管理に有効的な利用推進が望めるものです。

(2)教材開発の組織と方法

 本学では、教材開発の方法を、1)教員独自での開発、2)教員・情報処理教育センターとの共同開発、3)市販のコースウェアの利用、の三つに分類しその対応と推進を行っています。

1)教員独自での教材開発
 ホームページやWeb型文書サーバを利用した教材資料作成と、教材開発ツールを利用した場合に区分されます。教材開発ツールでの利用の場合、情報処理教育センター4名の職員がソフトウェア作成のための説明会を行い普及啓蒙するとともに、教材開発・運用における問題についての支援を行いながら、教員中心の教材開発を行います。

2)教員・情報処理教育センターでの教材開発
 英語や情報教育のように教員が複数存在し、かつ一科目で完結せず授業対象範囲が広いような授業を対象とするもので、3から4年の長期的に利用されるものを対象とします。教員・情報処理教育センター職員・外部情報技術者の三者の組み合わせによる検討が行われます。具体的な方法については(3)の説明を参照して下さい。

3)市販のコースウェアの利用
 情報処理教育センターが中心になり、教員に対する教材紹介や、コースウェアの調査や開発の要望を聞いたりしています。

 現在、本学では、オンラインシラバス、学生による授業評価の実施、参観授業・授業研究など教育改善のための取り組みが行われています。本年度はFD検討専門部会が設置され、情報処理教育センターとも連携をとりながらe-Learningの開発とその運用を含め、学生のための総合教育システムの開発を行っています。

(3)Webベース教育支援システム

 Webベース教育支援システムは、1)多様な学生が知識修得を行える学習、2)スキルアップが行える学習、3)自己能力開発を行える学習、の三つの学習を行える教育環境を目指しています。
 このような教育環境を実現するために、本システムが提供するサービスの範囲を

の三つに分類し、そのサービスをより効果的に行うために、マルチメディアデータの利用、教材の共有・再利用の実現に向けたデータベースの構築や学習に必要な資料情報の整備を行っています。

1)ビデオ教材を利用したWeb ベース教育システムの開発

 本システムは、ビデオ配信、教材実行、履歴管理の三つのシステムから構成されます。ビデオ画像は、デジタル化され、ビデオサーバに保存され、学習教材はWebベース教育サーバであるInternet Navigwareに保存され、ビデオサーバと連係して学習が行われます。コンピュータを利用した教育では、学習内容に興味を持たせたり理解度を高めるために表現方法の工夫が必要です。特に、多様な人材に対する教育や、学習意欲を起こさせる教育においては、キャラクタベースの表現方法に付加価値をつけること、つまりマルチメディアを活用した表現方法が重要と考えられます。しかし、魅力的なビジュアル教材を開発するには、シナリオの作成から撮影編集などにおいて、複数のスタッフが必要なこと、映像作成のための専門知識が必要となり、作成が容易ではありません。また、外注を行う場合においては、制作費の多大な費用と時間の問題があります。そこで、すでに作成されたビデオ教材を利用した教材作成を行いました。
 既存ビデオ教材を有効的に利用する利点としては、教育目標の合致したものが得やすい、教授戦略や学習過程の予測が立てやすい、教育内容がわかりやすい、モチベーションがもてる(学習者)などがあげられます。しかし、コンテンツの著作権、利用条件の設定など様々な契約に対する時間や知識が必要となるため、その部分をアウトソーシングすることとしました。
 VODコンテンツ教材完成までの手順を図1に示します。このように、教材作成を分業化することにより、教員は教育に必要な教授方法、学習情況の把握、学習評価に専念することが可能となりました。この方法で、英語教材では、「ミニ英会話とっさのひとこと」(図2)などのNHKで放送されたビデオをWeb教材化し、英語の導入教育に利用しています。また、経営学部においては、専門学校で作成された簿記3級のビデオをWeb教材化し、普通科課程からの入学者に対する教材として利用しています。
 学生の反応としては、興味が持てるとか、何度でも復習が行えるなどがあげられます。利用を始めて4年になりますが、少しずつ効果が見表れています。

図1 VOD コンテンツ教材完成までの手順

図2 Internet Navigware
ミニ英会話とっさのひとこと画面

2)Webベースの情報提供サービス

 授業での配布データやレポート・課題、学生求人情報、学生便覧の情報など、学生が必要とする情報提供サービスをWebベースで構築し、大学内外から利用ができるようにしています。また、学生個人のデータスペースとしても利用ができます。
 本システムは、各演習室からはもちろん、学外からでもWebブラウザさえあれば、いつでも、だれでも、どこからでも情報の登録・検索・参照が可能です。登録する文書は、参照用データ(PDF形式)も自動的に生成する方式をとっており、均一した公開用データが作成できます。学外からの利用時には、SSL暗号化通信を利用して接続時のセキュリティ確保を行っています。また、電子メールについてもWebベースのメールを利用しており、学内外からの利用が行えます。この二つのシステムを組み合わせることにより、高度な情報伝達を可能にしています。

図3 情報提供サービス
ドキュメント管理トップページ


4.現状での問題点と今後の課題

 キャンパスにおける学生への教育支援の取組みも、単なる一授業から、学部学科におけるカリキュラム全体での取組みが必要とされています。オンラインシラバス・履修、授業支援、学生による授業評価、成績評価にまたがる教育情報を有効的に活用が行える、総合情報支援システムの構築が急がれています。
 また利用形態も、情報処理演習室から一般の教室へとエリアの拡大が進んでいます。現在、公衆無線インターネット「みあこネット」のアクセスポイントの実験運用を始めていますが、今後は、ユビキタスキャンパスをテーマにいつでも、どこでも、だれでも、安心して利用できるキャンパス情報システムの構築を行いたいと思っています。


文責: 高松大学
  情報処理教育センター長 佃 昌道


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