翻訳

アカデミック・カレンシーとしての学習度(2)
Student Learning as Academic Currency

Sally M. Johnstone, Peter Ewell, and Karen Paulson



 翻訳は、EDUCAUSEならびに米国教育評議会(American Council on Education)の許可を受けて、「通信教育:課題と選択、新たな環境」シリーズのうち、“Student Learning as Academic Currency”について行いました。訳文は前号と今号の2回に分けて掲載しています。
 前号掲載の訳文と原文はそれぞれ下記のサイトに掲載しています。
前号訳文
http://www.juce.jp/LINK/journal/0401/08_01.html
原文
http://www.educause.edu/asp/doclib/abstract.asp?ID=PUB5104


1.統合システムの実際

 非常に多くの要因がかかわっているため、「アカデミック・カレンシーとしての学習度」という概念を示すために、具体例を上げることが有効な手段となるかもしれない。そこで次に、この概念の肉付けに役立つ可能性のある、2020年に分散学習に参加している3人の学生のケースを上げてみることにする。

 これらは架空の例ではあるが、これらのケースから学業成績の統合・移行システムの主な特徴の多くが理解できる。最も顕著な例には次のようなものがある。

 すでにこうした要素のすべてが高等教育において試行されているが、それらはまだ受け入れ可能なアカデミック・カレンシーの代替システムへと統合されているわけではない。


学習度を通貨とするシステムが今、必要とされる理由

 分散学習がますます普及し、学生たちが従来の学習と並行、あるいはそれに続くものとして分散学習を体験するにつれて、学力を「説明」するための新しい方法が必要とされている。従来、選択すべき方法は履修単位であったが、主に、教室や講義で費やされた時間数が実際に行われた学習の目安にならないという点で、この方法には問題があった(Oblinger、Barone、Hawkins、2001年)。こうした事実により、個人間で履修科目と学習ペースが異なることに対し理解が広がるとともに、学習度の記述語となる特定のコンピテンス(能力)と、学力の基準となるコンピテンスのアセスメント(能力の評価)の有用性が強調されている。コンピテンスとアセスメントによって学習度の説明・評価を行えば、学生が知識を習得するのに要した総時間数はさほど重要ではない。本当に重要なことは、学生の知識と能力そのものである。アカデミック・カレンシーの新たな方策はまた、簡易性、柔軟性、信頼性といった履修単位や履修時間に見られる主な特徴を盛り込むものでなければならない。

コンピテンスとアセスメント:基本原則

 学習度をアカデミック・カレンシーの基礎とするには、望ましい学習成果を説明する方法と実際に学力を判断する方法とが必要となる。コンピテンスとは、学生が知っていること(知識)・できること(能力)を具体的に説明するものであり、アセスメントとは、学力の実際のレベルを判断するのに用いる方法である。アセスメントには、試験、課題、模擬実験など多くの形式が存在する。コンピテンスとアセスメントには、十分な理解が必要となるいくつかの基本的特徴が見られる。

 分散学習がますます普及し、学生たちが従来の学習と並行あるいはそれに続くものとして分散学習を体験するにつれて、学力を「説明」するための新しい方法が必要とされている。

 コンピテンスとは、学習行為、つまり学生が実際にやり遂げ得るタスクの種類や、特定の状況の中で応用することのできる技能に関するステートメントであると言える。コンピテンスには、教育機関レベルの広範なステートメントから、プログラムレベルのより限られたステートメント、コース・レベルの学習成果に関する極めて詳細なステートメントまで存在する。コンピテンスを学生の学習成果という形で捉えるような考え方は、高等教育では新しいものではない。教員がコース指導にあたって学習目標を用いる場合は多いが、コンピテンスでは、学生が知るべきこと・成すべきことという観点から、こうした学習目標を体系立ててより詳細に提示し直す必要がある。担当科目に具体的な学習目標を設定していない教員ですら、指導結果として、学生が変わるべき点について多少の見解はあると思われる。このような問題について、教員に慎重に検討を進めてもらうことが、有用なコンピテンスを構築する鍵となる。
 こうした取り組みには常に十分な考察と議論が必要である。教員のニーズを満たし、学生や利害関係者と効果的なコミュニケーションを取るコンピテンス・セットに到達するまでには、何度も検討を積み重ねる必要があるかもしれない。一般に、従来の学習目標をコンピテンスへと変えるには、より具体的で説得力のある用語が必要である。だが遂行した途端、「重い任務」が発生する。すなわち時間ベースから学力ベースの記述へと学習度の観点をシフトしなければならないのである。そして継続的な管理が新たな日課となる可能性がある。次の章で述べるように、この目標に到達するには、外部組織や教育機関自体が奨励策を打ち出す方式に、実質的な変化が必要となるだろう。

 アセスメントとは、コンピテンスが実際に達成されたかどうかを判断するために使用する方法であり、従来の筆記試験から、医療教育で用いられる臨床経験などの実際(真)の課題に至るまで、幅広い形式を取りうる。その中で、コンピュータ・シュミレーション、所定の状況下における学生のパフォーマンスのビデオ撮影、グループ単位での問題解決演習など、様々な方法が発展を続けている。これらのアセスメントに基づく学生の実績レベルは次に、教員によって特定された一定の特徴に従って、“satisfactory(満足)”、“unsatisfactory(不満足)”、“exemplary(模範的)”に割り当てられる。アセスメントの採点ガイドは「評価基準(rubrics)」と呼ばれることが多い。優れた評価基準では、複雑に統合された活動(例えば、単に正確な数字を答えるのではなく、数学問題を解くためのステップを残らず書き出すなど)の一環として学生が示さなければならない様々な技能や知識要素が、教員によって具体的に特定されているとともに、一定のスコアを収めるのに必要な条件という観点から、これらの要素が詳細に説明されていると思われる。アセスメントと採点評価基準を使用することにより、成績評価の過程が誰にとってもより理解しやすくなると同時に、学生にとってはより分析しやすくなる(Walvoord&Anderson、1998年)。誰しも、精魂込めて書き上げた研究論文が予想を下回る成績で、しかも、評価が“B”であった理由を説明する教員のフィードバックもないまま返されたというような思い出があるはずだ。コンピテンス、アセスメント、および採点評価基準は、所与の実績に関して良かった点や悪かった点を(明確に)特定することによって、こうした混乱の一部を取り除くのに役立つ手段だと言える。

 アカデミック・カレンシーとして学習度を問題なく使用するシステムを整備する前に、多くの成すべきことがあるが(政策的含意を参照のこと)、本書では、コンピテンスとアセスメントの使用により、移行可能性に加え、簡便性、柔軟性、信頼性といった要件が満たされるものだと考えている。これらは指導目標に根差しものであり、様々な達成レベルに要する実績レベルについての明確な指針を提供する手段である。ただし、中等後教育が現在ある地点からあるべき地点へ到達するには、複数の政策面で断固としたリーダーシップが必要となるだろう。


政策的含意

 アカデミック・カレンシーとして学習度を採用するのに必要な政策変更は、高等教育のより広い展望と個々の教育機関によって左右される。本章では、中等後教育の状況全般にかかわる多くの問題点について検討することにする。これに基づき、教育機関レベルおよび州レベルの政策指導者にいくつかの質問を提示した上で、さらに学習度をアカデミック・カレンシーとする動きを支援するために、政府政策と認定政策において実施されているいくつかの方法について、その概要を説明する。


中等後教育に対する政策的含意

 コンピテンスとアセスメントで判定された学習度によって、学術界の流通貨幣における簡便性、柔軟性、信頼性という中等後教育のニーズは満たされるのであろうか。目標とする政策介入をもってすれば、答えはイエスだと考える。「アカデミック・カレンシーとしての学習度」モデルに向けた動きは、認定または経費に対するアカデミック・アカウンティングの現モデルを引き裂いてしまうようなものではなく、これら二つの異なるアカウンティング・システムの再考と、おそらくは切り離しを要するものである。将来の代替測定基準が従来の履修単位が有していたような一般的用途を実現することは、不可能なことかもしれないし、望ましくないことかもしれない。分散学習の機会を得ることで、学生は教育機関とより複雑にかかわる方法を手にすることになる。技術革新によって学習経験が豊かになるにつれて、学生と教育機関との複雑な関係は我々が想像できないような形で拡大するかもしれない。したがって、単一の測定基準では、すべてのケースに対応できない可能性もあるだろう。


編入と学生の流動化について

 現在の単位制度に対する変更は、どのようなものでも編入と学生の流動化についての問題を引き起こすだろう。アカデミック・カレンシーとして学習度を採用するキャンパスが編入問題に直面せざるを得なくなる一方で、変化は断片的、緩やかに生じるかもしれない。次の点について検討してみよう。

 学習度に基づくアカデミック・カレンシーを実施する際の政策的含意には、次のようなものがある。

簡便性
   すでに担当科目に対する学習成果を定義している教員であれば、学習度に基づくシステムにおいてもほとんど変更の必要はない。しかし、こうした変更には、管理や説明責任を果たすために必要なデータを収集する巨大な評価体系が必要になると思われる。焦点を学生が重要な学習活動に費やす時間に移したり、学部の指導機能を活動ごとに費やされたアカウントに分解することで、新たなアカウントの測定基準を簡単に想像できる。実際にこのような特徴はすでに、多くの州で原価計算モデルと財政スキームに採用されている。また認定機関でも、実際の学習参加を促すために、中等後教育機関による学習成果とアセスメント・プランの使用が支持されている(Eaton、2002年)。

柔軟性
   近年まで、履修単位制度は様々な教育機関や教育現場へ柔軟に応用できるシステムであった。しかし、分散教育の普及と同時に、履修単位の概念が持つ柔軟性は限界に達している。学生の学習方法、学習場所、学習時間は大きな問題ではないために、学習度の証明方法は柔軟性の拡大へと直接つながる。重要なことは、学生がその知識や能力を厳密なアセスメントに対して証明できるかどうかである。コンピテンスとアセスメントでは、より教員側に先見的な考え方が必要となるかもしれないが、これらの方法を使用することにより、学習の習得や学習度の証明における学生側の選択性は高まることであろう。

信頼性
   履修単位の概念は強力な表面的妥当性を持つ。それは主に、多くの人々にとって履修単位が大学での経験の基礎となるからである。近年、学習度の直接評価が教育現場や行政現場の一部で信頼性を高めている。そうした例は、専門教育や職業教育で授与される第三機関による資格数の増加や、Measuring Up 2000で推進された、学部生の実績に対する州レベルによる直接評価への近年の関心の高まりなどに見られる。(National Center for Public Policy and Higher Education、2000年)。しかし、K-12 educationでの場合と同様、コンピテンス検査などの方法が高等教育において「通常業務」となるためには、政策担当者はテスト対象とテスト方法についての見解を一致させるといった難題を克服しなければならないだろう。


教育機関に関する政策的含意

 教育機関が学習度をアカデミック・カレンシーの基礎として認める場合、従来の学会の特徴の多くが変化することは避けられないだろう。そうした特徴の中には、基本的なカリキュラム・デザイン、教育と学習との相互関係、教育デザインに対する教育機関の支援、教員の時間の使い方を支配する大学の慣習と政策、教員の昇格と終身在職権に関する方針を規定する方法などがある。

カリキュラム・デザイン
   アカデミック・カレンシーとして学習度を用いようとする動きには、従来構成されてきた講座ベースのプログラムが終わりを迎えたといった印象を覚えるという意見があるかもしれない。だが、これは大きな間違いである。教育機関内ではもはや、プログラムが講座の集合体として一義的に定義されることはない。その代わりにプログラムを規定するのは、特定の学習成果のまとまりである。こうしたカリキュラム全体にわたる学習成果を実用ベースで確立する方法とは、いったいどのようなものであろうか。多くの場合、こうした学習成果は個々の講座目標を利用してアレンジ、つまりまとめるか、あるいはあるプログラムに対する学習成果を教員の手でゼロから決定し、シラバスのレビューを基に現在の講座成果と照合するものと思われる。すでに特定された一連の学習機会が(例えば書面で)存在する場合や、学部が一連のカリキュラムの一貫性(すでに存在する可能性の高い、基礎となるコンピテンスの推定セット)を厳密に管理している場合には、カリキュラムが基礎とする前提に対する学部の密接な結びつきにより、カレンシーとしての学習度モデルへの移行が容易になるだろう。こうした既存のプロトタイプを用いて、新しいモデルを既存の履修単位や成績評価システムから段階的に変更していくことも可能である。これは一度にすべての分野で行う必要はない。

教育活動と学習活動
   アカデミック・カレンシーとしての学習度という概念に重点を置くために基本的な教育・学習活動を調整する動きについても、徐々にではあるが多くの大学で進展している。結局のところ、学習目標の明確化が、適切なカリキュラム・デザインの根底を成すものだと思われる。そして教育機関の活動のすべての基礎は、明確化された学習目標によって形成されるべきである。しかし、コンピテンスとアセスメントという明確な体系への移行によって、教員たちは従来の活動を取り止め、学生が経験する学習機会の結果として、学生が知るべきこと・成すべきことについて十分に考慮せざるを得ないであろう。重要なことはコンピテンスをいかに明確かつ具体的に識別できるかであり、実際には、それを特定の教育活動セットの結果としていかに明確かつ具体的に示すことができるかなのである。多くの教育機関ではすでに、より大きな教育機関プログラムの検討やアセスメント・プログラムの一環として、学生の学習成果に着目しているが、このような移行が生じた場合には、将来的により一層の注目が集まることは明らかである。

教育デザイン
   教育デザインでは個々の学生の学習目標を達成するために、意図的にカリキュラムと学習機会の構成方法に焦点が当てられている。大学では教育デザインがますます重要視されているが、それは、教員が特定分野の研究対象に関する専門家であっても、教授法や教育学について熟知してはいないと気付いたからである。このような状況を解決する手段として、多くのキャンパスでは、教員の利用できる教育支援センターが設置されている。教員がこうしたリソースを十分に活用し、自らの能力を大学の重要資源として構築するのを促進するには、政策変更が必要となるだろう。

教員の時間の使い方
   教員が教育、研究、サービスという高等教育の主な三つの目標に対して自らの時間をどのように振り分けるかは、大学の慣習と政策によって大きく左右される。通貨としての学習度に焦点が移動することにより、カリキュラム・デザインや教育デザインといった活動への参加を正式に確認する(そして参加に対して報酬を与える)には、教員の時間をさらに細かく割り振る(時間ごとに価格を付ける)必要が出てくるだろう(Paulson、2002年)。また、こうした変化によってさらに分業化が進展することで、教育デザイナーがカリキュラムを開発し、技術者が最先端の学習管理システムによってそのカリキュラムを構築し、個々の教員が仲介機能(学生の研究内容の理解を手助けするのに必要な、学生とのマンツーマンによる相互交流)に重点を置くことができるようになるなど、場合によっては、教育デザインの改善につながるものだと思われる。このような変化によって、学習成果を明確に提示した上でカリキュラムへと組み込み、適切なアセスメントを使用するように教員に奨励することができるであろう。

 通貨としての学習度に焦点が移動することにより、カリキュラム・デザインや教育デザインといった活動への参加を正式に確認する(そして参加に対して報酬を与える)には、教員の時間をさらに細かく割り振る(時間ごとに価格を付ける)必要が出てくるだろう。

教員の報酬システム
   教員の行動の変革には、大学の慣習が拡大する中、教職員に分配される目に見える利益や目に見えない利益という形式だけでなく、それと同時に公式の昇格と終身在職権に関するガイドラインにも同程度の変革を支持するような変更が必要となる。学習成果について説明し、認定するために意図的にコンピテンスとアセスメント、採点評価基準を使用した教員については、そのことを認め、報酬を与えなければならない。そうでない場合には、このような行動は大学に認められないといったメッセージが他の教員にも伝わり、肯定的なレトリックにもかかわらず、教員がそれに関与する姿は瞬く間に見られなくなるだろう。


大学に対する質問事項


州と教育機構に対する政策的含意

 大学がアカデミック・カレンシーとして学習度にベースをおいたモデルを採用するには、州と教育機構は同時にその目標を一貫して支援する財政スキームと政策を実施しなければならない。州レベルにおける最も関心の高い政策領域には、何よりもまず、州または教育機構(およびその利害関係者)が、学習成果に基づいたシステムに積極的な価値を見出せるかどうかである。こうした基本的なビジョンと基本的な関与から、適切な資金調達メカニズムや報酬体系、学生の編入プロセスや要件が登場しうる。

分散学習に対するビジョン
   州と教育機構は、分散教育がどの程度、学生のニーズを満たし、州の経済や社会機構に積極的な影響を与えるのかについて綿密に検討したビジョンを持つ必要がある。このような重要な社会資本要素としての教育ビジョンから、「通貨モデルとしての学習度」を支援する首尾一貫した方針が出現するであろう。こうしたビジョンの発展に、産業界や地域社会の指導者は関与すべきである。なぜならば、彼らの支援は、それを実現するために必要な具体的な政策を実施するのに必要不可欠となるからである。

資金調達と報酬メカニズム
   州や教育機構が個々の大学、教員、管理者に要求できる重要な力となるのが資金調達メカニズムである。履修単位に基づいて生成された財政スキームまたは仕事量に対する報酬システムは、そのままでは学習度通貨モデルで機能しないだろう。これらのメカニズムを、教員が開発・許可した学習成果アセスメントをベースとした特定の学習基準(例えば、カリキュラムの一般教養部門のライティング・シークエンスの修了)の達成度に基づいて、学生の進歩を認識できるように構築し直すには、まずメカニズムそのものを調整する必要がある。同時に、このキャパシティの開発を援助するために大学に分配される特定目的の財政的支援により、その開発はさらに助長されるものと思われる。

編入政策
   編入プロセスが学生にとってどの程度スムーズであるかは、資金調達と同じくらい重要なことである。先に述べたように、今日、学生の流動性は高く、分散学習が拡大するにつれて、学生が複数の教育機関に出席する現象も増加していくことになるだろう。したがって編入政策は、新しいモデルへの移行に際して最も重要なポイントである。ユタやミズーリなどのいくつかの州ではすでに、取り決めた学生目標つまりコンピテンスに基づく全州的な一般教育要件のエンジニアリングを行っており、さらに多くの州でもこのような取り組みが検討されている。コンピテンスに基づく編入処置は一斉に実施する必要はなく、合意に至った時点で一つの技能分野ごとに実施することのできるシステムでもある。

民間教育機関
   重要なのは、州の政策担当者が、自らの州内にあるすべての高等教育資産について考慮する責任があることを忘れてはならないということだ。上記の各問題を追及する際には、政策担当者は公共教育機関だけでなく民間教育機関(非営利で私有)に対する影響も考慮しなくてはならない。


政府政策と認定政策の拡大

 政府の政策担当者と認定機関の両方が、アカデミック・カレンシーとしての学習度という概念が日々重要性を増していることを認識している。分散教育機関やコンソーシアムの数と種類が増加するにつれて、政府の政策担当者と認定機関は重圧にさらされ、普段は保守的な彼らも重い腰を上げ、こうした状況に注意せざるを得なくなっている。
 アカデミック・カレンシーとしての学習度を機能させる場合に、変更すべき必要のある国の主な政策は財政援助に関するものである。Higher Education Reauthorization Actの最新改正により、履修単位の修了に基づくことなく学生の進歩を記録する新しい方法を試行するためのDistance Education Demonstrationプロジェクトが設立された。このプログラムの一部では、所定の学位取得を目指す過程で、あらかじめ設定された学力に基づく目標に到達した学生の進歩に応じて政府の学資援助が分配される。優れた成績を修めた学生には、学資援助の一部が与えられる。

 分散学習の普及が進むにつれて、認定機関もまた再考を余儀なくされている(本シリーズのイートンによる研究論文を参照)。Western Association of Schools and Colleges(WASC、西部地域学校大学協会)、Higher Learning Commission of the North Central Association of Colleges and Schools(NCA)、Middle States Association of Colleges and Schools、Commission on Higher Education(MSA/CHE)、Southern Association of Colleges and Schools(SACS)など多くの既存の団体が、何らかの方法により、特定のリソースや大学機構への偏重を軽減し、明確な学習成果の達成度をより重視するために、それぞれの認定基準や検討プロセスを修正しつつある。多くの場合には、このような展開と同時に、教員の新しい役割の評価がなされ、常勤の研究志向型教員の幹部を採用するだけが必要な学習成果の達成につながるものではないという考え方が受け入れられてきている。その一方で、学習本位の基準や検討プロセスを一から作成する自由を持った、Teacher Education Accreditation Council(TEAC)やAmerican Academy of Liberal Education(AALE)などの新しい認定機関も出現している。明らかに、こうした認定機関は構成メンバーに基づく組織であるため、必ずしもこのような移行が容易であるとは限らない。だが、教育伝達システムの急速な変化によって、このような移行がますます避けられなくなりつつある。


州政府に対する質問事項


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