私情協ニュース1

第35回通常総会開催される



 第35回通常総会は、平成16年3月26(金)午後1時半より、アルカディア市ケ谷(東京、私学会館)の会議室にて開催された。当日は、16年度事業計画、収支予算の決定の他、補助金の助言システムの開設、IT技術者教育の大学の対応などについて協議。以下に主な内容を報告する。
 議事に入るに先立ち、文部科学省私学助成課の滝波課長補佐から16年度情報関連の補助について、次の通りの説明があった。

1) 私立大学等経常費補助は、3,262億5千万円と法科大学院含め45億円増額した。私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助は、昨年に比べ若干減少の167億8千万円となったが、私立大学等研究設備整備費等補助は、10億千万円増の71億6千万円を確保。
   
2) その内、情報関係は、経常費補助でトータルとして321億3,900万円を確保。増額は、教育・学習方法等改善支援で10億円増の50億円を確保。電子ジャーナル関係の教育研究情報利用経費で、ニーズが高く予算が追いつかないという現状を考慮し、4億5千万円から8億円とかなりの増額を図った。そのほか、学術情報ネットワーク、学術コンテンツも増額を図った。
   
3) 情報通信施設と情報通信装置は、若干の減額を余儀なくされ、併せて30億3,500万円、研究設備等整備費補助金も15年度と同額の25億4,600万円を確保。
   
4) 国民の税金によって賄われているという観点から、補助金の使用についてはぜひ厳正にお願いしたい。


1.16年度事業計画について

 15年度事業の継続を中心に、事業の積極化、事業内容の充実に向けて見直しを行った。
 「情報教育に関する研究事業」では、学系別教育IT活用研究委員会を組織して、文学から医学に亘り、教育効果を高めるためのIT活用モデルについて、教育内容の豊富化・高度化も含めた方向で事業を展開していく。また、検討内容の通用性を確保するために、国公私立関係なく研究集会を呼び掛け、議論を深めていく。委員会のオ−プン化を進めるために、有益な情報をアブストラクトとし、メールマガジンのような形で教育改善調査に回答の教員にメ−ル配信を計画。
 情報倫理教育では、e-Learning教材の構築を急ぎ、情報倫理教育研究集会にて開発教材の内容を意見交換、充実させる。

 「コンテンツ相互使用のための標準化」では、e-Learningを中心に活用モデルの紹介、導入に伴う施設設備の環境、作成ソフトの環境、実施体制、コンテンツの質保証まで含め、年度内にガイドラインをとりまとめる。
 「教育の情報化に伴う評価のあり方」は、情報化の自己点検・自己評価の指標が提示できるよう、教育でのIT活用とその効果、教育の支援体制、IT環境などについて、実現のための評価項目、評価方法、評価組織・機構のガイドラインを17年度年度当初にとりまとめる予定。
 「情報教育・情報環境調査」は、3年ごとに助手を除く専任教員約6万人を対象に教育改善のためのIT活用調査を実施。
 「サイバー・キャンパス・コンソーシアム」は、メールマガジンのような形で学問分野別にグループの活動状況、意見交流の場を内外に拡げ、賛同を得つつグループ活動を進める。また、電子ジャーナル、データベースの利用料の低廉化、利用条件の改善に向け、大学コンソーシアムとしての「教育研究情報大学共同購入機構」の構築を計画。
 「大学電子著作物権利処理事業」は、今年の9月末まで実験を行い、10月から本格的な実施に入る。著作権権利処理を担当する窓口が見えるよう、社会に大学教育支援のWebサイトへのメニュー掲載の協力を依頼していく。

 「教職員に対する研究会、研修会の開催」は、12の事業を予定。「大学情報化全国大会」は、文部科学省後援のもと、e-Learning導入を踏まえての実際の問題と取り組みを中心に計画を策定。「教育の情報化フォーラム」も文部科学省後援のもと、教育のオープン化を通じて教育の質保証、教材の共有化などを基調にe-Learning、IT活用教育の可能性と限界、教育の支援体制、情報環境の問題について、広く意見交流をしていく。「全国大学情報教育方法研究発表会」も文部科学省後援のもと、公募によるIT活用教育の実践を外部評価し、顕彰を通じて関係教員の教育業績に反映されるよう大学に働きかけ、教育業績を称えていく。「理事長・学長会議」は、教育改善のための組織的な取り組みを展開していく。「学系別情報技術活用研究集会」は、外部の関係者と意見交流をすることによって委員会の検討内容の通用性を確保。「短期大学部門検討会議」は、短期大学の窮状を打開するための戦略の一つとなり得るようITの活用を教育、経営、学生支援の観点から研究・討議。「授業情報技術講習会」は、教員のIT活用能力の養成を普及させるため、大学のセンターの協力を得て、スクーリングとe-Learningの両方で教育技術を支援。「情報倫理教育研究集会」は省略。「事務部門管理者会議」は、補助金の活用をはじめ大学連携、産学連携、教育支援の取り組み、著作権処理などについて理解を呼び掛ける。「大学情報化職員研修会」、「大学情報化職員基礎講習会」は、職員の意識改革を念頭に掲げ、ITを活用した教育支援、人材育成に貢献できるよう計画。「学内LAN運用管理講習会」はセキュリティ・ポリシー構築の実態を検証し、ネットワーク犯罪を予防するための対策を学ぶ。
 「情報環境の整備促進」では、既設補助金の充実と拡大に努めるとともに、文部科学省に不採択理由の明確化を要請。さらに大学側に、組織的な取り組みを強く働きかけていく。「相談・助言」は、補助金のポータルサイトの更新と教育改善のための補助金の活用、「特色ある大学教育支援プログラム」(GP)についても助言を予定。「内外諸機関の連携」は、著作権処理事業の協力などを考え、産業界への働きかけが必要となることから、経団連、経済同友会等々、関係機関へ強く働きかけていく。


2.情報関連補助金の相談助言システムの開設

 補助金の申請に関わる情報を協会のWebサイトで公開している。内容としては、「補助金に関する姿勢」で、採択大学は、税金の使い道を負託されたということを強く意識いただき、成果を教育研究の改善という形で表わしていただくことを強調。その他、「申請資格」、「申請等の年間日程」、「補助金申請のための留意点」を掲載。補助対象の範囲、事業経費の制限、財産処分などの解説を行っている。文部科学省の計画調書の閲覧も可能。
 また、「補助金申請積極化への提言」も掲載し、教育改善調査、補助金希望調査などのモデルをWebサイトから活用して、大学全体としての取り組みが積極化されることを要望している。Webサイトは42ページに掲載。


3.IT技術者教育の実態調査結果

 政府のe-Japan計画におけるIT技術者の育成強化の一環としての技術者教育の育成および新日本の情報系専門の大学教育では、プロジェクトマネジメント、業務分析など情報システムを作るための手段を教えていないという産業界からの苦言が絶えない旨の報道がなされている。また経済産業省からの「ITスキル標準」などプロフェッショナルの育成に関わるガイドラインの提示による人材教育の呼び掛けを受けて、当協会では実務教育に対する大学としての受け止め方について調査を行い、情報の専門系教育のあり方について考える材料を提示していくことになった。
 調査結果は、情報専門の授業を実施されていると思われる128の大学、17の短期大学に2月23日に調査を実施したところ、65大学、2短期大学から回答があり、その中でITに関する技術教育への取り組みが見られる大学は、32大学あった。 報道に対する反応については、カリキュラムで情報システムの構築に関する実務型の教育を実施していることが判明。経済産業省のITスキル標準を意識した教育を実施しているところは、ほとんどなかった。事例としては、慶應義塾大学で夏季休暇期間に特別研究プロジェクトとして、テーマごとに5日間の日程で事前にe-Learningでテストに受かった学生を対象に1講座16名を定員に実施。即戦力となる能力を修得できるとしており、計画、問題発見から始まってシステムを作るなどのワークショップ演習を中心としたものになっている。また、松下電器産業(株)は、経済産業省からe-LearningによるIT技術者育成の委託を受け、IT人材の入門編を構築し、利用を公募している。

 IT技術者の教育を計画している大学は、東海大学大学院、立命館大学、近畿大学などで、目標設定、要求分析などを行うプロジェクトマネジメントなどのITスキル標準を視野に入れた教育を計画。

 実務型教育への取り組みとしては、
日本工業大学大学院での企業を講師として招いた実践的な教育の実施
東京工科大学のIT企業出身者の教員陣による実践的な知識と技術の教育実施
東京電機大学での企業から募集した課題に現場を体験しながら学び、また自治体と共同のプロジェクト科目を設けての現場教育の実施
東京理科大学大学院でのITスキル標準のレベル4程度の実施
武蔵工業大学での要求分析、設計、実装、テスト、保守と順序立てたソフトウェア工学の考え方と概要、リスク管理の教育実施
明治大学大学院では、今後の課題として、「教員自身が技術の現状にさらされていることが重要で、そのために産学連携を推進することは大いにプラスである」と指摘
早稲田大学(人間科学部)でのITのカリキュラム実施
神奈川工科大学では実践的なIT技術者教育として実務能力のある教員による現場の実態を反映した講義・演習が必要と指摘
金沢工業大学でのコミュニケーションやプレゼンテーションの育成を目指した、成果報告に際しての発表審査会の実施
立命館大学は、基礎学力の充実を前提に個別実務能力に特化した教育プログラムで倫理観とコミュニケーション能力の育成を目指し、今後の課題として、受け入れ企業がなく増やす必要があると指摘
関西大学は経験豊かな経験者からのアドバイスや指導が必要で産業界から理解を期待したいと要望

 取り組んでいない理由としては、
実際のソフトウェア製作現場を経験した教員が少なく教育内容が偏っている
インターンシップ制度などを受け入れる会社の増加が望まれる
社会と連携して学生を育てる視点が必要
IT技術は手段なので手段のために目的を見失うことのないような人材育成を目指したい

との意見が掲げられた。

 以上、75%は、実務能力の育成よりも、学生の基礎能力の低下を考え、基礎能力の養成に学部教育の目標があることと、実務型の教育の課題としては、現場感覚を体験できるような教育の導入の必要性を確認し、産業界等による教員派遣、インターンシップの受け入れの拡大、地域産業との共同化、ワークショップなどの産学連携の強化が必要不可欠で、大学と産業界との間を繋ぐための政府としての対策の必要性が浮き彫りになった。


4.教員向け授業情報技術のe-講習

 教員を対象に授業運営に必要なIT活用能力の講習会を16年度からe-Learningで実施。
 e-講習は、加盟大学の専任教員を対象に、協会のポータルサイトから授業情報技術講習会運営委員会の大学および当協会が委託する賛助会員にコンテンツを配置して実施するもので、日常の相談・助言は、教員所属大学の情報センターなどの部門の協力を得て対応してくことにしている。講習費用も1年度あたり1名1,700円を上限に6月下旬から始める。
 授業でのIT活用事例を見て、授業での効果、情報環境、運用面での留意事項等を解説、イメージを修得した上で、教材作成に必要な情報技術をe-講習するもの。例えば、スライドに表やグラフ、静止画像を取り入れるための学習では、音声・動画も含むワンポイントのアドバイスがあり、グラフ作成のコンテンツが展開する。



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