私情協ニュース6

平成16年度 大学情報化職員基礎講習会報告



 本講習会は、平成16年7月7日(水)から9(金)までの2泊3日の日程で、静岡県浜松市の浜名湖ロイヤルホテルを会場として開催し、215名(103大学、3短期大学)の参加があった。
 この講習会は、教育・研究および人材育成の支援積極化を図るため、大学・短期大学の職員を対象に情報技術を活用した支援の体制、内容、方法、支援のための情報環境、支援能力の養成などについて講義と意見交換を行い、参加者の意識改革と基礎知識の習得を目指している。
 現在、大学ではより充実した教育を実現するため、教育内容はもとより、ITを活用した教育の支援環境を創意工夫し試行錯誤を繰り返し、成果をあげつつある。このような現状を踏まえ、大学の職員は教育における情報化の本質を再認識し、教育目標を的確に把握した上で、日常の業務や活動を達成させる努力が求められている。

 そこで本講習会では、以上のことを念頭に置き、研修運営委員(大学職員)がそれぞれの各テーマについて、内容や構成、資料を吟味しながら、実際の大学における事例を交えて分担して講義を進めるとともに、意見交換を行う構成とした。



全体講義


「大学改革と情報化〜職員の意識改革を目指して〜」


講師: 斎藤 信男氏(研修運営委員会担当理事・慶應義塾常任理事)

 大学の役割である教育、つまり人材育成を重点に置いた教員と職員の機能分散について説明され、学生、卒業生、社会を顧客として捉え、教員と職員の役割を分担し効率よく情報化を実施するためには、企画力の増強が必須であることを指摘された。また、大学経営という論点から人材育成への積極的な関与の必要性が説かれ、組織体制のありかたについても明らかにされた。



事例発表


「『教育支援室』で何が変わったか」

講師: 原田 豊氏(獨協大学教育支援室)

 他大学に先駆け、いち早く組織化された同大学の「教育支援室」について紹介された。教育支援室が発足することになった経緯、現状、今後の考え方を紹介いただきながら、大学の目標を教職員の共通意識として明らかにし、教職協働体制をどのように進め実現すべきかについてわかりやすく示していただき、多くの示唆を得ることができた。



テーマ別講義


 情報化を一つのキーワードとしつつ、大学本来の目的とは何なのかを見直す機会と捉えて、これまでの初級者の枠をとり除き、講義の中で参加者が考える時間をできるだけ多く設けるよう配慮した。各参加者は熱心に受講し、講師の問いかけにも積極的に意見を述べられた。
 各講義の内容は次のとおり。


講義(1)「大学改革に向けての組織・体制作り」

講師: 杉町 宏氏(立命館大学キャリアセンターBK課長・前研修運営委員会副委員長)

 大学改革を実現するための課題として、教職員の連携体制のあり方、連携のための情報化推進の戦略、情報共有のシステム作り等について、体験を踏まえた解説を行った。


講義(2)「戦略的な情報化環境の整備」

講師: 石丸 勝也氏(山梨学院大学電算機センター課長)
山田 憲男氏(日本女子大学財務部経理課長・前研修運営委員会副委員長)

 学生一人ひとりの自己実現能力の育成を支援するため、ネットワーク環境やマルチメディア教室、e-Learning環境など、基盤的な情報環境のあり方について、当協会の「私立大学情報環境白書」を参考にしながら解説した。


講義(3)「これからの教育・研究支援とその体制」

講師: 加藤 高明氏(名古屋学院大学情報教育センター事務室長)

 教育改善に必要な教員の指導能力向上のため、他大学の情報収集、教育へのIT活用能力の研修、学習指導のための学生情報の共有、社会支援を取り入れた教育システムの企画、教育業績の評価制度の企画など、組織的な教育研究支援体制のあり方について解説した。


講義(4)「情報の有効活用」


講師: 南 雄三氏(獨協大学情報センター次長)
井端 正臣事務局長(社団法人 私立大学情報教育協会)

 教育研究・人材の育成を達成するために必要な重要な情報資源の活用について、その可能性と限界を解説し、大学内部で解決し得ない問題等についてもインターネットを駆使して問題解決の可能性を模索した。

 最終日には、2時間をグループディスカッションの時間に当てて、今回の講義を通して、各自が考えたことを基に、「大学」という共通モデルを作り上げた。
 また、本年度は合宿形式で開催したため、その特徴を生かして1日目と2日目の夕食後にフリーディスカッションの時間を持つことができた。参加者は、1日目と2日目の講義内容の感想や疑問点、相互の大学の情報交換などを活発に行い、お互いの見識をさらに深めることができた。
 3日間を通して参加者は大変意欲的で、情報化を一つの視点としながら、大学本来の目的を達成するためには何をどのように考えるべきか、目標に向かってどのような実践形態があり得るのかについて、参加者がそれぞれ広がりと具体性を持つことができたことを実感した。

 最後に、全体講義、事例発表に対応いただいた先生方、また、講義のために当日はもとより事前の資料作成にも臨んでいただいた講師の方々に心から感謝したい。
 今後もより、満足度の高い講習会を目指して、今年度の講習結果や参加者アンケートの意見を参考に、研修運営委員会で内容をさらに充実させたいと考えている。そのために、今後とも関係各位の積極的な参加と成果を高めるための提言を期待したい。

文責: 研修運営委員会委員
山梨学院大学 石丸 勝也


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】