巻頭言
情報教育の進化
兒玉 正憲(広島修道大学学長)
本学は、商学部、人文学部、法学部、経済科学部、人間環境学部の5学部、商学研究科、人文科学研究科、法学研究科、経済科学研究科、法務研究科(法科大学院)の5研究科を擁する中国四国地方でも有数の文科系総合大学です。私は、学長に就任するまで、経済科学部の学部長を長年務め、経済と情報科学を融合するという経済科学部の理念を一貫して追究してきました。そのため、私と本学の情報教育との関わりは、大変深いものがあると感じています。
本学では早くから、高等教育・研究におけるインターネット環境の重要性を認識し、中国地区私立大学において学内のインターネット環境整備に最も早く取り組んだ大学の一つです。すなわちBクラスIPアドレスの取得、学内基幹LANの整備、情報教室の整備を行ってきました。また、衛星通信を利用した海外提携校との遠隔授業実験、高速無線ネットワークを利用した近隣大学との遠隔授業実験等も行ってきました。近年の情報技術の高度化とともに、情報教育もますます進化してきていることを痛感します。
特にインターネットの活用は、本学が抱える地理的時間的制約を克服する一つの手段としての意義も大きい。インターネットの持つリアルタイム性および双方向性を活用した高速かつ高信頼性を有する高度情報通信ネットワークを整備することによって、リアルタイム遠隔教育・研究環境の実現および情報コンテンツの積極的利用を目指しています。これにより、学生は他大学の授業を学内の教室で受講することが可能となります。教員は自分のプラットホームにおいて作成した教育用コンテンツおよび研究結果をサーバ上に置くことにより、遠隔地からインターネットを介して教材を提供したり、資料を提示したりすることが可能となります。これまでは資料や機器の運搬の限界等大きな制約を受けていたのが、多様な教材や資料を利用した授業や研究発表の実施、インターネット上に公開された教育コンテンツの利用など、弾力的かつ効果的な授業運営が可能となります。
授業の具体的内容においても、情報教育は欠かせません。大学における情報教育は、マルチメディア情報ネットワークおよびそれらの集合体である「高度情報化社会」に即応した形で展開する必要があります。新世紀のマルチメディア情報ネットワークは、いたるところに共同利用可能なマルチメディア・データベースを含み、かつ様々な方法でアクセス可能な大規模教育情報蓄積システムと言えます。
高度情報化社会では、学生の主体的かつ自己決定的情報活用能力養成が必須です。時間や場所等に制約されることなく種々のマルチメディア・データベースを具体的に検索・利用させることを通して、主体的学習のスパイラル的高度化を達成していきたいと思っています。蓄積されたマルチメディア教材コンテンツ、講義コンテンツを利用することにより、同水準、同品質の教育を時間や空間の制約を受けず、自学自習、再学習することが可能となり、さらなる教育効果が発揮できると考えています。
幸い本学は、サイバーキャンパス構想に基づく整備事業補助金を4年間にわたって得ることができました。本年はこの構想の締めくくりの年となります。これまでの施設・設備をいっそう充実させ、同時にこうして整備されたシステムを有効に活用すべく、遠隔授業やe-Learningへの取り組みを一段と強化していきたいと思っています。
【目次へ戻る】
【バックナンバー 一覧へ戻る】