教育支援環境とIT


教育と学生サービスを結ぶ情報ネットワーク
〜大阪国際大学の情報環境〜




1.はじめに

 1929年に設立された帝国高等女学校を源とする大阪国際学園傘下の二つの大学、大阪府守口市にキャンパスを置く大阪国際女子大学・大阪国際女子短期大学と、大阪府枚方市に1988年開学した大阪国際大学が、2002年に統合して現在の大阪国際大学・大阪国際大学短期大学部となりました。枚方キャンパスには経営情報学部、法政経学部の2学部2学科と大学院2研究科、守口キャンパスには人間科学部の1学部4学科があり、学生数は4,229名、教員は162名、職員は105名です。さらに守口キャンパスには短期大学部があり、両キャンパスに留学生別科を持っています。
 大阪国際大学設立以来のキーワード「Global Mind」には、世界的な視野をもった人材を育成するとともに、自らが生きる社会に対して大きな視野をもった人材を育成していくという理念が込められています。専門分野で学んだ知識を、世界で通じるコミュニケーション能力に結びつけるための有力な方法として、本学は情報教育とそのバックボーンとなる情報環境の充実に力を注いできました。


2.ネットワーク環境

 特に、ネットワーク設備に関しては、統合以前の1992年から守口・枚方両キャンパスを結ぶ学内LANの整備を始め、翌1993年には両キャンパスでSINET経由でのインターネットへの接続が可能になりました。その後毎年、外部接続、キャンパス間接続および学内LAN回線の増強を図り、現在では、外部インターネットへの接続は従来のSINET回線(1.5Mbps)に加えて、10Mbpsの商用回線を使用しています。外部との接続口は守口キャンパスにあり、守口・枚方両キャンパス間が100Mbpsの専用回線で結ばれています。さらに、それぞれのキャンパス内は基幹部分を2Gbpsの光ファイバーケーブルで構成し、校舎の各フロアまでは100Mbpsで接続して情報教育環境に関してストレスのない状態を提供しています。
 また、2004年にVLANによって両キャンパスに混在する教育系ネット(コンピュータ演習室)、研究系ネット(研究室)と事務系ネット(事務局)を分けました。特に、各校舎・各フロアに点在する事務部署を統一して一つのサブネット内に収めることは、後述の事務システムの稼働にあたりセキュリティの観点から見て必要不可欠の処置でした。


3.情報教育環境

 本学の情報教育は、事務組織である総合メディアセンターが、ネットワーク設備、サーバ群およびコンピュータ演習室機器の管理といったインフラストラクチャを、教員組織である情報教育センターと自然・情報系教員が教育内容を担当する形で進展しています。
 総合メディアセンターは、さらにコンピュータ演習室環境での情報教育をサポートするメディアセンター部門、急速に業務の電子化が進む図書館システムを管理する図書館部門と、2004年から稼働開始した事務システムの運用部門をその中に含んでいます。メディアセンター部門が管理運営するコンピュータ演習室は、守口キャンパスで13室に計454台、枚方キャンパスで10室に計316台を設置し、いずれもWindowsをOSとした2001年以降の機種で統一、ファイルサーバを設置して、両キャンパスのどの教育用コンピュータからでも個人の学習環境を参照できるようになっていることで、授業および自由利用の両方でフルに活用されています。また、サーバ/クライアント方式で情報教育を学ぶ基礎として、新入学者に対し、情報リテラシー授業の最初の段階でユーザアカウントおよびメールアカウントの利用方法を教え、その後のコンピュータ利用に支障の出ないような形をとっています。特に2000年からは、守口キャンパスでWebメールを導入、インターネットに接続できる環境であればどこでも自分のメールが参照できる環境を構築し、さらに2002年には両キャンパスの学生すべてがこのWebメールを利用できるようになりました。
 教材類は、学内の専用サーバから、授業時・自習時に自由に参照できるようになっている他、課題の提出に際しては、サーバへ直接提出する方法と自宅など学外からも使用できるWebメールによる提出方法を併用しています。授業時の教材提示は、二人当たり1台のモニタが設置された教材提示装置によって行っています。


4.情報教育内容

 情報教育の中核を担う学内組織は、主として守口キャンパスにおいて、1・2年次生の情報リテラシー教育を運営する情報教育センターと、枚方キャンパスにおいて、情報専門教育を担当する自然・情報系教員が二つの柱になっています。
 守口キャンパスにおける教育内容は、人文・社会・自然の各分野にまたがるため、4月から始まる情報基礎教育は、学生に共通の学習基盤を与えられるように綿密な計画に基づいて進められています。アカウントとパスワードの意味の理解、オフィス・ソフトウェアの利用方法、Webページの作成方法の習得等を基本として、専門教育への展開過程において、この成果をどのように活かしていくかが重視されます。
 3年次、4年次の2年間の成果を披露する人間科学部各学科の卒論発表では、演習室機器にインストールされた動画処理ソフトウェア、統計解析ソフトウェアを用いて各自の調査・研究成果を図表を駆使してまとめあげ、プレゼンテーション・ソフトウェアを使用して成果を発表する方式が一般的になりました。現在、7割の学生がこの形式で発表を行っています。
写真1 プレゼンテーションソフトを使った卒論研究発表
 枚方キャンパスでは、自然・情報系教員を中心として多様な試みが行われています。2004年度大学情報化全国大会でも「インターネット授業と教室授業の併用に関する実践報告」、「ビデオ会議システムを利用したシミュレーション株主総会の試み」、「プログラミングにおける補助教材の開発」等のタイトルでさまざまなe-Learningの試みが発表されています。
 経営情報学部(ITコース)の「コンピュータ・グラフィックス入門」では、CGソフトウェアを使用したプレゼンテーション方法をテーマに、授業内容の理解を高める自習用として講義資料や学生の作品をWeb上で参照できるようになっています。また、「情報システム論」ではハードウェア、ソフトウェア、データ通信等に関する講義資料だけでなく、練習問題もWeb上に動画として提示するなど、講義映像を活用して、教室授業にプラスアルファの効果を期待しています。
(a) 画像会議システムのメイン画面 (b) 文書やWebの共有機能
(c) 遠隔地間での画像会議   (d) 会場・ゼミ研究室間での画像会議
   
写真2 ビデオ会議とWeb機能を利用した日韓合同のビジネスゲーム
(詳細はhttp://res1.oiu.ac.jp/management-game/を参照)
 経営情報学部(e−マネジメントコース)では、ビジネスゲームを利用した実践的な経営も取り入れられています。これは、これまで学習してきた経営学や会計学の知識を総合的に利用して、会社を模擬経営するものです。表計算ソフト等を利用して経営計画をシミュレーションし、その結果を分析し、ワープロソフトにより文章化したものを、プレゼンテーションソフトとプロジェクタを使って、「株主総会」という形式で発表しています。また、ビジネスゲームもWeb化されて、他大学の参加も容易になり、2002年度には韓国群山大学校が、2004年度には中国青島大学校が参加し、国際的なビジネスゲームが展開されています。これに伴い、Webサイトを開設し、掲示板やインターネットを利用したWeb上での教育・指導が確立されています。さらに、2003年度には、学内の株主総会会場(ネットワーク施設を備えた会議室)と各研究室を結んで、ネット上での発表と質疑応答を行う形での「株主総会」が実施されています。現在、韓国群山大学校や中国青島大学と合同のテレビ会議方式での株主総会を開催できるよう準備を進めている状況です。
写真3 コンピュータ演習室を使用したWeb履修登録

5.学生サービスへの取り組みと課題

 従来様々な形で進められてきた学生サービスをITの面からバックアップすべく、エンロールメント・マネジメントが可能なシステムの検討と準備が2001年から進められてきました。2004年4月にその基礎となる事務システムの一部(学生、教務、就職)がWindows環境に更新されたことに伴って、2004年度からは、Web履修登録、Webからの求人・企業情報提供等、新しいサービスが始まりました。その後の動きとして、2005年入試が新しいシステムにて実施されるほか、2005年からは奨学金制度との連携、教員からの成績提出もWeb経由となり、情報の集中化とリアルタイム性が向上します。更に、同年10月には教職員が学生の様々な情報をカルテの様に閲覧できる学生データベース(仮称)が稼動する予定となっていますので、入試から入学、学習、就職活動、卒業までトータルにサポートするシステムが完成します。
 2005年4月から「個人情報の保護に関する法律」が全面施行されることに伴って、学生サービスに欠かせない学生個人情報は厳密に管理されなければいけませんが、前述のVLANによるネットワーク切り分けと事務システムの更新によって、情報管理のリスク把握とそれを踏まえた運用体制は確立しつつあります。今後の課題としては、学生データベース(仮称)等に集約された情報を、教職員一体となって実際の学生サービスにいかにつなげていくか、この体制をいかに継承・維持・発展させていくか、という点に尽きると思われます。


文責: 大阪国際大学・大阪国際大学短期大学部
総合メディアセンター長 桶谷猪久夫
守口メディアセンター係長 足立 恭和



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